2014年11月27日

今週の第1位は『日経ビジネス』・・・日本の革新者2014 世界を動かす12の発想

日経ビジネス ... 日本の革新者2014 世界を動かす12の発想
週刊ダイヤモンド ... JA解体 農業再生
週刊東洋経済 ... 就活 先手必勝、後ろ倒しに備えよ!
週刊エコノミスト ... アベノミクス相場 第2幕
 
「新しい波が来ている」といった話はいつ読んでも楽しいものです。今週の『日経ビジネス』にはそういう楽しさがありました。同誌が独自に行なっている「日本のイノベーター大賞」で大賞を受賞した人たちを特集として誌面で取りあげています。日本酒の獺祭を海外に広めた旭酒造やクロマグロの養殖で有名な近畿大学の水産研究所など知っている人たちもいるものの、どの人も確かにユニークな足跡を残し、日本を変えていっている人だなと感じさせられました。これが今週の第1位です。
 第2位は農業を正面から取りあげた『週刊ダイヤモンド』です。よくも悪くも日本の農業を支配する全中にスポットを当て、官邸が主導して行なおうとしている農政改革の実態と併せて興味深い特集に仕上げています。
 第3位は「就活」を特集した『週刊東洋経済』です。解禁が後ろ倒しになったことで、いろいろな問題が出ているその様を取りあげています。それにしても昨今の就活は「親掛かり」なのでしょうか。
 そして『週刊エコノミスト』は緊急特集と銘打ってアベノミクス相場がどのようになっていくかマーケット予測と総選挙の展望を特集しています。

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第1位
■ 日経ビジネス■ <<< 主流から外れていることの大切さ

 第13回を迎える日経BP社主催「日本イノベーター大賞」。今週の『日経ビジネス』は、その受賞者、2014年に花開いた日本のイノベーター12人が登場する特集「日本の革新者(イノベーター)2014 世界を動かす12の発想」だ。
 大賞は、7人乗り飛行機「ホンダジェット」を米国で開発し来年発売開始するホンダ エアクラフト カンパニー社長・藤野道格氏、優秀賞は純米大吟醸「獺祭」を日本のみならず海外でも人気ブランドに育て上げた旭酒造社長・桜井博志氏、そして砂利道も走れる電動車椅子「WHILL Type-A」をこの9月に日米で世に送り出したWHILL CEO・杉江理氏だ。彼らのイノベーターとしてのエネルギーやエピソードをもっと読みたくなる。ほかの9人もそれぞれ個性的でエネルギッシュで、日本のイノベーターの系譜は脈々と受け継がれていると嬉しくなる情報だった。『日経ビジネス』編集長はイノベーターに共通するのは「辺境の人」そして、「主流からは革新は生まれないのは世の常。重要なのは辺境からのイノベーションを主流にするメカニズムが日本にあるかどうか」と言う。今号の編集長インタビューは昨年この大賞を受賞したLINE・森川亮社長。辺境で生まれたLINEも、今後王道のメインストリーム"生活のインフラ"を目指すという。


第2位
■ 週刊ダイヤモンド■ <<< 「ニッポン的農業」の行方

 日本の農業が大激変期を迎えているという。TPPなど他国農産物との競争がすぐに頭に浮かぶが、今回の特集テーマは内側の変化。タイトルは「JA解体 農業再生」だ。
 平均年齢66歳という高齢化の波、農産物価格の乱高下の波。この2つが同時に襲来し、農業は本当に厳しい時代を迎えている。それら対策に無策であり非効率的な今のままのJA体制では生き残れないのではないか? 官邸は全国のJAを指導・監査する全中(全日本農業協同組合中央会)の廃止を画策する。国としては、分厚いセーフティーネットを前提とした現在の農業制度を維持できない台所事情を抱えており、自ら販路を開拓する農業生産法人や実力のある地方JAの独自の活動を推進する方向だ。
 特集では、農協間で広がる本業での実力差がわかる「全国農協ランキング」を掲載。回答のなかった農協の実名も公表した。Part2では、農業をめぐってかつてない動きを見せる巨大企業、JAの株式会社化を追い、農業再生の主役を探る。農家になりたい人向けには「金なしコネなし知識なし 農家超入門講座」、農水省にも迫る。「農家が貪るおいし過ぎる特権」では、農家の優遇されっぷりがまとめられている。


