【第51回】愚直さと先見性とで周到なWeb戦略を構築するコンサルティング会社

デジタルワン株式会社 

コンサルした企業は確実に売上げ伸長
 
新聞やテレビ、雑誌など既存広告メディアが急速に力を失いつつあるなかで、勢いを増しているのがインターネットというメディアであることは今や小学生でも知っていることだが、実はその最大の効果は「広告」や「販売」ではなく「販売促進」にあるという現実は、認識されているようで案外無視されていることかもしれない。

「ネット広告」や「ネット通販」という言葉のなかには、実は「ネット販売促進」という要素が含まれていて、サイトというのは「イベントの場」であったり「店頭」であったりするのだ。店頭だったら販売員が声をかけるだろうし、お客の顔色を見る。商品にはPOPをつけて、魅力を柔らかな言葉で説明するだろう。だが、このサイトを紙の延長線にあるもののように考えている人が、まだまだ多いのが現実である。
 
そんななかで、この種の考え方をはっきりと定め、ビジネスとして実行している会社がある。それはデジタルワン(株)という会社だ。
 
デジタルワンはコンサルティング会社である。何をコンサルティングするかといえば、ネットでいかに売上を上げるかについてである。このことにこだわって、そのためにはありとあらゆることを考え実行し、そして成果を上げる。同社ではこれを「e販」と呼んでいる。
「ウチは単にサイトを作るということはやりません。Web戦略を立て、事業計画や予算の設計を行ない、その後Webの企画設計を行ない、その上で制作します。重要なのは新しく構築したサイトをリリースした後のフォローです」と語るのは同社の創業社長、中谷泰志である。リリースした後のフォローとは、つまるところ最初に立てた事業計画が予定通りにいっているかのチェックであり、うまくいっていなければ改善していくというもの。多くの同業者が作りっぱなしであることを考えれば、これは希有な例といっていいだろう。なにせ、収益に責任を持つということなのだから。
 
これが同社のいうコンサルティングなのである。


ユーザーに同行してまで行動調査を行なう
 
同社のコンサルティング成功例はさまざまだが、特に大手K書店の例はなかなか興味深いので紹介しよう。
 
K書店のウェブサイトによる販売事業は96年にスタートした。ところが2000年にアマゾンジャパンが設立され、後じんを拝するようになった。売上げは数億円しかない現状から、何とか売上げを上げるサイトのリニューアルを求めていたのである。
 
結論からいえば、このリニューアルによって売上げを従来の140%にまで伸長させた。
 
では、何を行なったのか。そこに同社の秘密がある。秘密といっても愚直なまでの理詰めの方法である。
 
まず同社が行なったのは、既存サイトの分析だった。売上げ規模、ユーザーのアクセス状況、ユーザーの層や質......。こうした分析から、ユーザーをヘビーから休眠まで分類し、男女比、平均年齢なども把握した。もちろん購買理由や休眠ユーザーがなぜ購入しなくなったのかといった理由も俎上に載せた。
 
面白いのは、こうして分析した結論から、ユーザー像を導きだしたところにある。例えば、平均年齢43歳。男子で既婚、子供2人といった具合だ。ここで重要な点は、これがアンケートなどによる平均値から導きだされたユーザー像ではないという点だ。あくまで、実在する一人の人物からユーザー像をあぶり出したのである。
 
そして今度は、そのユーザーの行動を徹底的に洗い出す。例えば、ヘビーユーザーが実際のお店ではどんな選び方や買い方をするのか、同行して徹底的に調査した。その客の生の声はもちろん、1日の生活パターンまで徹底して調べた。
 
また同時に書店の店員にもインタビューし、自店の強み、商品の訴求方法などを細かく聞き出した。もちろん同業の他店にも足を伸ばし、何が違うのかも調べた。こうすることで、自ずと他社との差別化のポイントも浮かび上がってきたというわけだ。
 
そして、最終的にWeb戦略を立案したのである。
 
面白いのは、例えばK書店では、店内での特徴の一つに、注目書籍には軒並み手書きのPOPを立てているということがあった。一方、ユーザーの同行調査からもこのPOPを見て買う頻度が高いことを知った。そこで、その機能を工夫してWeb上に展開したことである。


日本のECはまだまだ伸びる
 
同社は前述したようなユーザー像や自店の特徴などを徹底して調べ、把握することを「ジツザイ化」と呼んでいる。この作業は書いてしまうと、簡単な作業のようにしか見えないが、実際には手間と根気を要するのだ。
 
これと似た作業は、例えば新雑誌の創刊などでも行なわれる。読者像を前述したように「平均年齢43歳。男子で既婚、子供2人」と決めたら、その人の特徴を徹底して洗い出し、趣味や持ち物から1日の生活パターンまで把握した上で、雑誌の企画内容を導きだしていくのである。
 
もしそれが曖昧だと、決していい雑誌は生まれない。逆にいえば、この作業を徹底して行なうほど、ユーザー像が「ジツザイ化」してくるのである。
 
同社はこうした説得力のある実例を紹介するセミナーを定期的に行なっている。もちろん入場無料。集まった人たちの90%以上が納得し、顧客予備軍として帰っていく。
 
考えてみれば、エレクトリック・コマース(EC)が本格化してまだ10年足らずである。多くの企業がホームページや通販サイトを作っても、それが本当に機能しているのはごくわずか。成熟化していくのはむしろこれからである。
「日本のECは対前年比で 21.7%伸びて 5.3兆円になりましたが、日本の小売り全体では135兆円です。だから、まだまだ伸びる余地がある(中谷)」のだ。


コンサルから一歩進んでパッケージ販売
 
しかし、考えてみれば、ここまでWeb戦略を知りつくし、調べ尽している同社がコンサルティングだけを行なっているのはもったいないという気にもなる。なぜなら、これらのノウハウを使えば、自社でビジネスができる素地が十分にあるからだ。
 
このことを中谷に問うと、あくまで事業計画からフォローまでというオールインワンのコンサルティングに拘る姿勢は示しながらも、新たな展開を模索している点も披瀝してくれた。その一つが業界別のパッケージ化。
 
例えば歯科医向けには、あらかじめ調べたノウハウに基づいて『だれでも!歯科サイト制作』というパッケージを作り、2009年3月から販売をしているのだ。
 
なぜ歯科医かといえば、「全国に約6万8000軒の歯科医が存在し、HPの普及率が30%と低い業種だから(中谷)」だそうだ。あくまで周到な戦略に基づいて行なっているのだ。
 
同社の設立は2004年12月。社長の中谷は富士ゼロックスでトップ営業マンであり、同社の第一選抜で進んできた男である。しかし2001年に、後に日本最大の壁紙サイトとなる壁紙ドットコム(株)を設立し、その後東証一部のグローバルメディアオンライン(株)の営業担当取締役として活躍してきた。ネットビジネスを裏も表も知りつくした男といっていいだろう。だからこその同社の戦略なのである。
 
ネットビジネスが普及し、この分野でもSEOなどで顧客の注目度を高める戦略はずいぶん構築されてきた。しかし、今後ネット戦略がますます重要なファクターになるに連れて、同社のようなきめ細かく、しかも地に足の着いた戦略の構築が求められてくるに違いない。
 
そういう意味で、同社は間違いなく時代の先頭を走っている会社である。

(2010・1・13)


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