第12回「NPO法人ができて10年」で明らかになった数の多さと貧しさ

「民が担う公」NPOの可能性
 
先日、市民ボランティアが森林を間伐し、運搬や販売まで担う活動を四国でしている特定非営利活動法人(NPO法人)の話をうかがう機会があった。

このNPO法人は森林所有者などから委託を受けると、数十人のボランティアが人海戦術で森林を伐採する。使う機械は森林組合が持つプロセッサー(枝払い玉切り装置)などの大型機械ではなく、チェーンソーや小型木材運搬車など小規模なものだ。
 
収集した木材は高品質なものは市場で販売し、低いものは木質バイオマス(生物資源)発電施設や木質ペレット工場向けなどに持ち込んで売る。
 
ボランティアの参加者には作業量に応じて「地域通貨」を分配。地元の商店でも使えるようにすることで、森林環境の保全とともに、地域経済の振興にも役立つという仕組みだ。
 
面白かったのは、このNPO法人が活動を深めていくにつれ「県や森林組合などとぶつかる場面が増えてきた」(同法人の事務局長)という話だ。 
林野庁や自治体は現在、林業の大規模化を進めようとしている。間伐についていえば、小規模の森林所有者の土地をまとめ「団地」にして林道を整備し、大型機械を使って大規模に伐採する手法だ。
 
一方、このNPO法人が使う機械は小型のもので「地域に密着した小回りのきく小規模林業」を目指している。「我々の実践で小規模な自伐林家でも、ある程度の収入が得られることが見えてきた。それが大規模化を目指す森林組合などは気に入らない」のだという。
 
大規模化がいいのか、小回りのきく小規模林業がいいのかは、森林の特徴や地域の実情によっても違うので、一概には結論づけられないだろう。
 
ただNPO法人の活動によって、自治体など「官が担う公」だけではなく、NPO法人という「民が担う公」の可能性が見えてきた点が興味深い。NPO法人やボランティアの活動がなければ「日本の林業は大規模化なくして生き残れない」という考え方一辺倒になっていたはずだ。


雇用の担い手にならない日本のNPO
 
12月1日は、今は一般にNPO法人と呼ばれるようになった「特定非営利活動法人」の制度が、施行から10年を迎えた日だった。
 
同制度ができた背景には、1995年に起こった阪神・淡路大震災がある。震災発生後の緊急支援や震災復興の過程で、多くのボランティアや非営利組織(NPO)が活躍した。
 
これらの活動が契機になり、国会議員の間で、NPOが法人格を取得する手続きなどを定める法律などを、議員立法で制定しようとする動きが活発になった。こうして98年の3月に「特定非営利活動促進法(NPO法)」が成立し、12月に施行された。
 
内閣府によると、NPO法人の数は9月末現在で3万5659にもなる。法施行から110年が経った公益法人は約2万5000、社会福祉法人は約1万8000だから、その多さがわかる。
 
だがその活動は順調とは言い難い。冒頭のような例は、そう多くはないのだ。 
大阪大学NPO研究情報センター(大阪府豊中市)がまとめた『NPO白書2007』によると、事業収入が年間500万円未満のNPO法人が、全体の74%を占める。一方、NPO法人のスタッフが受け取る年間収入については、全体の38%が100万円未満で、300万円以上を得ている人たちは14%に過ぎない。
 
つまりほとんどのNPO法人は継続的に寄付金を集めたり、収入を得たりする手段が乏しいために、スタッフにきちんと給与を払うことができていない。「やりがい」を求めNPO法人で働きたいと考える若者は増加傾向にあるのに、日本のNPO法人は米国のような雇用の担い手には育っていない。
 
衆議院議員の市村浩一郎氏が最近出版した『日本のNPOはなぜ不幸なのか?』(ダイヤモンド社)を読むと、特に福祉分野などで、日本のNPO法人がいかに「報われない」状態にあるかがよくわかる。「事務局長の月給は3万円」といった話を聞けば、好んでこの世界に飛び込みたいと考える人はわずかだろう。


ネットワークで拡充するかNPOの将来
 
だが、こうした状況を改善しようとする動きも生まれつつある。議員インターンシッププログラムなどを手掛けた佐藤大吾氏らが設立したNPO法人のチャリティ・プラットフォーム(東京都港区)がそれだ。
 
同法人はまず(1)広く一般から寄付を集める意思がある(2)事業目的・目標・計画が明文化されている(3)決算報告書や事業報告書が公表されている――などを基準に、信頼のできるNPOを約100選び出し、それをウェブ上のデータベース 「CharityNAVI(チャリナビ)」として公開し始めた。担当者が直接面会したNPOは2000を超える。
 
同法人はNPO法人を自ら助成するだけでなく、個人や企業からの寄付金集めも支援する。「NPOに少しでもかかわりたいと考えている個人や企業と、資金を必要としているNPO法人を結びつけたい」と佐藤氏は話す。
 
NPOは利益を優先せず、社会的使命を第一の目的として活動する組織だ。だがそれだからといって、資金を集める仕組みがなければ、その活動は続かない。NPO法人に寄付する人が優遇される税制の拡大など税制面での課題はあるが、まずはチャリティ・プラットフォームのような活動が広がることを期待したい。

(2008・12・2)


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