【おもろい会社とは何か?】第1章

・業績のいい会社がおもろい会社ではない
・社長の顔がはっきり見えるということ

業績のいい会社がおもろい会社ではない

<おもろい会社序説>に書いた通り、この十年来なされてきた産業界の構造転換によって、それを視野に入れて成長戦略を組み立て、実行してきた会社は増えてきた。しかもいわゆる新興企業の台頭が目覚しかった。それはひとえに、それまでの産業界のしがらみ(系列であるとか、業界慣習や常識であるとか、それまでの企業のものの考え方=既成概念とか)に捉われないで、今までにない形でのチャレンジができたからである。
さて、それでは、こうして台頭してきた企業のすべてがおもろい会社かというとそれは違う。では、おもろい会社とは何か。

その本題に入る前に、一つはっきりさせておかなければならないことがある。それはおもろい会社=業績のいい会社ではないということだ。急成長していて、業績もうなぎのぼりで、毎年最高益を更新している会社は存在する。以前『週刊ダイヤモンド』の編集長をしていた時に、「売上、利益(経常利益)が3年連続上昇した会社のランキング」であるとか、資本金は小さいが、同様に急成長している会社を「10年後の大企業」として取り上げたりしたが、こうした会社は数多く存在するのである。

余談だが、「10年後の大企業」という特集で取り上げた会社が、およそ10年後にとんでもないことになった。

2年ほど前だったか、我が家に未公開株の勧誘があり、私は興味津々で、その資料を送ってもらうことにした。何か(の執筆)に使えると思ったのだ。するとどうだろう。送られてきた資料の中になんと、「10年後の大企業を」特集した『週刊ダイヤモンド』の抜き刷りが入っているではないか。裏を見ると<編集人 松室哲生>となっている。思わずその抜き刷りを開くと、くだんの未公開株を売るといっている会社を、10年後の大企業の上位ランクで取り上げていたのである。

この未公開株の勧誘は、もちろん詐欺だと分かっていたが、その会社は他の同封資料によると10年後の時点で、売上1兆円超を計上していると言うのである。未公開株の詐欺はともかく、実際にその会社が売上1兆円超を上げているならまさに大企業の仲間入りをしたことになるのだが、まずこれはでたらめであると考えた。

で、実際はどうだったか。その社長は詐欺容疑の共犯で逮捕されたのである。売上は10数億円だったそうだ。しかし、同社は業界紙・誌や、経営書にも取り上げられており、どうやって粉飾をしていたのか、不明を恥じるのみである。

これは極端な例だが、業績とおもろさは連動しない。いや、長期的に見れば、おもろい会社は成長性があるといえるのだが、その辺りのことはだんだんと紐解いていこう。


社長の顔がはっきり見えるということ

おもろい会社――そこにはいくつかのキーワードが存在する。
例えばこんな言い方ができる。おもろい会社とは社長の顔が見える会社である、と。社長の顔が見える会社とはどんな会社か。それは、外に対しても、内に対しても、社長の存在感がある会社のことである。

では存在感とは何か。それは出たがりということではない。常に、自らの意見をはっきり内外に示している経営者のことである。言葉を変えれば、社長の考え方がはっきりしていて、常にそれを表現している会社である。社長の考え方がしっかりしているというのではない。はっきりしていると言うのである。

こういう社長はすぐに分かる。取材に行くと、自らの言葉で一生懸命に説明するのだ。業績の話。製品開発の話。はたまた業界の話から、社員の教育の話まで。
話のうまい下手は関係ない。とつとつと喋る人もいれば、口角泡を飛ばすように説明する人もいる。極端な話が何を言っているのかよく分からないようなケースすらある。だが、このような場合でも不思議と、言いたいことは伝わってくるのである。

存在感がある経営者を、別の言葉で表現すると、それは、コミュニケーション能力に長けているということだろう。

考えてみれば、会社を経営するということは、日常的に100も200も解決しなければならない問題に直面するということだ。当たり前の話である。何かを立ち上げたり、運営したりするということは、まさに問題(あるいは問題になる要素)を新たに作るということに他ならない。

これは新製品の開発においても、新事業の立ち上げでも、新しい販売ルートを開拓するということでもまったく同じで、だから当然のごとく困難がつきまとう。社内の組織を改変するのでさえ、いろいろな迷いがあったりもする。

これらを解決する唯一の方法は何か。それはコミュニケーションということである。

何か問題が起これば、すぐにその問題を解決するように動くのは経営者として当然だが、人が関わり、多くが人によって起こる問題を解決するには一にも二にもコミュニケーションが必要だ。もちろん、すべてを自分が出て行って解決するというのではない。部下にどれだけやらせるかが重要なポイントになる。しかし、優秀な経営者は部下に任せていても、すべてを把握し、ピンポイントでチェックをすることができる。なぜならば、日常的にコミュニケーションをとっているからである。

間違いやすいのは、マスコミなど、外に出て話をすることを得意としている人である。一見こういう経営者は、存在感がありそうに見える。しかし、実態は違う場合が多い。私の知っている、新興上場企業の経営者で,マスコミをはじめ講演会や業界でのスピーチなどを得意としている人がいる。が、この会社では、この数年で、懐刀だった副社長が去り、幹部が退社し、新たに迎えた社長も結局力を発揮できずに去っていく、といった状況が繰り返されている。何のためのコミュニケーション能力なのだろう、と思う。自己顕示欲が強いのは結構だし、表現力が豊かだから話もうまく、したがってスピーチなどの依頼も来るのだろう。しかし、である。経営者が存在感を示すというのは、決して、外で活躍することではないのである。

本当の存在感を示す経営者――。そういう人には尊敬の念が湧いてくるのだ。

(2008・1・7)


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