2014年12月 4日

【来た!見た!書いた!】 今後の原発再稼働で焦点になる「地元」と「安全協定」

原発再稼働で出た新たな「同意対象」の範囲

 原子力発電所を「重要な電源」と位置付け、原子力規制委員会の安全審査に合格した原発については再稼働を推進してきた自民党の安倍晋三政権。今回の総選挙では、その「原発再稼働」の姿勢が問われることになる。仮に自民党が政権を維持することになれば、九州電力の川内原発(鹿児島県薩摩川内市)のケース以上に「地元とは何か」が焦点になるだろう。
 11月7日に鹿児島県が再稼働に同意した九電の川内原発。2011年3月の東日本大震災をきっかけにできた新しい規制基準のもとでの初の再稼働であると同時に、「再稼働に必要な地元同意の範囲がどこまでか」――が問題になった。
 震災前、電力会社が事故や定期点検で止まった原発を再稼働するときには、原発が立地する市町村と同県から同意を得ていた。電力会社は立地自治体と「原子力安全協定」を結び、増設などの際の事前協議を約束してきたからだ。
 新規制基準ができる前、2012年夏に再稼働した関西電力大飯原発(福井県おおい町)のときも、さまざまな議論があったが、結局同意の範囲は立地自治体である福井県とおおい町のみだった。


福島以後広げられた「30キロ圏」で強まる自治体の意志

 同意の範囲についての考えが大きく変わるきかっけになったのが、東日本大震災のときの東京電力福島第1原発の事故だ。原発に近い地域だけでなく、東北から関東の広い範囲に放射性物質をまき散らした。
 この事故を踏まえ、2012年10月に改訂された原子力災害対策指針では、住民の避難計画作りを義務付ける自治体の範囲が、従来の「原発の半径8~10キロ圏」から「30キロ圏」に広がった。
 30キロ圏の自治体は急きょ、避難計画をつくらなければならなくなった。そのための費用もかかる。にもかかわらず電力会社が再稼働を事前協議する対象には入らない。
「それはないだろう」ということから、30キロ圏で同意対象にしてほしいという自治体が急増した。川内原発の場合、30キロ圏には薩摩川内市を含め9つの市町がある。9月末にはいちき串木野、日置の両市議会が同意に含めることを求めた意見書をまとめ、知事に提出した。さつま町も同様の検討をして、出水市は周辺市町に「地元扱い」を呼びかけるなどした。
 だが鹿児島県の伊藤祐一郎知事は「同意の範囲は鹿児島県と薩摩川内で十分」という持論を最初から最後まで崩さなかった。


川内原発のように立地自治体の同意だけですむのか

 10月末には、30キロ圏市町の首長が九州電力の瓜生道明社長と相次いで会談する機会があった。見ようによっては、同意の問題を訴える絶好の機会だったが、どの首長もそのことには触れなかった。同意の対象になれば、原発事故時には自治体や首長側が重い責任を負うことになる。責任を負うことを嫌ったことや、さまざまな交付金や公共事業の拡大など、経済的な支援の優先を望んだためとみられる。
 鹿児島県の伊藤知事は再稼働に同意した11月7日の記者会見で「原発の知識の薄いところで結論を出すのは錯綜(さくそう)するだけで、賢明なことではない」と語った。
 自民党政権にとっても、電力会社にとっても、交渉の相手が多くなり、より多くの時間を必要することになる「同意範囲の拡大」は避けたい――というのが本音だろう。菅義偉官房長官は鹿児島県の再稼働同意後、「川内原発の対応が基本的なことになる」と語っている。
 だが仮に自民党が政権を維持できたとしても、今後再稼働を進める原発について、川内原発のように「立地自治体だけの同意」ですむかは、予断を許さない。


