2016年7月29日

今週の第1位は『週刊ダイヤモンド』・・・日本の警察


週刊ダイヤモンド ... 日本の警察
週刊東洋経済 ... ゼネコン バブル超え
週刊エコノミスト ... ヘリコプターマネーの正体
日経ビジネス ... 英離脱後の世界

 今週の経済週刊誌で面白かったのは『週刊ダイヤモンド』が特集した「日本の警察」です。予算規模3.7兆円、職員29万人という巨大組織の全貌を暴いています。と言っても内容はそれほど派手なものではなく、むしろ微に要り細を穿ったダイヤモンドらしい特集になっています。最近この手の変わった特集が多く、この路線で鉱脈が見つかったような雰囲気の同誌です。冒頭には警察を書かせたら当世随一の作家横山秀夫氏もあり、なかなか面白く、これが今週の第1位です。
 第2位はゼネコン特集を組んだ『週刊東洋経済』です。バブル崩壊後にはゼネコン特集というと「倒産危険度ランキング」と相場が決まっていたものですが、今や史上最高益、それも前年の5倍にジャンプアップする企業もあるほど高収益なのだそうです。この状況を「バブルを越えた」と同誌は表現しています。
『週刊エコノミスト』は人々に直接お金をばらまくヘリコプターマネー(実際はそう簡単ではないのですが)の特集です。先日前FRB議長のバーナンキ氏が来日し、日銀総裁や首相と会談を持ったことから現実味を帯びてきたと同誌は分析しています。
 そして第4位は『日経ビジネス』です。英国のEU離脱後の経済がどうなるか、その影響を分析しています。


  <第1位>        <第2位>       <第3位>       <第4位>

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第1位
■ 週刊ダイヤモンド■ <<<  29万人の巨大権力組織

 ストーカー、高齢者を狙った特殊詐欺、インターネット空間のサイバー犯罪など、事件の多様化と複雑化が拡大している。こういった環境変化に加え、今年の5月に刑事訴訟法の改正(刑事司法改革関連法案)が国会で可決され、取り調べの録音・録画義務化やいわゆる司法取引の採用など、警察の捜査手法も転換点を迎えようとしている。今週の『週刊ダイヤモンド』は、職員29万人の巨大組織「警察」を特集。タイトルは「日本の警察 もっと知りたい権力とお金」だ。
 交番や警察ドラマなどなど、日本人には身近な存在である警察。その警察職員は現在約29万人、予算規模は3.7兆円という巨大組織なのである。Part1.「転換期を迎える日本の警察」では、組織・仕事・都道府県「警察力ランキング」で全体像を紹介。続くPart2「絶大な警察権力の源泉」では、絶対的階級制度で29万人を統制する組織の仕組みを解説。Part3でその経済力=予算の使い道に迫る。
 経済誌で「警察」も注目だが、今週の本誌注目記事は巻頭<緊急特集>の「熱狂と挫折の『平成』経済録」だろう。平成天皇が「生前退位」の意向を示され、実現すれば平成の世は残り数年で次の元号に変わる。そこで平成元年(1989年)と平成28(2016)年を数値・ランキングで徹底比較している。それはまさに栄枯盛衰のドラマ、数値で見る「熱狂と挫折」です。


第2位
■ 週刊東洋経済■ <<< ゼネコンの安値受注は過去のもの

 バブル期から現在への栄枯盛衰、熱狂と挫折を『週刊ダイヤモンド』が伝えれば、こちら『週刊東洋経済』はスーパーゼネコンの「バブル超え」大活況です。
 とにかく都心部の再開発や巨大ビル建設がすごい。ターミナル駅を降りるとクレーンが立ち並ぶ光景はここ数年の常態と言える。そこでスーパーゼネコンが絶好調なのだ。一時期の青息吐息からV字回復も甚だしく、着工単価はバブル期を超過。大成建設、鹿島、大林組、清水建設の上場4社は2016年3月期そろって最高純益を更新したという。東日本大震災が起こった11年を境に、建設業界を取り巻く環境は一変した。震災需要に加え、五輪開催を見据えた再開発プロジェクトが次々に立ち上がり、そこに人手不足が重なった。需要と供給は逆転。安値受注は過去のものとなり不採算工事がなくなりつつある。しかも、東京五輪以降も都心の再開発は止まりそうもないのが現況である。一方、地方は苦境。復興需要は2015年までで一巡し、公共事業も減少している。ゼネコン復活も、実態は東京一極集中なのだ。そして重層下請け構造の中で景気がいいのは中堅まで。下請け業者までなかなか波及していない。さらに驚いたのは、結果的に「建築家外し」となるゼネコンによる設計のIT化が進んでいることだ。若い建築家は育つのだろうか?