第3位
■ 週刊東洋経済■ <<<  親から動く? 就活 

 表紙には、売り場のラックに置かれた時に目に入るよう、誌名のさらに上の部分に記事や特集にまつわるキャッチーな言葉が並べられている。『日経ビジネス』以外の3誌がみな同様のデザインだ。今週の『週刊東洋経済』には、その誌名の上部分に「大特集 まず親から動く!就活 後ろ倒し元年で大波乱!」と書かれている。「まず親から動く!」。つまりこの特集は学生ではなく親をメインターゲットにした特集だ。親が手に取り購入し咀嚼した上で、経済誌に縁がなかった息子娘に渡すことが前提なのだろう。リードには「選考時期が大幅に"後ろ倒し"される、2016年卒の就活。だが、企業はもう動いている。売り手市場でも油断禁物。年明けからでは遅い。どこよりも早い就活情報で万全の準備を」と、学生が「後ろ倒しの意味がなーい!」と叫びたくなるような文言が並んでいる。「就活が"後ろ倒し"でも企業はこっそり"前倒し"」が実態のようなので、関係者の方はどうぞお手に取ってみてください。くれぐれも勇み足によってお子さんの足かせにならぬよう。
 さて、巻頭での特集を充実させる方向の最近の『週刊東洋経済』。今週の巻頭特集は「ファンドはなぜ電機を買うのか」。高まっている巨大ファンドの"電機買い"の背景を追った。


第4位
■ 週刊エコノミスト■ <<< アベノミクスと解散

 先週記者発表された衆議院解散・総選挙。全誌が巻頭でその後を追う記事を掲載したが、最もボリュームを厚く掲載したのが『週刊エコノミスト』だ。タイトルはそれぞれ「消費税先送りが招く負の連鎖」(週刊ダイヤモンド)、「瓦解したアベノミクス解散の"真の目的"」(週刊東洋経済)、「安倍首相『先手必勝』の胸の内」(日経ビジネス)、そして『週刊エコノミスト』は「アベノミクス相場 第2幕」だ。アベノミクスとその解散をどう見るのか、伊藤光晴・京都大学名誉教授、竹中平蔵・慶應義塾大学教授、榊原英資・青山学院大学教授のオピニオンが並び、有力アナリストが株・為替のマーケット予測を行なう。表紙でもこの緊急特集の扱いのほうが大きい。
 通常の特集は「競争激烈! 税理士・会計士・弁護士」だ。税理士・会計士の世界は、リーマン・ショック後、資格を取得しても就職できない事態を受けて受験者が急減。しかし現在「過去に例がないほどの採用難」と大手監査法人に言わしめるほどの人手不足だという。一方、法曹の世界は、今のところ法的ニーズの掘り起こしに失敗したのか、まだまだ食えない若手弁護士が出ている。明暗を分けたような形だが、共通しているのは受験者数の減少だという。専門家への期待は大きいが、求められる専門性を身につけられる環境にない若手士業が多いようだ。

2014年11月19日

今週の第1位は『週刊東洋経済』・・・日銀バブルが来る!

週刊東洋経済 ... 日銀バブルが来る!
日経ビジネス ... 社長が選ぶベスト社長
週刊エコノミスト ... 資源安ショック
週刊ダイヤモンド ... 買っていい株237買ってはいけない株163

 最近は『週刊東洋経済』が好調です。視点がいい。今週号はと言えば、ストレートに「日銀の電撃緩和」を取りあげました。雑誌の発売時点ではGDP成長率がマイナス1.6%になるとは分かっていなかったものの、結果としてタイミングの良い企画となりました。また、巻頭の特集「負け続けたプリンス 玉塚元一の逆襲」も面白い読み物で、玉塚氏をクビにしたと言われている柳井正氏のインタビューもなかなか面白かったです。ということで今週の第1位は『週刊東洋経済』です。
 初めての企画と銘打った特集を組んだのは『日経ビジネス』です。その企画とは「社長が評価するベスト社長」。つまりプロがその中のプロを選ぶという企画。これが面白い。永守さんをインタビューしたのは20年近く前ですが、経営理念が微動だにしない人だと思います。第2位です。
『週刊エコノミスト』は価格が下落する資源にスポットを当て特集を組みました。ロシアや中東、アフリカなどの資源国と、世界最大のシェールガス産出国アメリカがどのように資源の市場を形成するか、資源のない国日本に取っても見逃せないテーマではあります。
 そして、最後は『週刊ダイヤモンド』急激に変化する株式市場で買っていい株、買ってはいけない株をピックアップした投資指南の特集です。


