【第34回】着メロを大ヒットさせた音楽科出身社長「成功」の法則

株式会社フェイス

超オタクが年商500億円の会社に成長
 
世の中には有名な事業の裏に、一般的には知られていない企業の存在がある。例えばおもちゃの世界でいえば、大ヒット商品「たまごっち」はバンダイの商品とだれもが思っているが、これを企画、製造したのは株式会社ウィズという会社である。

携帯電話のサービスにも似たような話がある。携帯電話の着メロサービスはNTTドコモが99年にスタートさせ、爆発的なヒットとなった。これは周知の事実だが、当時、このビジネスモデルを作り、裏でそれをプロデュースした会社があったことをわれわれは知らない。
 
その会社が京都に本社を持つフェイスである。東証1部上場の同社の2008年3月期の売上高は500億円、経常利益は17億円。経常利益が低く感じるが、同社はこの数年、海外など広範にビジネス展開をしているからで、それ以前は40~50億円台の経常利益を確保している。
 
同社は創業以来ずっと音楽の配信をビジネスとして行なってきた会社である。今でこそ、音楽のみならず動画、ゲームなどさまざまなコンテンツを配信しているが、同社の根源はあくまで音楽だ。
 
同社の歴史を紐解くと面白い。インターネットのずっと以前、まだパソコン通信といっていた時代の92年に現社長の平澤創がこの会社を創業した。そして、だれよりも早く音楽のダウンロード販売を始めた。94年にパソコン通信のニフティと音楽配信をスタートさせたのである。当時はパソコンを使う人自体が「オタク」と見られていた。その時に、パソコン通信を使って音楽を配信するなど「超オタク」の世界である。当時、だれが年商500億円の会社へと成長すると考えただろうか。
 
同社はその後、他社と組んで日本初のインターネット上でのカラオケサービスを提供したり、音源技術、音楽配信技術の実用化をして、99年に着メロをスタートさせるに至る。


普通なら1、2年かかるビジネスを数ヶ月で立ち上げた
「最初のパソコン通信時代は無謀なことをやっていた。自殺行為。今ならやらない」と創業社長の平澤創は語る。
 
ワンルームで社員3名、みんな20代で無茶ができたこともあったが、何より、これは将来、大きな波として来るだろうなと感じたのである。
 
ビジネスでの失敗もしたし、97年には、ある銀行の支店長が無担保で3000万円の融資をしてくれたことで、危うく倒産を免れたという経験もした。しかし、同社はこうした試練の中で重要な経験とノウハウを積んでいった。
同社の業績が急上昇に転じたのは2000年度から。これは99年に「着メロ」事業をスタートさせたからだが、この時、同社は他社のやらないことをやった。それは「着メロ」のビジネスモデルを作り、NTTドコモに提案をしたことだ。
「儲かりますから一緒にやりませんかと提案した(平澤)」と当時を振り返るが、ここに同社の戦略の根元があるのだ。
 
実は平澤は、この時一つのことに目を付けていた。それは、着メロの歌本が月間80万部も売れていたことだ。コードを携帯に入力すると着メロが聞けるようになる、コード集ブックである。これなら、ダウンロードした方が便利だ、と考えたのだ。
しかし、平澤が他と違ったのは、早くビジネスを立ち上げることに全身全霊を傾けたことだ。
「いち早く市場を創造するには、アライアンスしかない」と平澤は考え、半導体メーカー、携帯メーカー、業務用カラオケ通信会社など、プロを集めてビジネスモデルを構築したのだ。幸い誰も手をつけていない頃から、音楽配信事業を、手掛けていたという実績があり、このビジネスを立ち上げるためのすべてのノウハウを持っていた。フォーマットをどうするか、半導体に入れるための音のアルゴリズムはどうか、著作権料をどうするか。要はプロデューサーに徹したのである。
「数ヶ月でこのビジネスをスタートさせるのに必要なすべてのことをした。普通なら、1、2年はかかったはず」と平澤がいうとおり、苦しい時の経験とノウハウがすべて役に立った。このプロデューサーに徹するという姿勢が、成功を生み出したといっても過言ではない。


プロデューサーに徹して成功を収める
 
そもそも社長の平澤は大阪芸大の音楽科出身で、作曲やアレンジを学んでいた。学生時代は、まだメジャーでない頃の音楽事務所「ビーイング」でアルバイトをしていたが、卒業して任天堂に入り、ゲームの音楽作りなどを担当した。
 
しかし、どちらも自分とは合わず、だが音楽の道にはこだわって、結局フェイスを設立することになる。面白いのは作曲やアレンジと、今の仕事には大きな共通点があるということだ。どちらの仕事も一言でいえば、プロデュース業。
 
平澤には、そういう天賦の才があったのだろう。
同社の事業はこうしたアライアンス戦略で伸びてきたが、その中で唯一異色なのは、傘下のウェブマネーである。
 
同社がウェブマネー社を買収したのは、2003年。赤字だったウェブマネーを2年後に黒字化し、2007年にジャスダックネオ市場に上場させた。
 
ウェブマネーとは、ネット上で決済するための手段で、一定の金額分をコンビニなどで口座に入れておけば、ネット上でモノが買え、サービスが受けられる。他の決済手段と違い、個人情報が開示されないので顧客にとっても安心感があるわけだ。
 
同社がネット上でさまざまなコンテンツのサービスを展開していく上で、「課金」は重要な位置づけを持っていたはずだ。もともとゲーム分野に強い会社だったので、「顧客先が同じで、システムも共通化できた(平澤)」ことがますますメリットを拡大していくだろう。
 
また、フェイスは海外展開を数年前から積極的に行なっている。
 
2002年、東証1部へ上場したのと同時期に、サンフランシスコに現地法人を設立。その後、フランス、中国、シンガポール、韓国などで、さまざまなビジネスを展開している。
 
すべてが上手くいったわけではないが、その都度、事業再編なども織り交ぜながら、海外での活動に勢力を傾けているのは確かだ。
「アジアでいえば、ベトナムとインドに注目している。特にベトナムはいろいろな産業が伸びてきており、面白い拠点になる可能性がある」と平澤がいうように、さらに海外での事業展開を進めていくのだろう。
 
このビジネスはもとより国境のないビジネスなのだから。

(2008・11・25)


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