今週の週刊経済誌の読みどころ_2013.1.8

今週の第1位は『週刊東洋経済』

週刊東洋経済 ... メイカーズ革命
日経ビジネス ... シリーズ動き出す未来① 幸せな資本主義
週刊ダイヤモンド ... ここまで治る! 超先端医療
週刊エコノミスト ... インフレを学ぶ

 新年早々の経済誌は実は年末には刷りあがっています。予約購読をしている人の手元には年末に届いている。いや、だからつまらないと言っているわけではありません。何といっても新春号です。いい企画が揃っていました。
 そのなかで群を抜いていたのは『週刊東洋経済』でしょうか。特集のテーマはモノ作り。それも、誰でもがメーカー(同誌はメイカーと記述)になれるというものです。それを可能にしたのがデジタル技術です。アメリカでは大きな潮流になろうとしていて、それはいずれ日本にも訪れるでしょう。一読の価値ありです。ということで、これが今週の第1位です。
 次に注目したのは、『日経ビジネス』の特集です。テーマは「幸せな資本主義」。冒頭の記事では、神奈川県の高校生がウガンダのビジネスマンに融資をした、いわゆるマイクロクレジットの話が紹介されています。これが第2位。
 『週刊ダイヤモンド』は山中教授のノーベル賞に沸く「最先端医療」の実情を特集しました。話題の尽きないテーマなだけに、読んでいて結構面白いのですが、『週刊東洋経済』や『日経ビジネス』のような独自の視点とインパクトに欠ける点が残念でした。
 そして、4位の『週刊エコノミスト』はインフレの特集です。 安倍政権も発足し、経済界(とくに地方の)インフレ期待が高まる中で、「ちょっと待て」というスローガンを掲げた特集です。

第1位
■週刊東洋経済■ <<<  誰でも製造業になれる時代

 「メイカーズってなんだ?」と、初めて目にした人も多いだろう。知らなかった人は絶対に読んでおくべき特集だ。
 発明やアイデアと「ものづくり」の間には深い溝がある。実際に関わった人ならわかることだが、そこを越えることができた人しか製造業者にはなれなかった。ところが、3Dプリンターやレーザーカッターによるデジタルなものづくりの進展、インターネットの活用がその溝を埋め、「素晴らしいアイデアさえあれば誰でもメーカーになれる」時代が始まっている。これはもはや「革命」と言うにふさわしいムーブメントだ。というわけで、『週刊東洋経済』の特集「メイカーズ革命」は、工作少年だった私にはわくわくする特集だった。
 そう!「素晴らしいアイディアさえあれば」、誰でも製造業として起業できてしまう! と目から鱗の特集だったのだ。デジタル化で、個人がメディアを立ち上げ、音楽を配信し、映像も世界中の人々に見てもられる環境になったが、ついにものづくりまで行き着いたということか。
 詳しくは本誌を読んでほしいが、原点は「メイカームーブメント」といって、マサチューセッツ工科大学ビット・アンド・アトムズセンターのニール・ガーシェンフェルド所長を始祖とする運動である。彼は「ものづくりによる自己の確立を説き、世界中に市民工房『FabLab(ファブラボ)』のネットワークを広げている」そうだ。US版「WIRED」編集長を辞め、メイカーとして起業してしまったクリス・アンダーセン氏の著書「MAKERS」(NHK出版)は、この分野の必読書だそうで、インタビューにも登場している。


