第51回 東京モンには分からない北関東自動車道の隠された「効果」

田畑ばかりの土地にいきなり出現した「パワーセンター」
 
総合スーパーのベイシア(前橋市)などが北関東自動車道の前橋南インターチェンジ前で準備を進めてきた「パワーモール前橋みなみ」が12月、開業した。現在はホームセンターのカインズ(高崎市)などベイシアグループ各社と、米衣料専門店のギャップらが入居する。米会員制ディスカウントストアのコストコなどが入る来夏の第2期、生活雑貨専門店などが入る来冬の第3期を含めると、総敷地面積23万平米の巨大パワーセンターが誕生することになる。

総敷地面積23万平米とはどれくらの大きさか。この近辺にある代表的なショッピングモールであるイオンモール高崎(群馬県高崎市、12万平米)と、けやきウォーク前橋(前橋市、9万平米)を足したのとほぼ同等の面積。東京ドームでいえば、約5個分の広さといえば分かりが早いだろうか。ベイシアグループは来冬の完全開業後、このモール全体で年間で300億円を売り上げる計画だ。
 
ただパワーモールがあるのは、JR前橋駅から南に7~8キロ、高崎駅からは東に同程度の距離の場所。それぞれの中心市街地から遠く離れており、元は田畑ばかりだった土地だ。そんな地域にこれだけの規模の施設ができたのは、北関東自動車道が誕生したことと強く関係している。


群馬の店で栃木からも茨城からも客を集めやすくなる
 
政府は1980年代後半に「第4次全国総合開発計画」をまとめ、北関東自動車道の計画を打ち出した。群馬、栃木、茨城3県の主要都市と常陸那珂港などを結ぶ、全長150�の大動脈だ。
 
これまで「北関東」とひとくくりにされつつも、交通の便が悪いが故にまとまりのなかった3県の距離がぐっと近づく。前橋南インターチェンジは関越自動車道の高崎ジャンクションから北関東道に入って最初のインターチェンジだ。
 
現在、北関東道は群馬県の太田桐生インターと栃木県の佐野田沼インターの間(18.6キロ)の間が未開通だが、来年3月19日に全線開通することが決まった。この全通による追い風を受けるのが、来夏に開業するコストコだ。
 
付近にいくつも店舗のあるベイシアグループとは違い、コストコにとっては北関東では最初の店舗。未開通部分が残る現段階でも、群馬県の北西部、新潟県や長野県から前橋南インターへはスムースに来られる。全面開通すれば、さらに栃木県や茨城県からも客を集めやすくなる。


新たに建設された「マルちゃん」工場の規模と効果
 
北関東道の効果があるのは、流通や観光ばかりではない。東京外環自動車道、首都圏中央連絡自動車道と同じように北関東道は、東京を起点に放射状に延びるいくつもの高速道路を、環状に結ぶ役割がある。
 
地価が比較的安く広い土地を確保しやすい北関東道沿いに工場や配送センターを配置すれば、常にモノが集まり混雑しやすい東京を通らずに、東日本にも西日本にも物品を配送しやすい。
 
東北自動車道を東京から東北方面に向かうときに通る利根川橋。この橋を渡るとき、左前方を見ると「マルちゃん」マークのついた巨大な建物が見える。即席めん大手の東洋水産が今年1月に完成させた関東工場(群馬県館林市)だ。
 
東京ドーム2.7個分(13万平米弱)の敷地に、横の長さが340メートルもある工場・物流配送センターが構える。土地の取得と、建物の建設や設備に約150億円をかけた。
 
関東工場は同社の中では最大の即席めん工場。「赤いきつねうどん」や「緑のたぬきそば」を毎時2000ケース(1ケース12個入り)生産する能力があるラインを4つ持つ。原料をこねる段階から出荷までの工程をすべて1直線に並べたことなどで、人手を省いて高い生産性を実現した。


キリンビールが撤退した跡地も道路の開通で見直された
 
東洋水産は地域の好みに合わせて赤いきつねなどの味を変えているが、関東工場がカバーするのは北は青森、西は新潟、岐阜、三重までの「東日本」だ。
 
東北道の館林インターチェンジ近くにあるため、もともと首都圏や東北地方には配送しやすい。さらに3月中旬に北関東道が全通すれば「新潟や長野方面へ運ぶ時間も短縮できる」(同社)というわけだ。
 
東洋水産は関東工場の建設以前に、グループ会社を含めると即席めんの生産拠点を国内に9カ所持っていた。関東工場の稼働に合わせ、生産品目を入れ替えるなどして、生産の効率化を進めている。
 
北関東道の全線開通を背景に、森永製菓も高崎市の高崎ジャンクション近くに、キャンディーとチョコレートを製造する新工場を建設する。こちらは2013年に稼働予定。新鋭設備を導入して生産性を高め、主力の塚口工場(兵庫県尼崎市)から生産を移管し、塚口工場は13年度中に閉鎖する方針だ。
 
森永が工場を建設するのは、キリンビールが2000年夏に高崎工場を閉鎖した場所だ。18万平米に及ぶ跡地利用を巡り、高崎市などは7年にわたって頭を悩ませた経緯がある。一度は大手工場から見放された土地が、北関東道の全通によって他の企業を呼び寄せる。東京からの視点だけではわかりにくいが、実は北関東自動車道の「効果」は意外と大きい


【著者プロフィール】
1965年、埼玉県出身。1988年に大学卒業後、大手新聞社に就職。主に企業関係の取材を担当。
現在は経済関係部署のデスク。

(2010・12・8)


トップページ -> 地方経済の視点 -> 第51回 東京モンには分からない北関東自動車道の隠された「効果」