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第1位


 去る10月31日意表をつく日本銀行による追加緩和がなされ、先週各誌は緊急レポートという形でなんとか記事をねじ込んだ。今週は『週刊東洋経済』が第1特集でその影響と今後を追う。タイトルは「株 不動産 円安 日銀バブルが来る!」だ。
 まず10.31のルポルタージュが「電撃緩和 10.31サプライズ 11.17カウントダウン」というタイトルで語られる。「今後のポイントは『黒田さんからのギフト』の賞味期限」という経済アナリスト豊島逸夫氏、この黒田緩和を「黒田総裁はやる気だ」と予測していたエコノミスト・嶋中雄二氏などが登場する。言うまでもなく11月17日は7〜9月期実質GDPの年率換算の数字「マイナス1.6%」が発表された日。そして翌18日夜には安倍総理による衆議院の解散「消費税選挙」が発表された。雑誌発売時点では選挙もGDPも発表前だが、それらをある程度織り込んだ上での特集となった。トップエコノミスト25人が答えたアンケートでは、増税見送りに8割が「悪影響あり」と言い、「消費増税は予定通りに」との見解だ。しかし日銀は「ルビコン川を渡ってしまった」し、政府は消費増税の先送りと選挙を行なう。GPIFによる株式購入比率も拡大した。日銀・政府・年金基金が採ったリスクはどんな出口へと向かうのか、目を離してはいけない。しかし公務員の年金基金もリスク採らないとね。
 今週の『週刊東洋経済』巻頭特集は「負け続けたプリンス 玉塚元一の逆襲」。ローソンの新社長となったハンサム・ガイの半生を追う読み物だ。ユニクロ退社後ともに事業を立ち上げたリヴァンプ澤田貴司社長、そして、ファーストリテイリング柳井正会長兼社長が直々に玉塚氏を語る、ちょっと面白い企画に引きつけられた。


第2位
■ 日経ビジネス■ <<< 永守さんと孫さんの差は40点

 今週の『日経ビジネス』の特集は「社長が選ぶベスト社長」。『日経ビジネス』では今回初めて実施したランキングだという。あえて数字による実証ではなく、東証1部上場企業経営者に「高く評価する他社の現役経営者5人」と「その理由」を上げてもらったという。65人から179票の回答を得てTOP30としてまとめられたものだ。「浮かび上がってきたのは、従来の調査や一般の人気とは違う結果」だ。第1位は日本電産会長兼社長・永守重信氏(225点)、第2位ソフトバンク社長・孫正義氏(185点)、第3位トヨタ自動車・豊田章男氏(110点)、以下、セブン&アイHD・鈴木敏文氏、富士フィルム・古森重隆氏と続く。ちなみに一般で評価が高いユニクロ・柳井正氏は古森氏の次に6位で登場、経営者にも評価が高い。日産自動車・カルロス ゴーン氏は17位(17位には13人いて、その下は30位)だった。
 日本電産・永守氏とユニクロ・柳井氏による特別対談のほか、顔ぶれががらりと変わる「若手経営者が選ぶベスト社長」、「『経営者探しのプロ』が選ぶベスト社長」(コラム)などもある。
 ところで、富士フィルムのインスタントカメラ「チェキ」がアジアで大ヒットしているらしい。アナログフィルム市場で生き残った富士フィルムの「残存者利得」を謳歌し、5年で7倍・350万台の販売台数という。『日経ビジネス』と『週刊ダイヤモンド』で取り上げられていた。


第3位
■ 週刊エコノミスト■ <<< いまや世界最大の産油国アメリカ

 シェールオイルによる米国の「資源超大国化」が、「資源の玉突き現象」を起こし、世界の資源の流れを様変わりさせようとしている。今週の『週刊エコノミスト』は、供給過剰で価格下落が続く資源を「資源安ショック」として特集する。これまでの資源国であるロシア、中東、アフリカの国々は、世界で唯一需要拡大が見込めるアジアの国々に殺到。米国も加わった供給先の争奪戦が繰り広げられている。この資源買い手市場を日本はどう生かすべきか、専門家陣による資源市場分析とともに掘り下げる。
「ロシアの友人」と言われるフランス石油大手トタルCEOのドマルジュリ氏が、10月20日モスクワの空港で事故死したのだという。メドベージェフ首相らとシベリア油田開発への投資について協議した後のことだった。ウクライナ問題をめぐる対露制裁にも反対の立場だった人物だけに、陰謀論が大好きなロシア人の間では「欧米による謀殺」との見解が大勢だという。原油収入に依存するロシアを揺さぶりたい米国、原油価格下落でシェールオイル生産に打撃を与えたいサウジ、各国の思惑からこれまた目が離せない。