第2位
■ 日経ビジネス■ <<< 「会社員」がなくなる時代

 『日経ビジネス』は年明けから再びシリーズ企画で船出した。「シリーズ動き出す未来」。前回が「100シリーズ」でわかりやすかっただけに、シリーズタイトルだけではいま一つ何をやってくれるのか不明。「編集長の視点」で確認したところ、「この先、起きようとしている劇的な変化をお伝えしていきます」とのこと。意欲的な企画を期待したい。
 1回目は「幸せな資本主義」だ。これも抽象的なタイトルだが、編集長によれば「カネに支配されない価値観を資本主義にどう取り込むか」にフォーカスしている特集だそうだ。リードを紹介しよう。
 「資本主義が岐路に立っている。リーマンショックから既に4年余り。世界経済は今もその傷が癒えない。(中略)資本主義が本来有するはずの『幸福の希求』という意義は失われたかのように見える。18世紀後半からの産業革命以降、急速に発展したこの仕組みに未来はあるのか。世界が模索する『幸せな資本主義』の最前線に迫る」。
 内容的にはもっと掘り下げてほしいところもあるが、「徹底して社会に優しい銀行」とか、「(グローバル企業は)公益性こそ成長の糧」とか、「経営目標は『社員の幸せ』」とか、真っ当なところに立ち返る経済活動を指し示す言葉が記事のあちこちで目につく。結論的な終章には、「『会社員』の終焉」というタイトルが付けられている。その章のリードには「人・モノ・カネが大企業に集中する時代は終わりを迎えつつある。これまで以上に多くの起業家が台頭し、仕事のスキルはネットを介して共有される。資本主義は、組織や国境を越えて『企業と個人』『個人と個人』が結びつく分散型に向かう」とある。「メイカーズムーブメント」と共通する「分散化」は、個人にクリエイティビティとと幸福をもたらすキーワードかもしれない。ある意味では『週刊東洋経済』の特集ともイメージがダブった。
 第2特集、「異色企業家だけに聞いた 2013年大胆予測」も面白かった。


第3位
■週刊ダイヤモンド■ <<< 最先端医療ではげは治るか

『週刊ダイヤモンド』の新年一発目は「超先端医療」を取り上げた。山中伸弥・京都大学教授がiPS細胞(人工多能性幹細胞)でノーベル賞を受賞し、にわかに最先端医療への注目が高まっている気がする昨今、特集では「5年以内に実現する可能性を持つ『超先端医療』を結集した」という。
 ついに実用化ラッシュが始まる再生医療を取り上げるのはPart1.「再生医療の開花」。毛髪、軟骨、角膜などの実用化が期待される製品がずらりと並ぶ。エリートに薄毛がいなくなる日も近い!? Part2.は、がん、認知症、花粉症などへの治療で新展開をみせる「免疫療法の復活」。認知症は発症前の発見がカギだそうだ。がん治療の最先端はPart3.「がん3大療法の変身」。放射線治療、手術、薬物療法、そして延命も狙える緩和ケアがレポートされている。Part4.「日の丸ヘルスケアの正念場」は、国内企業が欧米メーカーの牙城であるヘルスケア部門に切り込めるかを分析する。
 第2特集は、「誰が音楽を殺したか?」。CDの売上げはピークの3分の1、さりとて配信も伸びない苦境の音楽業界。インターネットやスマートフォンの普及によって、サービスが乱立し、収益構造は激変した。国内のヒットチャートが発表された年末に音楽評論家ピーター・バラカン氏が言った「今年の邦楽チャートは悲惨です。これでも音楽と呼べるのでしょうか」という言葉を思い出した。ヒットチャートは握手券のために複数買いするAKBとSKEなどの楽曲で埋め尽くされていた。


第4位
■週刊エコノミスト■ <<< インフレは歴史から学べるのか

 自民党政権が昨年末に復活し、安倍首相率いるアベノミクスが始動しだした。そんな状況下で『週刊エコノミスト』は、新年早々「インフレを学ぶ」という特集を組んだ。全体を眺めた印象は、総じて「アベノミクスに否定的な立場」を取っているというもの。参議院選挙を見越した劇薬的な政策だけに、負の側面が見え始めたときにどうなるか、9人の専門家が見解をまとめている。
 もちろんこの先経済がどうなるかということは誰にも予測はつかない。バブルを心の底で待望している人は多いはずだ。だが、である。アベノミクスでもたらされている円安株高現象の次に起こる「負の側面」の予測は同誌の指摘を待つまでもなくイヤなものだ。
 その手の情報も溢れている。国債の金利が上昇を始めたらどうなるか? 輸入品目の価格上昇で国内製造業や消費者は物価上昇に耐えられるのか? ハイパーインフレは? IMFの介入は? アベノミクスは日本終了のお知らせか? などなど。
 ま、否定的にばかり見ることが良いわけではないので、あとは様子を見るのが妥当かもしれない。
 「海外脱出日記」という囲み記事で、ある不動産会社社長が一家でアメリカに移住した顛末を紹介していたのが面白かった。


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