【おもろい会社とは何か?】第3章

・儲け過ぎる経営者の間違い
・適正なコストに対する考え方がどれだけ重要か
・コストをかけて信頼を勝ち得る企業がある

儲け過ぎる経営者の間違い

爪が長い――という言い方をご存知だろうか。あの会社(経営者)は爪が長い、と言えば、それは儲けに走りすぎている、欲をかく会社(経営者)であるということだ。

これは実は微妙な表現である。儲けがないと、事業は成り立たない。「儲けて何が悪い」と経営者からお叱りを受けそうな表現である。

だが、儲けて悪くはないが、儲けすぎはよくない。当たり前の話だ。しかし、世の中にはなんと欲をかく経営者の多いことか。儲け話があれば、どんな経営者でも身を乗り出すだろう。しかし、爪の長い経営者はそれを出来るだけ独り占めしようとする。1円でも多く稼ごうとする。挙句の果ては、儲けた金から税金を払わないために粉飾する。こうなっては法を犯しているわけだから、何をかいわんやだが、そんな会社は意外に多いのである。

もちろん反論もあろう。「売り上げが上がらないのに1円でも多く儲けようとするのは悪いことなのか」、「経営者は1円でも多く売り上げを上げることで、経営者足りえるのだ」と。

事業とは本来、社会の役に立つことを行なうことである。社会貢献と言う言葉があるが、事業に儲けたカネで社会貢献をするというのは、おかしい。事業そのものが社会貢献になっているべきなのである。そうでない事業をしているなら、そんな事業はさっさと止めるべきだ。

儲けたカネで行なう社会貢献は個人で行なうべき話である。アメリカ人の肩を持つわけではないが、このあたりが徹底しているのは、彼の地の人たちだ。多額の所得を得ている人は毎年必ず多額の寄付を行なう。ボランティアに参加する。それによって初めて、金持ちである事を認められる。日本人の経営者の場合、多くの大金持ちがそういうことをしない。豪華シャワーつきの社長室を作ったり、ハワイに別荘を買ったり、カリフォルニアにワイナリーを所有してもよいが、それ以上に社会貢献を個人として行なうべきである。それがなければ成金のそしりを免れない。


適正なコストに対する考え方がどれだけ重要か

爪が長い経営者についてもう少し述べよう。冒頭に微妙な表現だと書いた。爪が長いかどうかをどこで見分けるのか。「爪が長い」のと「爪が長くない」のとの違いはどこにあるのか。確かに微妙である。

その違いを一言で言うなら「コストに対する考え方」である。どんな経営者もコストについては厳しい。<コスト=費用>は出来うる限り切り詰めたい。しかし、品質のいい商品を作る、品質のいいサービスを行なうためには費用がかかる。このことが頭になくて、ひたすら費用を切り詰めようとすると、問題が起こるのだ。コストをいたずらに落とすために品質を低下させたり、人件費を抑えるために、より安く人を雇おうとしたり、はたまた人員を減らしたり。合理的な妥当性があるコストダウンは大いに歓迎すべきであるが、そうでない企業もまた実に多い。

昨今問題を起こしている企業を見ると、その多くが、きちんとかけるべき費用に対する認識がないまま、利益を追求してきた企業であることがよく分かる。いろいろな偽装の問題、偽の品質表示の問題すべてが爪を長くした結果である。こうしたことはなかなか表立って出てこないから、それをいいことに隠し通せると経営者も思いがちである。しかし、近年は内部告発も頻繁であるし、ネット社会ではこうした噂が広まるのは早い。そううまくは行かないのだ。


コストをかけて信頼を勝ち得る企業がある

逆にきちんとコストをかけている企業とはどんな企業か。当たり前のことを当たり前にやっている企業である。しかし、さらにもう一歩進んで費用をかけている企業も存在する。

例えば、京都に本社を置く学生情報センターという会社がある。この会社の主事業は学生専用マンションの運営管理であるが、年一回全国にある各支社で新しく入居した学生を迎えて「ウェルカムパーティー」という歓迎会を催すのである。どの会場も一流ホテルを使用し、大宴会場には、学生のほかにマンションを所有しているオーナー、大学関係者などを数百人単位で招待する。そしてオーナーと学生との交流を図るのだ。これにはとてつもない費用がかかっているはずだ。

ちょっと考えてみよう。これをやる必要があるのか。コストの観点から言えば、すぐにでも止めておかしくないような行事である。しかし、これをやることにより学生(親)の安心感、大学関係者の信頼、などが増すことは間違いない。同社はもちろんこれを自社のプレゼンテーションの場にも使っている。

同社は業績に関係なくこの行事をやり続けているのである。それも最初は小さな規模だったという。付け加えるならば、同社は学生のナレッジベースの向上などの目的で財団法人を設立している。社会貢献の費用も半端ではないはずだ。

創業者で会長の北澤俊和はこれについて「売り上げや利益を短期的に上げるというなら、すぐにでも出来る。パーティーだって止めればそれだけコストは下がる。しかし、それが本当にいいことなのかどうかを見なければ経営などやってられない」と語ったことがあった。その通りである。

品質とは何か、よいサービスとは何か。この点を追求している企業は決して爪の長い会社ではない。

(2008・1・22)


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