2014年11月12日

【来た!見た!書いた!】再生エネルギー買い取り問題のウラに潜む「空押さえ」のカラクリ

買い取り中断に噴出した不満

「国が再生可能エネルギーを進めようとしてきたのに、急に電力会社が再生エネはこれ以上接続できないといい始めた。しかも理由が明示されない。こんなおかしいことがあるか」
「福島県の場合、津波の被害がひどかった浜通りに、東京の大資本が出力1000㎾を超える大規模太陽光発電所(メガソーラー)を作る計画が数多くあり、それが電力会社の送電網を抑えてしまっている。地域で地産地消の再生エネをつくろうとしている地元の事業者から、東京の大企業が機会を収奪している。こうした企業は福島から撤退すべきだ」
 10月下旬に福島県内で開かれたあるメガソーラーの開所式。そこに集まった再生可能エネルギーの関係者からは不満や憤りの声が噴出していた。

 話題になっていたのが、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の問題だ。太陽光発電を中心に各種再生エネの設備の計画・設置が電力会社の送電網の受け入れ能力を上回るペースで進み、9月末に九州電力や東北電力、四国電力などの5電力会社が接続受け入れ、買い取りを中断する事態に陥ったのだ。
 固定価格買い取り制度は再生エネの発電設備を持つ企業や個人が発電した電気の買い取りを大手電力会社に義務付ける制度だ。買い取りの価格や期間は発電形態ごとに違い、年度ごとに見直す。例えばいま最も多くの事業者が手がけている太陽光(発電能力10㎾以上)の2014年度の買い取り価格は、1㎾時あたり税抜き32円で買い取り期間は20年。風力(20㎾以上)は22円、20年だ。


再生エネ全部買い取ると1家庭の負担は1万円超に

 この制度の問題点は大きく分けて2つある。1つは、大手電力会社が再生エネの接続受け入れを申請通りに進めた場合、電力会社の送電網の能力を超えてしまうという点だ。
 背景には、太陽光の買い取り価格設定が他の形態に比べて高く、しかも比較的短期間で設備を設置できるため、設備投資と大手電力会社への接続申請が太陽光に集中してしまったことがある。太陽光は晴れの日と雨の日、昼と夜とでは発電量が大きく変動する。発電量が増えすぎると停電するリスクもあるという。大手電力会社は、全ての太陽光を受け入れて電力を安定して供給するには、送電網の余力が足りないと主張している。
 もう1つは国民の負担が重くなっていることだ。固定価格買い取り制度では、大手電力会社が再生エネの買い取りにかかった費用は、使用電力に応じ賦課金という形で電気料金に上乗せされる。
 現在標準的な家庭で、年2700円を徴収している。経済産業省の試算では、すでに認定を受けながら稼働していなかった設備もすべて運転した場合、年間の国民負担が4倍超の2兆7000億円に膨らみ、1家庭当たりの負担が1万円を超すことになるという。

県内すべてを再生エネルギーで賄う福島の対策

 この問題を解決するにはいくつもの論点があるが、まずは短期でできることをあげてみよう。その第1が「空押さえ」の解消だ。
「短期的対策 太陽光発電計画の実態把握と「空押さえ」の解消」――。福島県が10月27日に開いた、電力会社の再生エネ接続保留問題についての対策を検討する会議。事務局が配った資料には「空押さえ」という聞き慣れない言葉が記されていた。
 東京電力福島第1原子力発電所の事故に今も悩まされる福島県は東日本大震災のあと、県内にあるすべての原発を廃炉にして、2040年には県内の全エネルギー需要量に見合う再生エネで生み出す目標を掲げた。この目標の前提になるのが、大手電力会社が企業や個人から再生エネを買い取る固定価格買い取り制度だった。だからこそ電力会社の再生エネ接続保留問題が起こると、福島県は早速、対策に乗り出した。
 その福島県が指摘する「空押さえ」とは何か。「買い取り価格と送電網への接続予約をしながら、合理的理由もなく発電事業に着手しない行為」のことだ。


