2014年7月 9日

【来た!見た!書いた!】 世界文化遺産登録で試される地域の連携力

軽井沢にもかかる「祝登録」の横断幕

 7月の上旬の週末、何年かぶりにJR軽井沢駅に降りてみて、おやっと思うことがあった。改札口を出た広い通路に「祝富岡製糸場と絹産業遺産群世界文化遺産登録」という大きな横断幕がかかっていたからだ。
 多くの人にとって今や、軽井沢は明治以来の歴史ある別荘地というより、アウトレットモールやゴルフ、スキーの街としての印象が強いかもしれない。この日も、新しいモールやフードコートが開いたばかりの軽井沢・プリンスショッピングプラザには、多くの観光客が詰めかけていた。そんな買い物目当ての人たちは、なぜ富岡製糸場の世界文化遺産登録を祝う横断幕があるのか、不思議に思ったことだろう。
 長野県軽井沢町は、東隣に位置する群馬県安中市、さらにその南にあり、富岡製糸場のある群馬県富岡市と今年4月、観光連携協議会を設立した。2015年春に長野新幹線が延伸する形で北陸新幹線が開業するのをみすえて、3つの市町が協力して北陸などからの誘客を進めようという狙いだ。この連携関係があったために、軽井沢駅には世界文化遺産登録を祝う横断幕が掲げられていたのだ。

富岡製糸場の恩恵を受けたのは、実は長野県

 3市町の共通点は、いずれも明治期に建てられた重要文化財の近代化遺産を持っていることだ。富岡市はいわずと知れた日本最初の官営製糸工場の富岡製糸場。安中市は信越本線の横川(群馬県安中市)―軽井沢(長野県軽井沢町)区間にある碓氷峠の鉄道施設。軽井沢町は純西洋式木造ホテルの旧三笠ホテルだ。
 単に時期が一緒だったというだけではない。3つの施設には、それぞれ歴史の上でのつながりがある。
 富岡製糸場は全国から集まった工女たちに器械製糸の技術を教えたが、その技術伝承の恩恵を最も強く受けた地域はお膝元の群馬県ではなく、お隣の長野県だったといわれる。
 どちらの地域も江戸末期から養蚕が盛んだったが、群馬県では明治期に座繰り(ざぐり)製糸と呼ばれる大型の器械を使わない手法が盛んで、富岡製糸場で教えた器械製糸の導入には消極的だったからだ。器械製糸を積極的に取り入れて日本一の生糸生産地になった長野県は、信越本線などを通して、生糸を東京や横浜に運んだ。


明治期の近代化の象徴が集まる建造物の価値

 その信越本線の難所が碓氷峠。碓氷峠がある横川~軽井沢間は標高差が550メートルあり、信越本線の他の区間ができたあとも、最後まで開通していなかった。1000メートル進むと66.7メートル高度が上がる急な勾配を上り下りするため、線路の間に歯車を敷いたアプト式を採用し、1893年に開業した。
 有名なのが横川駅から軽井沢に向けて4キロ強進んだ山中にある碓井第三橋梁(めがね橋)。埼玉県深谷市から運んだ220万個のれんがを使った「日本で最大級のれんが構造物」だ。
 この信越本線開通に伴って、避暑地として注目を集めるようになったのが軽井沢だ。
 避暑地としての軽井沢の始まりは1886年。カナダ生まれの宣教師、アレキサンダー・クロフト・ショーが軽井沢を訪れ、その美しい清澄な自然と気候に感嘆し、家族や友人などにすばらしさを推奨して、夏にこの地へ避暑に訪れたのが最初だといわれている。1893年に信越本線が開通すると、別荘地としての発展の速度を速めていった。
 東京からの交通の便も格段によくなった軽井沢に、日本人の設計・工事で純西洋式木造建築の旧三笠ホテルができたのは1905年。翌年、ホテルとして開業し、文化人や財界人が多く宿泊したことから「軽井沢の鹿鳴館」とも呼ばれていた。
 これらの施設はいずれも昭和期に、廃業したり、新しい路線に代わったりして、現役の施設ではなくなった。


