【おもろい会社とは何か?】第4章

・「会社を続けていく」ことは難しい
・ぶれない姿勢が強い会社を作る
・ビジョナリーカンパニーは「ぶれない」

「会社を続けていく」ことは難しい

例えば経営者に会社とは何か、と問うと、どんな答えが返ってくるだろうか。

もちろんさまざまな答えがあるには違いないが、ここでは、会社というのは継続であると言っておきたい。事業をして利益を出すことは(決して簡単ではないが)ある程度の経営者には出来る。しかし、会社を続けていく(そのためには利益を出し続ける)ことは、大変な困難を伴うことだからだ。ゴーイング・コンサーン(企業を継続していくこと)という言葉があるが、その言葉の裏には会社を続けていくことは社会的責任を伴っているということが隠されているのである。

では会社にとって継続とは何を意味するのだろうか。それは信頼性を得るということである。日本語にはいい言葉があって、継続の一つの表し方として、暖簾と言う言葉を使う。暖簾を英語に訳すとGoodwill(信頼)となる。

長く続いている企業は、それ自体が信頼性の賜物というわけだ。会社を継続すると簡単に書いたが、一つの会社を何十年にも亘って続けていくことは大変なことである。

このあたりのことは次項で書きたいが、今回のテーマは、事業を継続することに関連している。

おもろい会社であることの4番目のキーワードは「ぶれない会社である」ということだ。ぶれないとは何が何に対してぶれないのか。一言で言えば、会社の軸が安定しているということだ。会社の軸とは社長の考え方である。だから簡単に言えば、どんな時でも掲げたこと、発言したことを守り通すことが、即ち「ぶれない」ことになる。

例えば、企業理念を掲げたら、それをどうやって浸透させるのか。社員一人一人に浸透させるのは大変なことだ。しかし、もしその理念が正しいなら、きっちりと社員に理解させなければならない。その理念を社員に実行させなければならない。

単に、壁に掲げたり、朝礼で唱和させるだけでは浸透はしない。社員一人一人に語りかける。あきらめずに面倒がらずに、その意図を社長自ら語りかけていかなければ浸透はしない。だが、それは大変なことだから、多くの経営者がいい加減にお茶を濁してしまう。ところが、事業を続けるというのは企業理念を具現化していることに他ならないから、そういう事業が続いていくわけがない。ぶれないということは、一度掲げたことは守り実行していく姿勢である。


ぶれない姿勢が強い会社を作る

ぶれない会社はどんなことでも決めたことをやり通す力を持っている。そうすると事業には強みが出てくる。

なぜなら、ぶれる経営者は、市場を見てその市場に対応しようとするが、ぶれない経営者は自らの理念を持って市場を作っていこうとするからだ。どんなにマーケティング理論に裏打ちされた商品や販売方法であっても、その商品が売れるかどうかはまた別の話である。おそらく、マーケットを見て対応しようとする経営者は、柔軟な対応を心がける。その結果、当初の方針を覆し、別の戦略を組み立てようとする。もちろんそれを悪いとは言わない。だが、それは失敗する。そういうものだ。

反対に、ぶれない経営者は、たとえ商品が売れなくても(その商品が世の中にとって必要だという信念があれば)動じない。むしろ、細かく何が原因かを調べる。一つ一つ検証してみる。製造プロセスに問題があるのか。商品の中に何か不具合があるのか、販売方法のどこかに問題があるのか。実際に客に聞く、販売店に聞く。そうすると意外なところにネックがあるのに気付く。それを直すと、商品は売れ始める。

雑誌の世界では、「モデルチェンジは失敗する」という格言がある。なぜか。モデルチェンジを必要とする雑誌は売れていない。売れないからモデルチェンジをするわけだ。ところが、売れていない理由がはっきりしていないのにモデルチェンジだけが先行し、デザインをいじってみたり、連載を変えてみたりする。しかしそれがうまくいくはずはない。したがって、モデルチェンジ後の部数はさらに低迷し、休刊となる。雑誌だって商品である。売れないことの意味を追求せずに、売れるものは作れないのである。

ただでさえ事業を継続していくことは大変なことである。なぜなら、商品にはライフサイクルがあり、山があれば谷があるからだ。寿命すらある。新しい技術が出れば古い技術は淘汰される。その時々で一喜一憂し、柔軟に、市場を見ながら対応するのではなく、ぶれずに経営者としての理念を持って、市場を作り上げていくような気持ちで対応していれば、自ずと道は開けていくものである。


ビジョナリーカンパニーは「ぶれない」

このように「ぶれない」と書くと、精神論と取る人がいるかもしれないが、ぶれないということはむしろ「実行力」である。

例えば「儲けすぎない」ということを以前に書いたが、これも企業としての理念である。ただし理念は実行されてから始めて意味を持つ。儲けすぎないためにというよりはいい品質の商品やサービスを提供するために、適正なコストをかけ、適正な利潤を得る。こうしたアクションが、「ぶれない」ことの本質である。

以前に『ビジョナリーカンパニー』(ジェームズ・C・コリンズとジェリー・I・ポラスの共著:日経BP社刊)と言う本が話題になった。ビジョナリーカンパニーとは何か。簡単に説明すると、基本理念を持って成長する企業のことである。基本理念をただ守るだけでなく、常に先進のアイディアを求めて動く企業。新しいことでもそれが基本理念と合致すると判断したら、果敢に挑戦する企業のことである。ここで重要なポイントは、基本理念に合致するという点だ。基本理念を曲げてまでやることはいけない。ここにもまた「ぶれない」ことの重要性が書かれている。

事業を継続すること、新たな事業を生み出すことは大変なことである。商品にはライフサイクルがあり、山があれば谷がある。寿命すらある。新しい技術が出れば古い技術は淘汰される。しかし、多くの企業は大小を問わず、事業を継続して行なうために、さまざまな努力を払っている。

だが敢えて言うと、事業は単に継続していくだけでは駄目である。そこに理念がない限り、事業が事業として成り立っていかない。

(2008・2・6)


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