【第26回】セレブブームを創出した超優良企業の世界を見据えたブランド展開

株式会社サマンサタバサジャパンリミテッド

アメリカ企業? 実は日本企業
 
若い女性を中心にしてファッションブランドの人気は相変わらず根強いが、なかでも日本のセレブブームの演出役となった企業がある。それがサマンサタバサというブランドだ。ヒルトン姉妹やペネロペ・クルス、テニスのマリア・シャラポワ、蛯原友里などをモデルやデザイナーに起用するなどして、若い女性の間で超人気のブランドとなった。全国に150店強を展開し、2005年には東証マザーズ市場に上場した。企業名は(株)サマンサタバサジャパンリミテッド。いったいどんな会社なのか。

サマンサタバサという社名を聞くと、テレビの往年の人気番組「奥様は魔女」を想像する人が多い。しかし、その関連性は同社によると無いのだとか。アメリカの企業のようだが、れっきとした日本企業である。
 
だが、そんなことはどうでもいい。いまや20代を中心とした女性に超人気のブランドの一つであることは揺るぎも無い事実なのだ。主力商品はバッグ、そしてジュエリー。主力ブランドの「サマンサタバサ」以外にも、ジュエリー、小物、男性用など10種類のブランドを展開している。
 
ここ数年の業績もその人気に正比例して増大している。
 
上場前の2005年2月期の決算では売上高98億4500万円、経常利益が12億7200万円だったのが、翌2006年2月期では売上高135億5200万円、経常利益20億5000万円となり、前2007年2月期では売上高172億9200万円、経常利益24億7600万円と伸長している。


セレブを起用したから売れるわけではない
 
いったいなぜこのように成長を遂げたのか。業界のプロの話を聞くと、セレブな女性をイメージキャラクターやデザイナーに起用した戦略が成功した原因であるという意見が多い。しかしこれを同社社長の寺田和正は「セレブな人を起用しても売れていないブランドは山ほどある」と否定する。そんなことを言っているから駄目なのだ、と言いたげである。
 
その寺田は現在の業績について「まだ、成功していない」と断言する。
「ブランドビジネスというのは大変なのです。価値を作ったとすると、次段階へと成長するためにはもっと違う価値を作らないと生き残っていけない(寺田)」と言うのだ。どういうことか。
「例えて言うと、偏差値50の人たちが1000人いる中で成功すると、次に待っているのは偏差値70の人が1万人いるステージ(寺田)」なのだと言うのだ。成長するほど、どんどんハードルが高くなる。だとすると、なるほどこれは大変な世界である。
 
確かに成功体験に胡坐をかいていては企業の成長も斬新な商品の開発も望めない。その意味で寺田の言うことは正しい。
 
言葉を変えて言えば付加価値をどう作り、その付加価値をどう上げていくかということだろう。実際、同社の付加価値は創業時から間違いなく上がってきている。分かりやすい指標が平均客単価だ。寺田はこう述懐する。
「創業当初は平均単価が1万2000円程度でした。その数年後、2万~3万円の商品を出したが一つも売れない。それが当時の状況でした」
 
しかし徐々にその単価は上がり、今では2万円台は安いと言われ、この春夏の主力商品の単価は4万円台になっている。15万円の商品も売れる。もちろん単価だけで比較はできないが、これが付加価値の高まりの象徴と言ってもいいだろう。


代理店を使わず社員にやらせる
 
では、同社はどうやってその付加価値を上げていったのか。
 
その答えとして寺田は4つのキーワードを挙げた。「良い場所、良い人、良い商品、良い宣伝」というのがそれだ。これがバランスよく機能すれば事業は成功するというのだ。良い場所とよい商品というのは商売の基本だ。良い宣伝というのは世界のトップセレブリティを起用してコマーシャルや来日イベントをしていることからも分かる。
 
それでは良い人とは何か。その象徴が人材起用である。同社では根幹である宣伝やイベント運営に代理店を使っていない。全部自前で行なっているのだ。
「代理店を使うということは、彼らに任せることになる。その中にはうちの商品が好きな人も嫌いな人もいる。イベントが上手くいかなければ言い訳が出てくる。そうではないということなんです。上手くいかなければ悔しい。カネの問題ではなく単純にそう思う。それはうちの商品に愛情があるから感じることで、それなら社員にやらせようということなんです(寺田)」


どこもベンチマークしていない
 
同社は2005年12月に東証マザーズ市場に上場した。それについて寺田は「上場は手段。ようやく次のステージに行くためのスタートラインに立てた」と言う。今までがファーストステージだとすると、ではセカンドステージでは何をやっていくのか。
 
そこにはさまざまな芽が見えている。例えば、一昨年アメリカニューヨークのマディソン・アヴェニューに出した店舗。あるいは2年前に始めたインターネットモール事業などがそれだ。また、昨年の3月にはアパレルの(株)メッセージを買収して、いよいよアパレル事業にも乗り出す構えだ。
 
寺田は、セカンドステージではブランドビジネスを作り上げていくと言う。それは「いろいろな企業がサマンサタバサと相談したいとやって来るような会社になること」だと言う。
 
そのブランドビジネスをより強固なもの(あるいはより付加価値の高いもの)に作り上げていく手段がニューヨークの店舗だったり、ECのモールであったり、アパレルへの進出であったりするのだろう。
 
ただし寺田は、こうした動きは思いつきでやったのではないと強調する。どれもが何年も前から頭の中で生まれては消え、消えては生まれ、その中で熟成されてきたアイディアだと言うのだ。
 
大胆なようで繊細。理論にのっとったように慎重な寺田だからこそ、サマンサタバサは大きく飛躍できたのだろう。
 
欧米のブランドビジネスは一人のデザイナーや職人が創業した。日本のデザイナーも海外で成功を収め、日本のデザイナーズブランドとして君臨した。
 
それらと比較して、サマンサタバサはいわゆるデザイナーズブランドではない形で出発し、しかし、最初から世界を見据えてブランド展開をしている。これは従来にない発想で、ここに寺田の真骨頂がある。業界の人間に「どこの商品をベンチマークしているのか」と聞かれ、寺田は「どこもベンチマークしていない」と答えたそうだ。まさにそれこそが同社の戦略なのだろう。
 
その寺田にどのように人を育てているのか聞くと、「今は出来ていない。点数にして35点」と答えを返した。結構自分に厳しい人だ。。

(2008・6・24)


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