2014年10月 9日

【来た!見た!書いた!】兵庫県養父市の挑戦から目が離せない

消滅可能性都市は日本全体の約半分
 東京から東海道新幹線と山陰本線の特急を乗り継ぐこと6時間弱。八鹿(ようか)駅をおり、そこからさらに30〜40分、車で山道を登っていくと、ようやく「別宮(べっくう)の棚田」に到着する。鉢伏山の中腹、標高約700メートルのところに、約130枚もの小さくもさまざまな形をした田んぼが段々に広がっている。
 平安時代からの歴史があり、「日本の原風景」という言葉を思い起こす美しい風景。だが、これまでは関西を除けば、知る人の少ない場所だった。ところが今夏以降は菅義偉官房長官をはじめとした閣僚、政治家や経済人が相次いで視察に訪れている。
 別宮の棚田がある兵庫県養父市は人口が2万6000人ほどの町。その日本のどこにでもあるような人口規模の小さな自治体が「日本中の大都市をしのいで、大規模ないろんなプロジェクトを組んだ計画を超えて(政府の農業分野の)国家戦略特区に指定された」(9月まで戦略特区担当大臣だった新藤義孝氏)からだ。
 養父市が「どこにでもあるような自治体」であるかは、以下のことからわかるだろう

 民間の日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)が5月に、地方自治体の半数を「消滅可能性都市」として公表した「増田リスト」。日本創成会議は地方から都市への人口移動がこの先も収まらないと仮定して、長期的な人口の推移を試算した。そのうえで出産年齢の中心である20〜39歳の女性が2040年に10年の半分以下に減る自治体を、人口減が止まらない「消滅可能性都市」と定義し、全リストを公表した。
 その数は全体の49.8%、896自治体にもなるが、その中の1つが養父市だ。試算では、2040年までの若年女性の減少率が58.3%で、兵庫県内では5番目に減り方が大きい。人口の方も2040年には1万6000人を割り込んでしまう。


農地の権利移動許可業務を市に移管した
 養父市は農業の面でも、全国と共通した課題を抱えている。農業は長くこの地域の基幹産業だったが、地域の高齢化で農作業ができなくなる人が増え、しかも後継者がみつからないケースが多い。2010年までの15年で、専業・兼業を合わせた農家の数は7割近くも減り、2010年には1200弱になった。
 そうした結果、2012年までのわずか4年で耕作放棄地が2倍に増えた。2012年の養父市の農地2673haのうち、226haが耕作放棄地だ。全国の滋賀県並みの約40万haに達した耕作放棄地の問題が、ここでも深刻になっているのだ。
 養父市が国家戦略特区の認定を受けて狙うのは、さまざまな担い手が農業にかかわれるようにすることで耕作放棄地を再生し、将来的には人口減に歯止めをかけることだ。そのため特区認定をテコに、特区の中に限っていくつかの規制緩和をしようとしている。
 1つめが、農地の権利移動の許可業務を養父市の農業委員会から養父市に移すことだ。農業委員会は農業関係者で構成されることが多いため、企業が農地を借りて農業に参入しようとしても、農業委員会の許可が下りずに計画がうまく進まないことが多い。そこでこの許可業務を市に移すことで、企業の農業参入などを容易にしようというわけだ。
 養父市が国家戦略特区の候補に挙がり計画が明らかになった当初、養父市の農業委員会は、権利の移譲に反対していた。だが両社の話し合いの末に7月には移譲に合意し、10月から市が権利移動の許可業務を始めた。