接続契約を結んでいても実際の稼働はわずか15%

 経産省によると、固定価格買い取り制度が始まってから6月末までに認定した容量は7178万㎾あるが、そのうち実際に運転を始めたのは約15%に過ぎない。大手電力会社の「送電網が足りなくなる」という主張は、この残り85%分が実際に運転を始めるようになったときのことを前提とした話なのだ。
 東北電力管内や福島県の場合、さらに認定容量と実際の運転し始めた容量との差が大きい。東北電管内で運転を始めている割合は5.8%、福島県の場合は4.4%とさらに低くなる。
「福島の場合、福島第1原発に近い沿岸部はほかに使いようのない土地が多く、そこに東京の大企業がメガソーラーを計画している。しかしまだ実際に動き出していない計画がほとんどで、これが東北電力の接続容量を占領していることが大きな問題」と関係者は指摘する。これが空押さえの実態だ。
 福島県はこうした空押さえを解消するために①発電能力2000㎾以上の大規模事業は土地利用についての法制度と整合性を図るため立地自治体と設備認定情報を共有する②電力会社がやる気のない事業者とは接続契約を解除する、経産省が設備認定を取り消すなどして空押さえを解消すべき――などと提言している。
 固定価格買い取り制度そのものの制度を大幅に見直すには、まだまだ時間がかかるだろう。ただ福島県の提言については、すぐに手をつけられることばかりだ。福島県に限らず、電力会社や経産省はまず、空押さえの解消に動き出すことが必要だ。

今週の第1位は『日経ビジネス』・・・黒霧島5000日戦争

日経ビジネス ... 黒霧島5000日戦争
週刊東洋経済 ... 中国暗転
週刊ダイヤモンド ... 「宗教」を学ぶ
週刊エコノミスト ... 世界低成長の異常

 今週の注目は全経済誌そろって「日銀の追加緩和」を取りあげたことでしょう。大特集にした雑誌はありませんでしたが、全誌が緊急特集的な扱いで取りあげています。そんななか、ユニークな特集を組んだのが『日経ビジネス』です。なんと、焼酎の大メーカーとなった「黒霧島」の霧島酒造を取りあげ、どのようにしてデフレ下で売上を急増させ、一地域ブランドを全国ブランドにしたかを紹介しています。これが今週の第1位です。
『週刊東洋経済』は巻頭にたくさんの特別企画やレポートを掲載していますが、今号も「孫正義の挫折と逆襲」といった企画を入れています。いつまで続くか、楽しみです。で、特集は「中国」です。高成長の終わりと日本企業の商機について取りあげています。これが第2位です。
 第3位は『週刊ダイヤモンド』です。同誌も通常とはちょっと変わって、「宗教問題」を真正面から取りあげました。イスラム国の存在が象徴するように、いまや世界全体に大きく関わりが生じているこの問題。この種のテーマも今やビジネスマンにとっては欠くことのできないテーマであるとのメッセージなのでしょう。
 そして、第4位は世界の低成長の異常を特集した『週刊エコノミスト』です。「黒田ショック」を取りあげた巻頭特集と併せて読むのがいいでしょうね。

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第1位
■日経ビジネス■ <<< 実は日本全国どこでも買える焼酎は少ない

 1990年代以降のデフレ下で最も事業拡大に成功した最強の国内製造業は?・・・その一つは、霧島酒造株式会社!が正解! いまや日本中の居酒屋で手にすることができるようになった芋焼酎「黒霧島」の製造元だ。癖のない焼酎初心者も美味しく飲める芋焼酎なのである。今週の『日経ビジネス』が「記録ずくめの最強メーカー 黒霧島の5000日戦争」として「老舗蔵元の『反常識』経営」を特集した。2週前の『週刊ダイヤモンド』の酒特集に続き、酒ビジネスが熱い。
 この会社、大正5年に創業し、以来80年の間、宮崎県の中だけで商売をしてきたという。そのため70年代の焼酎ブームにも80年代の焼酎ブームにも乗っていない。「いいモノだけを造る」信念の頑固一徹な二代目が急逝し、1996年に40代の2人の兄弟が社長と専務として後を継いだところから霧島酒造の5000日戦争が始まった。2人が継いだ時、販促もマーケティングもしていなかった霧島酒造は、頼みの県内の市場の盤石さも失いつつあった。彼らがとった戦略は「県外市場でも勝てる新商品づくりに経営資源を集中させる」ことだったという。
 特集では、黒霧島の全奇跡をストーリー仕立てで振り返り、「全国制覇を支えた戦術」として、戦略立案、商品開発、営業販売、生産体制、設備投資を掘り下げる。今夜は芋焼酎が飲みたくなるような特集だった。