第4位
■ 週刊ダイヤモンド■ <<< 買ってはいけない株が163もある

 10月中旬に世界同時株安で急落したと思いきや、ハロウィンの10月31日には黒田サプライズ緩和で株価は急騰し、今度は消費増税先送りをめぐって衆議院解散総選挙が浮上、この急変相場に「何が起きているのか、どうすればいいのかわからない」......そんな戸惑う個人投資家は多い。今週の『週刊ダイヤモンド』はそんな迷える個人投資家のための特集だ。題して「株 買っていい株237買ってはいけない株163」。『週刊東洋経済』が「日銀バブル」とのワードで経済・社会予測を繰り広げ、『週刊ダイヤモンド』は「株」に焦点を当てて投資指南を試みる。
「いま買っていい株237」とはなんだか心強い気がする。カテゴリー別に「中長期で安心して持てる銘柄15」「高配当・増配・自社株買い銘柄40」「米国好調で成長性が高い銘柄40」など紹介している。続いて、この時期「買ってはいけない株163」銘柄も紹介する。
 さて、本誌巻頭では、11月4日横浜銀行と東日本銀行、その3日後11月7日肥後銀行と鹿児島銀行と、相次いで発表された地銀同士の経営統合最新情報を「地銀半減!」というタイトルで緊急特集した。全国105行の地銀再編の動向を探る。
 第2特集は「迷宮のソニーモバイル 平井体制の末路」だ。

2014年11月12日

【来た!見た!書いた!】再生エネルギー買い取り問題のウラに潜む「空押さえ」のカラクリ

買い取り中断に噴出した不満

「国が再生可能エネルギーを進めようとしてきたのに、急に電力会社が再生エネはこれ以上接続できないといい始めた。しかも理由が明示されない。こんなおかしいことがあるか」
「福島県の場合、津波の被害がひどかった浜通りに、東京の大資本が出力1000㎾を超える大規模太陽光発電所(メガソーラー)を作る計画が数多くあり、それが電力会社の送電網を抑えてしまっている。地域で地産地消の再生エネをつくろうとしている地元の事業者から、東京の大企業が機会を収奪している。こうした企業は福島から撤退すべきだ」
 10月下旬に福島県内で開かれたあるメガソーラーの開所式。そこに集まった再生可能エネルギーの関係者からは不満や憤りの声が噴出していた。

 話題になっていたのが、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の問題だ。太陽光発電を中心に各種再生エネの設備の計画・設置が電力会社の送電網の受け入れ能力を上回るペースで進み、9月末に九州電力や東北電力、四国電力などの5電力会社が接続受け入れ、買い取りを中断する事態に陥ったのだ。
 固定価格買い取り制度は再生エネの発電設備を持つ企業や個人が発電した電気の買い取りを大手電力会社に義務付ける制度だ。買い取りの価格や期間は発電形態ごとに違い、年度ごとに見直す。例えばいま最も多くの事業者が手がけている太陽光(発電能力10㎾以上)の2014年度の買い取り価格は、1㎾時あたり税抜き32円で買い取り期間は20年。風力(20㎾以上)は22円、20年だ。


再生エネ全部買い取ると1家庭の負担は1万円超に

 この制度の問題点は大きく分けて2つある。1つは、大手電力会社が再生エネの接続受け入れを申請通りに進めた場合、電力会社の送電網の能力を超えてしまうという点だ。
 背景には、太陽光の買い取り価格設定が他の形態に比べて高く、しかも比較的短期間で設備を設置できるため、設備投資と大手電力会社への接続申請が太陽光に集中してしまったことがある。太陽光は晴れの日と雨の日、昼と夜とでは発電量が大きく変動する。発電量が増えすぎると停電するリスクもあるという。大手電力会社は、全ての太陽光を受け入れて電力を安定して供給するには、送電網の余力が足りないと主張している。
 もう1つは国民の負担が重くなっていることだ。固定価格買い取り制度では、大手電力会社が再生エネの買い取りにかかった費用は、使用電力に応じ賦課金という形で電気料金に上乗せされる。
 現在標準的な家庭で、年2700円を徴収している。経済産業省の試算では、すでに認定を受けながら稼働していなかった設備もすべて運転した場合、年間の国民負担が4倍超の2兆7000億円に膨らみ、1家庭当たりの負担が1万円を超すことになるという。

