2014年5月21日

【来た!見た!書いた!】世界文化遺産となった日本の「殖産興業」の起点

東京から車で1時間の場所にある「世界文化遺産」

 町の中を行き来するにも時には「渡し船」を使う。しかもそこには世界文化遺産候補の建物もある。こんな場所が、鉄道や車で東京からわずか1時間程度のところであるのをご存じだろうか。
 利根川の北岸と南岸に分かれた群馬県伊勢崎市境島村。埼玉県深谷市や本庄市に接する飛び地の南岸側には、4月末に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関から世界文化遺産の登録勧告を受けた「富岡製糸場と絹産業遺産群」を構成する4資産の1つ、田島弥平(1822~98)旧宅がある。そしてこの島村周辺は、明治初期に養蚕業や製糸業などの「絹産業」を通して日本が「殖産興業」を進めていく起点となった場所でもあるのだ。
 1955年までは「島村」として独立した市町村だったこの地区。今は地区の真ん中を利根川が流れ、その両岸をつなぐために「島村渡船」という渡し船が運航されている。その渡船の航路は群馬県の県道297号だ。この渡し船ができたのは、「暴れ川」と呼ばれた利根川の長い歴史が関係している。
 利根川は明治期まで、流れがいくつにも分かれたり、曲がりくねったりする複雑な形をした川だった。それだけではない。洪水のたびにその流れが変わってしまう。島村地域の利根川は、寛永期(1624~44年)から1883年のおよそ250年のうちに、11回も流れが変化したという。

日本の養蚕業はすべて大きな川のほとりにあった

 明治期の地図を見ると、島村の中を3本の利根川が流れ、北岸側と南岸側だけでなく中州にも分かれたいたことがわかる。
 政府は利根川の洪水を防ごうと度重なる改修を実施。島村付近は1914年の工事で両岸に堤防が設けられ、ほぼ現在の流路が定まった。島村は北側と、埼玉県側に飛び地としてある南側に、完全に二分されることになった。この二分された島村の間を行き来するのが島村渡船だ。
 しかし利根川の洪水と流れの変化は、島村の人たちに飛躍の好機も与えた。
 洪水のたびに流されてくる山の枯れ木や落ち葉が積もってできた土地は肥沃だ。稲や麦などは洪水が来れば流されてしまうが、桑の木は土の中に深く根を張るため、洪水にも流されにくく、水が引けばまた芽を吹いた。
 河川の沿岸で育つ桑には、きょうそ病という蚕の寄生虫病の原因となるカイコノウジバエの産卵が少ないという利点もあった。日本の三大蚕種(蚕の卵)地といわれた島村、信州(長野県)南佐久、奥州(福島県)伊達はそれぞれ利根川、千曲川(信濃川)、阿武隈川という大きな川のほとりにある。
 こうした地域の特性により、江戸期から既に島村では養蚕業が盛んだった。だがそれだけで島村が殖産興業の起点となり得たわけではない。島村を日本の絹産業をひっぱる地としたきっかけは、田島弥平(1822~98年)だ。


富岡製糸工場と渋沢栄一の関係

 田島弥平は幕末から明治にかけて、優良な蚕種を生産するには「清涼な空気=換気が大切」とする「清涼育」を体系的に完成させた。それだけではなく、1階に住居、2階に多くの窓を配した蚕室を置き、さらにその上に換気のための引き戸がある「やぐら」を設けた養蚕用の建物を考案し、自宅とした。世界文化遺産候補の田島弥平宅の母屋は江戸末期の文久3年に上棟されたものだ。
 弥平はこれの技法を『養蚕新論』などの著書にまとめ、普及に務めた。明治期に全国で養蚕を学ぶ人たちは、富岡製糸場で最新の製糸技術を学び、田島弥平宅にも訪れて清涼育の研修を受けたという。群馬県や埼玉県などの山あいに多い、やぐら付きの養蚕農家建築は、島村から広がっていったものなのだ。
 絹産業を近代化させた島村を考えるとき、もう1つ注目すべきなのは田島弥平と渋沢栄一(1840~1931)のつながりだ。
 渋沢栄一の生家は島村の田島弥平旧宅から2キロばかり南東の深谷市血洗島にある。群馬県伊勢崎市と埼玉県深谷市と、行政区は分かれているとはいえ、現地を少し歩いてみれば、その風土も経済圏も同じであることがわかる。しかも両者は遠縁の関係で、栄一の生家も養蚕農家だった。
 明治維新直後に政府の役人になった渋沢栄一は「富岡製糸場主任」として製糸場の創設を主導した。また機械製糸場の誕生による繭の大量消費を予想して、田島弥平ら優れた技術を持つ人達を「養蚕教師」として養蚕を学ぶ者の指導に当たらせる仕組みを整えたのも栄一だ。


