【第58話】ネットを知り尽くした元決済代行会社が行き着いた究極の電子書籍販売

株式会社インフォトップ

意外な会社の電子書籍販売参入

今年のブックフェアはさながら、電子書籍フェアの様相を呈した。中でもひときわ異彩を放ったのは、とあるブースだった。このブースは多くの出展者と違い、本の中身や電子化の技術をアピールせず、ひたすらどうやって売るのかをテーマに掲げていた。ある大手出版社の営業部長は、そのブースを見て面白く思い、後日、その担当者と会ってある契約を行なったという。

それは、自社が発行する高額で少部数の雑誌を電子化し、その会社のサイトで売ることにしたのである。

この会社はインフォトップという。

もちろん一般的には全く無名の存在だ。そんな無名の会社がなぜ出版業界に打って出ようとするのか。

まずは、同社がどのような計画を持っているのかを見てみよう。構造は簡単である。各出版社の書籍(あるいは雑誌)を同社の負担で電子化する。そして同社のサイト上で販売する。同社のマージンは15パーセント。残り85パーセントは出版社の取り分である。正確にいえば、インフォトップはその中から決済手数料を負担するから、実質的には12.8パーセントであり、出版社側はこの本をサイト上で売れるように働きかけてくれたアフィリエイターにマージンを25パーセント支払うことになっている。つまり出版社の実質取り分は60パーセントということになる。

それでもこれは出版社にとってはかなりいい商売であり、逆にいえばインフォトップはこれで商売が成り立つのだろうかと、老婆心ながら思ってしまう。
「うちはもともと決済会社からスタートしています。だからすでに低マージンでも利益を上げる仕組みができていますし、すでに本業で実績をあげていますから。他社がこんなマージンの体系で参入しようと思ってもできないでしょう」と、社長の田中は事も無げだ。


宣伝販促部員を20万人も抱える販売会社

ここで同社の本業について触れる前に、出版社が売り上げの25パーセントを支払うアフィリエイターについて説明しておかねばならない。これが同社の本業部分の根幹でもあるからだ。アフィリエイターとは、正確にはアフィリエイト (affiliate)と言い、Webサイトやメールマガジンを運営する人が、その中で企業サイトへリンクを張り、読者(閲覧者)がそのリンクを経由して当該企業のサイトで会員登録したり商品を購入したりするような仕組みを作ること。この成果によって、サイトやメルマガの運営者に報酬が支払われるという仕組みのことだ。主婦や学生、サラリーマンの副業が多く、人によってはこれを本業にし、年間数千万円稼ぐ人もいるといわれている。

実は、インフォトップは、こうして活動するアフィリエイターを20万人抱えているのである。この数が多ければ多いほど、当然商品を宣伝してくれる人も多いわけだから、販売も伸びることになる。ネット上の販売はこのアフィリエイターの数と影響力が決め手なのである。

さて、同社の本業は教材販売である。教材といっても普通の教材とは少し違う。一般の人がワードやパワーポイントで自分の専門分野について書いたことを同社のサイトに掲載し、ダウンロードで販売する、という仕組みである。つまり自費出版のネット版というわけだ。紙での自費出版は大手から中小まで数多く存在し、それなりの費用がかかるが、この場合著者は自分の書いたものをのせるだけだからコストはゼロ。売れた分だけ先ほどの電子出版とほぼ同じ仕組みで収入となる。

ここで力を発揮するのがアフィリエイターである。彼らはこの出版物を宣伝することで、マージンを得ることができる。したがって、本の著者も多く売りたいと思えば、アフィリエイターのマージン率を上げれば、その可能性は高まることになる。要は、自分で商売の組み立てを考えることができるのだ。

電子書籍の裏にあるものを売っていく

インフォトップはこの方式で2006年に創業された。初年度の売上は50億円。以降前期が90億円、今期(7月末)が97~98億円(グループ会社を入れると100億円超)というからその成長力は凄まじい。
「粗利は10パーセント程度。経常利益で今期3億円程度(田中)」と薄利多売のゆえ利益率は低いが、それでも社員数も多くなく十分に会社としては利益も上げているわけだ。

て、同社の新事業・電子出版であるが、現在同社は9月末のオープンを目指している。システムは8月中に開発を終え、その後テストマーケティングを行なう。現在30社弱の出版社と話を進めているというが、ポイントはこれからだ。それは出版社の旧態依然とした体質とプライドの高さを同社が説得できるかにかかっている。

現在多くの出版社が電子化に取り組んでいる。雑誌でも書籍でもとにかく電子化していかなければ大きな波に取り残されるという危機感がそうさせているのだろう。大変なブームと言ってもいい。しかし、現状でいえば電子化に舵を切ることは多くの出版社が現実的でないとも感じている。なぜなら、一方で紙の出版物を大量に発行しており、この流通ルートをどうしていくのか、倉庫はもちろん、市中にも大量に存在する在庫の問題をどうクリアしていくのか、誰も見えていないからだ。そのうえに古い体質とプライドの高さが乗っかってくるから大変なのだ。

しかし、光明がないわけではない。それは同社が単に書籍の販売だけを考えているわけではないからだ。
「仮に坂本竜馬の本があったとしましょう。そこから連想されるものを裏側で販売していくんです。例えば歴史ツアーであるとか、暗殺される前に食べようとした軍鶏鍋のセットであるとか(田中)」

つまりこれから派生するイーコマースを同時に念頭に置いているのである。
「電子書籍販売の次は本格的にECの市場に参入したいし、書籍を売ることでまた関連する教材が売れるかもしれません」と田中はその将来性を語る。

あながち法螺でもない。今までも実績が伴っているのだから。

(2011・7・27)


トップページ -> なぜこの企業が凄いのか -> 【第58話】ネットを知り尽くした元決済代行会社が行き着いた究極の電子書籍販売