県内すべてを再生エネルギーで賄う福島の対策

 この問題を解決するにはいくつもの論点があるが、まずは短期でできることをあげてみよう。その第1が「空押さえ」の解消だ。
「短期的対策 太陽光発電計画の実態把握と「空押さえ」の解消」――。福島県が10月27日に開いた、電力会社の再生エネ接続保留問題についての対策を検討する会議。事務局が配った資料には「空押さえ」という聞き慣れない言葉が記されていた。
 東京電力福島第1原子力発電所の事故に今も悩まされる福島県は東日本大震災のあと、県内にあるすべての原発を廃炉にして、2040年には県内の全エネルギー需要量に見合う再生エネで生み出す目標を掲げた。この目標の前提になるのが、大手電力会社が企業や個人から再生エネを買い取る固定価格買い取り制度だった。だからこそ電力会社の再生エネ接続保留問題が起こると、福島県は早速、対策に乗り出した。
 その福島県が指摘する「空押さえ」とは何か。「買い取り価格と送電網への接続予約をしながら、合理的理由もなく発電事業に着手しない行為」のことだ。


接続契約を結んでいても実際の稼働はわずか15%

 経産省によると、固定価格買い取り制度が始まってから6月末までに認定した容量は7178万㎾あるが、そのうち実際に運転を始めたのは約15%に過ぎない。大手電力会社の「送電網が足りなくなる」という主張は、この残り85%分が実際に運転を始めるようになったときのことを前提とした話なのだ。
 東北電力管内や福島県の場合、さらに認定容量と実際の運転し始めた容量との差が大きい。東北電管内で運転を始めている割合は5.8%、福島県の場合は4.4%とさらに低くなる。
「福島の場合、福島第1原発に近い沿岸部はほかに使いようのない土地が多く、そこに東京の大企業がメガソーラーを計画している。しかしまだ実際に動き出していない計画がほとんどで、これが東北電力の接続容量を占領していることが大きな問題」と関係者は指摘する。これが空押さえの実態だ。
 福島県はこうした空押さえを解消するために①発電能力2000㎾以上の大規模事業は土地利用についての法制度と整合性を図るため立地自治体と設備認定情報を共有する②電力会社がやる気のない事業者とは接続契約を解除する、経産省が設備認定を取り消すなどして空押さえを解消すべき――などと提言している。
 固定価格買い取り制度そのものの制度を大幅に見直すには、まだまだ時間がかかるだろう。ただ福島県の提言については、すぐに手をつけられることばかりだ。福島県に限らず、電力会社や経産省はまず、空押さえの解消に動き出すことが必要だ。

今週の第1位は『日経ビジネス』・・・黒霧島5000日戦争

日経ビジネス ... 黒霧島5000日戦争
週刊東洋経済 ... 中国暗転
週刊ダイヤモンド ... 「宗教」を学ぶ
週刊エコノミスト ... 世界低成長の異常

 今週の注目は全経済誌そろって「日銀の追加緩和」を取りあげたことでしょう。大特集にした雑誌はありませんでしたが、全誌が緊急特集的な扱いで取りあげています。そんななか、ユニークな特集を組んだのが『日経ビジネス』です。なんと、焼酎の大メーカーとなった「黒霧島」の霧島酒造を取りあげ、どのようにしてデフレ下で売上を急増させ、一地域ブランドを全国ブランドにしたかを紹介しています。これが今週の第1位です。
『週刊東洋経済』は巻頭にたくさんの特別企画やレポートを掲載していますが、今号も「孫正義の挫折と逆襲」といった企画を入れています。いつまで続くか、楽しみです。で、特集は「中国」です。高成長の終わりと日本企業の商機について取りあげています。これが第2位です。
 第3位は『週刊ダイヤモンド』です。同誌も通常とはちょっと変わって、「宗教問題」を真正面から取りあげました。イスラム国の存在が象徴するように、いまや世界全体に大きく関わりが生じているこの問題。この種のテーマも今やビジネスマンにとっては欠くことのできないテーマであるとのメッセージなのでしょう。
 そして、第4位は世界の低成長の異常を特集した『週刊エコノミスト』です。「黒田ショック」を取りあげた巻頭特集と併せて読むのがいいでしょうね。