第3位
■ 週刊エコノミスト■ <<< 人々に直接お金をばらまく方法

 ヘリコプターからお金をばらまくがごとくお金を人々に配ることで景気の浮揚を図ろうとする政策を「ヘリコプターマネー政策」と言う。この政策を強く推奨するのが前FRB議長のベン・バーナンキ氏だ。デフレから何とか脱却しようという日本政府に対して、先頃同氏が来日し 手黒田日銀総裁、安倍首相と会談して、この政策を暗に奨めたのだと言う。
『週刊エコノミスト』がこうした状況を捉えて「ヘリコプターマネーの正体」と言う特集を組んだ。
 この政策は当然のことながら賛否が大きく分かれている。まさに麻薬のような政策で、何度も行なわれることになると人々は「麻痺」し、通貨への信任は大きく薄れていくからだ。こうした論議を同誌は両論を掲げてこの政策の正体を暴こうと試みているのだ。
 バーナンキ氏が来日して安倍首相と会談した際に同席した浜田宏一内閣官房参与はインタビューに答えて、会談ではそんな話は出なかったと語り、ヘリマネの危険性を指摘している。


第4位
■ 日経ビジネス■ <<<  結局どうなる? 英国離脱後の世界

 英国離脱関連の特集が一段落したこの時期に『日経ビジネス』が同誌にしては珍しい32ページもの大特集を組んだ。特集タイトルは「英離脱後の世界」。サブタイトルは<日本も直撃「失われる10年」>とある。特集は5部構成だ。全体を通じて欧州の今後についてのみならず、特に世界の金融市場がどうなっていくのかということと、日本がどのような状況に置かれるのかという点について、詳しく言及している。
 パート1は文字通り英国の問題。メイ新首相になり、どのような状況が待ち受けているかを解説する。あまり日本人には馴染みのないEU議会の仕組み等についても細かく紹介している。パート2ではこれから起こるだろう政治リスクとその混乱がもたらす欧州を俯瞰し、世界市場、そして日本企業への影響についても触れている。そしてパート3ではEUの盟主であるドイツの行方を解説している。パート4では対EUの通商協定の見直し、パート5では米大統領選を控えた米国との関係についてレポートしている。

2016年7月22日

今週の第1位は『週刊エコノミスト』・・・ヤバイ投信 保険 外債


週刊エコノミスト ... ヤバイ投信 保険 外債
週刊東洋経済 ... すごいベンチャー100
週刊ダイヤモンド ... 今こそ!「嫌われる勇気」
日経ビジネス ... ゲームだけじゃない VR

 今週は一言で言うと低調な週だったように思います。それなりに面白い企画なのでしょうが、なにか企画の裏の情熱のようなものが感じられなかった気がします。そんななかで作りはそれほどでもないけれど熱意のようなものを感じたのは『週刊エコノミスト』でした。投信、保険、外債など高金利を謳って販売している金融商品に潜む罠をえぐり出していて、本当に詐欺まがいの販売が大手金融機関によってなされているのがよくわかります。金融庁長官へのインタビューもよく、これが今週の第1位です。
 では、次は何かというと『週刊東洋経済』の久々のベンチャー企業特集です。しかし、100もの企業を載せるのはいいのですが、ちょっと食い足りなさが残りました。
『週刊ダイヤモンド』は同社のミリオンセラーである『嫌われる勇気』をそのまま特集に持ってきました。ちょっとあざとい感じがするのと、あまり心理学に強い興味を感じない私としては第3位にするしかないかと。でも売れているのかも知れませんね。
 第4位は最近ちょっと低迷気味の『日経ビジネス』です。バーチャルリアリティー(VR)を取りあげ、ゲームだけではなく今や産業のさまざまな分野で活用されるようになったことを取材しています。


  <第1位>        <第2位>       <第3位>       <第4位>

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第1位
■ 週刊エコノミスト■ <<<  高金利に潜む手数料の罠

