【第5回】「夢を形にする」ことで、地方再生を実現していく不思議な会社

(株)アスクプランニングセンター

大阪に平成京を作るという男
 
経営者に必要なものの一つに「夢を持つ」ということがある。もちろんどんな夢でもいいわけではなく、自らの事業をどのように展開していくかということについての夢である。多少理屈っぽく言えば、その夢は、社会に対してどれだけ役に立つか(価値があるか)という視点が必要である。またその構想は大きければ大きいほどいい。その視点で企業を見ると、意外に夢のある企業が少ないことが分かる。

(株)アスクプランニングセンター、というよりは代表取締役社長の廣崎利洋は、そういう「夢」を実現していくパワーを持った一人だといえよう。
 
(株)アスクプランニングセンターとはどんな会社か。一般的な知名度はないが、この数年、東京の銀座や表参道に次々にできるブランドビル----その多くを手掛けている空間プロデュース会社といえば分かりが早いだろうか。40代以上の人にはこう言えば馴染みがあるかもしれない。その昔、表参道で注目されたファッションビル「ビブレ」を手掛け、DCブランドのビルを全国各地に作った会社である。
 
その社長の廣崎にこんな話を聞いたことがある。
大阪の地盤沈下がはなはだしい。今や、一地方都市に過ぎないと多くの人がいう。その大阪を、平成の都「平成京」として復活させたいと言ったのである。
 その趣旨はこうだ。大阪駅裏側の旧国鉄操車場跡地、約7万2000坪を再開発して巨大なオフィスビルを建設し、そこに御堂筋にあるオフィスビルをすべて移転させる。
 
その空いた御堂筋をパリのシャンゼリゼに匹敵するような世界中の人が集まる街区にする。境筋や四ツ橋筋から、その街区に合ったテナントを集め、空いた境筋に谷町筋の人たちを入れ、空いた谷町筋には森を作る。国際学校を作る。きちんとしたプランでそれらを行なえば、大阪は平成の都として復興する、というわけだ。
 
この話を聞き、最初は単なるデモンストレーションかと思ったが、学者や経営者を巻き込んでシンポジウムまで開いてしまい、それを一つの本にまとめた。単に、馬鹿な夢と片付けることはできまい。それより何より、当の廣崎が大真面目だったのである。


背水の陣を引いてでも、考えを実行に移す
 
アスクが注目されたのは82年。先述したファッションビル「ビブレ」が最初だろう。旧ニチイ(その後マイカルに社名変更し破綻)に提案して東京の表参道に作った。当時は商業施設の設計デザインを手がけていたのである。
 
現在のアスクはちょっと違う。近年は大幅に業務の幅を広げている。
 
その魁になったのが、マイカル破綻後、ビブレ跡地に開発したファッションビル「エスキス」だ。同じファッションビルでどこが違うのか。
 
一言でいえば、現在のそれはスペースプロデュース事業。周辺の地域をしっかりとマーケティングし、その地域に足りないものは何か、どうしたらそのビルが地域に溶け込んでいけるかを考え、自らビル全体のプランニングをするということだ。どの階をどういうコンセプトにするか、どういうテナントが必要かまで練り上げ、しかもそのテナントを引っ張ってきて、ビルが出来た後も運営を行なう。当然テナントの入れ替えも行なう。こうすれば、そのビルの独自性が出るし、何より地域に必要とされるビルになる。ビルの価値も上がり投資家も満足する。
 
さらにいえば、こうした事業で必要な資金調達に際してファンドを組成する際は、エクイティの劣後部分はアスクで引き受ける。いわば背水の陣を敷く。「ハイリスクだが、自分たちがやっているのだから自信はある。リターンは大きい(廣崎)」のである。


大手では成し得ない「地方再生」のモデルを作る
 
こうしたスペースプロデュース事業では、地方都市からもこの都市をどうにかしてほしいという依頼が舞い込む。近年、九州小倉駅前のそごう跡を「セントシティ北九州」として蘇らせ、福岡博多の中心街中洲の福岡玉屋跡を「ゲイツ」として開発した。また、昨2007年9月には青森浜田3丁目に「ドリームタウンAli(アリー)」の第一期開業を果たした。
 
地方だけではない。東京では銀座の「シャネル」を手がけたし、渋谷「12ヶ月」ビルの跡地も開発した。
 
もちろん、こうした事業を進めれば進めるほど、不動産業に近くなり、結果として景気の波を受けやすいのではないかという懸念も生じる。
「アスクの手がけている案件は常時30くらいあります。でも、1年に出来るのはせいぜい4件。仕事があるからといって会社を大きくしない。あくまでブティック企業としてやっていく(廣崎)」というのが方針で、しかも、こうした事業はいわゆるフィービジネス。リスクを最低限に抑えてもいる。
 
さらに廣崎は続ける。
「人口30万人規模の地方都市には森ビルも三菱地所も行かないでしょ。でもそういう都市にもよく見るとパワーがあるんです」そこを考えて都市再生を行なえば、地方も絶対蘇るというわけだ。「しかも、われわれは今でも本業のスペースプランニングにこだわっている。利益の額は小さくてもそれを積み上げると大きい。米櫃です(廣崎)」


「ビジョナリー経営」を地でいく
 
アスクの2007年度(2007年12月期)の売上は連結で105億円、経常利益は20億円(いずれも予定)だ。前期比では売上が129%、経常利益は260%と伸張する。
 
こう書くと、同社は極めて順調に成長したかのように見えるが、過去に辛酸をなめている。
 
まず、上場前の85年12月、役員を含む幹部、中堅社員が10数人もが辞めた。売上も大幅に減少した。だがここからが廣崎の真骨頂で、そのとき上場を決意した。そして3年後に店頭公開を果たしたのである。バブルのときも相当に痛手をこうむったが、それでも創業以来34年間経常黒字を続けている。
 
このアスクのパワーは何か。実は同社の源は人材にある。例えば、創業以来続けている新卒採用がその一つだ。「ウチのビジョンを新人から叩き込む(廣崎)」と簡単に言うが、創業時から新卒を採用するということだけでも、なかなか難しいことは、事業家なら分かるだろう。そのうえに、同社では毎年全社を挙げて3日間のスポーツイベントを開く。野球では廣崎自らマウンドに立つ。実力で勝ち取ったそうだ。こうした活動の中で、同社のDNAが育まれていくのである。
 
前述した、「平成京」を含めて、このようなことを考え実行している会社は滅多にない。
「ビジョナリー経営」という言葉があるが、廣崎はまさにそれを地でいっていると言えるのではないだろうか。

(2008・1・7)


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