焦点となる安全協定の形

 川内原発に続いて再稼働の準備が進んでいる関西電力の高浜原発(福井県高浜町)。ここは川内原発とは違い立地県の福井県だけでなく、舞鶴市や綾部市、京丹波町などの京都府、高島市などの滋賀県が30キロ圏に含まれる。鹿児島県知事だけでなく、京都府や滋賀県の知事も発言力を持つことになる。その京都府の山田啓二知事は「立地自治体に準ずる強い権限を盛り込んだ安全協定を結ぶまで再稼働を認めない」と話している。滋賀県の三日月大造知事も「(自治体と電力会社が結び、同意の根拠となる)安全協定の締結に粘り強く臨む」」と主張している。
 安全協定はもともと1969年に東京電力と福島県が福島第1原発について結んだのが最初で、法的拘束力や罰則規定をもたない「紳士協定」だ。立地自治体との間で、増設などの事前協議は約束しているが、文言の上では「再稼働のときには事前協議する」とも書かれていない。
 だが長年の積み重ねから紳士協定の「安全協定」こそが、立地自治体に再稼働の同意を得る「根拠」になっている。伊藤・鹿児島県知事が同意の範囲を立地自治体に限る考えにこだわったのも、川内原発周辺で増設などのときに事前協議を約束する条項を備えた安全協定を九電と結んでいるのは鹿児島県と薩摩川内市だけだったからだ。
 このような自治体側が強い権限を持った安全協定を結べるかどうか。高浜原発の再稼働では、「同意の範囲」の問題の前に、まずこの「安全協定の形」が焦点となりそうだ。

今週の第1位は『日経ビジネス』・・・景気失速の主犯

日経ビジネス ... 景気失速の主犯
週刊ダイヤモンド ... ゼネコン・不動産開発バブル
週刊東洋経済 ... マンション防災修繕管理 完全マニュアル
週刊エコノミスト ... 水素車・リニア・MRJ

 いよいよ総選挙が公示され、街角では演説、テレビでは政権放送が始まりました。師走の選挙と言うと前回を思い出しますが、その争点は明確ではありません。そこにタイミング良く『日経ビジネス』が「アベノミクスは成功していない」との主張を掲げて安倍政権の何がどう成功していないかを分析しています。表紙には神妙な安倍首相の顔。これもインパクトがありました。今週の第1位です。
 次に面白かったのは『週刊ダイヤモンド』のゼネコン・不動産の開発がらみの特集です。東京が2020年に向けて大きく変貌する7つのエリアを図示、わかりやすく解説し、どう変わっていくかを読者に伝えています。それにしても、日本はバブル好きの国なのだなということがよく分かる特集でもあります。
 第3位は『週刊東洋経済』です。マンションの防災、修繕、管理といった観点からマンションの価値をどれだけ上げ(守る)て行くのかをマニュアル風に特集しています。これとは別に巻頭特集で外食産業を取りあげ、ブラック企業として話題になったゼンショーの小川賢太郎会長兼社長に独占インタビューを行なっています。
『週刊エコノミスト』は運輸のハード部分である鉄道、自動車、航空機の日本が誇る再先端部分の技術にスポットを当て、その将来性と課題とを分析しています。

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第1位
■ 日経ビジネス■ <<< 景気上昇、街角を取材してみれば

 日本の7〜9月期の実質GDPが事前の市場予想を覆し、マイナスに陥った。これに伴い日経平均株価が落ち込む一方で米国のヘッジファンドのハワード・スミス氏は「消費税再引き上げの延期が確実になった、日本株にはポジティブだ」と呟いた。
このGDPショックの17日前、日銀の黒田総裁は市場関係者の意表をつく大規模なサプライズ緩和を発表しており、国内外の投資家は日本株買いに奔走した。
 これら二つの日本市場における"サプライズ"の影響が色濃く残る中、阿部首相は消費増税の延期を発表するとともに衆院の解散に踏み切った。それに伴い株価も上昇した。
 しかしこれらのサプライズは景気の変調を予感させるサインでもある。黒田総裁も「今はまさに正念場」と述べており、エコノミストの間では「景気は今年1月をピークに下り坂にある」という説もまことしやかにささやかれている。
 同誌は実際に街角に出て、アベノミクスが描く理想の景気とその実体の乖離が如実に現れ始めている事を通説に対するアンチテーゼとして検証している。曰く「富裕層消費は活発」の? 「接待需要が復活」の? 「都市部消費は堅調」の? 復調した消費、物価、雇用や外需による牽引等は一時的にはその様子こそ見られたもののどれも長期的な成果をあげられていない事が分かってくる。


