【第29回】愚直に自らの理論を展開して、金鉱山会社を経営する男の魅力

株式会社ジパング

1400億円相当の金山を持つ金鉱山会社があった!
 
金価格が世界的に高騰していることは、一般的に知られた事実である。データで見れば一目瞭然で、2001年に1トロイオンス=271.05ドル(1g=1105円)したものが、04年には同409.35ドル(同1472円)となり、07年には同695.91ドル(同2659円)と2.5倍以上の高騰ぶりだ。現在はさらに上昇し、3000円を突破している。

ところが、こうした金を実際に採掘し生産をしている日本のベンチャー企業があるのはほとんど知られていない。株式会社ジパングが、その社名である。ジパングはアメリカの金生産の8割を占めるネバダ州に、フロリダキャニオンとスタンダードという2つの金鉱山を持ち、金の生産をしている。
 
ちなみに、日本の金鉱山会社といえば住友金属鉱山や中外鉱業などが有名だが、ジパングは戦後日本で設立された唯一の金鉱山会社である。
 
さて、金鉱山の価値を評価するには2つの数値がある。埋蔵鉱量(リソース)と可採粗鉱量(リザーブ)の2つだ。埋蔵鉱量というのは、鉱床の存在が予想される範囲での鉱石の質量とその中に含まれるだろう金の質量のこと。つまり、鉱山にどれくらいの量の金が眠っているか、その可能性を数値化したものと考えればいい。これに対して、可採粗鉱量というのは埋蔵鉱量のうち、経済性をもって回収可能な鉱石の質量とその中に含まれると評価される金の質量のこと。つまり、より具体的な価値というわけで、いずれも第三者機関が算定する。
 
同社の2つの金鉱山の可採粗鉱量は、2007年12月現在で155万オンスとされる。1オンス=900ドルで計算すると、約1400億円に相当する。同社がこの鉱山を買収した2005年11月当時の算定額は約450億円相当だったから、まさに金価格上昇とともに鉱山の価値も上がったことになる。


2009年度から2つ目の金鉱山が本格稼動

「1オンス420ドルの時にこの鉱山を16億円で買収しました。当時、私の理論では660ドルになると予測していた。でも結局は運がよかった」と同社社長の松藤民輔は言う。現在の金価格は900ドルを越えているから、運がいいは謙遜にも聞こえるが、いずれにしても予測以上の結果が出ているわけだ。
 
同社が持つ金鉱山2つのうち、現在稼動しているのはフロリダキャニオンのみである。スタンダードは認可の手続きが遅れ、「早ければこの秋に採掘許可が下りる(松藤)」と言う。現在同社の売上は2008年3月期で、38億6400万円、経常損失が9億2300万円となっている。もっとも特別利益があるため、2008年3月期は5億8100万円の純利益が計上されている。
「昨年度は当局より、フロリダキャニオンで掘った鉱区を通常よりも短いサイクルで埋め戻せという指導があった。そのため生産量が対前年で3分の2に落ち込んだし、その分の経費もかかった」と松藤は説明する。今期はそれがない分生産量は上がるし、もしスタンダード鉱山が本格的に操業され始めたら、売上高も利益も相当な伸びが予想されるわけだ。金鉱山のオペレーションに関しても、アメリカ人に任せていたのを日本人によるオペレーションに変え、より効率的な運営を目指しているという。
 
ちなみに、2009年3月期は売上高48億3900万円、特別利益等が計上される関係で、純利益は64億6400万円と予測している。


M&A戦略で年間50万オンスの金生産を目指す

「2009年度以降、年間50万オンス生産を目指す」と松藤は言う。とてつもない目標額のように見える。もしその言葉が実現されるとなると、仮に1オンス900ドル、1ドル107円の計算で、年間481億5000万円もの売上を計上することになる。どのようにして、それだけの生産を行なっていくのか。
 
実は、同社は金鉱山を自社で運営する以前には、金鉱山会社への投資を主事業として行なっていた。つまり、世界各地の金鉱山の情報を持っているわけだ。どの金山にはどれだけの埋蔵鉱量があり、どれだけの可採粗鉱量があるか、どの山がフェアバリューよりも低く評価されているか。そういった情報が集まっているのだ。
 
松藤によると、世界各地には割安に放置された金山や鉱山会社がまだまだあると
言う。その金山や鉱山会社をM&Aしていくというのが同社の戦略だ。M&Aの資金を調達する一つの方法として株式の流動化が必要となってくるが、同社は今年の秋に合併を控えており、その暁にはグリーンシート銘柄として登録されるという。こうした戦略により、年間50万オンス戦略は進んでいくという。
 
実は、同社社長の松藤は知る人ぞ知る有名人である。日興證券を皮切りに、外資の証券会社を渡り歩いた年収2億円プレイヤーだった。それを辞めて自分の会社を作った。以前には、歴史ある英『エコノミスト』誌に紹介された事もある。
著書も多い。最近も講談社から出された本がベストセラーになっている。講演会を開くと、たくさんの人が押しかける。松藤の話に魅力があるからだろう。
 
確かに、この時代に金山を買って金を掘ろうなんて人は、いない。それだけでも何やらロマンを感じるが、当の松藤は自らの理論に忠実なだけなのだろう。株の時代は終わった。これからは金の時代だと言って、ジパングという名前の会社を作ったその時から、10数年が経つが話の中身にブレはない。
 
魅力的な社長が作ったおもろい会社である

(2008・7・30)


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