2015年1月23日

【来た!見た!書いた!】 訪日外国人を増やすために注目したい「飛騨高山」というモデル

司馬遼太郎が誉め称えた町並みの美しさ
 正月休みに岐阜県高山市を訪れた。司馬遼太郎は『街道をゆく 飛騨紀行』で、高山について「まわりの田園が、うつくしい。飛騨で堪能できるのは、なんといっても民家である」と書いた。民家や伝統的な日本の町並みの美しさを堪能できる町だ。
 高山は東京からも、関西からも行きにくい。東京からの場合、一般的な名古屋ルートだと名古屋で新幹線から在来線の特急ワイドビューに乗り換え、さらに2時間半前後も鉄路に揺られることになる。
 今回は他に寄りたいところがあったため、富山からワイドビューひだに乗って南へ下るルートを選んだが、富山からでも2時間近くかかる。
 時間がかかるのは岐阜県の北側を占める飛騨高地の山が険しく、山と山の間を縫うように走るJR高山本線が単線で、しかも電化されていないからだ。つまり高山は東京からも、関西からも物理的な距離はさほどではないが、時間はとてもかかる場所なのだ。
 ワイドビューひだの、文字通り大きな窓を通して見る景色は抜群だった。富山平野の雪はそれほどでもなかったが、特急列車ディーゼルエンジンがうなりを上げて山を登るにつれ、雪が深くなる。車窓から見える民家は伝統的な日本建築が多い。単線の山岳路線ゆえ、スピードは速くない。「これぞ日本の冬」と呼べる風景を堪能できる2時間弱だった。
 だがそんなゆったりとした気持ちはJR高山駅に着くと一変した。

高山市への観光客のおよそ6%が外国人
 高山駅は2017年度の完成に向け駅舎や駅前広場などを工事中で駅の窓口やひどく狭い。そこに大勢の外国人観光客が並んでいる。列車の時刻を確認する人、みどりの窓口でわめく人、お土産を急いで買い求める人。日本語、英語、中国語が飛び交う。「ここはどこか?」と一瞬、錯覚するほどの日本的ではない混み方だった。
 高山駅から歩いて15分ほどの伝統的建造物群保存地区も、真冬の一地方の観光地とは思えない混雑ぶりだ。欧米人の家族が「日下部家」などの著名な民家の前で記念写真を撮影していると思えば、アジア系の人たちがお土産物屋にたむろしている。そのそばでは住民が雪かきに精を出す。なんとも多国籍の風景がそこにはあった。
 高山市によると、2014年に同市を訪れて宿泊した外国人観光客は前年より16%も増えて26万人に達した模様だ。高山市全体の観光客数が402万5000人だったので、そのおよそ6%を外国人が占めたことになる。
 市の推計では、外国人で多いのは台湾、タイ、香港の順番。伸びを見ると、中東が3倍以上、欧州と北米が4割増、中南米も3割近く伸びた。
 20日に日本政府観光局が発表した2014年の訪日外国人数は1341万人と過去最高となり、前年から29%伸びた。最大の要因は円安だ。2012年末に1ドル=86円台だった為替レートは、2014年末には119円台になった。日本での買い物代や宿泊費はドルベースで約3割も安くなった。


外国人を意識して街を整えた先駆的ケース
 中国や東南アジアの成長が続き、海外旅行を楽しめる層が増えたことも大きい。政府は訪日外国人の拡大を成長戦略のひとつと位置づけ、羽田空港の国際線の発着枠を増やしたり、免税対象をすべての品目に広げたりして、後押ししてきた。
 とはいえ外国人が訪問する中心はいまだに首都圏や関西、富士山、名古屋などのゴールデンルートだ。そのルートからはずれていて、さして交通の便がよくない「地方」でこれだけ外国人を集めている地域はまれだ。
 高山はなぜこれほど外国人をひきつけるのか。その歴史は、飛騨地方の1市19町村(当時)が1986年、国の国際観光モデル地区に指定されたことにさかのぼる。それ以来、高山市は外国人が安心して訪ねられる街づくりに取り組んできた。
 英語の案内所や無料で利用できるインターネット回線を整備。英語以外にも仏語やスペイン語など10言語による「散策マップ」を用意した。多言語併記の案内板も整備し、SNSでも海外向けに観光情報を発信している。
 何よりも外国人が感じる「日本らしさ」を意識して保存してきたことも大きい。旅行の専門家は高山市を「外国人を意識して街を整えた、先駆的なケース」と賞賛する。
 とかく日本の自治体が苦手とされる、近隣自治体との連携にも積極的だ。金沢市や松本市とは共同で1989年から外国人向けの観光ルートを開発してきた。


