【来た!見た!書いた!】再生エネルギー買い取り問題のウラに潜む「空押さえ」のカラクリ

買い取り中断に噴出した不満

「国が再生可能エネルギーを進めようとしてきたのに、急に電力会社が再生エネはこれ以上接続できないといい始めた。しかも理由が明示されない。こんなおかしいことがあるか」
「福島県の場合、津波の被害がひどかった浜通りに、東京の大資本が出力1000㎾を超える大規模太陽光発電所(メガソーラー)を作る計画が数多くあり、それが電力会社の送電網を抑えてしまっている。地域で地産地消の再生エネをつくろうとしている地元の事業者から、東京の大企業が機会を収奪している。こうした企業は福島から撤退すべきだ」
 10月下旬に福島県内で開かれたあるメガソーラーの開所式。そこに集まった再生可能エネルギーの関係者からは不満や憤りの声が噴出していた。

 話題になっていたのが、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の問題だ。太陽光発電を中心に各種再生エネの設備の計画・設置が電力会社の送電網の受け入れ能力を上回るペースで進み、9月末に九州電力や東北電力、四国電力などの5電力会社が接続受け入れ、買い取りを中断する事態に陥ったのだ。
 固定価格買い取り制度は再生エネの発電設備を持つ企業や個人が発電した電気の買い取りを大手電力会社に義務付ける制度だ。買い取りの価格や期間は発電形態ごとに違い、年度ごとに見直す。例えばいま最も多くの事業者が手がけている太陽光(発電能力10㎾以上)の2014年度の買い取り価格は、1㎾時あたり税抜き32円で買い取り期間は20年。風力(20㎾以上)は22円、20年だ。


再生エネ全部買い取ると1家庭の負担は1万円超に

 この制度の問題点は大きく分けて2つある。1つは、大手電力会社が再生エネの接続受け入れを申請通りに進めた場合、電力会社の送電網の能力を超えてしまうという点だ。
 背景には、太陽光の買い取り価格設定が他の形態に比べて高く、しかも比較的短期間で設備を設置できるため、設備投資と大手電力会社への接続申請が太陽光に集中してしまったことがある。太陽光は晴れの日と雨の日、昼と夜とでは発電量が大きく変動する。発電量が増えすぎると停電するリスクもあるという。大手電力会社は、全ての太陽光を受け入れて電力を安定して供給するには、送電網の余力が足りないと主張している。
 もう1つは国民の負担が重くなっていることだ。固定価格買い取り制度では、大手電力会社が再生エネの買い取りにかかった費用は、使用電力に応じ賦課金という形で電気料金に上乗せされる。
 現在標準的な家庭で、年2700円を徴収している。経済産業省の試算では、すでに認定を受けながら稼働していなかった設備もすべて運転した場合、年間の国民負担が4倍超の2兆7000億円に膨らみ、1家庭当たりの負担が1万円を超すことになるという。

県内すべてを再生エネルギーで賄う福島の対策

 この問題を解決するにはいくつもの論点があるが、まずは短期でできることをあげてみよう。その第1が「空押さえ」の解消だ。
「短期的対策 太陽光発電計画の実態把握と「空押さえ」の解消」――。福島県が10月27日に開いた、電力会社の再生エネ接続保留問題についての対策を検討する会議。事務局が配った資料には「空押さえ」という聞き慣れない言葉が記されていた。
 東京電力福島第1原子力発電所の事故に今も悩まされる福島県は東日本大震災のあと、県内にあるすべての原発を廃炉にして、2040年には県内の全エネルギー需要量に見合う再生エネで生み出す目標を掲げた。この目標の前提になるのが、大手電力会社が企業や個人から再生エネを買い取る固定価格買い取り制度だった。だからこそ電力会社の再生エネ接続保留問題が起こると、福島県は早速、対策に乗り出した。
 その福島県が指摘する「空押さえ」とは何か。「買い取り価格と送電網への接続予約をしながら、合理的理由もなく発電事業に着手しない行為」のことだ。


接続契約を結んでいても実際の稼働はわずか15%

 経産省によると、固定価格買い取り制度が始まってから6月末までに認定した容量は7178万㎾あるが、そのうち実際に運転を始めたのは約15%に過ぎない。大手電力会社の「送電網が足りなくなる」という主張は、この残り85%分が実際に運転を始めるようになったときのことを前提とした話なのだ。
 東北電力管内や福島県の場合、さらに認定容量と実際の運転し始めた容量との差が大きい。東北電管内で運転を始めている割合は5.8%、福島県の場合は4.4%とさらに低くなる。
「福島の場合、福島第1原発に近い沿岸部はほかに使いようのない土地が多く、そこに東京の大企業がメガソーラーを計画している。しかしまだ実際に動き出していない計画がほとんどで、これが東北電力の接続容量を占領していることが大きな問題」と関係者は指摘する。これが空押さえの実態だ。
 福島県はこうした空押さえを解消するために①発電能力2000㎾以上の大規模事業は土地利用についての法制度と整合性を図るため立地自治体と設備認定情報を共有する②電力会社がやる気のない事業者とは接続契約を解除する、経産省が設備認定を取り消すなどして空押さえを解消すべき――などと提言している。
 固定価格買い取り制度そのものの制度を大幅に見直すには、まだまだ時間がかかるだろう。ただ福島県の提言については、すぐに手をつけられることばかりだ。福島県に限らず、電力会社や経産省はまず、空押さえの解消に動き出すことが必要だ。


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