第2位
■ 週刊ダイヤモンド■ <<< 東京五輪に向けて「東京は大改造」

 日本橋や大手町、銀座、虎ノ門から六本木、そして渋谷や品川。都内を行き来していると、工事中の大規模開発案件があちこちに見られる。2020年の東京オリンピック開催という1つのゴールも設定され、都心部の不動産市場が沸き返っている。五輪、海外投資家の熱い視線、特区認定などによる政府の後押し、これらが相まってゼネコン・不動産業界が待ちに待ったバブルがやってきたのだ。今週の『週刊ダイヤモンド』は、「ゼネンコン・不動産 開発バブル」と題して、東京大改造の全貌と業界の内情、全国主要地域の事情をレポートする。
 まずは「劇的! 東京大改造の全貌」だ。「銀座」、「大手町・丸の内・日本橋・八重洲」、「虎ノ門・六本木」、「渋谷」、「品川」、「湾岸」、「神宮外苑」の7エリアの再開発案件を地図上にまとめた。「大手町・丸の内・日本橋」エリアでは、三菱地所VS三井不動産、そこに割って入る住友不動産の三つ巴の戦いが繰り広げられている。「虎ノ門・六本木」エリアは森ビルの独壇場と思いきや、森トラストや住友不動産などの再開発も目白押しだ。そしてそんな老舗都心エリアから「油断できない街」と警戒され発展が期待される「渋谷」。読めば都心部の今後の変容が想像できる特集だ。
 そのほか、逼迫する建築現場の人材不足、地方主要都市の不動産市場現状と今後、上場建設174社収益力ランキングも。


第3位
■ 週刊東洋経済■ <<< モンスター理事というのがいるらしい、やっぱりね

 今週の『週刊東洋経済』<巻頭特集>は「外食! 苦しむ!」。外食業会を代表する大手が軒並み2014年度決算で多額の赤字となることが判明したいま、上位各社の動きを追う。この特集の目玉は、ゼンショーホールディングス会長兼社長・小川賢太郎氏への独占インタビュー「すき家のブラック批判にすべて答える」だろう。それを読む限りベンチャー起業家・小川賢太郎のパワフルな経営論理に変化はない。 
 第1特集は「資産価値を上げる! マンション防災・修繕・管理 完全マニュアル」。マンション住人限定の実用特集なので、多くの人の胃袋を支える外食産業を巻頭特集に持ってくることでバランスがとれる感じだろうか。
 マンションでは、地震の際に「机の下に入る」「風呂に水を貯めておく」はNGなのだそうだ。今までの防災対策は戸建て住宅メインに語られてきているため、マンション住人限定の防災特集は目からウロコの情報だったりする。そんなマンション防災の基本から応用までが前半。後半は工事費高騰に負けない「攻めの大規模修繕」、そして「管理会社ランキング」だ。記事のなかに「モンスター理事」というワードが出てきた。発生しているんですね、どこの世間にもモンスターが。


第4位
■ 週刊エコノミスト■ <<< 裾野の広い旧来型「新・産業」

『週刊エコノミスト』は8月に「水素・シェール・藻」という素材としての特集を組んだが、今週は「水素車・リニア・MRJ」と交通のハードとして再度取りあげている。それぞれのプロジェクトがもたらすインパクトは水素車=4.4兆円(2030年)、リニア=16.8兆円、MRJ(航空機)=80兆円(2030年)となっているという。
 自動車、鉄道、航空機は部品点数が多いため波及効果が大きいと言う。しかも、それぞれの技術は他の製品にも転用される可能性があるから、さらに膨れ上がることも考えられるのだ。航空機こそ敗戦で作れなった時期があったが、どれも日本を代表する産業には違いない。これらの産業が先端技術を駆使して花開けば日本の発展に大きく寄与するには違いない。同誌ではその将来性とクリアすべき課題とを上げ、どのような道程でこれらが押し進められていっているかを検証している。