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第1位
■日経ビジネス■ <<< 実は日本全国どこでも買える焼酎は少ない

 1990年代以降のデフレ下で最も事業拡大に成功した最強の国内製造業は?・・・その一つは、霧島酒造株式会社!が正解! いまや日本中の居酒屋で手にすることができるようになった芋焼酎「黒霧島」の製造元だ。癖のない焼酎初心者も美味しく飲める芋焼酎なのである。今週の『日経ビジネス』が「記録ずくめの最強メーカー 黒霧島の5000日戦争」として「老舗蔵元の『反常識』経営」を特集した。2週前の『週刊ダイヤモンド』の酒特集に続き、酒ビジネスが熱い。
 この会社、大正5年に創業し、以来80年の間、宮崎県の中だけで商売をしてきたという。そのため70年代の焼酎ブームにも80年代の焼酎ブームにも乗っていない。「いいモノだけを造る」信念の頑固一徹な二代目が急逝し、1996年に40代の2人の兄弟が社長と専務として後を継いだところから霧島酒造の5000日戦争が始まった。2人が継いだ時、販促もマーケティングもしていなかった霧島酒造は、頼みの県内の市場の盤石さも失いつつあった。彼らがとった戦略は「県外市場でも勝てる新商品づくりに経営資源を集中させる」ことだったという。
 特集では、黒霧島の全奇跡をストーリー仕立てで振り返り、「全国制覇を支えた戦術」として、戦略立案、商品開発、営業販売、生産体制、設備投資を掘り下げる。今夜は芋焼酎が飲みたくなるような特集だった。


第2位
■ 週刊東洋経済■ <<<  中国はいま「ニューノーマル」

 中国に関する特集は2週前の『週刊エコノミスト』による「中国大減速」に続くものだ。『週刊東洋経済』のタイトルは「中国暗転 高成長の終わりと日本企業の商機」。成長が鈍化する中国経済の分析と、日本企業がいま何をするべきかを探る。
 リーマン・ショック後、「ニューノーマル」という言葉が登場したが、いまの習近平中国の経済を表わす言葉としてこの「ニューノーマル=新常態」が復活したようだ。これまでのような高成長と決別し、中国の市場としての価値を高め、過剰投資や産業構造のゆがみを是正してゆく。習近平主席による大々的な反腐敗キャンペーンもその一つ。習主席の豪腕指導者ぶりが国民意識の変革を促す。
 特集では「アリババだけじゃない! 世界が認めた中国の成長企業」、「新常態」時代に伸びる企業を探る「中国民営企業ランキング(注目業界トップ10)」と、中国ビジネスに関わる方がチェックしておきたい記事も多そうだ。また、2005年の進出以来苦戦してきたシンプル路線の「無印良品」が近年ウケているらしい。2013年で100店舗を超えたという。無印良品の大攻勢は中国市場の成熟を示すものだろう。


第3位
■ 週刊ダイヤモンド■ <<<  経済の裏の宗教

 連日メディアをにぎわす国際ニュース。この背景にはたいて宗教の存在がある。「世界は宗教を中心に動いている」。無宗教国家である日本人にはこれがなかなかピンとこない。現代社会・経済を読み解く鍵として欠かせない世界の宗教問題を『週刊ダイヤモンド』が今週第1特集で取り組む。題して「ビジネスマンの必須教養『宗教』を学ぶ」だ。
 まず元外務省国際情報局主任分析官だった佐藤優氏による「生きている宗教」の基礎知識から。イスラム教ハンバリー派=イスラム原理主義の歴史を受け継ぐイスラム国、米国(ピューリタン)とイスラエル(ユダヤ教)が共有する「選民思想」、カトリックとプロテスタントが生む欧州南北問題、そして中国政府の宗教観と、現代の政治・経済・社会を読み解く4つの鍵を提示する。これは読んでおくべき。国内の新聞には出てこないイスラム教「ハンバリー派」や、米国プロテスタントの一派「ユニテリアン」的な思想への言及は、私の勉強不足を補強してくれた。
 第2特集は「メキシコ大躍進」。麻薬組織にからむ非道な事件報道があったばかりだが、タイを超える自動車生産拠点として注目されている。


