第34回 東京モーターショーを見るとよく分かる、自動車「100年に1度」の大変革

相次ぐ上方修正で最悪の状態を脱した自動車産業
 
自動車産業の収益が最悪期を脱して、急速に回復している。ホンダは10月27日、2010年3月期の連結営業利益(米国会計基準)の予想を、前期比0.2%増の1900億円に上方修正した。従来予想の700億円と比べ1200億円の上積みで、減益予想から一転、増益予想となった。

注目されるトヨタ自動車の2009年4~9月期(中間期)決算発表は11月5日。日本経済新聞によれば、トヨタの4~9月期の連結営業利益(米国会計基準)も2500億円前後の赤字(前年同期は5820億円の黒字)と、従来予想の4000億円の赤字よりは、大幅な上方修正となりそうだ。
 
両社とも、日本国内の環境対応車への減税措置など世界各国の需要刺激策により、自動車販売が回復していることが「上方修正」の背景だ。
 
もちろん各国の需要刺激策頼みの側面がある以上、今後も需要が回復し続けるかは不透明な面もある。ただ、こと自動車産業の中では、昨年末から今年初めにかけて言われたような「100年に1度の危機」という言葉は、あまり聞かれなくなった。
 
しかし自動車産業の変革期が去ったかというと、そうではない。需要面での危機はとりあえず遠のいたものの、もっと根本的な技術面からの変革期を迎えているからだ。11月4日まで幕張メッセ(千葉市)で開催中の「第41回東京モーターショー2009」を見学すると、そのことがよくわかる。


各社が競って出展するエコ技術を駆使した車
 
既に多くの報道がされているように、今年のモーターショーは、環境技術(エコ)への対応が最大のキーワードだ。だが完成車メーカーの出展傾向を見ると、同じエコ対応でも、アプローチの仕方はかなり違う。
 
電気自動車(EV)を前面に打ち出しているのが、三菱自動車と日産自動車だ。今年7月に軽自動車「i(アイ)」をベースにした小型電気自動車「i―MiEV(アイ・ミーブ)」を発売した三菱自動車は、その商用車版や家庭の電気で充電可能なプラグインハイブリッド車(PHV)を展示。ほぼEV一辺倒といった感じだ。
 
カルロス・ゴーン社長が「EVは環境問題に対する解決策」と話す日産自動車も、2010年度後半に日米欧で販売する「リーフ」を大きく展示、「1回の充電で走行距離160キロ以上」をアピールしている。
 
一方、ガソリン車と電動の技術を組み合わせた「ハイブリッド車」で既に実績を積み重ねているトヨタやホンダはハイブリッド技術中心の展開だ。
 
トヨタは「車の走行性能を維持しながら、超低燃費とコストを両立させた車はハイブリッド車しかない」との立場。トヨタのこの分野の目玉は、プリウスベースのプラグインハイブリッド車。家庭用の200ボルト電源ならば、100分でフル充電が可能。もし電池が切れたとしてもガソリンエンジンで走行可能な点が、純粋なEVにない利点だ。
 
ホンダもハイブリッド重視の点はトヨタと同じだが、EVを街中の交通手段ととらえ、それに沿ったコンセプトカーを何種類も展示している。
 
4人乗りの小型EV「EV-N」はホンダが初めてつくった4人乗り乗用車「N360」をモチーフにしたもの。レトロで親しみやすいデザインが特徴的で、先進性をアピールする各社のEVとは方向性が異なる。


「ないからつくるんだ」という会社の画期的一輪車
 
ホンダの出展で、個人的に出色と思ったのは電動一輪車「U3-X」。二足歩行ロボットASIMOの研究で培ったバランス制御技術を応用し、人が乗っていなくても自立し、また一輪車に乗れない人でも乗れるという。複数の小径車輪を一列につなぎ合わせて構成した大径車輪を採用し、運転手の重心移動に伴い、前後にも左右にも動ける。
 
文字で書くと想像しにくいが、モーターショーではEV-NなどとともにU3-Xのデモも行われており、その「一輪車であって一輪車ではない」コンセプトの斬新さをこの目で確かめられる。ホンダの創業者、本田宗一郎と藤沢武夫は、かつて「ないからつくるんだ」といって「スーパーカブ」を開発したといわれるが、まさにU3-Xはホンダの既成概念にとらわれない精神が生み出した作品だ。
 
米国の自動車王、ヘンリー・フォードがミシガン州にフォード・モーター社を設立したのが1903年、何回かの失敗ののち有名な大衆車「T型フォード」を開発したのが1908年だ。この時期に、自動車においては電気モーターなど他の動力源と比べたガソリンエンジンの優位性が確立した。
 
しかしそれから100年がたった今、石油資源の枯渇や温暖化効果ガス削減の要請から、再びガソリン以外の動力への注目がかつてないほどに高まっている。
 
モーターショー2009での、メーカー各社のアプローチの仕方が違うのは、脱ガソリンがどれくらいの速さで進むかについて、各社の見解が一致していないことの表れでもある。
 
ただそれでも自動車産業が脱ガソリンに舵を切ったことは確か。数十年たった後で振り返ると、「2009年のモーターショーが100年に1度の転換点だった」と言われているかも知れない。


【著者プロフィール】
1965年、埼玉県出身。1988年に大学卒業後、大手新聞社に就職。主に企業関係の取材を担当。
現在は経済関係部署のデスク。

(2009・11・4)


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