2014年8月19日

【来た!見た!書いた!】新幹線50年に考える田中角栄と列島改造

上越新幹線で最も少ない乗客数の駅に立つ銅像

 上越新幹線の浦佐駅(新潟県南魚沼市)の駅前に、新潟県が生んだ不世出の政治家、田中角栄の銅像がある。左手をポケットにつっこみ、右手を「よっ」という感じで上げた独特のポーズで、越後三山を見上げている。
 浦佐駅は上越新幹線で最も利用者の少ない駅だ。1982年の上越新幹線開業後に、駅のある旧大和町が大学や高校の誘致を進め、利用者は大きく増えた。だが、それでも東日本旅客鉄道(JR東日本)によると、2013年の1日平均乗車人員は651人で、新潟駅のおよそ14分の1。上越新幹線では最も利用者の少ない駅だ。
 上越新幹線ができる前、大和町は魚沼地域の中心地である旧六日町と旧小出町にはさまれ観光資源の少ない町だった。浦佐駅は駅員をなくし、無人駅とすることも検討されたさびれた駅だったのだ。
 そんな町に新幹線駅ができたのは、大和町が「街づくりの核に」と積極的に誘致を進めたからだ。前後の駅との間隔の関係や、上越新幹線のルートをできるだけ直線にしたかったことも幸いした。実現には、大和町を選挙区(中選挙区時代の新潟第3区)としていた角栄の力も大きかったといわれる。
 銅像は1985年10月に完成。角栄の政治後援組織である越山会の幹部でつくる、田中角栄先生銅像建設期成会が、魚沼地区で一般家庭などからも資金集めをした。「(角栄先生の)功績をたたえ、さらなるご尽力をいただくのが(銅像建設の)狙い」(同期成会)だ。
 角栄の存在がなければ、できなかったといわれる上越新幹線。中でも角栄の力が大きく働いた浦佐駅。駅前の角栄の銅像は、そんな上越新幹線と角栄の深いつながりを象徴しているように見える。


角栄がマニフェストとして著した「新幹線網」

 「我田引鉄」という言葉がある。「我田引水」をもじって、もっぱら自分の選挙区の利益を図るために、鉄道を誘致する政治家を皮肉った造語だ。大正時代、立憲政友会を中心とした地方出身議員による、地元への新線誘致の動きが目立つようになると、この言葉を使って彼らを揶揄するようになった。
 田中角栄こそ我田引鉄の代表例とする見方も根強い。浦佐駅の銅像の経緯を見ても、角栄が選挙区の人々をひきつけるために、上越新幹線をうまく活用したことは確かだろう。ただ彼は自分の選挙区だけに鉄道を利用しようとしたのではない。
 田中角栄が著した『日本列島改造論』は、彼が首相になる直前の1972年6月に出版した。翌月には自由民主党の総裁選が控えており、事実上、今でいう政権公約(マニフェスト)だった。
 角栄はこの自らの国土開発構想をまとめた本の中で、繰り返し「全国新幹線」という言葉を使っている。
 121ページには「全国新幹線鉄道網理想図」という題の地図が掲載してあり、全国の県庁所在地をほぼ網羅するような9000キロ以上もの「理想図」が描かれている。本書が出版される2年前の1970年に運輸大臣の諮問機関である鉄道建設審議会で決議したのと同一の路線だ。


新幹線は「表日本」と「裏日本」の格差解消が目的だった

 角栄は『改造論』の中でこう書いている。
「全国新幹線鉄道網が実現すれば、日本列島の拠点都市はそれぞれが1~3時間の圏内に入り、拠点都市同士が事実上、一体化する。新潟市内は東京都内と同じになり、富山市内と同様になる。(中略)これからの新幹線鉄道は人口の集中した地域を結ぶだけではなく、むしろ人口の少ない地域に駅を計画的につくり、その駅を拠点にして地域開発を進めるように考えなければならない」
 新幹線や高速道路の建設、工場の再配置などで都市と農村、表日本と裏日本の格差をなくし、東京圏への人口の集中を抑えることこそ彼の望んだ日本列島の姿だ。
「表日本と裏日本の発展のアンバランスは、いまや頂点に達しつつある。こうした現状を思い切って改めなければならない」。格差の解消という強い思いを持ち続けていた角栄を、単なる我田引鉄だけの政治家とみることはできない。
 全国の新幹線網は現在約2800キロ。角栄の理想、いや夢想からすれば、まだ3分の1に過ぎないが、それでも2016年に北海道新幹線の新青森―新函館北斗間が開業すれば、総延長距離は3000キロを超し、日本の主要4島の中で新幹線がないのは四国だけになる。彼が望んだ表日本と裏日本の格差の解消、都市圏への経済や人口の集中の抑制は本当に進んだだろうか。
 新幹線が格差の解消に役立ったのか、それとも東京圏への一極集中を後押しする役割を果たしてしまったのかを判断するのはなかなか難しい。新幹線以外にも高速道路や景気の動向、企業立地のありかたなど、さまざまの要素がからみあっているからだ。

