【第33回】独自の「14(エクシブ)」方式で業績を拡大させるリゾート会社の戦略

リゾートトラスト株式会社

業績は常に増収増益
 
アメリカ発の金融ショックが全世界を駆け巡るなか、不安要素も多いが、日本では近年会員制のリゾートホテルが業績を伸ばしてきた。団塊の世代が2007年から定年を迎え、リゾート市場がさらに拡大していくなか、会員制リゾートホテルの開発・販売でトップを行くリゾートトラスト(株)の業績は近年急拡大した。今後のことはともかく、同社はどのような戦略で業績を伸張させてきたのか。

そのヒントをリゾートトラスト社長の伊藤勝康は06年11月に開業した高級リゾート「エクシブ京都八瀬離宮」のデータを見ながら答えてくれた。社長自ら驚いていたのが、その販売の傾向だ。なんと一番高い部屋の販売率が90%にも達していたのだ。
「やっぱりね。高い所から売れるんです(伊藤)」
 
一部屋を14人で所有するのがこの会員制の仕組みだから、実際の会員数は部屋数×14という数字になる。それでなお高い物件が90%も売れているというのだ。ちなみに高い所の価格帯とは3000万円前後(年26泊の権利)もするのだ。しかも、この「エクシブ京都八瀬離宮」は敷地約4万�という広大なもの。同業他社のみならず、京都に進出したい外資系ホテルなどからも羨ましがられる立地とスペースである。
 
業績も年々増収増益を重ね、07年度は売上高1047億0800万円(前年比107%)、経常利益142億4000万円(同103%)と好調そのものである。
 
同社の創業は1973年に遡る。田中角栄首相(当時)の日本列島改造論がもてはやされた頃だ。
「当時はホテルやリゾートといってもいいものがなかった。地方は特にそうだった(伊藤)」
売上は好調だったが、2年後にオイルショックが襲った。
「キャンセルが相つぎ、潰れる寸前までいった(伊藤)」が、大手商社やゼネコンなどに助けられ、漸く凌いだ。
 
ところで、40代以上がリゾートと聞いて思い出すのがバブル景気である。日本中で数多くのリゾート開発が行なわれ、そして多くが不良債権と化した。その時、リゾートトラストはどうだったのか。痛みはしなかったのか。その問いに、伊藤は「オイルショックを経験していましてね、予感のようなものがあったのです」と静かに答えた。大量の仕込みもせず、急激な拡大路線とは無縁だった。それでも当時開発した山中湖や白浜(和歌山県)はコストが異常にかかったという。


大都市から2時間程度の場所にリゾートを造る
 
同社の開発に勢いが出たのは2000年以降だという。その契機となったのが、熱海市の沖合いの島「エクシブ初島クラブ」だ。バブル時に日本海洋計画(株)が開発し、この倒産により長銀の破綻にも大きな影響を与えたといわれる案件だったが、リゾートトラストが買い取り、見事に再生させた。この種の物件が全国にあり、同社は開発を加速させることができたのである。
 
ところで、同社のリゾートは多くが大都市から2時間程度の場所である。
「30年前は5~6時間かけていくのがリゾートという感覚がありましたが、今は近い方がいいようです」と伊藤はいう。
確かに昔と今とではお客のライフスタイルも感覚もまったく違ってきているわけだから、その変化に対応するのは当たり前の話だが、実は同社ほどそれを忠実に行なっている会社はない。それは、常にお客のニーズを聞き、そこから商品開発を行なっているという点だ。
 
リゾートトラストは創業して10年で業界トップになった。営業力が強かった。当時、大京観光の辣腕部長を引き抜き、電話営業で契約を進めていった。見学を勧め、見に来てくれたお客は契約をしてくれた。
 
ところが当時の会員制のシステムは早い者勝ちの予約制。当然、お客が集中する季節は、予約が取れないお客から不満が噴出した。クレームの嵐。営業はただただ逃げ回った。
 
予約の方法にも営業方法にも問題があると分かった伊藤は、その両方を変えた。
 
特にお客の要望をきちんと聞くようになった。次はどこに行きたいか。部屋のサイズはどれくらいがいいか-----。これを次の開発につなげた。
 
予約方法についても、何故この方法がダメかを全従業員から聞いた。その結果生まれたのが、一部屋を14人で共有するタイムシェア方式だ。ちなみにエクシブとは14という意味である。日本の休日を考え、2泊3日で春夏秋冬、連休などもみんなが共有できるのは、14人で26泊だと考えたのだ。


周囲が考える以上に堅実な会社
 
同社は「5年後に利益を250億~350億円くらいに持っていきたい(伊藤)」と考えている。もちろん様々な戦略が既に始動している。
 
東京ミッドタウンにオープンした「東京ミッドタウンメディカルセンター」は米ジョンズホプキンス大学との提携事業で、高級診療施設である。
 
会員の高齢化、新たな団塊の世代の参入などを考えれば当然の事業だ。
「シニアアパートメントを医療施設などと一緒にやっていくし、ホテルがあればいざというときの介護サービスが必要になってきます」と伊藤はいう。
 
それだけではない。港区台場で始めたような都市型のアーバンリゾートも戦略の一つだし、「通常のホテル業務も今後はやっていきたい(伊藤)」という。「例えばバリでは200室のホテルを50億円で買うことができる。同じサイズを日本で造ろうとすると220億~230億円くらいかかる。部屋の料金は変わらない(伊藤)」とすれば、充分にビジネスになると踏んでいる。伊藤の頭の中には次なる開発の構想が山のように入っている。
 
心配は、冒頭にも書いた経済状況の不安定さである。ただし、リゾートトラストは拡大型路線の会社ではない。周囲が考える以上に着実、堅実な会社なのだ。
「リゾート開発は資金計画が一番大切(伊藤)」という言葉にそれが象徴されている。
 
堅実なのは名古屋人だからか、と振ると、はにかみながら「そうかもしれません」と伊藤は答えた。その伊藤が中期5カ年計画で「利益を急速に伸ばす(伊藤)」拡大路線に転じる。都市部のシニアアパートメント、地方での展開、エクシブシリーズの大型化、アーバンリゾートの開発、そしてメディカル事業など戦略的事業の案件も目白押しである。
 
これを完遂させるのに重要なポイントは、一にも二にも人材の育成だろう。そう聞くと伊藤も力強く肯いた。

(2008・10・15)


トップページ -> なぜこの企業が凄いのか -> 【第33回】独自の「14(エクシブ)」方式で業績を拡大させるリゾート会社の戦略