【序説】第2回

・ベンチャー勃興を作った大不況とIT化
・コストコンシャスなビジネスが注目された
・キーワードは「構造変化への対応」

ベンチャー勃興を作った大不況とIT化

近年ベンチャー企業が勃興してきたことには時代背景が大きく作用している。

1992年頃からのバブル崩壊で、日本の産業は著しい痛手を受けた。不良債権の拡大に金融機関をはじめとする大企業が喘いだ。政府は規制緩和を軸に内需を盛り上げるのに賢明だったが、規制緩和の恩恵を蒙ったのは、出資規制等で日本国内に拠点を得られなかった外資企業であり、金融の破綻とあいまって、こうした外資が躍進していったのである。

こんな状況下で、意外にもベンチャー企業の勃興は勢いを増した。

それを後押ししたのがITの進展と大手企業のリストラクチャリングである。コストを著しく圧縮する必要に迫られた大企業(そして中堅企業)は、不良資産の処理や、不採算事業からの撤退といった大きな改革に手をつけ、一方で組織のスリム化にも動いた。まず、内省型で行なっていた多くの業務をアウトソーシングする方向で動いた。同時に、当時盛んに言われた組織のフラット化(指示命令系統をピラミッド型から、間に関与する人間を減らすことにより情報流通をよくする動き)を進め、当時まだ部門に数台という形で設置されていたPCを一人一台に変え、いわゆるIT化を進めていった。

ここでいろいろなビジネスが生まれた。

世の中が(企業の力によるところが大きいが)ネット化されていくことで、一気にビジネスチャンスが生まれていったのである。

このネットを利用したビジネスを、ITビジネスと呼んで(本当はITでもなんでもないのだが)持て囃したことで、多くの一攫千金を夢見る人たち、特に若い人たちのネット事業への参入が相次いだ。


コストコンシャスなビジネスが注目された

しかしベンチャービジネスは、実はネット分野だけでなく、もっと大きな広がりを見せることになる。そのキーワードは「コストコンシャス」である。コストコンシャスといっても分かりにくいかもしれないが、要はコストダウンに繋がるサービスを提供するビジネスで、その代表がアウトソーシングである。

これにはさまざまな理由があるが、最大の理由は企業がコストダウンに迫られたことによる。大手企業は不良債権処理を進めるために資産を売却したり、不採算部門を整理したり、またそれに関連して人員の整理を進めた。資材の購入や取引においても見直しを進め、既存の取引先はおろか、系列企業といえど取引を見直されたため、大手企業から始まったコストダウンの波は、中堅企業、中小企業にまで及んだ。

この波に乗るようにして人材のアウトソーシング事業が進み、派遣社員が企業内に増えていったし、部門ごと事業を引き受けるといったビジネスが起こってきた。あるいは、部門ごと外に出して独立させるといった手法も見られた。


キーワードは「構造変化への対応」

こうしてさまざまなベンチャーが勃興してきたのだが、成功したところは数少ない。ネット系だから成功したか? 答えは否。アウトソーシングと言っても失敗した企業は多い。つまり、世の流れに乗ったからといってビジネスは成功するとは限らないのである。まあ、そう言っては身も蓋もないのだが、逆に言えば、成功した企業には一つのキーワードがある。
それは何か。

それは「構造変化」という言葉だ。構造変化を捉え、この構造変化に対応すべくビジネスのスキームや、商品やサービスの中身を考えた企業――。こんな企業が成功した。

そして、こういう会社の中に「おもろい会社」が多いのである。

第三次ベンチャーブームといって数多くのベンチャーが世に出てきたが、本当に成功する企業は当然のことながら数少ない。唯一成功したのは、時代が大きく変わりつつあった当時に、その構造変化に目をつけた企業なのである。

この「構造変化」という言葉は分かったようで分かりにくい。具体的に言うとどういうことなのか。その辺りを次回に取り上げたい。

(2007・12・7)