十数年前に指摘されていた「過疎の促進」

 ただ地域の総合的な力を表す人口の推移を見れば、大きな流れはわかる。東北・上越新幹線が1982年に開業する直前の1980年の人口を100としたとき、沿線各地の2010年の人口がどうなっているかを見てみた。
 宮城県は113、栃木県は112、群馬県は109。東京都は113なので、このあたりは優秀な地域といえる。最も人口を伸ばしたのは埼玉県で133。
 一方、福島県は100弱、新潟県は97、岩手県は94。こう見ていくと、長い目で見ると、新幹線で人を吸い寄せたのは農村よりも都市圏だったといえるのではないか。
 新潟県内には、すでに上越新幹線開業から13年後の1995年にこんな見方が出ていた。朝日新聞の5月28日付の「声」欄に載った投書である。

船橋市 中島誠一(大学嘱託員 69歳)
 (前略)その新幹線に一本だけ列島横断の支線、上越新幹線が赤字ながら走っている。人も知る途中の浦佐駅頭に高々と建っている銅像主の田中角栄元首相の列島改造論の政策実験線と言われる。新潟生まれの私も推進運動をした路線だから、その影響や功罪には格別の関心を持つ。
 言うまでもなく、豪雪地で産業文化後進地、日本海側の改造的発展を策した責任路線だった上越新幹線であったが、開通を機として過疎化は進み、労働力は流出し、大学進学までも東京へ関東へと傾いてしまった。それは当初の政策目的とはまったく逆のものとなった。しかも、それを解決しないうちに当人は、鬼界に去ってしまった。

 すでにこの時期から、新幹線が角栄の意図方向とは逆の役割をはたしているとみる人たちがいたのだ。
 今年10月、東海道新幹線が開業してからちょうど50年を迎える。今も新幹線が地域発展に貢献すると信じて疑わず、誘致運動に熱をあげる政治家や地方自治体が多い。だが本当にそうなのか。改めて考え直す時期に来ている。

今週の第1位は『週刊エコノミスト』・・・水素・シェール・藻

週刊エコノミスト ... 水素・シェール・藻
日経ビジネス ... eコマース大乱戦
週刊ダイヤモンド ... ビジネスに勝つ英語
週刊東洋経済 ...  実家の片付け

 今週はお盆明け(合併号明け)とあってか、経済誌はどれもちょっと低調でした。舞台裏を明かせば前もって作っておくため、あまりビビッドな話題は入れられず、作りが難しくなるのです。そのなかで相対的に面白いと思ったのは『週刊エコノミスト』です。特集のテーマは水素&燃料電池です。これらの新しいエネルギーの多くは実用に見合うコストの問題で揺れてなかなか世に出ません。ただ、今どういう現状化を教えてくれる便利な教科書的に読むと意外に面白いと印象を受けました。これが今週の第1位です。
 第2位はeコマースの現状を特集した『日経ビジネス』です。時代はBtoCからCtoCへと移行していて、さらにはスマホの普及もあって、さらにマーケットを広げています。この事実上がよく分かるという意味で、評価しました。
 次は『週刊ダイヤモンド』の特集は英語です。ま、最近の定番企画ですが、それなりに手を替え品を替え、内容は豊富ですが、いかんせん新鮮味には欠けていました。
 そして最後の『週刊東洋経済』となると、特集が「実家の片付け」です。ま、お盆の時に実家に里帰りしてそう感じたビジネスマンも多くいる、ということを狙ってのことなのでしょうが、最近この種の企画が経済誌には多く、ちょっと鬱陶しい感じがします。これが今週の第4位です。


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第1位
■ 週刊エコノミスト■ <<< ミドリムシまで次世代エネルギー

 新エネルギーといえば風力、太陽光が一般的に認知されてきたが、昨今ではより現実的で効率的な次世代エネルギーの本命が実践段階まで迫っている。それが今週の『週刊エコノミスト』で特集されている「水素・シェール・藻」だ。
 政府は4月の「エネルギー基本計画」に水素エネルギーの活用促進を盛り込んだ。水素と燃料電池による発電を、東京五輪を目処に普及させるつもりだ。これらは主に自動車に使用される。今までの排気ガス等の問題が多かった石油に代わり燃料電池車を軸としたい意図が見られる。
 水素はガスや石油と違い自然には単体で存在しない。なので水素を作り出す方法が重要となるのだが、現状は多くが化石燃料から作られている。しかし将来的にはより低品位の石炭等を使って作り出すことが期待されている。また一切の化石燃料を使わずに水素を作り出す方法としてミドリムシといった微細藻類を用いた方法も注目を浴びている。