 ヤバイ商品があるという。金融商品だ。マイナス金利下、すこしでも資産形成に繋げたい消費者の気持ちを汲み取って、一見高利に見える金融商品が跋扈しているのだそうで、そんな商品には手を出すな! と『週刊エコノミスト』が警鐘を鳴らしている。特集タイトルは「ヤバイ投信 保険 外債」だ。
 特集の冒頭は外債の話から始まる。例えば、欧州復興銀行(EBRD)のブラジル・レアル建て債券。格付けはトリプルAだとのセールストークで大手証券会社の営業担当者が勧めるこの金融商品は満期時まで持てば年6.329%の最終利回りが得られるという。半分その気になった消費者は手数料が書いていないことに気づく。ところがその手数料がバカ高いので、購入はしなかったのだと書いてある。しかし、世の中に手数料までキチンと聞く人がどれだけいるか。きっと知らずに買っている人も多いのだろう。なにせ1日に2〜3億円は売れると言うことだから。
 こんな話を読めば詐欺まがいだと思うが、しかしそんな商品が多いのだろう。誌面では森信親金融庁長官へのインタビューがあり、これがなかなかの激白でこうした商品を避難し、是正に向けて動こうとしているようだ。面白かったのは、同長官が監督局長時代に銀行の頭取に会う時は売れ筋投信ランキングベスト10を見せて、「これをあなたのご家族に勧めますか」と問いかけていたというエピソードだ。
 本当にその通りである。


第2位
■ 週刊東洋経済■ <<< 第4次ベンチャーブーム到来!

 1980年代以降、日本には約10年ごとにベンチャーブームの波がやってきた。リーマン・ショック後大きく縮小したベンチャー投資は2013年ごろから徐々に回復し始め、15年のベンチャー企業資金調達額は、直近ピーク06年を大きく上回っている。いままさに第4次ベンチャーブームが到来したようなのだ。
 今週の『週刊東洋経済』は「すごいベンチャー100」と題して、第4次ベンチャーブームの中身を有望ベンチャー100社とともにレポートする。
 ベンチャー投資資金が向かう先は世の中の「いま」を映し出す。2015年はマネーフォワードやfreeeなど、わかりやすいフィンテック企業に資金が流入した。しかし2016年になると評価が定まらないフィンテック関連に代わって伸びているのが、ロボットや人工知能関連だという。以前は「はみ出した非エリート」がベンチャー起業の中心人材だったが、いまは「地頭のいい大手企業に入れる人材」が起業を選択するケースが増えた。投資側もオープンイノベーションの波に乗り遅れまいとする伝統的大企業が出資の背中を押している。


第3位
■ 週刊ダイヤモンド■ <<<  人間の悩みは、すべて対人関係の悩み

 書店の目立つところに平積みとなっているブルーとオレンジの表紙の本『嫌われる勇気』と『幸せになる勇気』。手に取った方、読まれた方も多いだろう。この2冊ですでに173万部の大ヒットだそうだ。韓国語にも翻訳され、2016年4月の発売以来130万部! 人口比と発売期間を考えると、韓国では日本以上の熱狂的な支持を集めている。
 なぜこれほどまで支持されるのか? 今週の『週刊ダイヤモンド』は、ブームの火付け役となった『嫌われる勇気』共著者・岸見一郎氏と古賀史健氏が登場し、人々を魅了するアドラー心理学をわかりやすく掘り下げ、魅力を開示する。「ここでしか読めない!『嫌われる勇気』特別編」、アドラー心理学研究の日本における第一人者・岸見一郎氏による公開カウンセリングや、先生と働く女性の座談会も掲載されている。
「トラウマは存在しない」「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」とするアドラー心理学。とても実践的で明快であるがゆえに、男性たちは『嫌われる勇気』を読んだあと、「当たり前のことしか書かれてない」「前から知ってた」と言う人が多いとか。このブームの火付け役は女性やSNS疲れしている若者たちだが、あなたはこの「当たり前」が実践できていますか?


第4位
■ 日経ビジネス■ <<<  産業界で動き始めたバーチャルリアリティ

 今年は「VR元年」と言われている。VR=バーチャルリアリティは、パソコン、スマートフォンに続く「第3のデジタル革命」として大いに期待され、2025年には世界で8兆円市場を形成すると見込まれる。今週の『日経ビジネス』が「ゲームだけじゃない VR 〜製造も営業も変える第3の波」と題して特集した。
「どうせゲームの世界の話だろ」......というのは昔の話。ゲームはVRの一側面に過ぎない。ゲーム、ライブイベント、ビデオといったエンターテイメントのほか、小売、不動産、教育、ヘルスケア、軍事、開発など、ソフトェア開発の分野は大きく広がることが予想され、それに伴ってハードウェアであるHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の市場が拡大する。米国ゴールドマンサックス証券の予想では、2025年時点でハードウェア⒋5兆円、ソフトェア3.5兆円、計8兆円規模の市場だ。
 三菱重工では、実際に仮想空間に実物を先取りしたプラントを「建設」し、チーム間での認識のズレや見落としのない理想の建造物を共有し始めた。顧客にも目の前に「ある」ように見せることができ、わざわざ現場まで連れ出す必要もない。熟練技術者の動きを遠く離れた海外の社員に伝承するVRイステムを開発・販売するのはNECだ。技能の伝承と同時に出張費も減らせる。