第4位
■ 週刊エコノミスト■ <<< 黒田腕力緩和の行方

「日銀追加緩和の限界(週刊ダイヤモンド)」「日銀追加緩和サプライズ(週刊東洋経済)」「黒田ショック 奇襲緩和の限界(週刊エコノミスト)」「日銀緩和、官邸もサプライズ(日経ビジネス)」と、4誌ともに黒田日銀総裁のハロウィン緩和をぶち込んできた。なかでも第1特集扱いとしたのは『週刊エコノミスト』だ。表紙にデカデカと「黒田ショック」の文字が踊る。経済誌の懸念をよそに、方々でバブルへの期待が沸々とするのを感じる。実体経済はいまのところ、「世界低成長の『異常』」であるにもかかわらず。そんなわけで、『週刊エコノミスト』の今週の特集は表紙では小さい扱いとなったこの「世界低成長の『異常』」だ。
 景気停滞と金融バブルが共存する世界経済。その状況を『週刊エコノミスト』は「世界低成長の『異常』」と表現した。前日銀副総裁・西村清彦東京大学教授が指摘する「複合危機」が先進国を中心に生じている。その中身は①金融仲介機能の低下と中産階級層への打撃、②ICT(情報通信技術)の進歩、③人口構成の変化だ。米国も欧州も日本も、中間層が脱落して消費が減退。個人消費の主役が先進国から消滅しつつあるような状況だ。

2014年11月 6日

今週の第1位は『週刊ダイヤモンド』・・・介護のムダ 高齢者ビジネスのカラクリ

週刊ダイヤモンド ... 介護のムダ 高齢者ビジネスのカラクリ
週刊東洋経済 ... 銀行サバイバル
日経ビジネス ... クレーム上等! またアマゾンで買ってしまうワケ
週刊エコノミスト ... 原油急落と中東情勢

 やはりそうだったか、という思いにかられた特集が『週刊ダイヤモンド』の特集「介護のムダ」でした。サブタイトルには「高齢者ビジネスのカラクリ」とあるように、このビジネスでうまい汁を吸う杜撰な輩がうようよと蠢いている実態が明らかにされています。高齢者が著しく増加し始め、来年には介護保険における自己負担が増額されるようになるなど、制度も大きく見直されるなか、こうした実態が明らかにされ、それへの対応も迫られなければなりません。そういう意味でこの特集は重要です。それにしても高齢者1人を20万円で施設に紹介したり、カジノ付きのデイサービスがあったりと、この業界は大変な状況です。これが今週の第1位。
 次にご紹介したいのは『週刊東洋経済』です。特集は銀行、特にメガバンク。昨年までの好調が一転、減益が予想されるメガバンクの苦難の状況を特集していますが、それより巻頭に面白そうな話題を何本も集めて、ミニ特集化していて、それが雑誌の厚みを増しています。一度買った人なら次にも買おうかという気になる内容で、今後が期待されます。
『日経ビジネス』は毎年高齢の「アフターサービスランキング」を軸に、いまこうしたサービスで成長している企業の「成功の理由」を明らかにしています。これが第3位で、第4位は「原油価格急落と中東情勢」を特集している『週刊エコノミスト』です。原油だけでなくイスラム国の勃興など、地政学的リスクの高いこの地域の現状と将来を分析しています。

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第1位
■ 週刊ダイヤモンド■ <<<  介護サービス2万項目に群がる人々

