2015年2月12日

【来た!見た!書いた!】地方への大盤振る舞いの背景にあるもの

896もあった消滅可能性のある自治体
「我々地方が求めていた地方創生のために必要な経費が『まち・ひと・しごと創生事業費(仮称)』として新設され(中略)地方創生元年にふさわしい1兆円が計上されたことを歓迎する」
 2015年度予算案が閣議で決まった1月14日。全国知事会など地方6団体はこんな共同声明を出した。とかく国への厳しい注文が多い地方6団体が15年度予算案を高く評価したのは、国が地方創生関連で新規の財源を0.5兆円、地方の一般財源総額も61.5 兆円と14年度を大幅に上回る額を確保したからだ。
 異例ともいえる国の大盤振る舞いの背景には何があるのか。話は2014年の5月にさかのぼる。
 民間研究機関「日本創成会議」の分科会(座長は増田寛也元総務相)が5月8日、全国の市区町村の半数にあたる896自治体を「消滅可能性がある」と発表した。出産年齢の中心である20~39歳の女性が2040年までに半減する自治体は人口減が止まらなくなるとし、そうした896自治体の名前をすべて公表したのだ。
 一方で人口が集中する東京については高齢者の介護ができなくなるなど、集中の問題点を厳しく指摘した。これにより地方の「人口減少」と東京圏への「人口集中」というテーマがクローズアップされるようになった。

アベノミクスでも地方にカネは届かないという不満
 この動きに素早く反応したのが安倍晋三首相だ。創成会議の発表の直後に、首相は増田氏に地方の人口問題対処への体制強化を伝えたという。
 6月14日には視察に訪れた鳥取県で、記者団に対し「地域の再生は安倍政権の重要課題だ」と述べ、みずからが本部長を務める「地方創生本部」の新設や、省庁の枠を超えて取り組みを強化する考えを表明した。これが「地方創生」という言葉がマスコミを賑わすようになったきっかけだ。
 これと前後して経済財政諮問会議も「50年後に人口1億人台維持」との数値目標を打ち出した。政治レベルで人口目標を示したことは初めてのことだ。
 安倍首相が地方消滅問題に敏感に対処したのは、今年4月の統一地方選への危機感を強めていたからだ。
 昨年5~6月の時点で、安倍政権の経済戦略であるアベノミクスは株価高騰や賃金の上昇につながり、それなりの評価を得ていた。ただ4月の消費増税後の反動やガソリンなどエネルギー価格の高騰もあり、地方からは「アベノミクスは地方には届いていない」という批判が出始めていた。
 政権はそれまで、アベノミクスの「3本の矢」で「積極的な公共事業」を打ち出していたが、これを除けば地方を重視した政策は不足していた。
 加えて13年秋には、2020年の東京五輪開催が決まった。インフラの整備などを通じて今以上に東京への集中が進むのではないか。また東京圏での公共工事が増えたせいで、東日本大震災の被災地では復興のための事業に支障が出るのではないか。こんな懸念が地方では強まっていた。


地方創成戦略でも知事選では負けた
 安倍政権はそうした地方からの批判や不満に応えるように、「地方創生」という言葉を初めて使った6月以降、地方再生の戦略の布石を打っていった。
 9月には、第2次安倍改造内閣で石破茂前自民党幹事長を地方創生担当相に起用。さらに安倍首相を本部長とし、石破氏と菅義偉官房長官を副本部長とする「まち・ひと・しごと創生本部」(地方創生本部)を同時に発足させた。
 12月27日には、それまでの議論をまとめ、日本の人口の現状と将来の姿を示し、今後目指すべき将来の方向を提示する地方創生(まち・ひと・しごと)の「長期ビジョン」と、今後5年の目標や施策や基本的な方向を提示する「総合戦略」を閣議決定した。
 ただ安倍政権が地方創生戦略を次々と具体化していくなかでも、地方からの不満は依然、強いものがあった。そのひとつの表れが、県知事選だ。「自民党系の推薦候補」対「革新系の対立候補」という構図のときには自民党系候補は安泰なものの、強い対立候補が表れたときに、自民党側が勝てないケースが相次いだ。


