第9回 水に溶けないチタンだって溶かせた。 常識に頼るな、知識にすがるな。(後編)

ファイテン株式会社 代表取締役社長平田 好宏 氏ファイテン株式会社 代表取締役社長
平田 好宏 氏

聞き手 松室哲生(おもろい会社研究所主幹)

――ところで、選手のケアとは具体的にはどういうことをするのですか。

【平田】選手専属のトレーナーと我が社のボディケア・スタッフとで選手のコンディションをみています。以前ですとアクアチタンを使ったボディケアの効果を認めないというトレーナーも中にはいましたが、素手だけのケアとアクアチタンを併用したケアとの効果の違いを選手たちに実感してもらったことで、受け入れられるようになりました。
 
昔、私は料理人になるための修行をしたことがありますが、料理人の作る料理とこうしたケアとは同じようなところがあります。要は、評判がどうのという尺度ではなしに、相手に心から受け入れられるかどうかというところが重要なわけです。相手が望んでいる美味しい料理を、いいサービスと納得できる料金で提供できるかどうかで決まります。

――効果といっても目に見えない。医薬品として日本の厚生労働省の認可も受けていないので効能もうたえない。商品説明はどのようにしているのですか。

【平田】基本的なところはおさえていますが詳しい商品説明はあまりしません。知識よりも何より、実感のほうが大切でして、たとえば中国の漢方薬のように経験的にいって効能がある、目に見えない分野なのだと説明しています。
 
ただし現実には、ドイツの医学者によって、アクアチタンが正常な神経細胞には影響をあたえずに、神経の異常な興奮を抑える働きがあるという研究論文が発表されました。たとえば、自動車事故によるむち打ち症などで、いちど神経が異常に興奮してしまうと、次は小さな刺激であっても興奮が収まらなくなるといった現象がアクアチタンによって抑制されるという効果です。

――いわゆる古傷が痛むのを抑えられるというわけですね。

【平田】トップアスリートほど、体に負荷をかけ続けているわけで満身創痍というのが当たり前ですから、彼らほどその効果を実感できる人たちはいません。われわれ一般人であっても、日々のストレスによる神経の興奮をとることによって、よく眠れるようになったという例もあります。

――それにしても「チタンを水に溶かした」という事実は大きい。

【平田】一般に、効果を認めても一方で、どういう技術なのか、一体何が入っているのかということにとてもこだわる人がいますから、チタンの水溶液を作ったのだという事実には強い説得力があります。


常識に頼らない。知識にすがらない。

――まさかチタンが水に溶けるとは思いませんでした。

【平田】逆に私はチタンが水に溶けないとは知らず、なんだか溶けそうな気がしていました。ここが素人の発想の凄いところです(笑)。
 
金属の専門家に聞きにいくと「何を馬鹿なことをいっているのだ」相手にされませんでしたが、うちの開発部門は専門家の意見にひるみませんでした。チタンに取り組む以前の実績もありましたので、文献を調べ、工程を作り、基礎実験を繰り返して、やっとチタンを溶かすことができたのです。それでパテントを申請するために特許庁に行くと、今度は門前払いでした。以前から特許申請には行っていましたのである意味顔見知りだったが、彼らが申すには「我われはどんなに奇抜な特許申請でも真摯に検討するがウソだけは駄目です」というのです(笑)。
 
それまでの常識では、チタンは錆びない。錆びない金属は絶対に溶けないというのが通説でした。困って、弁理士とも相談し、実際にチタンが溶けた溶液を提出してようやくわかってもらいました。ただチタニウム水溶液ではなく「超微粒子分散水」という名称をつけられました。単なるコロイド分散では、水に溶けた絵の具が時間とともに上下に分かれて分離してしまいますが、砂糖水といっしょで上と下の濃度がいつまでも変わらないものを超微粒子分散水といいます。

――さらに錆びにくい金や銀などの金属も水に溶かして、その技術を取り入れた商品開発にも力を入れていますね。

【平田】日本においてはラクワネックなどのアクセサリーよりも、素材メーカーとしてのファイテンのほうがこれからは面白いかも知れません。
 
金の溶液のアクアゴールドは、大手化粧品メーカーとコラボレーションしていますし、住宅の壁紙や塗料などもメーカーと共同して開発しています。そのほかにも水耕栽培などの農業利用、鶏卵の飼育、醸造酒などにも利用されています。

――一言で開発するといっても、それには大変な苦労がつきものです。実際にはどのようなプロセスで行なわれたのでしょうか。

【平田】アクアチタンでは、真水にチタンを溶かすビーカーワークに半年、溶液を目に見えるほど濃くするに半年、安定溶液にするのに半年かかりました。それをラクワネックなどの製品化まで持っていったので、全部で2年かかっています。
 
そうした実験、研究、開発のプロセスにおいて一番重要なのが開発者の意欲です。開発費よりもなによりも必要なのが開発者の情熱で、それが冷めないようにいろいろとアドバイスするのが私の役目です。さまざまな技術を習得する過程において、現代科学の延長線上でイメージすることを「知識汚染」といって注意しています。やってみなければわからない、何ができるかわからないのがよくて、常識に頼るな、知識にすがるなと常日頃からいっています。

――素人の発想を大切にということですね。これからのファイテンについてお伺いします。

【平田】米国のメジャースポーツのNFL(ナショナル・フットボールリーグ)とNHL(ナショナル・ホッケーリーグ)のライセンス契約を3年以内にとる予定でいます。
 
日本では、モノを作って提供するファイテンから少しはなれて、健康になる時間を提供するような会社、汗を流して努力するトレーニングではなくて、楽しいから行きたくなるようなジムなどを作りたいですね。来年には京都にそうした構想をもとにしたサロンの第一号店が完成する予定です。


2008年11月 月刊『エマージング・カンパニー』誌の取材にて


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