訪日外国人2000万人達成には地方への誘客が必至
 2012年には、国が中心となり、中部北陸9県の観光ルートを龍の形に見立て、中華圏や東南アジアでの知名度アップを狙おうという官民一体の「昇龍道プロジェクト」が発足した。
 2014年3月にはマレーシアの格安航空会社(LCC)のエアアジアXが首都のクアラルンプールと中部国際空港を結ぶ路線を週4便運行させていることもあり、マレーシアなどイスラム圏からの観光客も増えている。
 政府は2015年の訪日外国人数を1500万人以上と予測している。外国人が国内で使うお金から、日本人が外国で支払うお金を差し引いた旅行収支の赤字幅は縮小傾向が続いてきたが、このまま訪日外国人が増え続ければ、黒字に転換するのも遠くはない状況だ。
 ただ旅行大手のJTBは15年の訪日客を1500万人と予想し、伸び率は29%から13%に鈍化するとみている。東京都内のホテルが不足することが理由だ。政府目標の2020年に訪日外国人2000万人を達成するには、地方への外国人の誘客をどう増やすかが課題なのだ。
 外国人への対応をどうするか。今あわてふためいて対応に動き出した地方の観光関係者は多いだろう。地域の資源を生かしながら外国人対応を進めた高山市から学ぶことは多いはずだ。

今週の第1位は『週刊ダイヤモンド』・・・孫正義 世界を買う

週刊ダイヤモンド ... 孫正義 世界を買う
日経ビジネス ... ナノ市場突破法
週刊東洋経済 ... 今年こそ株・投信
週刊エコノミスト ... 自動運転・AI・ロボット

『週刊ダイヤモンド』が思い切った特集を組んだ。そもそもあまり人物特集をしない同誌だが、孫さんの特集というより、ソフトバンクの買収史的な切り口から今後の戦略を見る、という感じの特集でしょうか。面白い切り口だと思いました。これが今週の第1位です。
 次に面白かったのは『日経ビジネス』の特集「ナノ市場」です。いまや、従来のマーケティングの考え方では商品もサービスも売れない。もっと細分化(ナノ)された市場になっているというのが同誌の考えで、実際の成功例を基に取材した「ほぉっ」と思わせる切り口でした。これが今週の第2位です。
『週刊東洋経済』は先週の『週刊エコノミスト』に続いて、株と投信の特集です。それなりの切り口で読ませます。
『週刊エコノミスト』は将来爆発的に伸長する市場である自動運転とAIとロボットをまとめて特集しています。それにしてもタイトルは何とかならないのか? これじゃ、売れるものも売れない?

dia_20150123.jpgnikkei_20150123.jpgtoyo_20150123.jpgeco_20150123.jpg


第1位
■週刊ダイヤモンド■ <<< 第2のアリババを探す孫正義の旅

『週刊ダイヤモンド』は「孫正義」の特集。タイトルは「孫正義 世界を買う」。過去数年のデータでは1年に1度は単独で特集される傾向にあるのがソフトバンクだ。米スプリント事業での停滞というブレーキもあるが、しかし、今年も買収も含めてダイナミックな動きを見せてくれるだろう。新年一番の読みたくなった特集だ。
 まずは昨年10月にグーグル最高幹部からソフトバンクに転身したニケシュ・アローラ氏。なぜグーグルを辞めたのか、そして孫正義氏と手を取って目指したい夢は何か、アローラ氏自身の言葉で語られている。これまでもたくさんのM&Aや投資をしてきた孫氏だが、アローラ氏の登場で第2のアリババを探す旅は今後さらに加速する。過去の買収劇・出資劇もドラマが満載だ。「秒速で出資を決める」と言われる孫氏。「革新的なビジネスを手がける起業家に出会うと、即座に買収モードに入る。それが孫社長の野生の勘」だという。アリババ創業者ジャック・マー氏、スーパーセルCEOイルッカ・パーマネン氏、スプリント現CEOマルセロ・クラウレ氏など、孫氏との"伝説の出会い"がそれぞれ面白い!
 第2特集は「インド 『厄介な超大国』で突破口を開く」。