第2位
■ 週刊東洋経済■ <<<  中国はいま「ニューノーマル」

 中国に関する特集は2週前の『週刊エコノミスト』による「中国大減速」に続くものだ。『週刊東洋経済』のタイトルは「中国暗転 高成長の終わりと日本企業の商機」。成長が鈍化する中国経済の分析と、日本企業がいま何をするべきかを探る。
 リーマン・ショック後、「ニューノーマル」という言葉が登場したが、いまの習近平中国の経済を表わす言葉としてこの「ニューノーマル=新常態」が復活したようだ。これまでのような高成長と決別し、中国の市場としての価値を高め、過剰投資や産業構造のゆがみを是正してゆく。習近平主席による大々的な反腐敗キャンペーンもその一つ。習主席の豪腕指導者ぶりが国民意識の変革を促す。
 特集では「アリババだけじゃない! 世界が認めた中国の成長企業」、「新常態」時代に伸びる企業を探る「中国民営企業ランキング(注目業界トップ10)」と、中国ビジネスに関わる方がチェックしておきたい記事も多そうだ。また、2005年の進出以来苦戦してきたシンプル路線の「無印良品」が近年ウケているらしい。2013年で100店舗を超えたという。無印良品の大攻勢は中国市場の成熟を示すものだろう。


第3位
■ 週刊ダイヤモンド■ <<<  経済の裏の宗教

 連日メディアをにぎわす国際ニュース。この背景にはたいて宗教の存在がある。「世界は宗教を中心に動いている」。無宗教国家である日本人にはこれがなかなかピンとこない。現代社会・経済を読み解く鍵として欠かせない世界の宗教問題を『週刊ダイヤモンド』が今週第1特集で取り組む。題して「ビジネスマンの必須教養『宗教』を学ぶ」だ。
 まず元外務省国際情報局主任分析官だった佐藤優氏による「生きている宗教」の基礎知識から。イスラム教ハンバリー派=イスラム原理主義の歴史を受け継ぐイスラム国、米国(ピューリタン)とイスラエル(ユダヤ教)が共有する「選民思想」、カトリックとプロテスタントが生む欧州南北問題、そして中国政府の宗教観と、現代の政治・経済・社会を読み解く4つの鍵を提示する。これは読んでおくべき。国内の新聞には出てこないイスラム教「ハンバリー派」や、米国プロテスタントの一派「ユニテリアン」的な思想への言及は、私の勉強不足を補強してくれた。
 第2特集は「メキシコ大躍進」。麻薬組織にからむ非道な事件報道があったばかりだが、タイを超える自動車生産拠点として注目されている。


第4位
■ 週刊エコノミスト■ <<< 黒田腕力緩和の行方

「日銀追加緩和の限界(週刊ダイヤモンド)」「日銀追加緩和サプライズ(週刊東洋経済)」「黒田ショック 奇襲緩和の限界(週刊エコノミスト)」「日銀緩和、官邸もサプライズ(日経ビジネス)」と、4誌ともに黒田日銀総裁のハロウィン緩和をぶち込んできた。なかでも第1特集扱いとしたのは『週刊エコノミスト』だ。表紙にデカデカと「黒田ショック」の文字が踊る。経済誌の懸念をよそに、方々でバブルへの期待が沸々とするのを感じる。実体経済はいまのところ、「世界低成長の『異常』」であるにもかかわらず。そんなわけで、『週刊エコノミスト』の今週の特集は表紙では小さい扱いとなったこの「世界低成長の『異常』」だ。
 景気停滞と金融バブルが共存する世界経済。その状況を『週刊エコノミスト』は「世界低成長の『異常』」と表現した。前日銀副総裁・西村清彦東京大学教授が指摘する「複合危機」が先進国を中心に生じている。その中身は①金融仲介機能の低下と中産階級層への打撃、②ICT(情報通信技術)の進歩、③人口構成の変化だ。米国も欧州も日本も、中間層が脱落して消費が減退。個人消費の主役が先進国から消滅しつつあるような状況だ。