2016年7月15日

今週の第1位は『週刊ダイヤモンド』・・・混沌を読み解く大経済史


週刊ダイヤモンド ... 混沌を読み解く大経済史
週刊東洋経済 ... まるごとわかるEU危機
週刊エコノミスト ... がんは薬で治る
日経ビジネス ... 永遠の欲望市場 不老


 今週は2誌が英国のEU離脱に関連する特集を組みました。
 なかでも『週刊ダイヤモンド』はストレートな影響論ではなく、歴史的な観点でこの問題を取り上げました。金利で見る16世紀と21世紀との比較などはなかなか説得力があり、面白く仕上がっていました。これが今週の第1位です。
 一方、『週刊東洋経済』はストレートにこの問題を論じています。どちらがい以下というのは多分に趣味的な要素も入りますが、わたしは『週刊ダイヤモンド』を選びました。ただ、どちらにも共通するのは、今が歴史的な転換点であるという認識と世界を俯瞰してみなければならないという視点です。こんな時代だからこそ大局観を持って見ていかなければならないという論点は説得力があります。この2誌で今週の1位と2位は決まりです。
 最近好調の『週刊エコノミスト』はガンの治療薬、なかでも免疫療法や国焦点を当てた特集を組みました。そのメカニズム。激しさを増す新薬開発の現場、医療費と国民皆保険の関係から製薬会社の株価にいたるまで幅広く取り上げています。面白い特集です。
『日経ビジネス』も同じ雰囲気を持つ特集ですが、こちらは、アンチエイジングに視点を当てた永遠の欲望市場に向けて、Googleの創業者ラリー・ペイジやFacebookの創業者マーク・サッカーバーグ氏などもこの分野に注目しており、巨額資金を注ぎ込んでいるようです。


  <第1位>        <第2位>       <第3位>       <第4位>

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第1位
■ 週刊ダイヤモンド■ <<<  長い21世紀の行方

 やはり今週は2大経済誌がEU分裂を第1特集として掘り下げてきた。『週刊東洋経済』=「まるごとわかるEU危機」に対し、『週刊ダイヤモンド』=「EU分裂は必然! 混沌を読み解く大経済史」。前者は世界経済のリスクに焦点を当て、『週刊ダイヤモンド』は繰り返される歴史との比較から大局的視点を読者に提供する。2者ともに共通しているのは、「現在世界は大転換期を迎えている」という立脚点だ。
「今、人類は数百年に1度しか起こらないような大転換期を迎えている。多くの識者が16世紀から続いた仕組みが壊れると予測している」という。その1人、『資本主義の終焉と歴史の危機』を著した法政大学教授・水野和夫氏は言う。16世紀に中世封建システムから近代資本主義システムへの転換が起こり、様々な変化の苦しみがあった。この転換期を歴史家フェルナン・ブローデルは「長い16世紀」と呼ぶが、20世紀終わり以降いま起こっているのは「長い21世紀」。新しいシステムを生み出すための長い苦しみの時期なのだ。
 格差拡大、中間層の減少、エリート層の堕落、大衆扇動などの動きは世界中で同時位起こっている。混迷のいまを生き抜くヒントはそこにあるか!?
 本誌巻頭では、鈴木敏文氏へのインタビュー「流通のカリスマ ラストメッセージ」を掲載。


第2位
■ 週刊東洋経済■ <<< 次の衝撃に備える

 英国ショックで揺れた市場。その余震は未だ収まるところを知らないが、『週刊東洋経済』も『週刊ダイヤモンド』と並んで、今週EU危機を掘り下げてきた。タイトルは「まるごとわかるEU危機」。国際秩序を激変させたEU危機の本質に迫る。本当に怖いのはこれからか? 次の衝撃に備える情報に焦点を当てる。
 6/24のイギリスのEU離脱。その事件が世界経済に与えた影響は大きく、株価や為替相場は急変し、月が変わった今でも波乱は止まない。2008年のリーマンショックに勝るとも劣らない衝撃だが、日本は米国や中国に比べ、欧州との繋がりは細いため、直接的な影響は少ない。が、世界的なリスクオフの流れで円高が進んだ事は逆風だ。また、リーマンショック時は大規模な財政出動や金融緩和で危機を脱したが、現在は既にそれらを目いっぱい利用している状態での金融危機である。これを期に米欧の影響力が下がり、中国ロシアが強引な行動に出る場面も増えるだろう。EU危機は一過性のショックではなく、歴史の転換点なのかもしれない。目先にある日本市場だけにこだわらず、世界を俯瞰する視点が求められている。