富士山よりも連携が進む富岡周辺地域

 だが、日本の近代化の中で最新の技術を欧米から導入して定着させた「時代を象徴する施設」という点で共通している。3市町はこれらの歴史を後世に継承し、周遊ルートなどをつくり、新しい地域づくりや観光客の誘致に生かす考えという。富岡製糸場だけでなく、こうした周辺施設を巡ることで、近代化にまい進した「明治という時代」を振り返るのは面白い。
 昨年の「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」の世界文化遺産登録の過程では、対象自治体である山梨県と静岡県が必ずしも一枚岩でないことが明らかになった。1年経った今年も、夏の富士山の登山期間が山梨は7月1日~9月14日、静岡は7月10日~9月10日とするなど、足並みの乱れが続いている。富士山は環境対策に「宿題」が残されており、自治体の乱れは課題解消の足かせになりかねない。
 一方、今回の「富岡製糸場」は4つの資産がすべて群馬県内にある。富岡市は軽井沢町以外にも、富岡製糸場の設立にかかわった渋沢栄一が生まれた埼玉県深谷市とも協調関係を築いている。
 対象地域が広い富士山と比べると、富岡製糸場の世界文化遺産登録で直接恩恵を被る地域はかなり狭い。3市町の連携など地域間の連携が広まり、その恩恵を最大限に増やす努力を期待したい。

今週の第1位は『週刊ダイヤモンド』・・・復活日立

週刊ダイヤモンド ... 復活日立
日経ビジネス ... 航空下克上
週刊エコノミスト ... 親と子で考えるおひとりさま
週刊東洋経済 ...  2014後半経済大予測

 日立製作所というメガ企業を取りあげたのは『週刊ダイヤモンド』です。2008年に大幅な赤字を作り、再起不能かとまで言われましたが、現会長の中西宏明氏と前会長の川村隆氏のコンビで再建したわけです。この再建の話を軸に世界の重電業界のなかで、勝ち残っていくためには何をすべきかという視点を併せて特集しています。なかなか読みごたえのある特集で、これが今週の一押しです。
 次に面白かったのは、航空業界を特集した『日経ビジネス』です。エアライン満足度ランキングとともにエアアジアの日本再参入でも話題のLCCの台頭とその攻防の行方を特集しています。
久々に面白いなと思ったのは『週刊エコノミスト』です。いつもとは違う「おひとりさま」特集です。2010年現在、おひとりさまの数はなにせ1679万世帯に上り、総人口の13%を占めるというわけですから、問題は極めて深刻です。なかでも男性の生涯未婚率は20.1%というのですから......。
 今年後半の経済予測を特集したのは『週刊東洋経済』ですが、何号か前に『週刊エコノミスト』でやってましたね。

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第1位
■週刊ダイヤモンド■ <<< 従業員総数32万人企業の復活劇

 23年ぶりに過去最高益を更新した日立製作所。2008年「製造業史上最悪の赤字」7873億円からの復活劇は、電機業界の"勝ち組"としてのポジションに定着したかに見える。が、世界に目を転じると、米ゼネラル・エレクトリック(GE)、独シーメンス、米IBMなどといった世界の巨人達が立ちはだかる。今週の『週刊ダイヤモンド』は、この日立を特集する。「復活日立 重電メガ再編を生き残れるか」だ。
 日立復活の根底にあるのは、2010年にスタートした川村・中西体制(当時)による日立グループの中央集権化だ。特集はまずその立役者、中西宏明・現会長兼CEOへのインタビューから始まる。見開き2ページでもっと読みたくなる内容だが、ロングバージョンはネット版「デイリーダイヤモンド」に掲載している。グループ企業約950社・従業員総数32万人の組織を立て直した "豪腕幹部人事"に関する記事も面白い。
 しかし連結売上高10兆円の日立だが、世界の巨人達に対して各事業の規模は大きく見劣りする。今後はグローバル競争で勝ち残る戦略に大きく舵を切ろうとしている。特集では、なかでもGEによる仏アルストムのエネルギー事業買収劇で表面化した重電業界のダイナミックな世界再編劇をとっかかりに、生き残りへの課題を紐解く。
 第2特集は「ゆうちょ銀行の暗夜行路」。


第2位
■日経ビジネス■ <<<  世界の空はもっと安くなる?

