【第43回】歴史的不況でさらに輝きを増す堅実経営の鏡

テクノアルファ株式会社

今回の不況は分析すれば怖くない
 
世界的な不況が日本経済にも影を落とすなかで、不況分野の一つ、半導体の事業で堅実な成功を収めている企業がある。テクノアルファ株式会社だ。

同社は電子材料や装置の輸入商社だが、その堅実ぶりは業績に表れている。07年度の売上高は28億5000万円、経常利益が3億0200万円、08年度の売上高は33億1100万円で、経常利益は3億9300万円だ。今期(2009年11月期)は厳しい予測をせざるを得ない状況だが、それでも売上高32億2000万円、経常利益3億4600万円と、ほんの僅かの下げで踏みとどまると見ている。
「マーケットを見ていると、お客は3~4月頃までは様子を見ている状況です。本来は、発注があったときに設備をしていないと間に合わないのだが、今は中断している。しかし、ITの需要が減ったわけじゃないし、車でいえば省エネや環境に優しい車は伸びている」と社長の松村勝正は手堅い見方を崩さない。
 
同社の取扱商品で強いのは、パワー半導体といわれるもの。このパワー半導体とは、交流を直流に変換したり、電力を制御するといった省エネにつながる半導体。つまりニーズは高まりこそすれ減りはしない、という見方が背景にあっての発言なのだろう。


部門縮小の命に、それならと独立
 
同社の手堅さは、実は、その創業の経緯に表れているのかもしれない。同社の設立は1989年。社長で創業者の松村勝正が、当時在籍していたドッドウェルジャパンの部門縮小を受けて、それならと分離独立を願い出たのが始まりだった。
 
半導体という事業にはシリコンサイクルと呼ばれる波があった。ちょうどその波の底だった。当時の上司は外国人で、いきなり経費削減、部門縮小に踏み切ろうとした。そこで松村が申し出た、というわけだ。松村は当時、ハイテク部門以外に産業機械とビール機械の3部門を担当していた。特に、産業機械事業部はドッドウェルのなかで一番利益を出していた部門だった。それでも上司は了承してくれた。いい意味での外資の割り切りが働いたのだろう。条件は部品在庫1500万円分を引き取ることと、取引先を侵食しないこと。結局4人を引き連れて独立した。
 
恵まれていたのは、総務や経理などの面倒な業務はドッドウェルが引き受けてくれたことだ。
 
辞めた会社が事務を引き受けてくれたことで、営業に打ち込むことができ、業績を伸ばした。こんな運に恵まれたスタートも珍しい。しかし、あくまで手堅く、カネをかけることは一切せず、10坪の事務所からスタート。経費も使わなかった。その間、松村が注力したのは現金商売を行なうということだった。
「手形を発行しないということを誓いました。すべての取引先に納得してもらった(松村)」
 
熱心な説得が聴いたのだろう。L/C(信用状)も要求されなかった。できたばかりの会社は信用が低いから、こちらからの支払いは現金で要求されても、あちらからは手形が切られるというのが普通の話。ましてや貿易で、信用状無しで商売できるなんてあり得ない、というのが常識である。


地道に足で稼ぎ、有望なものは付加価値を高める
 
こうした話を聞いてみると、運のよさだけでここまで来た会社のように思ってしまうが決してそうではない。
 
松村には、ドッドウェル時代から培った営業のノウハウが山ほどあったのだ。なにせトップの営業マンである。松村が入社した当時は、輸入商品といっても英文カタログ1枚の時代だった。それを訳してコピーし、資料作りをする。コピーといっても青焼きの時代。体裁のいいものは作れない。だから、カタログの力に頼るのではなく、自分たちで商品の特性を調べ、足で稼ぐ営業が主流だった。
 
こうして鍛えられた松村は、輸入商品でヒットが出ると、当時としては画期的だったライセンス化に踏み切る。輸入するよりもそのほうが利益率が高い。つまり付加価値がつくのである。
 
例えば、生ビールの樽とサーバー。この商品は昔は同社が輸入していた。今でこそ飲食店ならどこにでもある代物だが、当時はこれが珍しく、ヒット商品になっていた。同社はそこで、その樽やサーバーのライセンスを取り国産化する。これが当たった。付加価値が高く利益は著しく上がった。このようなビジネスの手法を一から学び、そこで活躍してきた松村はこのやり方を今でも実行している。一つひとつのビジネスを堅実に遂行するというのは、こういうことの積み重ねなのである。
 
松村は、輸入だけでなく輸出にも力を入れた。
創業間もなくバブル経済がはじけ低成長時代へと突入するわけだが、粗利が高いバネを作る機械を日本から海外に輸出し、しのいだ。当時は人数も少なく「ほとんど影響はなかった(松村)」そうだ。


不況が長引いても十分に余力はある
 
同社が他社よりも抜きん出ている点を聞くと、松村は即座にこう答えた。
「まず第一に英語力があること。そして、海外ネットワークが張り巡らされていること。これによって、情報力にも長けていることになる」
 
さらにいえば、こうした情報とネットワークを駆使して、さまざまな提案を顧客にしていけることになる。
 
その同社が今後の成長に欠かせないと考えているのが、メーカー的機能の付加である。それもM&Aによってその機能を獲得しようと考えている。ターゲットははっきりしている。
「メカトロニクス用の機器を設計開発している企業です。それも大型の企業をM&Aするというわけではありません。10名以内の小さな企業でキーになる技術を持っている会社を傘下に収めたい」と松村はいう。3年前から探しているそうだ。
 
同社の持ち味である提案ができる商社、という機能にメーカー機能を付加することによって、商社としての力を強めたいということなのだろう。それにより、成長のスピードアップを計りたいということもあるだろう。
 
それにしても今回の不況は、長期化する傾向にある。
「余力はあります。当社は保険を利用した含み資産がある」と松村はいう。同社は事業保険を社員、役員を加入者として掛けている。これは全額損金計上されたもので、文字通り含み資産となっている。これを使うことができるというのだ。
 
堅実な会社は、あらゆる状況において準備が万端である。

(2009・3・31)


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