養父市の課題は日本どこでも存在する課題
 2つめのの大きな柱は、農業生産法人の設立要件の緩和だ。農業生産法人は農地を取得できるが、法人を設立するときには、年間60日以上は農作業に従事できる役員が、全役員の4分の1以上いないといけない。
 大ざっぱにいえば、企業が農業生産法人をつくろうとしても、その中に農業生産者の役員が全役員の4分の1以上はいないといけない。これによっても、企業が農業に参入しにくくなっている。
 しかし養父市の特区内では「4分の1以上」という要件を「1人以上」に緩和する。この方針を受け、養父市では愛知県田原市の農業関連企業やオリックスグループなどが農業生産法人を設立し、農家レストランや養蜂、有機野菜の生産・販売などの農業生産法人を相次いで設立する計画だ。
 もうひとつ養父市がおもしろいのは、最初は建設会社に就職し臨時職員になったのをきっかけに市長にまでなった広瀬栄市長のもとに、農業分野の既得権益とぶつかることをおそれない、改革派の人材が集結しつつあることだ。
 三野昌二副市長は長崎県のテーマパーク、ハウステンボスの再生を手がけたこともある民間出身者。広瀬市長がその手腕を買って、副市長に招いた。農家レストランなどを手がける農業生産法人の設立を計画する新鮮組(愛知県田原市)の岡本重明社長は長年、農協(JA)が農業生産者のためにはなっていないことを指摘し続け、タイでコメ生産も始めた改革思考の強い生産者だ。広瀬市長はオリックスやヤンマーなど大企業との結びつきも強めつつある。
 こうした外部の人材や企業をいかしつつ、耕作放棄地の再生と人口減へ歯止めをかけることができるのか。養父市と同じような課題をもつ地域は日本のどこにもあるだけに、その挑戦の行方に注目が集まっている。

今週の第1位は『週刊東洋経済』・・・新聞 テレビ 動乱

今週の第1位は『週刊東洋経済』

週刊東洋経済 ... 新聞 テレビ 動乱
週刊ダイヤモンド ... 民放大改正
週刊エコノミスト ... もめない遺産分割
日経ビジネス ... 「断」の経営

 朝日新聞の誤報問題で新聞メディア周辺が喧しいですが、今週の『週刊東洋経済』は新聞とテレビ、それに新興のネットメディアそれぞれの現状をあぶり出しました。既存メディアの話はそれほどでもありませんが、新興メディアの台頭についてはふだんあまり触れることのない情報なので興味をひきました。私事ですがスマホニュースの「グノシー」の経営者福島良典氏は、私のやっていた起業家塾にもよく来ていた学生でしたので、頑張ってほしいなと思います。ま、それはともかくこれが今週の第1位です。
 第2位は意外に面白かった『週刊ダイヤモンド』です。120年ぶりに改正されようとしている「民法」に焦点を当て、その改正の中身がどのようになるのか、サラリーマンにとってどんなメリット、デメリットがあるのか微に入り細にわたって特集しています。
『週刊エコノミスト』の特集は遺産分割です。遺産分割においてもめると考えられる9パターンを取りあげ、どうしたらもめないかを提示していて、これが結構役に立ちそうな内容です。 
 これが第3位で、第4位は『日経ビジネス』のシリーズ特集「企業再攻」です。タイトルだけでは少々分かりにくいですが、過去の名経営者がどのようにして企業を変革してきたかを、それに関わった当事者(本人も)からの証言を基に構成しています。

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第1位
■ 週刊東洋経済■ <<< 新興メディアはバイラル力!? がイノチ

 新聞は部数の減少、テレビは視聴率の低下傾向が止まらない。スマートフォンの普及とインターネット経由の情報が拡大する中で、巨大メディアが喘いでいる。今週の『週刊東洋経済』は、「新聞・テレビ 動乱」と題して、既存メディアの現状と生き残り戦略を取り上げた。
 新聞とテレビについては、Part1「新聞編」Part2「テレビ編」にまとめられているものをどうぞ。「謝った記事と、それを訂正した内容が列挙されている」米ニューヨークタイムズのサイト「Correction(訂正)」が紹介されている。日本の巨大メディアにも取り入れてもらいたいものだ。各紙のデジタル化戦略や電子書籍についてもPart1で触れられる。
 読むべきはPart3「新興メディア編」と62pの「米国メディア新世紀 SNSで激変 決め手は拡散力」だろう。米国では老舗新聞もまずはネットで記事を流す「デジタルファースト」が定着している。その中で近年存在感を増しているのが紙を持たないハフィントンポストのようなネットメディアだ。続々誕生しており、SNSで若い世代に拡散されやすいよう構築された記事がその大きな特徴だ。「拡散(バイラル)力」が決め手となるため、「バイラル系メディア」というらしい。そして、Part3では、日本のニュースアプリを取り上げる。グノシー、スマートニュース、LINEニュース、アンテナ。4強ニュースアプリのうち2つは私のスマホにも配備されています。


第2位
■ 週刊ダイヤモンド■ <<<  120年ぶりの民法改正、その全貌!

