【第19回】調剤薬局の乱立競争を尻目に高成長する新型薬局の強み

クオール株式会社

いい病院の前にいい調剤薬局を作る
 
医薬分業が進む中、調剤薬局は注目を集めている。調剤薬局とは、普通の薬局と違い、病院で処方箋をもらい、その薬を処方してもらう(買う)ところというのが一般的な認識だろうか。だから、大病院の前には、まさに門前市を為すがごとく、調剤薬局が乱立する。それはそうだ。病院の玄関に、より近い薬局がお客を征するのだろうから。

こうした動きに一線を画しているのが、クオール(株)である。同社は全国各地で調剤薬局をチェーン展開しているが、大病院の前には作らない。乱立競争には乗らない。
「今の状況はバブルです。乱立競争によって地価も上がる。そんなことに金を使うなら、患者さんへの空間作りにお金を使うべきだ」というのが、クオール社長の中村勝の弁だ。
 
きれい事のように聞こえるが、その説明を聞くと理に適っている。
 
実際、クオールの店舗はきれいで広く、しかも工夫がある。
 
例えば、東北の店舗では床暖房が採用されている。子供の多い地域の店では遊びのスペースがある。老人の多い地域では杖を置くための工夫...、等々。
 
なぜ、(大病院という)大きな市場を狙わずに、こうした店作りをするのか。
「もちろん病院の前に作るのはわれわれも同じです。ただ、一日の外来が150人以上あれば店はできる。それより病院をどう選ぶかなのです(中村)」
 
病院を選ぶとは、どういうことか。
「保険診療では、以前は患者本人は無料だった。それが1割、3割負担へとなっていった。その過程で、どうせ負担するならいい病院をという、患者の病院選別が始まったのです」と中村は言う。だから、大病院の前に作るのではなく、(患者が選ぶ)いい病院(患者が選ぶ)の前に作ることが重要と言うのだ。それはマーケティング的に正しい。
 
だから、ターゲット先の「病院の先生と交流をし、2年間くらいは勉強会をやる(中村)」ことに注力しており、この数年、病院に対して、門前に作る調剤薬局のプレゼンテーションを6回行なったが、数社との競合の中、全部クオールが獲得した。


いい情報を入手できるからこそのM&Aで成長
 
同社は設立が1992年。2007年3月期の業績は売上高248億2700万円(前年比114.4%)、経常利益8億7500万円(同114.7%)を挙げている。店舗数は186店舗に及ぶ。この数年増収総益を続けており、紛れもない急成長企業である。同社のような丁寧な店舗展開をしながら、こうした成長を持続できるのはなぜか。
 
そこにはM&Aというキーワードが浮かび上がってくる。
「われわれのような店作りでは、年間10店舗がせいぜいです。だからM&Aを年間3~4案件はやっていきたい」と中村が言うように、同社はこれまでにもいくつかのM&Aを行ないながら成長してきた。東北や中部などへの店舗展開はこのM&Aがベースとなっている。しかし、ここで疑問がある。独立した調剤薬局をそんなに簡単に買収できるものなのか。またいい病院(と、その門前)の情報が大切なのだとしても、そんな、クオールの基準に合うM&Aの案件情報をどうやって得るのか。一朝一夕に得られるものではない筈だ。
 
実は、そこで社長である中村の前歴が大いなる効果を発揮する。中村は92年に創業するまでは医薬品卸の企業にいた。創業してからも、医薬品卸の業界に自社の経営状況を積極的に情報公開し、逆に新規の案件情報も得ていった。
「全国で病院を回っている医薬品卸ほど新規案件をいちばん知っているところはない。でも情報を得るためには、こちらも情報を公開し、信頼を得ないことには始まらない」
 
この情報力の強さが、同社のM&Aを支えているということなのだ。


調剤薬局から一般薬局も視野に
 
なぜ治験の会社? と思うが、「これによって医療機関とのパイプが太くなる」と、中村は事も無げだ。では、これも情報力強化の一貫かと言えば、それだけではない。
 
日本では元来治験には患者サイドが協力的でないなどの難しさがあった。しかし、治験の広告なども解禁となり、国内で広がりつつある。同社では既に治験コーディネーターを20数名育てており、利益率の高さから、「有望な2本目の柱」になる可能性が出てきた。
 
一方、一般薬局の方はどうか。
「今年の3月に薬事法が改正され、薬は薬剤師が必要な第1分類とそうでない第2、第3分類とに分けられた。だから本格的に調剤薬局で第1分類の薬を売っていきます。一般薬局を持っているのはそのための布石」と中村は答えた。
 
従来、調剤薬局は一般の薬を販売しなかった。「面倒だし、在庫リスクもある(中村)」からだ。しかしこれからは違う。クオールのきれいで広い店舗はすでに第1分類の一般薬販売も念頭に置いてのことなのだ。
 
同社ではさらに、オリジナルブランドの商品を手がけており、ネットなどでも販売をしている。青汁、黒酢粒、ブルーベリーなどがそれだ。
 
ところで、クオールの英文社名はQOLと書く。Quality of Life(クオリティー・オブ・ライフ)の略語をそのまま読んだのが社名である。同社では、薬局で患者が手に取れる月刊の新聞を出している。題して『クオール薬局新聞』。4ページの簡単なものだが、なかなか切り口がよく、デザインも優れている。聞けば社内のスタッフで作っているという。そのために有名な広告制作会社の幹部を引き抜き、責任者にしたそうだ。会社説明用のDVDもリクルート用の小冊子も社員による制作。いずれも質が高い。社長の方針といえばそれまでだが、こういう余裕を持つ会社には目に見えない強みが感じられるのも事実である。
 
こんな会社が増えるといいのにと、思わせる会社である。

(2008・4・15)


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