第3位
■ 週刊エコノミスト■ <<< 年間3500万円かかるがん治療薬

 先月『日経ビジネス』「社会保障 非常事態宣言」で取り上げられていた超高額がん治療薬「オプシーボ」。そこでは成人男性なら年間約3500万円かかる"日本の国民皆保険を破綻に導くかもしれない新薬"として薬効とともに紹介されていた。このオプシーボの開発で、小野薬品工業の株価は2013年からこの2016年4月までに約6.5倍に跳ね上がった。今週の『週刊エコノミスト』は、「ここまで来た免疫療法薬 がんは薬で治る」と題して、オプシーボをはじめ、脚光を浴びるがん免疫療法薬に焦点を当てて、その薬効や開発状況、そして注目株式銘柄に迫る。
 過去20〜30年使われてきた通常の抗がん剤は数十万円、分子標的薬は年間数百万、それが免疫療法薬になると年間数千万円となる。「(オプシーボのような)救命ボートは(若い)次世代に優先的に渡すべき」という日本赤十字社医療センター・国頭英夫医師の言葉に賛同する。もう十分に生きてきている後期高齢者の延命治療はしないという意見にもだ。社会保障制度存続のために新薬開発の意欲が削がれることは起きてほしくないことであるし、高額医療・薬品で日本が誇る国民皆保険制度が破綻するのも絶対に避けたい事象だ。


第4位
■ 日経ビジネス■ <<<  若さを金で買う

 美容医療の進化に伴い、しわ取りやたるみ解消、フェイスラインの改善など人々は理想の容姿を手に入れやすくなった。遺伝子の解明が進んだことで、老化のメカニズムも徐々に明らかになり、抗老化(アンチエイジング)という永遠に途切れる事の無い人々の欲望に夢と機会を見いだした起業家達は、老化研究に多額の資金を投下し始めた。そのような状況を『日経ビジネス』が「永遠の欲望市場 不老」として特集する。
 このビジネスには危険もつきまとう。あるいは倫理観が必要になる。宗教などとの葛藤もあるだろう。しかし人間の追う好奇心と欲望は時に理性を凌駕する。若さは一体どこまでかえるのか。
 慶応義塾大学医学部の倫理委員会は6/27、「ニコチンアミド・モノヌクレオチド(NMN)」という物質を人間に投与する研究を承認した。NMNは老化や寿命の制御に関わる遺伝子を活性化させると考えられており、マウスへの長期投与実験で興味深い結果が得られつつある。これを人間に投与しようというのだ。マウスではNMNを投与した場合平均寿命がメスで16%、オスで9%も伸びたという結果がある。とはいえ老化メカニズムはまだまだ未知の部分が多く、研究者、投資家にとって大きなフロンティアとなっている。米Facebook創業者であるマーク・ザッカーバーグ氏や、米グーグル創業者であるラリー・ペイジ氏等、多くの著名な起業家がこのビジネスに注目している。

2016年7月 7日

今週の第1位は『週刊エコノミスト』・・・英国EU離脱の衝撃


週刊エコノミスト ... 英国EU離脱の衝撃
週刊東洋経済 ... 「子なし」の真実
日経ビジネス ... 本当は凄いニッポンの発明力
週刊ダイヤモンド ... 落語にハマる!