 9月初旬、「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」が法務省から公表された(http://www.moj.go.jp/content/001127038.pdf)。これで日清戦争終結の翌年1896(明治29)年に制定されて以来、約120年ぶりに民放改正が見えてきた。とくに契約ルールに関する部分が大幅に改正されるため、個人にも企業にもその影響は広範囲に及ぶ。そこで今週の『週刊ダイヤモンド』は、「民法改正 知らなきゃ損するサラリーマンの法律入門」として改正点をわかりやすく解説。併せてサラリーマンが知っておきたいさまざまな法律知識も紹介するという。法律知識は、経営回りの数字と並んで、ビジネスパーソンにとって「知らない」では済まされない知識ですよね。
 さて、もともと日本の民法はルールを重視し、それに基づいて契約の有効性を判断する大陸法=シビル・ローがベースとなっており、ルール以外の部分は判例の積み重ねなどで対応してきた。今回の改正は「判例の明文化」「用語をわかりやすく」「国際的な取引ルールとの整合性」「現実の経済変化に対応」という4つのポイントを踏まえて改正されるという。細かいところはどうぞ本誌をご覧ください。


第3位
■ 週刊エコノミスト■ <<< もめる遺産分割は9パターン?

 今週の『週刊エコノミスト』は「もめない遺産分割」という特集だ。世の中、遺産分割をめぐるトラブルが増えているそうだ。すぐに頭に思い浮かぶのは財産の奪い合いだが、さにあらず。その中身は「田舎の実家の押し付け合い」や「借金という負の遺産」、「相続人同士の不公平感」などだという。しかも調停トラブルの4分の3は遺産5000万円以下というデータも。金額ではないようだ。思わぬ落とし穴にはまってもめないように、遺産分割のトラブルと基礎知識をおさらいだ。
 まずは「もめる遺産分割9パターン」。具体的に書かれたケーススタディはどれも2時間ドラマのネタになりそうなエピソードで、ちょっと身につまされる方もいるのでは。「知っておきたい遺産分割の基礎知識」は初心者に優しい内容。もめない対策として、遺言書の作成、財産目録の作成、生前贈与、生命保険の活用など上げられている。


第4位
■日経ビジネス■ <<<  決断・断絶・横断が経営のキーワード

 過去の成功体験から抜け出せず、世界での競争に遅れをとっている日本企業。立場が厳しくなっているいま、変革のタイムリミットは刻一刻と近づいている。日本の企業が力を取り戻し、「再攻」するにはどんな要素が必要なのだろうか。『日経ビジネス』は今週から4回連続で「シリーズ 企業再攻」と題した特集を組む。第1回目の今週は、創刊から45年を迎えた本誌が取り上げてきた企業改革の当事者に、「変革の真実」を証言してもらったという。そこから導きだした3つの「断」を企業変革のキーワードとした。
 一つ目は「決断」。グローバル化や市場の成熟によって、変革のハードルは上がっている。つまりこの時代の企業変革には今まで以上のパワーが求められているということだ。二つ目は「断絶」。これは生え抜き主義の断絶を指す。「外部から人を呼び、その人材に"好き勝手に"やらせる」環境を整えることを意味する。三つ目は「横断」。これはちょっとわかりにくい。自立的に変革し続ける組織を育成することを言いたいらしい。PART3「記憶に残る5大企業変革」が読み応えある。ホンダの第2創業改革(1990〜98)、日産ゴーン改革(99〜01)、日本マクドナルドの価格破壊革命by藤田田など、本人や側近による証言でまとめられている。特集冒頭の特別インタビューは稲盛和夫氏。