今週の週刊経済誌の読みどころ_2013.1.29

今週の第1位は『日経ビジネス』

日経ビジネス ...  ネット化する70億人 シリーズ動き出す未来④
週刊東洋経済 ... 日立に学べ!
週刊ダイヤモンド ... 円安に乗る! 株・投信・外貨投資
週刊エコノミスト ... 安倍バブル

 『日経ビジネス』はここのところシリーズものを多く特集にしています。現在は「動き出す未来」と銘打ったシリーズを展開していて、今週がその4回目に当たります。この種の特集は取りあげるテーマによって当たり外れがあるのが常ですが、今週号は成功したといえるでしょう。特集のテーマはネットの未来で、現在のネット社会がどのように変化していくかを技術に基づいて描いています。ページ数は少ないのですが、「ああ、なるほど、こうなっていくんだ」というような感想を抱かせる具体的な内容と識者のコメントが結構なインパクトとなっています。今週の第1位はこれで決まりです。
 第2位に推したのは『週刊東洋経済』です。地味ですが日立に学べという特集を組みました。2009年3月期に7873億円という巨額の赤字を計上した日立がその危機を乗り越え、再生した様を取材に基づいて描きました。現在の家電各社の大赤字の状況からもタイミングのいい企画ではないでしょうか。
 さて、世間は円安・株高を歓迎しているように見えますが、経済誌はここで大きく論調が分かれてきているようです。円安を容認した上で、それがどのような構造で成り立っているかを論じた上で、それに乗って儲けるための商品を紹介するのは『週刊ダイヤモンド』です。
 一方、円安基調を招いた「アベノミクス」をバブルと断じてその危険性を説くのが『週刊エコノミスト』です。どちらもそれなりの論理展開であり、間違ったことを言っているわけではないのですが、論調が割れるところに雑誌の特長が出て面白いと思います。ちなみに付け加えると、『週刊東洋経済』はニューヨーク在住のリチャード・カッツ氏の「アベノミクスは麻酔かヘロインか」というタイトルの記事を載せています。麻酔にしたっていつかは切れるわけですから......。

第1位
■ 日経ビジネス■ <<<  スマホはそのうちなくなる

 シリーズで未来の社会を追いかけている『日経ビジネス』だが、その第4回目は「ネット」に焦点を当てた。インターネットに関する様々な技術で先端を走る米グーグルの技術開発とその考え方を軸に、未来のネット社会がどのように変化していくかを描いている。
 たとえばスマホはどうなるのか? その答えは「なくなる」。ではその代わりに何が生まれるのかといえば、あらゆるところにディスプレーがあり、見る必要がある時にその情報を映し出して利用するようになる。グーグルの開発者たちが口を揃えて語る未来は「スタートレック」の世界なのだそうだ。
 こうして変化していく未来はどうやら現実とネットの世界の明確な境界線が無くなっていくようだ。
 米アップルはテレビをいつ出すかが注目されているが、そのテレビは音声アシスタントで動き(現在のiPhoneで活用されているSiriの技術)、その人の日常的な嗜好や慣習から割りだされた番組が自動的に録画されるといったようなことになるのだろう。すごい時代になってきたものだ。


第2位
■週刊東洋経済■ <<<  ピンチをチャンスに変えた日立

 深刻な業績不振にあえぐ電機業界にあって、業績をV字回復させた日立製作所が注目を集めている。今週の『週刊東洋経済』は、この日立の特集だ。タイトルは「日立に学べ! 最大の危機こそ変革のチャンス」。
 2009年、巨艦・日立は7873億円という赤字に喘いでいた。日本の製造業として過去最悪の赤字。この「半端じゃない赤字」(中西社長)が日立社員の意識を変え、聖域なき改革を実行できたのだという。改革の立役者は、当時69歳の川村隆・元会長。改革のために経営陣を一気に若返らせたり、外国人社長を登用する企業が多い中、日立の人選は当時マスコミから「血迷ったか」と揶揄された。しかし、先輩後輩の文化が根強い日立では、改革への抵抗を押し切るためには年寄りである必要があったのだという。
 川村氏から社長を引き継いだ中西宏明社長は、インタビューで「日立が低迷した原因の1つは、事業全体の構想をグローバルで考えていなかったことにある」と答えた。「ニッチでもいいからポジションを取る」。そういう戦略をスピーディーに断行する経営を、あの巨艦・日立でどう展開しているのか。そのあたりは本誌を読んでほしい。
 中西社長、川村会長、それぞれへのインタビュー、タブーなき改革の中身、現在の事業展開を解説する「これが『日立』の生きる道」、ライバルである国内・東芝&三菱/海外・GE&シーメンスと比較した「総合電機 ライバル対決!」と、日立の戦略を掘り下げている。


第3位
■週刊ダイヤモンド■ <<<  円安で儲かる金融商品

 海外の為替トレーダーの間では、「アーベトレード」なる言葉が流行っているそうな。これは「アービトラージ(裁定取引)」をもじったものだが、円安に沸く業界の雰囲気が伝わってくる。『週刊ダイヤモンド』はこの円安を積極的に捉えて、金融商品を徹底評価し、どうやって儲けるかという特集を組んだ。タイトルはズバリ「円安に乗る!
 株・投信・外貨投資」だ。今回の円安で重要なのは日本1国の問題ではなく、世界の流れの中でこの円安が起きているという点だ。米国は昨年夏以来住宅市場が回復の兆しを見せ始めている。非農業部門の雇用者数も月間で10万人を超える増加が続くなど雇用情勢も好転していると同誌は分析している。
 ま、何はともあれ、この円安状況でどうやって儲けるか。同誌は外貨投資商品、投信、ETF、MMFなど253本の商品を徹底評価し掲載した。
 また、この時期(円安)で注目される30銘柄をリストアップしている。


第4位
■ 週刊エコノミスト■ <<<  日本は既に死んでいる!?

『週刊ダイヤモンド』が円安に乗ってしまおう! と勢いづけているのに対し、対照的に動いたのは『週刊エコノミスト』である。
 特集のタイトルは「安倍バブル」。つまり円安・株高に沸く市場に対し「このまま日本経済が復活すると楽観視するわけにはいかない」と警鐘を鳴らしているのだ。海外のヘッジファンドは「アベノミクス」が成功しないと考えており、むしろその時を狙っているのだと同誌は説く。
 たとえばテキサスに本拠を置くヘッジファンド「ヘイマンキャピタルマネジメント」の創業者はテレビに出演し日本の政府債務は税収入の約24倍で、もともと2年で破綻すると思っていたが、2%のインフレ目標導入でその時期は早まった」とするコメントを述べたと紹介している。
 また同誌が独自に取材したダラスの投資アドバイザーは「日本は死刑囚(死を待つだけの国)」というコメントを引き出している。
 誰もが「アベノミクス」は劇薬だと言うことは知っているが、その使い方を過つと日本経済は本当に大変なことになる。


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