【来た!見た!書いた!】 増える外国人観光客を日本経済の立て直しにいかせ

訪日観光客数が1000万人を突破

 日本を訪れた外国人は2013年、初めて1000万人の大台を突破した。日本政府観光局が1月中旬に発表した訪日外国人数は前年より24%増えて1036万人。為替相場の円安で豊かになったアジアなどからの訪日旅行が割安になったのに加え、中国人や東南アジア諸国連合(ASEAN)に向けた観光ビザの発給要件緩和、入国管理手続きの改善といった受け入れ体制の整備、格安航空会社(LCC)の就航拡大・増便などが功を奏した。
 ただ日本政府が「訪日外国人旅行者1000万人」を掲げてビジット・ジャパン・キャンペーンなどに取り組み始めたのは小泉純一郎氏が首相だった2003年のこと。その年の訪日外国人数は521万人で、2007年には早くも834万人まで増えたことを考えれば、もっと早くに1000万人を達成してもおかしくなかった。
 2007年のリーマン・ショック、2011年の東日本大震災と、日本を訪れる外国人を増やすには痛手となる大きな事象があったのは確かだが、ビザの発給要件緩和や入国管理手続きの改善などの政策は、もっと以前から打てたはずだ。
 500万人強だった2003年から10年経っての1000万人突破は「観光立国という旗頭を立て、戦略的に目標を定めたオールジャパンの勝利」と政府関係者が自賛するほど誉められたものではない。

長野に急増!? オーストラリア人のスキー客

 もう1つ忘れてはならないのは、日本の訪問外国人の数は、諸外国に比べまだまだ少ない点だ。外国人訪問者数(2012年)で1位のフランスは8301万人、2位の米国は6696万人だ。その国の定住人口に対する外国人訪問者数の比率をみると、日本はわずか8%なのに対し、フランスは131%、イタリアは76%もある。韓国ですら日本の3倍近い22%もあるのだ。
 こうした数値を見てしまうと「観光立国」とは胸を張っては言えまい。安倍晋三首相は2013年の数値が発表されたときに「この数字に甘んじるわけにはいかない」と語ったが、それは正しい認識だ。
 1月中旬週末の長野市の善光寺。中心駅である長野駅から約2キロ、歩いてもいける善光寺は日本人の中高年層に人気の高い観光スポットだ。だがこの日は、日本人に混じって、スキー用のアウターを身にまとったオーストラリア人観光客の家族連れやグループも目立った。
「北海道のニセコ地区に続いてオーストラリア人に人気が出た白馬村だけでなく、今年は志賀高原も外国人スキー客が増えている。善光寺を訪れているのは、そうしたスキーが目的で来日した外国人が観光地として有名な善光寺にも寄っているからだろう」と関係者はみる。
 だが残念なことに、善光寺はお世辞にも外国人にとって優しい観光地とはいえない。もちろん国宝の本堂や山門などの建物には、日本語とともに英語の案内が出ている。だがみやげ物店や飲食店が並ぶ参道には、英語の表記はほぼゼロに近い。


午後の4時半には店を閉めてしまう日本の観光地

 ちらちらと雪が降り始めた寒い中、「暖かい甘酒はいかがですか」と日本語で呼びかけを続けるみやげ物店の店員と、店の前で甘酒の湯気と匂いに惹かれてたたずむものの、甘酒が何かをわかりかねて手を出しかねている外国人のコントラストは、「観光立国」というにはほど遠い光景だった。
 長野市に住んで数年になる東京都出身の女性はこういうことも指摘する。
「外国人のお客様が来て善光寺を案内するでしょう。すると冬ならともかく夏でも、参道のみやげ物店のほとんどは午後4時半になると店をしめてしまって、入れる店がなくなってしまう。もったいないなぁと思うのよね」
 だがこれは、長野市だけでなく、日本の古くから有名な観光地に共通する課題かもしれない。善光寺のような国内向けの強いコンテンツを持つ観光地ほど保守的で「待っていれば観光客は来てくれるもの」という意識が強い。外国人向けに英語や中国語などの表示を充実させている地域はまだまだ少ない。

訪日外国人数を韓国並みにすればGDP5兆円上昇


 一方、増える外国人をいかして街そのものが変わったケースがある。北海道の倶知安町とニセコ町にまたがるニセコ地域だ。
 米国での同時テロを嫌ったスキー好きのオーストラリア人が良質なパウダースノーに目を付けたのを契機に、ニセコでは外国人が増え始めた。2012年度の外国人宿泊者数は前年度より7割増え過去最高の32万人を記録。ここ10年ほどの宿泊者数は年間120万~130万人を維持していて、減少傾向の日本人を外国人が埋めている構図だ。
 ニセコの街を歩いて気づくのは圧倒的な英語表記の多さや、外国人向けショップの多さなど「外国人が歩き回って楽しめる街」になっている点だ。外国人向けの店を新たにつくるため、起業さえ増えているという。
 訪日外国人が人口比で韓国並みの水準になれば、訪日外国人客数は2800万人になる。これを実現すれば国民総生産(GDP)を5兆円程度、約1%押し上げる効果があるという。人口が減り始めたなかで、外国人観光客がもつ日本経済に対するインパクトはとても大きい。
 政府や自治体や観光関係者は次の目標である訪日外国人2000万人を早急に達成するために、ニセコなどを参考に、今の日本には外国人を増やすには何が足りないかを議論して、次々と施策を打つべきだ。


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