 東京五輪の開催も決定し、「開国」が進む日本の航空業界。世界の航空業界では新興勢力が台頭し、「異変」が起きている。そんななか、『日経ビジネス』は2年ぶりに「エアライン満足度ランキング」を実施した。今週はこのランキングを見つつ、「航空下克上」と題して世界の航空業界事情を特集した。
 ランキングは、前回ベストスリー圏外だったANA とJALがそれぞれ2位と3位に返り咲き、おなじみのシンガポール航空は1位だ。しかし、4位はなんとターキッシュ航空。私は乗ったことがありません。5位もおなじみエミレーツ航空。海外出張の多いビジネスパーソンが評価側のメインどころだから、「中東・LCCに日本は勝てるか」という特集のサブタイトルもうなずける。
 しかし、この中東勢、両社とも日本への定期便は1日3便のみ。本来なら圏外でもおかしくない。ターキッシュは長距離でもファーストクラスを設けず、ビジネスクラスとプレミアムエコノミーにはシェフが常駐。調理・盛りつけをして料理を出す。さらにイスタンブールで乗り継ぐ乗客には全クラス市内の宿泊などが無料だったりする。エミレーツは「座席」の項目がトップだ。徹底したサービスの追求が共通項と言えるかもしれない。


第3位
■ 週刊エコノミスト■ <<< 早く結婚しろ! と親は言う

 生涯未婚率という言葉をご存じだろうか。50歳時点で一度も結婚したことがない人の割合のことだ。この生涯未婚率が1990年代以降急増。もともと1〜3%程度のものだったが、2010年には男性20.1%、女性はその約半分となっている。2030年にはこれが男性3割、女性2割になると見込まれている。
『週刊エコノミスト』は今週、「親と子で考える おひとりさま」と題して、他人事ではない生涯未婚者の増加と親世代も含めた単身世帯問題への対応策を特集した。
「自分もいつかは」......。高齢一人暮らしを考えれば、誰もが単身世帯となる可能性を持つ。『週刊エコノミスト』読者世代のただいま切実な問題の一つだろう。そして結婚しそうにないアラフォーの息子や娘を抱え、自身は老人と言っていい世代かもしれない。だから、Part3は結婚しない娘&息子がメインテーマだ。「未婚娘・息子のライフプラン」「子どもの婚活」「娘・息子がニート」。「我が家はもう少し先......」と思っているそこのあなた! 年ごろの息子・娘に「早く結婚しろ」とプレッシャーをかけるのは有効みたいですよ! 婚活に踏み切った男女の約半数が「親からのプレッシャーで婚活に踏み切った」とのこと。
 
 
第4位
■ 週刊東洋経済■ <<< 今年の後半はどうなる?

 アベノミクス2年目である2014年も、はや折り返し地点をすぎた。で、『週刊東洋経済』は「2014後半 経済大予測」を特集した。「今年後半の動向を占ううえで欠かせない25の最旬トピックスを徹底解剖」とある。「経済編」12テーマ、「産業編」11テーマ、それにエコノミスト23人に直撃した「2014年日本と世界はこう動く」、「『会社四季報』で発掘2014年度伸びる会社・沈む会社」で25テーマ。それに「あのニュースの着地点」で、豪雪被害や未だ行方知れずのマレーシア航空機事故などを扱う。今年前半もいろんなことが起こっているものだ。頭の整理にはちょうどいい。
 タイムリーさが売りの巻頭特集は、「名門サントリーはプロ社長に頼った」。売上高2兆円規模、グローバル化を本格化させるサントリーで、新浪氏の手腕は通用するのか。プロ社長起用が相次ぐ名門企業の衝撃人事のレポートだ。