【第20回】超優良経営の秘密はコスト重視、大学の信頼篤い新京都企業の成長性

株式会社 学生情報センター

同業他社とは地主への対応が違う
 
一般的には無名であっても、ある分野ではすこぶる有名で、傑出した実績を挙げている隠れた優良企業がある。京都に本社を置く(株)学生情報センターはその典型だ。同社が有名なのは教育界、なかでも大学においてであり、恐らく今、日本でいちばん大学とのパイプが太い企業と言えるのではないだろうか。

それでは同社の主事業は何か。それは、学生専用マンションの企画、入居、管理である。学生専用マンションとは、分かりやすく言えば、学生専用に特化したワンルームマンション。子供を地方から都市部の大学に進学させる場合、昔は学生寮や下宿の世話になったのが今は学生専用マンション。同社はこの分野の最大手企業なのである。
 
ワンルームマンションのビジネスモデルは決して複雑ではない。地主がおられて、そこにマンションを企画し、地主に建てていただく。そのマンションに賃借人を入れて管理する。企画者側は管理費や手数料収入を得、地主は家賃収入を得る。
 
この種の企業は世の中に多い。だが、同社のスタンスは他と大きく異なる。ここに、同社が大学とのパイプが太い(=信頼性を築いた)秘密があるのだ。
 
多くの同業他社が行なっているのが、一括借り上げと言われる方式。地主に入居率80%程度で家賃保証をし、管理運営側がそれをサブリースする形で入居者に貸す。地主にとっては入室ゼロでも家賃がある程度保証されるという安心感がある。一見いいようだが、もし満室になるのなら、それだけの収入が減るということになる。
 
しかも最近は、家賃保証の固定期間が契約の30年に対して10年しかなく、後は改定されるため思わぬリスクを背負う可能性や、保証を行なう会社の信用リスクも出てくる。実際に地主とトラブルになっているケースもあるのだ。


24時間学生の相談を受け付ける
 
結論から言うと、学生情報センターはその方式をとらない。家賃保証という名のサブリーズをしない代わりに、徹底して愚直なまでに入居率を高めるのだ。同社の創業者で、学生情報センターグループ代表の北澤俊和はこう説明する。
「お客さまにとって、サブリースは一見安定しているように見えますが、実はサブリースを受ける会社が儲かるようにできている。それより何より、最初にお客様に80%分を払ってしまえば、入居率80%以上をクリアすれば、営業も安心してしまい、100%にしよう(本当の客のためになることをしよう)とは思わなくなってしまう。だから、とにかく愚直にお客様のために営業する」
 
こう書くと、単に一生懸命営業をしている会社のように捉えがちだが、実は全く違う。例えば入居した学生のために、24時間対応のメディカルサービスやトラブル処理を行なっている。ストーカー、セクハラ相談までもがこの24時間サービスのメニューに入っている。この種のサービスに加えて、地震などが起こった場合、いち早く保護者への連絡を行なうことも怠りない。実際2000年9月、東海地方が集中豪雨に見舞われ、死者・行方不明者8人を出す大惨事の際には、災害地区にあるマンションの入室者全員と連絡を取り、浸水し孤立したマンションには社員が水に浸かりながら弁当を人数分届けたという美談まであるのだ。この種のことを、どんな場合にも行なっているからこそ、大学や親との信頼関係が築けたのだろう。


大学移転が飛躍のきっかけとなった
 
同社の創業者であるグループ代表の北澤は、学生ベンチャーの先駆けである。70年代前半、学生時代に名古屋で『求人アルバイトニュース』を立ち上げた。事業は順調に推移し、多い時には北澤の手元に月額70万円ものカネが残った。当時の大卒初任給が4万円程度だから、この額がいかに凄いかが分かる。
 
ところが面白いことに、北澤は大学卒業と同時にこの事業を止め、郷里の京都に戻りサラリーマン生活を始める。「長男だから京都に戻らなければならないという意識があった(北澤)」というのが理由。しかし、ここからがまた凄い。煙草の自販機や店舗設備の大手企業に入社した北澤は、新人ながらダントツの成績を上げた。得意先のスーパーなどに売り込むには昼間は相手にしてもらえない。早朝がいちばんと考え、毎朝四時ごろ市場に出かけた。そこで顔なじみになり、次々と仕事を獲得していったのだ。
 
だが、出る杭は打たれる。心よく思わない上司がいて、結局会社を辞めることになる。それを知った得意先は、北澤に引き続き仕事を依頼してきた。店舗設備どころか建築まで。それで作った会社が北和建設(現在はグループ会社の一つ)だった。
 
同社の飛躍のきっかけとなったのが、同志社大学の京都府京田辺市へのキャンパス移転だった。住宅地ではあっても、学生を受け入れるマンションやアパートはない。ここに学生専用のマンションを作ればいい。それを地主に提案し北和建設が受注すれば、新しいタイプのビジネスになる。そう考えた北澤は、その周辺の地域の地主に学生マンションの魅力を説いて回った。これが契機となり、企画開発から入居募集、その後の管理運営まで一気通貫で行なうビジネスモデルを確立し、名古屋に進出。新会社「名古屋学生情報センター(後に学生情報センター)」を設立し、学生マンションビジネスを拡大させていった。


コストをかけて社会貢献することを厭わない
 
現在同社の業績は2007年度で売上高280億円、経常利益21億円(連結)である。
「マネーゲームをするなら。売上も利益ももっと出る」と北澤は言う。サブリースをすると手数料収入ではなく家賃収入になるため、売上は飛躍的に上がるし、サブリース方式を取るなら、利益はもっとかさ上げされる。しかし、「そんなことをしても意味がない」と北澤は言い切るのだ。
 
実際、同社はコストのかかることを積極的に行なっているかのように見える。
 
毎年春には全国8ヵ所で、新しく入室した学生を招き、オーナーや学校関係者と共に一流ホテルで盛大なパーティーを開催する。このパーティーに膨大なコストをかけている。別にやらなくてもすむことかもしれないが、学生たちはそれぞれが仲良くなり、オーナーとも挨拶ができる。大学側も安心する。
 
まだある。京都、東京をはじめ支社にはナジックプラザを併設、学生や大学関係者が勉強会や会合に、無料で使うことができるスペースを提供している。また、同社が主体となって立ち上げた財団法人学生サポートセンターは、学生のモラル、マナーの向上、学生ボランティアやベンチャーへの助成、ベトナムの学生との交流事業などを積極的に行なっている。
 
そして極めつけは、大学からアルバイト紹介業務のアウトソーシングを受け、各大学の公認サイトとして、学生アルバイト情報ネットワーク(アイネス)というサービスをネット上に展開していることだ。
「大学も人手が足りない。こちらでサポートできることは喜んでお手伝いする」と北澤は言う。もちろんこれは同社の事業展開にも寄与するわけだ。
 
オーナーのためによかれと考えた営業を行ない、学生のために十分なサービスを提供する。それだけでは物足りず、そこから派生するサービスをさらに考えて実行する。社会貢献という言葉を使うなら、同社の事業はまるで社会貢献の見本のようだ。
 
こうした、企業行動がどれほどの価値を生み出しているか。京都では、老舗企業が暖簾を守ることが一つの教えとなってきた。その意味では新しいタイプの京都企業の姿と言ってもよいのではないか。今、日本において大学に最も信頼されている会社と言われているのも、頷けることだ。

(2008・4・22)


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