第18回 経営者の年代意識を取り除くことが地方の活性化につながる

果たして40代は若い経営者か
 
地方の中小企業の経営者と話をしているときに、ちょっとした違和感を抱くことがある。
 
それは「○○県の経済を活性化するために、我々40代の若手が、もっとがんばらないといけない」といった言葉が、彼らの口からふと出たときだ。中には「我々40代、50代の若手経営者が」と表現する人もいる。

果たして40代や50代の経営者は「若手」なのだろうか。そんな疑問が頭をもたげ、「若手」という言葉にひっかかってしまうからだ。
 
帝国データバンクが1978年から年1回実施している「全国社長分析」(2007年分までは「社長交代率調査」)という調査がある。全国の114万人あまりの社長(個人経営の代表者を含む)を対象にした2008年の調査では、社長の平均年齢は59歳4カ月だった。
 
日本経済新聞社が2008年上半期の社長・頭取交代を調べた調査でも、新社長の平均年齢は56.0歳だった。こうした数字と照らし合わせてみれば、50代はともかく、少なくとも40代の経営者は「若手」ということになるのだろう。
 
こんなことに違和感を持つのは、首都圏の、それもベンチャーや新興企業の経営者を取材する経験が長かったという、個人的な経験が関係しているからかもしれない。
 
取材対象が急激に若くなったのと実感したのは、インターネットの普及やIT(情報技術)の進展を背景に、IT関連のベンチャー企業が続々と誕生した2000年前後のころである。


30代の記者よりも取材対象が若い時代に突入
 
それまでは、ベンチャーや中小企業の世界でも、主な取材対象は40代、50代、60代で、30代だった自分にとっては、ほとんどが年上の人だった。
 
ところが2000年前後を境に、取材する相手に30代、20代の経営者が急速に増えた。
 
1965年生まれの筆者と同年生まれの経営者には、楽天の三木谷浩史社長、インテリジェンスの鎌田和彦相談役(前社長)、サイバードホールディングスの堀主知ロバート社長らがいる。
 
こうした同年代、2000年当時は30代半ばの経営者が目立ち始めたことを頼もしく思っていたら、サイバーエージェントの藤田晋社長やライブドアの堀江貴文氏など、さらに一回り若い20代の経営者も登場し始めた。
 
そうしてわずか数年が経った2002~2003年頃には「取材対象の半分以上は年下」という状況に変わっていた。
 
ところが2004年に地方に転勤してみると、状況はまた逆戻りしてしまった。経済でも行政でも、主役となる人はほぼ50代以上。取材対象となる人に、同年代より下の人がほとんどいない。
 
最初は、その地域の中に同年代や、年下の世代が単純に少ないせいかもしれないとと考えた。だが取材対象が少しずつ広がるにつれ、必ずしもそれだけが理由ではないことが見えてきた。
 
例えば青年会議所(JC)の会合に出席すれば、30代の元気な若手経済人に会える。地方でも、30代以下の若い世代が経営するベンチャー企業がないわけではない。それなのに全体として見ると、40代以下の世代はその上の世代の陰に隠れ、取材対象とはなりにくいのである。


自分たちが若いと思った時点が「年寄り」
 
その原因の1つは、特に地方では30代、40代の経営者が「年功をわきまえている」点にあるのではないか。
 
地方の若手経営者は、もちろん自分で起業をした人もいるが、大半は地場企業の2代目や3代目といった人たちだ。親が社長で自分は専務・常務クラス。あるいは既に社長には就いていても、商工会議所や経営者協会など経済団体の活動は親に任せているというケースもある。
 
そうした環境の中で、30代、40代の経営者は「自分の分」をわきまえ、50代、60代、70代の「親世代」が第一線を退いたときには自分たちが地域の経済の最前線に立とうと考えている。そして、第一線にいる高齢の経営者達は1つ下の世代の経営者について「まだまだ力が足りない」と考えたりしている。
 
「我々40代の若手が、もっとがんばらないと」という言葉は、確かに前向きの言葉だ。だがよく考えてみれば、自分たちを「若手」ととらえている時点で、年代の枠にしっかりと収まってしまっている。「自分たちはまだ40代、50代だから」というような「年功序列意識」が、その言葉の中には隠されていないだろうか。
 
経済が右肩上がりで順調に成長する時代ならば、「年功序列」も悪くはない。しかし世界金融危機のもとでこれまでの常識が通用しなくなった今の時代には、経営者の年功序列意識はじゃまだ。
 
日本や地方の経済が、今ほど「新しいもの」を必要としているときはない。経営者が年功序列意識を捨て、年齢に関係なくものを言い、よいものはよいと認め合うこと。まずはそこから始めてみては、どうだろう。

(2009・3・18)


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