 今週の経済誌はこぞって「英国のEU離脱」を取りあげました。それぞれのページ数は本特集そのものとして扱った『週刊エコノミスト』が20P、緊急特集として巻頭で扱ったその他3誌は『週刊東洋経済』が18P、『週刊ダイヤモンド』と『日経ビジネス』が9Pとなっていました。しかし、『週刊ダイヤモンド』以外の3誌はどれも表紙は「英国のEU離脱」です。これを表紙に持って来るインパクトが大きいと考えたのでしょう。まっとうな考えですが、『週刊ダイヤモンド』だけが表紙に特集「落語にハマる」と大書して、独自性を出しているのが印象的でした。
 閑話休題。中でも即時性という意味合いから「英国のEU離脱」を取りあげた『週刊エコノミスト』が今週の第1位です。欧州連合の行方や連合王国の危機、ポンド危機など分かりやすいキーワードに基づいて書かれています。
『週刊東洋経済』は「子なし夫婦の在り方」についての特集です。今や25%近くの人が子どもがなくてもいい、との認識なのだとか。同誌は「英国のEU離脱」についてもページを割き、しかもソフトバンクの副社長ニケシュ氏の唐突な辞任についても20ページの巻末特集を組んでいます。読みごたえのある特集でした。これが第2位です。
 3位は「本当は凄いニッポンの発明力」という特集を組んだ『日経ビジネス』です。エアバッグも、3Dプリンターもスマホもドローンも本当は日本人が最初という情けない特集ですが、問題提起にはなります。
 4位の『週刊ダイヤモンド』は落語の特集です。面白いネタですし、なるほど知らない話も満載でしたが、ま、この企画は1位にするか4位にするかという議論になりますので、今回はやはりEUネタを重んじてこのランクです。


  <第1位>        <第2位>       <第3位>       <第4位>

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第1位
■ 週刊エコノミスト■ <<<  大型買収を即座に取りやめたブランソン

 コトが起こったとき、まず第1特集で扱うのは時事性の高い『週刊エコノミスト』の長所だ。4誌それぞれ発売日がずれているので有利・不利はあるが、英国のEU離脱に関しては、『週刊エコノミスト』だけが今週第1特集として30ページのボリュームある記事を提供している。専門分野のエコノミスト、アナリスト、ジャーナリストによるテーマを絞った解説もこの緊急時には多角的な視点としてより的確な編集仕様の印象だ。
 ヴァージン・グループの創業者、リチャード・ブランソン会長は国民投票結果を受けて、進めていた大型買収を即座にとりやめた。テレビインタビューに「国民投票の結果でかなり多くの仕事が失われるだろう。我々は大惨事に向かおうとしている」とコメント。海図なき視界不良の「政治危機」「経済危機」を示唆した。英国だけではない。EUはどこへ向かうのか。「アラカルト欧州」化の着地点はどこか。日本をはじめ世界への影響も掘り下げる。
 合わせて特集の1ページ前にある「グローバルマネー」という常設コラムも読んでほしい。そのタイトルは「我々はいったい何から『離脱』するのか」。ここに英国の現状がコンパクトにまとめられている。「イングランドとウェールズは離脱派一色で、その海にEU残留派のロンドンが浮かんでいる様子は衝撃的」だ。


第2位
■ 週刊東洋経済■ <<< 今や4人に1人

 表紙にドドーンと「EU離脱 英国発世界不安」と打ったのは『週刊東洋経済』である。ところがページをめくると、様相は変わっていて特集は別のものだということが分かる。そちらのタイトルは「子なしの真実」。つまり少子化の危機が叫ばれる中、国を挙げて子どもを持つ事を奨励する動きが活発となっているのだが、いや待てよ、という特集なのだ。
 子どもを持つ、持たないという選択は本来各々の夫婦の決断によるものだ。
「結婚したら、子どもは持つべきだ」という考え方に対して反対と答えた人は2010年で24.3%。つまり4人に1人は子どもがなくていいと考える人たちというわけだ。
 だが、「子なし」夫婦に対する世間の風当たりは以前と変わる気配は無い。それもそのはず。彼らのもっと上の世代では夫婦が子どもを持つのは半ば「常識」であるからだ。社会的に苦しい立場に立たされている「子なし」夫婦。子どもに対する多様な価値観を受け入れたうえで、平穏に暮らせる社会を目指す事は日本の急務だと同誌は主張して、その第一歩として「子なし」夫婦の実像に迫る。
 一概に「子なし」と言ってもその理由は多岐に渡るようだ。不妊体質や無精子症といった体質面の問題もあれば、職業柄妊娠や子育てをする暇がない場合が理由として上げられている。
 だが、最大の理由は子育てや教育におカネがかかり過ぎるという経済的な理由。一般的に、子ども一人を大学卒業まで育てるのにかかる費用は2400万円と言われている。年収〜600万円の世帯にとって大きな負担となる。奨学金等の制度を利用するにしても限度はあり、そもそも後々返さねばならないケースも多い。社会の作りから変えていく必要があるということが分かってくる。


