【第47回】障害者専門の人材・転職情報サービスで急成長した経営者の「理念」

株式会社ゼネラルパートナーズ

障害者を雇うための情報がない時代があった

NPO(非営利団体)という言葉の普及が象徴するように、社会貢献という言葉が一つの運動体としてとらえられるようになってきた。日本はそれでもまだ普及が低く、米国では総就業者数の11%がこうした団体で働いている。

このような状況のなかで異彩を放っている会社がある。株式会社ゼネラルパートナーズという会社である。同社は障害者の就職や転職を主事業とする会社。2003年に設立され、今年で7年目に入った。
 
障害者の就職といっても、そのような人たちを雇用するマーケットがあるのかどうかも知らない人がほとんどだろう。現在日本では障害者雇用促進法によって、一定の割合で障害者を雇用しなければならないことになっている。この数字が1.8%。つまり全従業員の1.8%を企業は雇わなければならないというものだ。言いかえると56人に一人ということだから、中小・零細企業ではなく、必然的に中堅企業から大企業がその適用を受けることになる。
 
同社が設立された当初は、企業の対応も漠然としたものだった。なぜなら雇用の義務があるとはいうものの、実際にはどのようにして雇用すればいいのか、どこで人を探せばよいのか、といった初歩的な対応すら分からない企業が多かったからだ。
「実際には、何も整備されてなかったというのが当時の実情だったでしょう。唯一の情報源はハローワークでしたが最低限の情報だけで、どの障害なら受け入れられるのかといった情報すら開示できないという有り様でした」と語るのは、同社創業者で代表取締役社長の進藤均である。
 
健常者でも、情報が少なければその会社が考えている条件は分かりにくい。ましてや障害者の場合、障害の状況や程度によって、できる仕事とできない仕事が存在するし、その会社がどういう体制で受け入れようとしているのかも重要なポイントだ。
「このギャップを解消しないと、雇う側も雇われる側にも無駄が発生する。でも恐らくハローワークとしては、傷害の度合いによってあらかじめ制限をつけるようなことは載せたくない、などと考えたんだろうと思います(進藤)」
 
だからこそ、進藤はこの事業を始めたのだろうし、またここにビジネスとしてのチャンスもあると考えたのだろう。
結果としていえば、この事業は創業初日から盛況だった。登録者はいない、ホームページもない、あるのは電話だけ。その電話だけで営業に行こうとアポをとると、いきなり注文が舞い込んだ。
 
その細かな話は後に譲るとして、その後同社は順調に発展し、昨2008年度(2009年3月期)売上高は6億9000万円、経常利益8300万円にまでなっている。


もっと喜ばれる仕事でないと面白くない
 
進藤が、なぜこの事業を始めたかについてはさまざまな経緯がある。そもそも商売の家系だった進藤は、小さい頃から将来は自分で何か商売をやろうと漠然と考えていた。
 
大学を卒業した進藤が選んだ道は、大手住宅メーカーの営業職だった。
「住宅の営業は難しいんです。まだできていないものを、しかも高額なものを売るわけですからね」と進藤は当時を述解する。「当時は3年くらいで起業しようと思っていた。だから1年目から生意気なことを言っては先輩の顰蹙を買っていた(進藤)」とも。
 
しかし有言実行で、4年目にトップセールスになった。そこで起業しようと思い立ったがやはり何をやっていいのか分からなかった。
「家を売ることに専念しすぎて、社会のことがよく分かっていなかった(進藤)」のだ。
 
きっかけはほんの小さなことだった。当時実家は保育園を経営していた。共働きの家庭が増え、延長保育などで保育士が足りなかったときに、親から「2~3時間派遣してくれるようなところはないか」と問われたのだ。当時人材派遣業が急成長していたこともあり、これはと興味を持った。しかし計算してみたら、まったく商売として成り立たない。しかし、この事業は人に喜ばれる仕事かもしれないと考え、インテリジェンスに入社した。まだそれほど規模が大きくもなく、人材が面白そうな会社だったからだ。
 
人材派遣の営業は、いろいろな会社を見ることができ勉強になった。組織のあり方、人の使い方も学んだ。しかし、人材派遣の仕組みはいい仕組みではないと感じた。なぜなら、これは企業にとって便利な仕組みだからだ。大きな収益性があるわけでなく、しかも労働者のマネジメントも大変で、その労働者に幸せを作れていない。
「もっと喜ばれる仕事でないと面白くない」と考えた進藤の出した結論は、「社会貢献」だった。
 
そんなとき、NHKの番組を見た。ヨーロッパのとあるレストランで、聴覚障害のウェイトレスがすごく自然に働いていたのだ。日本もこうなったらいいのになぁ、と思った瞬間気がついた。身近にこんな問題があったのだ。これだ! と閃き、現在のビジネスにまい進する結果となった。


障害者のよき認知を広めるという命題
 
同社は、今年の8月後半からモバイルによる情報提供を開始した。この反響が凄いのだという。それまでの月間登録者数は平均500人程度だったのが、このモバイルへの参入により一気に1.5倍に増え、700~800人になりつつあるという。現在の総登録者数は15000人を超え、まさにこの分野の一人者的存在になっている。
 
そんな同社の理念は、「障害者のよき認知を広める」ことだという。簡単に言うと、障害者のことをもっと知ってほしい!ということなのだ。
「障害者のことを知らないために偏見があるなら、それをなくしたい。だから知ってもらうということをやりたい」と進藤は熱く語る。
 
それでも、環境も企業の対応もこの創業後の6年でずいぶんと変わったという。同社では求人情報や人材紹介サービス以外に、年間5回程度、イベントを行なっている。企業がブースを出し、障害者が仕事を求めてくるマッチングイベントだ。そのパンフレットを見ると、企業紹介が実に細かく書かれてある。なかでもアイコンによって、「新卒で募集」「中途社員で募集」「正社員採用」「透析の配慮あり」「電話対応の配慮あり」「車椅子就業可能」「自動車通勤可能」「就業時間の配慮あり」などと細かい。企業によってこのアイコンの数も掲載されている項目も異なるわけだが、これこそ、進藤が当初ハローワークで感じた「情報のギャップ」を埋めるものだった。
 
そして、今後の展開について進藤はこうも語る。
「現在は、障害者というピラミッドがあるとすれば、その上のほうの人たちだけに対応しているのがわれわれのビジネスです。しかし、障害者はもっとたくさん存在する。だとすれば、もっとピラミッドの下のほうの人たちのためにも仕事を斡旋できるようにしたい」
 
 
取材のために同社を訪問し、無人の受付で待っていると、そこを通る社員の人がみな一様に実に丁寧な挨拶をして通っていったものだ。
「もう誰かご用件を伺っていますか」と聞いてくれた人もいた。一体これはどうしたわけだと進藤に問うと、別に教えたわけでもなく、もちろん強制しているわけでもないと言っていた。こんな文化のある会社は、働き甲斐のある会社に違いない。

(2009・9・16)


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