【第4回】超変な会社「店舗の掃除人」の超真っ当経営

(株)テンポスバスターズ

上司が嫌なら店を替われ、そこが嫌ならまた替われ
 
これほど変な会社も珍しいという意味で、おもろい会社の筆頭に上げられるのが、株式会社テンポスバスターズである。
 
何が変かというとまず社名が変である。テンポスバスターズ――店舗s(複数形)の掃除人(バスターズ)というのだ。業務用厨房機器のリサイクルが事業であるから、社名もなるほどと頷けるのだが、それにしてもこんな社名を付けるのはどんな社長か、と思ってしまう。

そこで、次に何が変かというと、社長が変である。社長の名は森下篤史。この社長、数年前に「社長の椅子争奪戦」というのをやった。われこそはという社員に名乗りを上げさせ、自らも店舗に入り、店舗間競争をやりながら、同じレベルで社長の座を争った。中立的に判定をすべく第三者機関を設立し、評価をさせた。
勝ったのは社長の森下である。だから今も社長――。
 
研修のことは「稽古」という。難しい商品知識を学ぶのではなく、客から聞かれる30の質問に答えられるようにひたすら稽古する。1000本ノックのようなものだそうだ。
 
テンポスバスターズは本当に変わった会社である。世間の企業の常識に照らすと桁外れに外れている。
 
例えば同社には「テンポス精神17カ条」というのがある。その第2条にはこんな風に書いてある。

第2条(儲けるな・儲けろ)
 
安い物を見つけて高く売って儲けてはいけない。安い物を見つけたら安いまま売れ。知識と技術を身につけてコストを下げ、しっかりとしたアフターサービスと無理だと思われる高い目標に挑んで、その努力から生まれた少しの利益で良い。楽して儲けたい者は我社にいない。我々はそれ程の者ではないだろう。
 
リサイクル業はなるべく高く買って赤字にはならない範囲で出来る限り安く売る商売である。さやを抜いて儲ける事で喜ぶような癖をつけるな。

第5条にはこうも書かれている。
第5条(フリーエージェント・ドラフト制)
上司が嫌なら店を替われ、そこでも嫌ならまた替われ。何度でも替わってみろ。テンポスはフリーエージェント制だから。だがそのうち気づくだろう。理想的な上司や職場などないということを。自分で切り開いたところにしか「やりがい」はないということを。店長は、気に入らない使いにくい部下は他の店に放り出せ。テンポスはドラフト制だから自分の納得のいくまで何回でも人を入れ替えろ。だがそのうち気づくだろう理想の部下などいないということを。

胸がスカッとする文句ではないか。
 
このテンポス17カ条や社長の話を聞いて、よく考えて見ると、この会社は「変」を全うしているという意味で、相当まともな会社であることがやがてわかってくる。
先の語録も変だが、実は正鵠を射ている言葉であふれている。本当は他の会社が変なのではないか・・・。


儲けない構造を作ったからこそ大成長した
 
社長の森下篤史が同社を設立したのは1997年。倒産寸前だった食器洗浄機の製造販売の代わりにと始めた、業務用厨房機器のリサイクル販売が当たった。
「何しろ、もの凄く安い価格で仕入れて普通に売って、儲かって儲かってしようがなかった(森下)」
 
しかし、2年ほど経って、はたと考えた。
 
これでいいのだろうか。
 
結論は「よくない」。
 
だから、安く仕入れた商品をぎりぎりの利益を乗せて売るという、当時の(今もか?)常識から外れに外れたビジネスに構造を変えた。社長がそういうものだから「社員はさらにどかどか売値を下げた(森下)」
儲けない構造に変えたことによって、コスト意識が芽生えたし、安く売るからこそ商品再生にも力を入れた。
 
これで、業界で圧倒的ナンバーワンの地位を占めた。
 
2002年にJASDAQに上場。以後、成長を続けている。
 
このように書くと、大変な大成長を遂げた会社のように映るが、売上高は約113億円(2007年4月期)、経常利益で4.2億円(同)と規模は決して大きくない。業務用リサイクル市場でのシェア拡大は期待できるが、このままの勢いで発展を続けていけるのか。
 森下はニコニコした表情を崩さずに、「だから、情報サービス事業を大発展させようと考えている」と語る。目標は5年で年商200億~250億円の規模。
 
どこにそんなうまい情報があるのか。答えはこうだ。
 
リサイクル品の物販事業というのは情報ビジネスでもある、とは森下の持論。例えば日本では年間20万件の飲食店が閉店する。このうち18万5000件は店の厨房機器や食器類を廃棄処分とする。残り1万5000件のうち1万件はテンポスが引き上げて販売している。「ところがこの情報を無駄にしている(森下)」のだそうだ。
「これは見方を変えれば居抜き物件の情報。だからこれを斡旋仲介すれば1ヶ月50~60の物件で月間300万円の粗利となる(森下)」。だから、今年度末までには20人体制で月間1000万円超の粗利を目指すという。


売上高1000億円を目指す
 
これだけではない。
 
テンポスファイナンスという会社を立ち上げリースの仲介も行なっている。「現金商売だが、ローンやリースを組みたい人に対応する」(森下)ためだ。
 
フランチャイズの支援も行なう。3人が専任で金融もつけてFC本部としてスタートさせる。内装工事の請負業も行なっている。
 
まだまだある。同社では年間5000台のレジスターを販売している。14000円の単機能機だ。しかし飲食店も、2号店3号店と発展していけば、当然POSレジが必要となってくる。そこでPOSレジをOEMで販売し、データ分析まで請け負うことにした。レジの名前は「テンポス(POS)」。
 
みんな客との接点で得た情報を軸に展開していくというのだ。
 
だが、ここでいろいろな疑問が湧いてくる。
 
いろいろな事業を一緒にスタートさせて、結局どっちつかずになりはしないか。あるいは、新規事業に採った人材は他の社員と融合していけるのか。
答えはシンプル。いろいろな事業は抜きんでた一つの事業の下に収斂されていく。
 
人材はいずれ融合させる。「融合が難しいと言うけれど、混ぜ合わせるのが社長の仕事。それが楽しい」
「そもそもいろいろな新規事業の芽があったのに立ち上がらなかったのはみんな兼任でやっていたから。専任でやれば必ず成功する」と、森下は強調する。
「私は5年後に売上1000億円企業にすると言っているんです」と森下は事も無げだ。「だってそうでしょ。人間は月へ行くときだって、最初は誰かが月へ行こうって漠然と言ったんだよね」
 
売上を既存250億円、新規250億円で500億円にし、あとの500億円分は企業買収で合わせて1000億円にしていくというのが同社の計画だ。
 
そんな森下が、某ベンチャー雑誌に連載を持っていたことはあまり知られていない。経営者をやりながら、ユニークな経営者を訪ね歩き、記事にした。
「本当はテレビで番組を作りたい。『スター経営者』みたいな番組をね。今若い子はタレントに憧れるでしょ。でも、経営者に憧れるようにならないとね、日本の国はうまくない」
 
経営者の奥が深いから、会社の奥も深い。奥の深い会社なんてなくなってきた昨今、おもろい会社であることに間違いはない。

(2007・12・25)


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