第3位
■ 日経ビジネス■ <<<  情けない日本の真実

『日経ビジネス』も『週刊東洋経済』と同様に実際の特集とは別に表紙に緊急特集と題して「英離脱ショック」と謳った。巻頭9ページの小さな特集であるところが『週刊東洋経済』の18ページと比較すると取ってつけた感があるのは否めない。
 で、本当の特集は「本当は凄いニッポンの発明力」である。
 副題には必ず作れる! 世界がほしがる商品18と銘打っている。面白そうじゃないか。パート1は<世紀の発明、調べりゃ大体日本発>として、数多の商品を取りあげている。同誌はそれらを「取り逃がした大魚」としているではないか。
 どんなものがあるか。エアバッグ、3Dプリンター、ロボット掃除機、スマートフォン、腕時計型端末、ドローンとある。なるほど大魚には違いない。これらの技術をもしも日本が商品化していると、というタラレバの話だが60兆円にものぼると言う。
 このていたらくはいったい何に原因があるのか、ということでパート2は<宝の種が育たない8つの理由>を挙げている。詳細は読んでください。


第4位
■ 週刊ダイヤモンド■ <<< ビジネスマンと落語の関係

 今週は各誌「英国のEU離脱」を大きく表紙で扱うなか、『週刊ダイヤモンド』だけが違う。英国のEU離脱は右肩に小さく納め、第1特集タイトル「落語にハマる!」の文字がドドーンと大きくはっちゃけているではないか。もちろん表紙をめくると9ページの英国離脱に関する緊急特集記事で始まっているが。
 さて、なぜいま「落語」なのだろうか。日本テレビの人気番組「笑点」が50周年を迎え、大喜利司会者も春風亭昇太に代替わりし、視聴率20%越えを連発して大きなニュースとなった。しかしそれ以上に落語そのものがビジネスマンを中心にファンを増加させているらしい。例えば、落語家数は過去最高の800人を越え、月当たりの高座件数は右肩上がりを続け、ついに昨年首都圏だけで1000件を突破。
「平成の落語ブーム」と言える状況なのだ。
 特集では落語界の勢力図からギャラ、高学歴化、そして大御所や人気真打へのインタビューを交えつつ、落語の今を詳細レポートする。もちろん「ビジネスで使える落語」の視点も忘れない。そういえば数年前から毎週寄席に通っている地方在住の知人もいる。

2016年7月 1日

今週の第1位は『週刊東洋経済』・・・健康格差


週刊東洋経済 ... 健康格差
週刊ダイヤモンド ... 確率・統計入門
日経ビジネス ... 社会保障 非常事態宣言
週刊エコノミスト ... Fin Tech 最前線!


 やっぱりそうかとは思っていたのですが、所得の格差が健康の格差に繋がるという分かりやすい特集を組んだのが『週刊東洋経済』です。今までは糖尿病などというといいものばかり食べ過ぎた所為と言われていたが、実は違うということが分かってきました。そういう所得の格差が人の健康にどう影響を及ぼすかを描いています。この特集が今週の第1位です。
『週刊ダイヤモンド』は今年の1月に組んだ「数学特集」の第2弾とも言うべき特集を組んできました。今度は「確率・統計」です。文系でも使えるというようなキャッチフレーズが興味をそそります。
 第3位は『日経ビジネス』です。消費税増税延期がいかに日本の社会保障に影響を及ぼすか、というテーマです。そして『週刊エコノミスト』はFin Techの特集です。分かりやすい特集ですが、もう散々他誌がやりつくしたテーマですので、ランク的には4位にしました。


  <第1位>        <第2位>       <第3位>       <第4位>

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第1位
■ 週刊東洋経済■ <<<  所得格差は健康格差

 健康でいられるか否かは個人の管理能力の問題......いま、この認識が急速に揺らぎ、「所得格差=健康格差」が定着しようとしている。今週の『週刊東洋経済』がこの問題を取り上げる。タイトルは「健康格差 雇用と所得の差が、命の差につながる」だ。非正規の糖尿病・貧困家庭の肥満児&虫歯・管理職の早死に、これらは自己責任では片ずけられない深刻さだ。公衆衛生の研究者が「日本の経済成長を損なう時限爆弾」と呼ぶ健康格差の実態に迫る。
 一昔前まで、糖尿病はぜいたく病とも揶揄され、飽食が原因と見なされていた。しかし現在、糖尿病は不安定雇用や低所得等、社会経済状況が悪い人ほど罹患しやすい病だと認識されている。新鮮な野菜よりファストフードやジャンクフードのほうが安い。そして腹一杯になる。だから生活に余裕のない非正規雇用者が糖尿病発症のサイクルに陥りやすい。医療の受診も控えるため重症化して合併症等を発症する確率は正規雇用者の1.5倍程度になる。
 後半は先端的健康オタク・高城剛氏へのインタビューや、糖質制限ダイエット、サラメシ健康化作戦など、健康獲得・維持の情報満載。しかし、今週の『週刊東洋経済』を手に取る層は健康意識の高い人だと思うんだよね。これで健康意識高い系とそんな余裕ない系の健康格差がまた開く......(苦)。