地方への大盤振る舞いは最後のチャンス?
 2014年7月の滋賀県知事選では、元民主党衆院議員の三日月大造氏に自公両党の推薦候補が敗れた。10月の福島県知事選では、自民党県連が独自候補擁立を目指したが断念。旗色が悪いとみた自民党本部は民主党などと当選した内堀雅雄氏に相乗りした。
 11月の沖縄県知事選では、米軍普天間基地の辺野古移設に反対する翁長雄志氏に自民党などが推薦する現職が敗北。今年1月の佐賀県知事選でも、農業団体の支援を受けた元総務省職員の山口祥義氏が自公両党推薦の候補を破っている。
 こうした相次ぐ知事選の敗北から、安倍政権は4月の統一地方選に危機感を強めている。そうした意識が、2015年度予算の地方への大盤振る舞いの背景にはある。
 安倍政権が年末にまとめた地方創生の長期ビジョンについては、①「東京一極集中」の是正②若い世代の就労・結婚・子育ての希望実現③地域の特性に即した地域課題の解決――という3つの視点を打ち出した点を評価する声がある。
 だが一方では、1989年に竹下内閣が始めた全国の市町村に1億円ずつ交付する「ふるさと創生事業」、99年の小渕内閣の地域振興券、2011年に民主党政権が導入した一括交付金のように「要はバラマキではないか」という批判も、野党を中心に多い。
 今の日本の財政状況を考えれば、地方へのこんな大盤振る舞いが来年度も、またその次の年度もと、続く可能性は低い。そうだとすれば、地方にとっては「地域を再生するためにふんだんにカネを使える最後の機会」になるかもしれない。
 次回は「地方創生をバラマキに終わらせないためには何が必要か」を考えていきたい。

今週の第1位は『日経ビジネス』・・・善い会社

日経ビジネス ... 善い会社
週刊ダイヤモンド ... そうだったのかピケティ
週刊東洋経済 ... 税務署が来る
週刊エコノミスト ... 中国減速リスク

 今週の経済誌で目についたのはピケティの特集でした。『週刊ダイヤモンド』が完全版的な解説本ならば、『週刊エコノミスト』は反ピケティと色合いも分かれていました。それにしてもよく売れているのでしょう、この本。そんななかで、表紙に筆で「善」の文字をあしらった『日経ビジネス』が目を引きました。今必要とされる会社とはどんな会社かという分析をし、その結果用いた言葉が「善い会社」なのだそうです。上場企業をこの観点でランキングしたというわけです。面白かったのはいわゆ有名企業ではない会社も数多く登場していた点。これが今週の第1位です。
 そして『週刊ダイヤモンド』のピケティ特集が続きます。もう既に、テレビ、新聞でも数多く取りあげられ、ピケティ氏本人も出演していることから、「r > g 」という公式は頭に入ってしまったのではないでしょうか。でも上手くまとまっていました。
『週刊東洋経済』は時節柄もあり、税務署(というか税金)特集を組みました。個人編と会社編とがあり、気になる方も多いのではないでしょうか。
 第4位は、このところ定期的にフォローしている感のある「中国特集」を組んだ『週刊エコノミスト』です。

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第1位
■日経ビジネス■ <<<  善い会社が今後の会社のキーワード

『日経ビジネス』は1980年代「良い会社」というシリーズ特集を組んでいた。「良い会社」の定義は「成長や収益だけが優劣を決める時代は終わり、独自のコンセプトで市場を切り拓く創造性や、社員にロマンを与える明確な目的を持った企業」だった。90年代は、「強い会社」。文字通り「成長力で他を圧する強さを持った企業」を特集するシリーズだ。そして21世紀の今年、「善い会社」を提示してきた。
「善い会社」とは、「成長の原動力となる収益性と社会への貢献を両立する企業」を指すという。上場企業3841社の過去10期の営業利益率(顧客満足)・従業員の増減率+増減数(従業員満足)・法人税額(国や地方への貢献)・株価変動率(株主への貢献)を数値化し、それを「善い会社」ランキングとして上位100社を発表した。ちなみに1位はソフトバンク、2位ファーストリテイリング。この有名企業2社を見てランキングにまたかという反応はしないでほしい。3位はキーエンス、8位にはマニー(この社名ご存じでしたか?)が入ってくる。記事では58位の浜松ホトニクス、19位ナカニシ、61位アシックスなど約20社が取り上げられ、ランキングにも影の優良企業が名を連ねている。


