【第45回】追随できない仕組みを作って急成長。顧客本位の素人発想の凄み

シナジーマーケティング株式会社

3年で売上高2.3倍、経常利益3.6倍の急成長
 
一時期、マスカスタマイゼーションという言葉が流行った。マス(大衆)とカスタマイズ(注文に応じて作る)をくっつけた造語で、全ての人それぞれにカスタムメイドの商品やサービスを提供するということ。そんなことは不可能だと思うが、それをコンピューターが可能にするのだといわれていた。実際にCRM(Customer Relationship Management:ITを利用して顧客との信頼関係を築く経営手法)という手法も使われ、いまやこの分野は急成長している。

その急成長業界のなかでも、CRMで業績をぐんぐん伸ばしている会社がシナジーマーケティング(株)だ。CRMの意味は、前述の通りだが、分かりやすくいえば、コンピューター上で顧客管理をして、お客との関係を強化できるよういろいろな手を打つことだ。同社は、このCRMのシステムを開発し、顧客に提供しているのだが、実は他社にない強みを持っているため、業績がぐんぐん伸びている。
 
例えば、3年前の05年12月期の売上高は6億9300万円、経常利益8860万円だったが、08年12月期は売上高15億9300万円、経常利益3億2100万円となった。実に3年で売上高は2.3倍、経常利益は3.62倍となった。この数字だけを見ても急成長ぶりがよく分かる。07年11月には大証ヘラクレス市場に上場したのも頷ける。


他社が追随できないサービスのきっかけは素人発想
 
CRMを開発している会社など、たくさんあるだろうになぜ同社がこんなに成長したのか。その問いに「導入時に優れているからだと思う」と社長の谷井等は答えた。これには少々説明が必要だろう。
 
会社には部門によっていろいろなデータが存在している。販売部門には顧客データ、経理部門には顧客別売上データ、お客様相談室には顧客の問い合わせやクレーム等のデータ。どの部門も別々に、その部門のフォーマットで管理している。
 
CRMを導入する場合には、これらを統合することになるわけだが、これが面倒なのだ。ところが、同社製のシステムを使えば、これらを何の変換もせずにそのまま利用できるのだ。これは導入側、特に現場にとっては便利な話である。
 
しかもそれをASP(事業者のサーバーにあるアプリケーションソフトをインターネットを通じて利用できるサービス)で利用できるという。つまり自分たちがソフトを持って使うのではなく、この場合はシナジーマーケティング社のサーバーにアクセスして利用することができる。それだけに自社のシステムには負荷がかからない。これも導入側には魅力なのだろう。
 
同社のこのサービスは、他社では真似ができない。だから優位性があり、その結果、同社がこの分野で抜きんでる結果となったのだ。それはCRMを利用するお客の立場に立ってシステムを開発した、ということに尽きる。
「私が技術に対して理解がなかったからできた」と谷井は述懐する。これには実は背景がある。


実家の洋服店の仕事で分かったCRMの本質
 
そもそも谷井がCRMに目覚めたのは、実家の洋服店で働いていたときだった。男性用の洋服店の商売はほとんど午後6時からが勝負である。それまでは暇だが、6時を過ぎると混みはじめ、今度は接客が追いつかない。すると帰ってしまう人も出る。これではまずいと、谷井は一計を案じた。スーツを買ってくれたお客には、仕上がりの頃を見計らって電子メールを送ったのだ。
「そろそろスーツが出来上がります。ところで紺色のスーツに合うブルーのシャツが入っているんですよ」と、こんな具合でシャツを進めた。これに面白いほど反応があった。しかも売上げに結びついた。お客が実際に店に来たときには用意してあるので、接客時間の節約にもなった。
 
顧客満足度を高める仕組みがあれば、対応が可能だと、ここからCRMの発想が生まれた。だから、谷井は利用者の立場に立って、技術的には無理な注文を開発者にしたのである。しかし、これがかえってよかった。
「社員も高いハードルを与えられて、乗り越えることに興味を抱いた(谷井)」のだ。このシステム開発には1年半を要したが、「今も開発しているようなもの、サグラダファミリアのようなものです」と谷井は屈託がない。


両親から教えられたことを面接で尋ねる理由
 
同社では、いわゆる営業はほとんどしていない。毎月150件前後の問い合わせがあるが、そのうち3分の1は評判を聞いての問い合わせで、あとはネット検索から自然に来る客だという。月額1万5000円から使える簡便さが、顧客を呼び寄せるのかもしれない。谷井もその辺りはきっちり分析している。
「従業員10人規模の会社は全国に40万社あります。そういう人たちでも使える金額である」ことが結果として売上げを伸ばしているのだろう。
 
しかし、この分野で今後の事業の広がりはあるのか。そう谷井に問うと、すぐに答えが帰ってきた。
「ある1社がCRMを使って一人の消費者を分析するのには限界がある。でも2社の顧客情報を重ね合わせると、より消費者像が鮮明になる。だとしたら、2社をドッキングさせたCRMを提案すればいいわけです」
同社では既にこれを提案し、実際にやってみて好結果を得たという。
 
そして、もうひとつ。
「現在のお客の業種はさまざまです。逆にいえば分野を特定してはいません。でも5年後には、ある特定の分野に特化したCRMをやっていたい」
 
なかなか構想力のある会社なのだ。
 
その谷井がことさらに力を入れているのが、採用である。ひとつの組織はその構成員のモラルが低いと目標が達成されないからだという。モラルとは何か。日本社会の道徳観だと谷井はいう。
 
だから採用面接ではこんな質問をする。
「ご両親から教えられたことは何か」「あなたは自分で何点ぐらい取れているか」
 
もちろん、社員にモラルを問うということは経営者自身のモラルが問われることになる。
「私のモラルは、謙虚さと感謝の気持ち、あとは実行力ですね」と谷井。
 実際に話をしていても、好青年という表現がぴったりの青年社長だった。

(2009・5・26)


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