第2位
■ 週刊ダイヤモンド■ <<<  入場者数は確率論で分かる

 先々を予測し、意思決定し、検証・改善をしていくのがビジネス。今週の『週刊ダイヤモンド』は「ビジネス数学の最終兵器 確率・統計入門」と題して、ビジネスの現場で助太刀してくれる確率論とそれを基礎とする統計学の基礎知識から実践まで紹介する。
 プロローグは近年大躍進を遂げたUSJのサクセスストーリーだ。その大車輪となったのが「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」。当時の年間売上の6割に当たる450億円が投じられた「大博打」の裏には、確率論による確かな勝算があった。USJの躍進の立役者であるチーフ・マーケティング・オフィサーである森岡毅氏は「テーマパークは数学で変わる」と語る。「成功確率が高いアイデアを成功確率が高い順番で繰り出す」ことを意識し、V字回復のための戦略を練ったという。ハリー・ポッターという特大ロケットの投資資金確保のため、まずは成功確率の高い小型ロケットを連射した。ファミリー層を狙った新エリアの建設や「進撃の巨人」「ワンピース」という大人気漫画とのタイアップで、多くの層を来場者として取り込んだ。確率思考に裏打ちされたアイデアはことごとくヒットし、投資資金を確保。ハリーポッターエリアオープンの認知率90%実現と来場者数200万人を達成するシナリオが作られた。
 後半ではビッグデータ時代に注目される「ベイズ統計」と、「文系でも使える微分積分」を解説する。


第3位
■ 日経ビジネス■ <<<  増税延期で社会保障が危ない

 今年2016年の『日経ビジネス』年間テーマは「シリーズ日本が危ない」。今号はそのシリーズの一貫として社会保障を取り上げている。タイトルは「社会保障非常事態宣言 増税延期の罪」だ。
 年金・医療・介護・保育・生活保護−−−社会保障制度が非常事態領域であることは間違いない。しかもそれぞれの社会保障に多くのムダや矛盾を抱え、国民にも既得権益者にも痛みが生じる改革には目を背ける政府。財源確保のためと言ってきた消費税増税も選挙前にいち早く先送りを決めた。
 声の大きい既得権益領域「医療費」を取り上げてみよう。2000年代以降、高額医療費が上がり続けこの15年で2.8倍となっている。薬価算定ルールが古いまま放置され、新薬の超高額化が加速。例えば年間3500万円かかる超高額ガン新薬もある。個人の負担は月8万円あまりに抑えられているため、国庫の負担は増すばかりだ。人の命にどこまで国の負担を認めるか......といったシビアな判断は、英国などではすでに20年前から始まり「年3万ポンド(約450万円)」と規定している。一方、病床数が多い県ほど1人あたりの入院医療費が高額でもあるという。病床を埋めるために入院頻度や期間が増加する傾向にあるのだ。財政破綻して域内に総合病院が無くなった夕張市の死亡率は、破綻前と変わらないそうだ。何をか言わんや。
 これから本番を迎える社会保障の劣化に改革は、国民の意識は追いつくのか?


第4位
■ 週刊エコノミスト■ <<< Fin Tech は人減らしの道具

 金融とテクノロジーの融合Fin Tech。2015年に風速を増した「フィンテック旋風」は今年さらに加速。国内金融機関の「お勉強期間」は過ぎ、具体的な事業化が始まっている。今週の『週刊エコノミスト』がその最前線を特集した。
 フィンテックの取り組みで世界を牽引する米国では、商業銀行の雇用数が大きく減少を始めている。リーマンショック前のピーク時136万人がいまや126万人だ。例えばJPモルガンが最近行なったグローバル採用募集では、従来型の投資銀行業務とリサーチで123人募集したのに対し、IT業務では2000人以上の採用を予定。金融業務が激変しようとしている。日本でもその流れに対応するため、この4月には「フィンテック関連法」とも言える銀行法および資金決済法改定案が国会で可決・成立した。ネット専業銀行・証券、商社、IT企業、そして3大メガバンクもフィンテック関連企業との提携や協業を進めている。出資関係も複雑化し、最新業界地図も掲載されているが、今後もその変化に目が離せないだろう。形成過程の群雄割拠の流れの中で生き残り拡大するテクノロジー、サービス、ビジネスは何か?