第2位
■日経ビジネス■ <<< 20兆円市場をどう取り合うか
 
 日本のeコマース(電子商取引)は楽天・アマゾンによる寡占状態か!?と思いきや、その2社は全体の20%を占めるに過ぎない。B to C、C to Cを合わせると、国内のEC市場はおよそ16兆円ほどの規模になった模様だ。しかも、この2年で4兆円ほど規模拡大しているという。今週の『日経ビジネス』(合併号)は、「eコマース大乱戦」と題して、この拡大する巨大市場を巡る新旧・大小が入り乱れた争奪戦をレポートする。
 近年伸びが目覚ましいのがCtoCのEC市場である。特に1人1台が現実的な時代となっているスマートフォンを用いての手軽なECが注目を浴びている。例えばメッセンジャーアプリで有名なLINEが作った「LINE MALL」。ヤフオクと違って価格もワンプライス固定、各種手数料も無し。とことん「手軽さ」を追求してCtoCの利用者を伸ばしている。しかも7月30日から全国一律料金での配送サービスも開始。LINEの本気度がうかがえる。
「ショールーミング」という言葉がある。これはネット通販が拡大して行くなかで小売店鋪が「ショールーム」化してしまうことを指し、小売業者から忌避されているが、これを逆手に取っている企業もある。大阪の「DIY FACTORY OSAKA」(DFO)だ。ここでは店舗にて専門通販サイトでの購入を促している。実店舗を「ショールーム」としての機能を特化させ、ネットにはできない価値を生んでいる。しかし、最新情報はもっとあるはずだ。特集のボリュームが少ないのが残念。


第3位
■週刊ダイヤモンド■ <<< いまやTOIECは800以上なきゃダメ

「英語が使えないと仕事にならない、昇進できない--−−」そんな職場が増えている。今週の『週刊ダイヤモンド』はビジネスで使うための英語の特集「ビジネスに勝つ英語」である。
 海外駐在する社員が常時200人ほどいるIHIでは、英会話の学習ができる教室を本社内に開設した。業務の合間に効率よく学習できるよう配慮されたものだ。楽天の英語の社内公用語化も大きな成果を上げつつあり、外国人社員も全体の13%まで増えた。2020年の東京オリンピックも控え、国を挙げてのグローバル化は止められない。日本人はともすると「流暢に話せないと恥ずかしい」と口を閉ざしがちだが、英語が世界共通のコミュニケーションツールとなった今、「グロービッシュ」や「インターナショナル・イングリッシュ」「リンガフランカ(共通語)」など呼び名はいろいろだが、「みんなで共通に使える、分かり合える簡単な英語」を使うことが世界のルールになりつつある。グロービッシュの提唱者ジャン・ポール・ネリエール氏や国際経験の多いボストンコンサルティング日本代表・御立尚資氏らがインタビューでそんな私たちにエールを送ってくれる。Part3.はビジネスマンのための英語速習術など昨今の新ノウハウを掲載。
 第2特集は企業サイトの事業貢献度を測定した「ウェブサイト価値ランキング2014」。1位は全日本空輸だ。


第4位
■ 週刊東洋経済■ <<< 掃除で済まない片付け
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 前回の東洋経済では遺産相続についての特集が組まれていたが、今回はその中でも大問題とされる「実家」について取り上げている。タイトルは「実家の片付け」。掃除ではなく、もちろんどう処分していくかという話である。
 総務省が5年置きに公表する「住宅・土地統計調査」によれば、2013年時点での日本の空き家は約820万戸! 総住宅に占める割合は13.5%。実に7件に1件が空き家という数字だ。相続しても放っておかれ、地域の問題となっている空き家が増えに増えているのだ。生前にある程度の整理ができれば一番だが、実家の片付けをするきっかけとしては実に50%が住んでいた両親の死をきっかけとしている。年老いた父母との価値観の違いも大きく、生きているうちはなかなか片付けさせてもらえないのが現状だろう。
 特集では、ある程度の年齢になるとみんなが悩んでいるこの「実家」問題を、数多の実例を引きながらレポートしていく。亡くなった叔父の家の小部屋を片付けていたらそこはトイレだった......とか、片付けに赴いても年老いた母に荷物を触らせてもらえない......とか、笑うに笑えない身につまされるエピソード満載だ。
 第2特集は「地方政治にかかるおカネ」。地方議員の不祥事がメディアをにぎわすことの多い昨今、タイムリーな企画? なんだろうな。