第2位
■週刊ダイヤモンド■ <<< よく売れるピケティ特集

 ベストセラー経済書『21世紀の資本』の著者トマ・ピケティ氏の来日で、経済誌もニュース番組もピケティ連発である。関連本の動きもよく、今週は『週刊ダイヤモンド』と『週刊エコノミスト』がピケティ特集だ。『週刊東洋経済』のピケティ推しをしばらく静観してきた感のある『週刊ダイヤモンド』だが、今週、池上彰氏を引っ張り出しての「決定版 そうだったのか!ピケティ」で勝負する。
 とにかく最初の4ページ「池上流3ポイント」と「8ステップで早わかり」を押さえておけば、せっかく買った5940円の『21世紀の資本』を途中で投げ出すことにはなるまい。とてもシンプルに分かりやすくまとまっている。また、ピケティ氏と池上氏による対談もある。ピケティ氏が注目されるのはその理論本体もさることながら、著名経済学者による支持・不支持のかまびすしい議論だ。本誌でも有識者11人が支持率を%で表示し、その考えを展開している。
 ピケティ企画はよく売れているらしい。この種の特集をする気持ちはよく分かる。
 第2特集は「空の産業革命 ドローンの現実」。


第3位
■週刊東洋経済■ <<< あなたの会社が税務署に狙われる

 今週の『週刊東洋経済』は税務調査をメインテーマにもってきた。国家財政が厳しい昨今、「いよいよ本気で税金取りにくるだろうな」的な緊張感が、個人にも企業にもある。そんな空気の中、特集タイトルは「税務署が来る」だ。そういえば確定申告は2月16日から。個人は税務署に何かとお世話になる時期だった。
 さて、特集は、前半が個人の相続税を扱う「あなたの家が狙われる」。後半は企業だったら必ずある税務調査に備える「あなたの会社が狙われる」の2部構成。半世紀ぶりの相続税大改正で、首都圏の家持ちの多くが課税対象となった。これまで他人事だった"税務調査"がもしかしたら自分のところにも来るかも!?しれない。国税庁にはKSKシステムと呼ばれるデータベースがあり、過去の申告・納税情報のほか、当局が把握した資産の取引情報などが膨大に詰まっているらしい。それらデータに調査官の目利きが加わって調査対象となった事案のうち、申告漏れがヒットした率は、2013年事務年度(13年7月〜14年6月)で82.4%(!)。ここ10年8割を切ったことがないんだと(汗)。ちなみに税務調査が入るのは被相続人が亡くなってから1年半後だそうな。
<巻頭特集>は「スカイマーク経営破綻 折れた『叛逆の翼』」。<深層リポート>では国内が踊り場にさしかかり成長戦略が見えない楽天の海外事業を掘り下げる。


第4位
■週刊エコノミスト■ <<< 中国が抱えるリスク

 今週の『週刊エコノミスト』は、珍しいことだが表紙を2枚看板にしてきた。1つは第1特集に当たる「中国 減速リスク」。世界の"マネーの出し手"である中国の異変を3ヵ月ぶりに掘り下げる。前回は昨年10月の「中国大減速」とのタイトルだったが、今回は少しトーンダウンして中国経済の減速リスクを人民元・上海株暴落リスク、反腐敗で特権を奪われた軍の反発や内部分裂リスク、低成長=新常態(ニューノーマル)適応リスクなど、中国社会経済が抱える減速リスクの現在を取り上げた。
 2つめは「ピケティにもの申す!」。表紙には同じ大きさの「中国」と「ピケティ」の活字と、習近平主席とピケティ氏の顔写真が並ぶ。来日したピケティ氏への注目度の高さに『週刊エコノミスト』もついに特集という感じだ。ピケティ本人へのインタビューと、国内識者7人によるピケティ本への異論・反論・批評で構成される。『週刊ダイヤモンド』と人選で被ったのは1人だけなので、こちらも目を通したい。
 堀江貴文氏が「なんではやる?理解できない」と期待通り100%不支持の反応だ。