【第32回】辛抱を重ねて人気サイトを立ち上げた広告代理店の先見

株式会社ぐるなび

手間暇かかるし、カネもかかる

「ぐるなび」と聞けば、インターネットを利用している人にとっては近しいサイトのひとつである。「レストランや居酒屋のガイド」をしてくれる。会合場所の案内代わりに、メールで「ぐるなび」の(その店の)アドレスが送られてくるから便利だ。
しかし、こんなにわかりやすいサイトだからこそ、時間もカネもかかる。これを成功させるということは、実は大変なことなのである。

そもそもメディアの立ち上げには、カネも時間もかかる。雑誌の創刊なら何億円も宣伝費をかけて、ようやくそこそこ売れる程度。テレビだってWOWWOWやスカパーは苦労の末、ようやく軌道に乗った。ネットも然り。無数のサイトの中から注目されるのは大変だ。どのメディアも売上げの低空飛行が続き、何年か後に、ようやく日の目を見る。さもなくば消える。これがメディアの世界だ。
 
さて一方、飲食店の紹介サイトなんて、誰でも考えることができる。簡単そうに見える。ところがこういうサイトを作ろうと思うと、大変に手間がかかるのだ。お店に営業に行き、一店一店増やしていく、いわゆるどぶ板営業をしなければならないからである。僅かの料金しか取らないのに、である。
 
また、認知度を上げるのも大変だ。紹介されているお店の数がまとまっている必要がある。しかも万遍なくどのジャンルの料理も網羅していないと使い勝手が悪い。大変なカネと時間をかけて、このサイトは成長したのだ。なんといっても実績がその成長を物語る。有料で紹介している店の件数は約43,400店(2008年9月末)であり、2005年4月には大証ヘラクレス市場に上場を果たしている。


交通広告を端末に置き換えてスタート
 
このような手間ひまをなぜかけることができたのか。社長の久保征一郎の答えは簡単だが興味深いものだった。そもそもこの事業がスタートしたのは、20年前に遡る。交通広告の代理店である(親会社の)NKBの一事業部だった。
「社長の滝(⑭ぐるなび会長)が20年ほど前に、立て看板などの交通広告からの脱却を目指して、コンピュータと通信を融合した情報発信を始めたのです(久保)」
 
当時は駅に端末を置き、不動産広告や地域のお店紹介を乗降客に提供していた。まだ、パソコンが会社にもそれほど普及していない頃の話だ。システムを自前で作り、カネがかかる分、必死になってコストダウンに努めた。幸いにも端末は使われていた。飲食店の紹介も500社に及んだ。もちろん順風満帆だったわけではない。「役員会でもやめる話も出たようだった。会社が一定の利益を出していたし、何よりオーナーの強い意志があった(久保)」から続いたのだろう。
 
インターネットを通じて、このお店紹介事業をスタートしたのは96年6月。
「会社のモノだったパソコンが、インターネットに繋がることによって生活情報を発信する、つまり家庭のモノになったのです(久保)」
 
インターネットで配信することによって、コストがそれまでより飛躍的に下がったのもよかった。がんばれる素地ができた。
「最初は付き合いのあった500店を載せてスタートしました。当時の利用料は月3000円。利益が薄いためNKB本体の営業は動かせないので、まったく別の成功報酬型給与の別部隊を作り、営業しました」と久保は述解する。
 
できるだけ高級店から営業した。料飲組合などと積極的に提携もした。こうした組合やお店のホームページの受託もした。僅か500店の紹介でも、それだけ載せているサイトはなかった。先行者としてのメリットを享受したのだ。


外食は24兆円市場、伸びる余地は十分
 
2001年に潮目が変わった。
 
ぐるなびの店が1万店を越えたのだ。ここから同社の成長が本格化した
 
営業も、単純な加盟店という形から会員制に変えた。投資をして、サイトの中身も大幅に変えた。新たに加盟店管理画面という方式に変更した。これによって、お店は自分で紹介の内容を変更できることになった。お店にとっては紹介する上での自由度が高まり、同社にとっては手間(とコスト)が省けた。
 
ぐるなびは前年の2000年にNKBから分社し、独立していた。駅につながりがあったことから電鉄各社にも資本を引き受けてもらい、資本金は充実した。これで、前述のような投資ができるようになったのだ。同社の2008年3月期の売上高は156億200万円、経常利益は27億4200万円と堅調である。当面の目標は加盟店10万店である。
「800~1000店で始めましたが、まだまだ満足度を上げられるような数ではない(久保)」
 
結局どれだけ加盟店を増やしていけるかで、この事業は決まるのだろう。久保が10万店を目指すのは至極当然といえようか。しかし、この種のサイトは加盟店の継続率が重要だ。かりに1割落ちると3200店以上集めないと、成長にはならない計算だ。
「通常の外食産業の規模は24兆円といわれています。1%でも2400億円でしょ」
 
現在の156億円は僅かだと、いいたいのだろう。

(2008・9・30)


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