【来た!見た!書いた!】 地方予算から見えてくる日本の厳しい現実

大きな報道の裏でひっそりまとまった地方予算

 一般会計総額で96兆円弱と過去最大となる2014年度予算案が衆院を通過した2月28日、我々にとって実はもっと身近な「予算」がひっそりと出そろった。47都道府県の2014年度の当初予算案。2月23日に県知事選があったばかりの山口県がようやく予算を発表し、すべての都道府県の分がそろったのだ。
 新聞やテレビで大きく報道される国の予算は、その骨格を認識している人が少なくない。14年度の国の予算案はまず96兆円弱という規模の大きさが耳目を集めている。
 だが自分が住む都道府県の予算額を把握している人はどれだけいるだろうか。今回は、あまり注目されることのない都道府県の予算の姿を通して、今の地方の姿を捉えていきたい。
 まず14年度の都道府県の当初予算案で注目すべきは47団体中、山梨県を除く46団体で税収が伸びることを見込んだ点だ。
 予算編成時期が知事選と重なり、最低限必要な経費を盛り込む「骨格予算」を組んだ石川、京都、山口を除く44都道府県の税収総額は16兆2100億円と、13年度当初予算より7.9%も増えた。
 これを1年前の13年度当初予算案と比べると、違いがよくわかる。13年度は税収の伸びを見込んだ団体は26で、14年度より20も少ない。そして骨格予算を組んだ2団体を除いた45団体の税収総額は14兆8500億円と12年度より2.3%増えただけだ。

自治体の税収回復は実はまだら

「予算における税収なのだから、あくまでも予想、見込みに過ぎないはずだ」と考える人もいるだろう。確かにそういう面はある。だが自治体にとっても、予算と実際の税収が大きくずれることは財政運営上、好ましくない。
 景気などによって最もぶれる確率が高いのが、税収の4分の1程度を占める住民税、事業税の法人2税。ここができるだけぶれないように、自治体の担当者は地元企業に現在の業績や業況を聞くなどして税収額の精度を高めようとしている。だから、予算案の税収見通しはそれなりに確度の高いものだといえる。そう考えると、アベノミクスによる企業業績の回復で、自治体の税収も回復しつつあることがよくわかる。
 ただ税収の回復はどの都道府県もおしなべて、というわけではない。むしろ地域ごとの景況感や立地する産業の違いにより、税収の差がより広がっているように見える。
 税収の増え方を左右するのは地方法人2税。3大都市圏や、円安を追い風に輸出が好調な地元企業がある地域で大きく伸びる。


唯一税収を減らした山梨県の背後にあるもの

 税収の伸び率が19.1%と1位の愛知県はトヨタ自動車など自動車産業が集積しており、法人2税が5割近く伸びる。円高が続いた時期に、以前は盛んだった工場が海外に移ってしまい、円安になってもその恩恵が受けられない地域が少なくない。
 だがトヨタはその逆。円高で苦しい時期でも一定の国内生産は維持してきた。その中心である愛知県は、円安のメリットを最大限受けている自治体だろう。税収の伸び率9位(8.2%)に入った群馬も、富士重工業の好調の追い風を受けている。
 税収の伸び率が10%と3位の福島や、8.4%と8位の宮城。こちらの税収を支えるのは建設業の復活だ。東日本大震災からの復興需要や政府の緊急対策による公共事業の増加で、建設業の収益が改善している。岩手も加えた被災3県は震災前に編成した11年度当初予算の税収を上回る。
 唯一税収を減らす見通しの山梨県は、スマートフォン向けの部品加工機械が前年の特需の反動で落ち込んだファナックなど、主要企業の業績がふるわないことを反映させた。円安で国内生産が復活した自動車と、元気を取り戻せないでいる電機・情報産業の違いが表れているといってもいい。


税収が増えても自治体のサービス充実に結びつかない

 今回の都道府県当初予算案のもうひとつのポイントは、税収が増えても、必ずしも自治体が豊かになったり、住民向けのサービスが充実したりするとは言い切れない点だ。
 44都道府県の一般会計総額は2.9%増の49兆円あまりとなった。
 支出では、高齢化を背景に介護・福祉など扶助費が3.4%、過去の借金の返済に充てる公債費が7.4%増える。これらの伸びが一般会計総額を上回るということは、それ以外の政策に充てる経費が少なくなっていることを意味する。
 住民の高齢化によってどうしても高まる傾向がある扶助費や公債費は自治体にとって固定的な経費で、減らすことが難しい。
 従来なら、地方の財源不足を補うため、国が配分する地方交付税で埋め合わすことも可能だった。だが国も財政が厳しいことから、交付税の額は頭打ちとなっている。税収が増えても、それが自治体サービスの充実に結びつくとは言い切れない時代になっているのだ。



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