【第18回】使いにくい?半導体容器で60%のシェアを誇るメーカーの秘密

株式会社 ミライアル

経常利益率35%、5年後に売上倍増
 
ちょっと想像して欲しい。近年、PCはおろか、家電、AV製品などどこにでも使われる半導体。その半導体のベースになるのはシリコンウェハーだ。一枚のウェハーから何個もの半導体ができてくる。さて、本題はこれからだ。ウェハーを運ぶための容器が必要になる。その容器を作るのが大変な技術なのだ。それを作っているのが(株)ミライアルという会社である。

同社は、大変に利益率の高い会社である。数字の羅列になって恐縮だが、ここ数年の売上高と経常利益の推移を見てみよう。
 
まず、2005年1月期。売上高73億5800万円に対して、経常利益23億5700万円(経常利益率32.0%)。2006年1月期、売上高88億2000万円、経常利益29億700万円(同33%)。2007年、売上高123億7600万円で、経常利益43億9700万円。なんと利益率35.5%である。そして2008年1月期は、売上、利益ともに更新し、売上高146億5500万円、経常利益50億4500万円となっている。経常利益率こそ前年度を若干下回ったものの、それでも34.4%という高率である。
 
シリコンウェハーは現在300ミリという大きなウェハーが主流になりつつあるが、その出荷容器として、ミライアル社製容器は実に60%のシェアを持っているというのだ。
 
この業績が今後どうなるのか。社長の兵部行遠はこう分析した。
「一つの容器にウェハーが22、23枚入る。現在300ミリのものが年間260万~270万枚出荷されているから、単純に22で割って、1万3000円台後半といわれる容器の単価をかけると規模は自ずと知ることができる。業界では5年後に600万枚と言われているので単純計算でも5年後には倍になります。でもね」そう言って、兵部は表情を引き締めた。「決して安穏とはしていられない」と言うのだ。
「半導体は利益が取れる時期がある。最初は高くても、そのうちバケツ一杯いくらという値段になるわけだから、容器もだんだんに価格を下げていかなければならない。それに設備投資して工場を作っても、監査にパスしなければ、その工場は稼動できない」ほど厳しいから、そう単純に喜んでもいられないのだそうだ。


リサイクルできるから採用された
 
しかしそれにしても、なぜ同社の容器はこのようなシェアを確保できたのか。これには少々説明が必要だ。
 
そもそも同社の競合は、信越ポリマーである。
「信越のよさは使いやすさにある。われわれのは使いにくい」とこともなげに兵部は言う。
 
ここに、ポイントがある。信越製の容器は使いやすくするために部品点数を減らし、容器の素材である樹脂と部品を一体成型しているというのだ。それに比して、同社製はすべてバラバラに分解できるようになっている。
 
ウェハー容器というのは納入するとウェハーメーカーの側でもう一度徹底して洗浄を行なう。少しでも汚れなどがあるとウェハーが駄目になるから慎重なのだ。この洗浄の際、一体成型してあると扱いやすく洗いやすい。ミライアル製は分解して洗うので、手間がかかるのだ。
 
それでも、なぜ、使われるのか。それはリサイクルの際に効いてくるからだ。この容器は、ウェハーの品質を保持するために、一回しか使用しない。あとはリサイクルするのだが、一体成型のものはリサイクルしにくい。ミライアル製は部品をばらせるので簡単にリサイクルできるのだ。なにせ、この容器だけで年間5000トンもの原材料を使用しているため、その費用とてバカにならず、したがって同社製の容器は人気が高い。
 
それに加えて、もう一つ見逃せない品質のポイントがある。半導体業界では世界的なスタンダードを作るために、1994年頃からスタンダード会議を各分野ごとに行なっているが、容器の分野でその基準を達成しているのは、日本の2社だけなのである。そもそもが世界的な競争力を持っているのだ。
「そのためには、さまざまなテストを繰り返しました。飛行機で運ぶ際の気圧の変化に耐えられるか。トラックでアメリカの砂漠を通る際の温度変化に耐えられるか。あるいは落とした際の衝撃には?(兵部)」
 
これらをすべて実験して出来上がった製品だから付加価値が高いのだ。


他社が真似できないローテク
 
そもそも、同社はなぜこのような特殊な分野に参入できたのか。同社の設立は1968年。当時同社が製造していたのは絶縁材料だった。それも電気特性が良く耐熱性の高いフッ素樹脂を使っていた。顧客は電機メーカー。その顧客が半導体を作り始めたと同時に、同社にも依頼が入った。工場内で使う半導体容器を作って欲しいと。シリコンウェハーというのは製造過程で硝酸、燐酸、硫酸など多くの強烈な薬品を使う。これに耐えうるという意味でフッ素樹脂が着目され、同社に依頼が入ったのだ。
 
このように書くと、たまたま波に乗っただけの企業のようにも見えるが、決してそれだけではない。
「一番のポイントになったのはスタンダード会議。ここで積極的に世界の大メーカーと議論を交わしたことが良かった。もともと日本が強い分野だったが、インテルともテキサスインスツルメンツとも議論ができた(兵部)」ことが幸いしたというが、そのために、同社は米国にサテライトオフィスを作って情報収集を重ねるなど、積極的な活動を続けていたのだ。
「うちはローテク。他の企業も真似しようがないし、そんなリスクは取れないでしょう」というのが同社の最大の強みかもしれない。 
 
シリコンサイクルという言葉は昔のものになりつつある。多様な分野に半導体が使われているので、分野ごとに波はあっても、平均するとフラットになりつつあるのだそうだ。こうなると、同社のように容器専業メーカーは強い。いつもニーズが存在しているのだから。
 
ただし、ニーズが高まるというのは、設備投資が必要だし、工場を動かすと昼夜作り続けなければならない。また、不具合が起きると、信頼性が必要な分野だけに、工場閉鎖にも繋がりかねないリスクがある。それさえ、万全なら同社の今後は安泰だ。

(2008・4・9)


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