第45回 日本の消費を上昇させたいなら中国人観光客をもっと呼び込め

新しい家電の聖地池袋には中国人がいっぱい
 
6月に入った最初の週末、東京・池袋に冷蔵庫を買いに行った。パソコン関連やAV(音響・映像)機器などはネット通販で買うことが多くなったが、冷蔵庫は配送や搬入にも手がかかる商品。配送体制やアフターサービスがしっかりとした家電量販店で、しかもできる限り安く買いたいと考え、池袋を選んだ。

池袋は今、家電製品の価格競争が最も激しい場所のひとつだ。家電量販店最大手のヤマダ電機が2009年10月末に、池袋駅前の三越の跡地に約2万3000平方メートルの売り場面積を誇る「日本総本店」を出店した。
 
同社は既に2007年7月、LABI池袋店をオープン。以前から池袋に店舗を持つビックカメラとの「池袋家電戦争」が始まっていたが、日本総本店によりその戦いはさらに激しくなった。その分、消費者としては、同じ商品を他の場所よりも安く購入しやすいと考えたのだ。
ヤマダ電機の日本総本店とビックカメラ池袋本店の間を往復すること数度。結局、価格比較サイト「価格コム」の最安価格よりさらに安い価格で冷蔵庫を購入できて満足したのだが、両店舗をくまなく回るうちに感じたのが、中国人観光客の買い物パワーだ。
両店のどの階でも、中国人観光客とおぼしき人たちの中国語が耳に入ってくる。両手に余るほどの荷物を抱えた人たちにも数多く出会った。店舗側も中国語の表記を増やすなど、その対応を強化している。


平均月収以上に買い物をする中国人観光客
 
中国人観光客が買い物パワーを発揮しているのは池袋だけではない。「電気の街」として知られる東京・秋葉原。同地区の年間売り上げは3000億~4000億円だが、既にそのうちの1割程度が中国人観光客によるものだという。百貨店にも中国人観光客が押し寄せ、日本人の消費不振を補う効果を発揮し始めている。
 
日本政府観光局が調査した、日本を訪れた外国人の消費額調査によると、中国本土から日本に観光に来た人はお土産に平均11万7000円を使っている。その額は欧米各国の2倍以上。会社勤めする中国人の平均月収が7万~8万円程度であることを考慮すれば、いかに中国人が日本で買い物に力を入れているかがわかる。
 
中国の経済発展とともに、日本へやってくる中国人観光客の数も増え続けている。2009年に訪日した観光客は前年比6%増の48万人。リーマン・ショック後の世界不況の影響で、ほとんどの国が観光客を減らしているにもかかわらずだ。国別では米国を抜き、韓国、台湾に次ぐ第3位になった。
中国人にとって「メード・イン・ジャパン」の信頼感は絶大だという。加えて、日本で買う場合は偽物が少ないというのも、中国人が日本で積極的に買い物をする理由だろう。


茨城空港に来る中国人観光客を狙う草津の湯
 
中国人観光客を呼び込もうとする動きは、観光地でも始まっている。
 
中国の格安航空会社、春秋航空(上海市)は6月初旬、7月末をメドに茨城空港(茨城県小美玉市)へチャーター便を就航させることを決めた。日中両国の認可を得れば早期に定期便に切り替える計画だ。茨城空港はターミナルビルを低コスト構造にし、格安航空会社に絞った路線誘致に力を入れおり、その活動が実った形だ。
 
春秋航空の就航によって増えるだろう中国人観光客に熱い視線を送るのが、群馬県の草津温泉だ。2011年春には茨城・栃木・群馬の各県を結ぶ北関東自動車道が全面開通し、群馬県からは茨城空港へのアクセスが飛躍的に向上する。
草津温泉旅館協同組合(草津町)は「健康に対する関心が高まっている中国人に泉質の良さを訴える」と、中国向けの営業を強化する。また群馬大学の重粒子線医学研究センター(前橋市)がこのほど「がんを切らずに治せる」治療法、重粒子線治療を始めたため、これと連携したツアーの開発も検討している。


ビザ緩和で中国人の1600万世帯が日本に来る?
 
東京など一部を除き人口が減る時代に突入したいま、地域の活力を維持・強化するには、今まで以上に地域外から訪れる人の数(交流人口)を増やすことが重要になる。
 
ただ国内で日本人だけを対象に競争していては、市場は広がらない。この不況の中、一人当たりの旅行支出額が急に増えることはないからだ。どこかの観光地が客数を増やせば、逆にどこかが減らすという「ゼロサムゲーム」が続く。
 
だが経済発展が続く中国人向けは別だ。中国人の日本観光は2000年から団体観光として実施。中国人への団体観光ビザの発給数は年々増えてきた。
 
さらに日本政府は2009年7月、年収25万元(約330万円)程度の富裕層を対象に個人観光ビザの発給を開始。今年7月からはビザの発給条件を大幅に緩和し、企業や政府などの中堅幹部ら中間層に対しても発給する。外務省はビザ緩和で、発行対象がこれまでの10倍に当たる1600万世帯に増えると見込む。
大幅に増える中国人向けに、いかに実のあるサービスを提供できるか。しばらくは日本の消費が上向きそうもない中で、このことが小売業や観光業の中で、重要なキーワードとなりそうだ。


【著者プロフィール】
1965年、埼玉県出身。1988年に大学卒業後、大手新聞社に就職。主に企業関係の取材を担当。
現在は経済関係部署のデスク。

(2010・6・9)


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