第2位
■日経ビジネス■ <<<  SNSで「いいね」がたくさんあればヒットする!?

 新年から始まった『日経ビジネス』の"シリーズ逆転の経済"第3弾は「『ナノ市場』突破法」。テクノロジーのことかと思いきや、「2極化どころか1万極」と言えるくらい、微細に多極化する消費市場がテーマである。もはやセグメント化して的を絞るような古びたマーケティング手法は通用しない世界が広がっているというのが同誌の主張だ。
 消費しないと言われる若者が消費する現場、なぜか好調の大人数用調理家電、検索はさせず選択肢を提供する転職サイト、中高生向けクリスマスの大人気"プログラミング合宿"など、いま密かにウケている8シーン15例、まさにナノ化した消費・サービスの現場が紹介される。
「散らばった個人の嗜好は揺れ動き、割り切れないから、市場はさらに複雑化していく(本文)」。1つだけあるのは「SNSで友達に見せ」て「いいね」がたくさんもらえるものはヒットしているということか。
「スペシャルリポート シリーズ大胆提言③」でも変わる消費者を取り上げている。「『お客様は神様』じゃない 社員を守れぬ会社に先はない」がそれだ。猛威を振るう反社会的消費者への対応を追う。増加するクレーマーの一翼はずばり団塊の世代。


第3位
■週刊東洋経済■ <<< また、株・投信特集?

 先週の『週刊エコノミスト』に続き、今週は『週刊東洋経済』が投資特集だ。タイトルは「円安と低金利に負けない! 今年こそ株・投信」。確か『週刊東洋経済』は『会社四季報新春号』発売に合わせて「いま投資するべき株・投信」という特集をひと月前に組んでいた。が、確かに今週の記事のほうがより具体的でわかりやすく、分析も進んだ誌面となっている。こんなに間を置かずに同じテーマの特集とは、珍しい。年明け早々フランスでのテロ騒動やスイス発信の金融騒動でフェーズが変わったので、個人投資家にはいい仕切り直しかもしれない。
「図解:円安、低金利時代に有利な投資先」「株:今年も日本株が狙い目」「投信:いま始める海外金融商品」「サラリーマンでもできる不動産投資」と、4つのパートからなる。マネー戦略のご参考にどうぞ。
 さて、毎度手厚い『週刊東洋経済』の巻頭特集。今週は「ソニーの60日間 映画はパンドラの箱を開けた」だ。映画とは金正恩第1書記の暗殺を題材とするコメディ映画『インタビュー』のことだ。たかが1本のナンセンスコメディ映画が米朝対立の引き金を引いた......この奇想天外な事件の裏で企業・ソニーはどう動いたのか。


第4位
■週刊エコノミスト■ <<< 今後爆発的に伸長する市場は?

『週刊エコノミスト』の注目テクノロジーシリーズとでも言おうか、毎回3分野に焦点を当てる。今回は将来の成長が見込まれる希少な有望市場「自動運転・AI・ロボット」。「情報技術(IT)の進化で、自動運転、ロボットと、その開発の鍵を握る人工知能(AI)の市場が爆発的に広がっている」いま、日本企業がつかむべきチャンスに注目する。
 自動運転の国内市場は、現在の500億円から2030年には20兆円。ロボットは2035年9兆7080億円。経済産業省などが示した見通しだ。政府のバックアップも強力で、とくにロボット研究開発には国費を投入して普及に取り組む。しかし自動運転にグーグルが参入しているように、自動運転もロボットも業界や国境を越えた取組みや参入が加速している。