第21回 学生諸君! いい会社は「グローバル」から「ローカル」へ移っているぞ

がらりと変わった学生の就職志望
 
毎年、4月になるとリクルートが発表する「大学生の就職志望企業ランキング」。広告代理店や出版社など俗にかっこよいと思われやすい業種が上位になりやすいという、大学生を対象にした調査特有の傾向はあるものの、継続的に見てみると、そのときどきの「大学生の就職観」が表れていて面白い。

今年のランキング(表を参照)で際だったのは、輸出で稼ぐ外需型企業が軒並み順位を下げたのに対し、内需型企業が上位に名を連ねた点だ。
 
東海旅客鉄道(JR東海)が初めて1位になったほか、2位は東日本旅客鉄道(JR東日本)、3位には全日本空輸が入った。上位20社を見ると運輸や電力、食品メーカーなど内需型と、銀行や保険などの金融機関が中心だ。
 
一方、上位20社の中で外需型といえるのは、2008年から6つ順位を下げたパナソニック1社(15位)のみになってしまった。
 
そのほかでもソニーは21順位を下げて29位、シャープは41下げて55位、キヤノンは57下落し77位だ。さらにトヨタ自動車は08年の6位から96位に急落し、08年は18位だった日立製作所は、100位圏外に沈んでしまった。
 
ランキングの情景がからりと変わった背景にあるのはもちろん、米国から始まった世界経済危機だ。


人気上位企業も経営安泰ではない
 
2000年代の景気回復局面で日本経済をリードしたのは、主に輸出で稼ぐ自動車や電機などの外需産業。これらのセクターが金融危機をきっかけに始まった米欧の不況で、大きな打撃を受けた。
 
日産自動車2650億円、トヨタ自動車3500億円、パナソニック3800億円、日立製作所7800億円――。いずれも各社が2009年3月期に計上する見通しの連結最終赤字額だ。いくら財務基盤が堅固な大企業とはいえ、これだけの赤字額が明らかになれば、大学生の人気度が下がるのも仕方がない。
 
ただ興味深いのは、それでは2009年度のランキング上位に入った会社が業績堅調かというと、必ずしもそうとは限らない点だ。
 
例えば1位のJR東海は東海道新幹線が稼ぎ頭。景気後退で東海道新幹線の利用者は大きく減っており、09年3月期の連結純利益は2割超の減益になったもようだ。2位のJR東日本、3位の全日空も、同様の影響を色濃く受けている。
 
さらに深刻なのは4位のみずほファイナンシャルグループなどメガバンク。3行とも10位以内に入っているが、株安と不良債権の増加で前期の連結最終損益はいずれも赤字に転落したようだ。
 
リクルートは今回の調査結果を「不況下で学生の安定志向が進んだ」とみている。「赤字や減益であっても、鉄道会社や銀行の方が輸出型製造業よりは安全」というのが、今の大学生の企業観なのだろう。
 
日本経済のリード役が外需型から内需型に移りつつあることは、企業が稼ぐための舞台が「グローバルからローカルに」変わりつつあるということでもある。グローバル化の流れそのものは止められないにせよ、ローカル(国内や地域・地方)で強みを持つ会社を探し出すことが、就職活動のために会社を選ぶ新たな評価軸となる。


各地でトップを占めるローカル企業
 
例えば埼玉県が地盤の食品スーパー、ヤオコー。2009年3月期の連結決算はなんと17期連続の増収増益になったもようだ。単体のみで比較すると20期連続の増収増益だ。生鮮品や総菜を豊富に品ぞろえし、メニュー提案を第一に考えた店舗づくりなどが奏功して、好調を維持している。
 
スーパーマーケットの世界は一般にイオンや西友、ダイエーなど大手のイメージが強い。だが群馬県を地盤とするスーパー、ベイシア(前橋市)の高山正雄社長によると「都道府県別に食品の売り上げを見ると、総合スーパーがトップの都道府県は47のうち7つしかない」という。
 
埼玉県はヤオコー、群馬県はベイシア、山梨県はオギノ(甲府市)、高知県はサニーマート(高知市)というように、各地で「ローカル」スーパーがトップを占める。食品の世界はそれだけ地域性が強く、ローカル企業が強みを持ちやすいということだろう。あらゆる分野でグローバル化は進んでいるとはいえ、ローカルこそ強みになるような分野は、他にも数多くある。
 
ただローカル企業は、トヨタやパナソニックといったグローバル企業と比べれば圧倒的に規模が小さい。元気のいい内需型企業の代表例、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングですら2008年9月期の連結売上高は5864億円と、売上高の規模はトヨタやパナソニックに比べ1ケタから2ケタ小さい。ヤオコーの前期連結売上高も約2100億円だ。
 
企業の評価軸がグローバルからローカルに変わりつつあるのに、大学生の就職志望ランキングに業績堅調なローカル企業がほとんど出てこないのは、その規模が小さいからだ。
 
だが小さいが、ある分野で強みを持つローカル企業はたくさんある。そうした会社を見つけることが、これからの大学生の就職活動には重要になる。


(表)リクルートによる大学生の就職志望企業ランキング(2009年)
1(4) 東海旅客鉄道
2(9) 東日本旅客鉄道
3(1) 全日本空輸
4(3) みずほフィナンシャルグループ
5(20) 三菱UFJ信託銀行
6(2) 三菱東京UFJ銀行
7(17) 東京海上日動火災保険
8(29) NTTドコモ
8(5) 三井住友銀行
10(13) ベネッセコーポレーション
11(7) バンダイ
12(33) 三井物産
13(38) 三井住友海上火災保険
14(24) 日本航空インターナショナル
15(9) パナソニック
16(31) 日本放送協会
16(61) 明治製菓
18(30) オリエンタルランド
18(20) サントリー
20(26) 住友商事
20(11) 損害保険ジャパン
(注)カッコ内は2008年の順位

(2009・4・21)


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