 高齢者ビジネスは貧困ビジネスに通じる。対象者をくいものにする言わば「悪徳業者」がどうやら介護の世界にもいるらしい。これは医療にも同様の構造があるのだが、今週の『週刊ダイヤモンド』が初めて「介護のムダ」という特集でこのムダに切り込んだ。特集リードはこう始まる。
「介護がやばい。要介護の認定数はうなぎ上りで564万人に上り、総費用も10兆円に到達。このままでは介護保険制度が崩壊の危機にひんする。だが、その裏では高齢者という"カネのなる木"に群がり、おいしい思いをする人々が跋扈している」。
 来年、スタートして16年目の介護保険制度が大きく変わるのも、上記のような状態を少しでも改善し、制度の維持を図るためだという。介護業界というと、介護士の給与の安さばかりが強調されがちだが、その裏で大いに甘い汁を吸っている層も大勢いるということ。利用者(高齢者)側にも1割負担に甘え、それほど必要でないサービスまで利用しようとする傾向もあるだろう。
 しかし、一番驚いたのは国介護サービス20000項目(!)というメニューの多さだ。制度創設時から約10倍に膨らみ、複雑化の一途をたどっている。これでは国がムダを作り出していると言われても仕方ないのではないか。


第2位
■ 週刊東洋経済■ <<< 国内でじり貧の銀行、次の一手

 第1特集のページに到達する前に、これでもか!とアイキャッチーなミニ特集記事を重ねる構成となった最近の『週刊東洋経済』。今週は、「新連載(隔週) ひと烈風伝 石破茂」(6ページ)、「巻頭特集 変調アベノミクス!」(10ページ)、「深層リポート 企業と天才」と、石破茂、安倍晋三、ノーベル物理学賞受賞者3人(赤﨑勇、天野浩、中村修二)など「時の人」である面々がずらっと顔を並べる。特に「深層リポート 企業と天才」は、2003年に掲載された連載「『巨人』たちの敗北 青色発光デバイスに挑戦した男たち」をベースにまとめられ、読み応えがある。
 さて、第1特集「銀行サバイバル」だ。業績改善に伴う与信コストの縮小を主因として2014年3月期は過去最高益を記録したメガバンク3行。しかし今期は一転して減益となる見通し。銀行の本業である国内の資金運用で稼げていないためだ。この収益構造の地盤沈下が止まらない。特集ではみずほ、三菱東京UFJ、三井住友のメガバンク3行の現状と戦略を分析するとともに、ECを中心に起こっている銀行を必要としない金融市場の形成など、銀行を取り巻く最新の動きを追う。


第3位
■日経ビジネス■ <<< アフターサービスのよい会社の条件

『日経ビジネス』が日経BP社と日経BPコンサルティングが保有する調査モニターを対象に実施するアフターサービス満足度調査。2014年もネット上で1万6421人の回答を得て集計された。今年は「クレームと不満をここぞとばかりにカイゼンにつなげる」アマゾン、「テニスの錦織選手の活躍で急増した加入申し込みの裏にあった」WOWOWのしたたかな戦略、アフターサービスを顧客確保の入り口に据えるコープこうべのパソコン事業、自らメンテナンスを"話しかけて"促すシャープの「ともだち家電」など、何かが起きてからの事後対応からファンをつくる顧客対応へと変貌するランキング上位各社のサービス戦略を追う。顧客満足をめぐる競争は、「異次元のステージ」に差し掛かっている、らしい。
 さて、ランキングで大いに変動があったのは損害保険だったようだ。台風などの災害が多発し、迅速な対応ができた企業が評価を高めたのだ。去年8位から堂々の1位を獲得した日本興亜損保が代表格。自動車保険の順位変動も激しいようだ。


第4位
■ 週刊エコノミスト■ <<< 原油を巡る中東事情

 Part1「今なぜ原油急落か」。Part2「歴史と宗教 はやわかり」。今週の『週刊エコノミスト』の特集「原油急落と中東情勢」は、2部構成でこの7月以降続く原油価格の急激な下落傾向と中東情勢をリポートする。
 11月5日現在、原油価格は1バレル77ドル台。下値と観測される70ドル台に突入している。背景には米国のシェールオイルの生産急増と、米国への対抗上価格を下げてでもシェアを防衛したいサウジアラビアの思惑が重なり、供給が増えていること。しかし需要は世界経済の減速によって伸びが低迷していること。この2つがある。地政学リスクはあるが、現状はくすぶっている状態だ。特集では現状分析とともに中東諸国の経済について掘り下げる。とくにトルコ、イラン、エジプトの経済主要3国それぞれについて、1〜2ページの専門家による解説がまとめられている。
 イスラム圏&文化と欧米との関係性の理解については、1000年・何百年単位での歴史を頭からはずすことはできない。Part2にはそのための基礎知識が、初期イスラムからオスマン帝国崩壊までと、オスマン崩壊後から現在とに分けてまとめられている。