日本の殖産の香りを残す富岡の建築物

 田島弥平らは1872年、島村でできた蚕種を直に海外へ輸出するため、日本で最初の蚕種業の株式会社「島村勧業会社」を設立した。この当時としては珍しい「株式会社」という仕組みを使い、しかも鎖国解除から間もないこの時期に直輸出を行う取り組みを指導したのも渋沢栄一だった。明治初期、島村産の蚕種は、当時欧州では病気で蚕種が激減していたこともあり、世界中でひっぱりだこになる。
 富岡製糸場の初代場長に就いたは、渋沢栄一より10歳年上の栄一のいとこで、『論語』の師でもあった尾高純忠(1830~1901)。惇忠の長女、尾高勇(1858~1923)は富岡製糸工場の製糸伝習工女の第1号になった。
 こうして見ていくと、明治初期の絹産業の近代化が、島村の田島弥平らと、そのすぐ近くで生まれた渋沢栄一の人脈で主導されたことがわかる。
 明治から昭和にかけて生糸や絹織物が、日本の輸出の5割前後を占めていたことを考え合わせると、島村周辺を日本の殖産興業の起点の1つと捉えても大げさではないだろう。
 現在の島村周辺。強固な堤防によって凶暴さを抑えられた現在の利根川は「暴れ川」の印象は薄い。また既に養蚕をやめて久しい島村では、ネギや麦の畑が広がり、桑を見つけるのは難しい。
 だが付近には、田島弥平旧宅だけでなく、立派なやぐらを備えた養蚕農家建築が密集して残っている。少しずつ改修を施しながらも、江戸期や明治初期の建築物を壊さずに使い続ける島村の人たち。その姿勢に、日本の絹産業をひっぱった往時の島村の人たちの心意気を見たような気がした。

今週の第1位は『週刊ダイヤモンド』・・・新中国バイブル

週刊ダイヤモンド ... 新中国バイブル
日経ビジネス ... さらば使い捨て経営
週刊東洋経済 ...  アリババの正体、雇用がゆがむ、攻防 法人税
週刊エコノミスト ... 景気・業績・株

 中国特集というのは、経済誌が定期的に組んでいる特集テーマの1つだが、今週は2つの経済誌がこの中国を異なった切り口で取りあげました。
『週刊ダイヤモンド』は中国の20都市に記者を派遣し、現地の息吹をレポートしています。現在シビアな状況の2国ですが経済のみならず、政治や社会にまで視点は及んでいます。網羅性と内容の充実度とで、持っていた方がいい1冊だといえるでしょう。これが今週の第1位です。
 そして第2位は『日経ビジネス』です。同誌は特集で正面から雇用の問題を取りあげました。外食チェーンのすき家123店が人手不足のため閉店に追い込まれるという報道が話題になりましたし、ブラック企業の烙印を押されたワタミが創業以来の赤字に転落する事態となり「働き方」が問題になっているいま、時宜を得た特集といえるでしょう。
 次にご紹介するのはやはり中国を扱った『週刊東洋経済』です。『週刊ダイヤモンド』と違うのは、1つの企業=中国で最も注目されている異端の経営者ジャック・マー氏率いる「アリババ」を取りあげている点です。同誌はこれ以外にも特集2つを掲げ怒濤の3大特集としています。これが今週の3位ですね。
『週刊エコノミスト』は3月決算企業の決算発表が行なわれるなか、この時期の景気・業績・株式市場の動向をまとめて特集しています。

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第1位
■週刊ダイヤモンド■ <<< 中国の今がすべて分かる

 中国南西部、貴州省の省都・貴陽から車で5時間のところに六盤水という炭坑の町がある。そこは今の中国経済を悩ませる「4兆元対策」の投資先の一つであり、その後遺症が如実に現れている「鬼城(ゴーストタウン)」のひとつだ。『週刊ダイヤモンド』取材チームは、今回の特集「新 中国バイブル」のために、六盤水はじめ全20都市へ記者を送り込んだ。経済誌『週刊ダイヤモンド』、本気の中国特集だ。
 さて、特集は6部構成! Part1.投資「バブル崩壊の足音で近づく中国版『列島改造論』のツメ跡」。Part2.金融「金融自由化"夜明け前"の混沌」。Part3.産業「『中国モデル』転換の旗手 新世代経営者の台頭」。こちらではネクストBAT、つまりバイドゥ、アリババ、テンセントの次の世代と産業構造の変化を取り上げる。Part4.政治「習近平とは何者か?」。中国に精通した5人の専門家が登場し、習氏と中国共産党の正体に迫る。Part5.日系企業「中国ビジネス新潮流」。尖閣問題勃発後も、じつは販売拠点の増強と投資拡大は進展。中国進出277社アンケートが物語る。最後はPart6.外交「膨張する中国の野心 日中関係改善の糸口はあるのか」。
 ジャーナリズムの視点から切り込んだ中国の「今」を知るビジネスマン必読の1冊ではないか。


第2位
■日経ビジネス■ <<< 人の使い方を見直す時期

 昨今、構造的な人手不足が露呈している企業が現れはじめている。「ブラック批判」企業だけにとどまらず、建設、医療・介護、外食など労働集約型産業を中心に、さまざまな企業で人材の確保が困難になりつつある。いかにして人材を確保し、そしてとどまらせるか。使い捨て経営に別れを告げる時が来た......今週の『日経ビジネス』タイトルはずばり「さらば 使い捨て経営」だ。
 4月中旬、牛丼大手チェーン店「すき家」で店舗の多くが閉店や営業時間の短縮に追い込まれた。発端は新メニュー導入だ。もともとワンオペや豊富な種類のメニュー、正社員のいない体制により現場の負担が大きかったすき家だが、仕込み時間が牛丼の約4倍かかる新メニューによりアルバイトの不満が爆発し、すき家を去るアルバイトが続出した。溜まっていく非正規の不満が、多くの企業に戦略転換を迫っている。
 非正規雇用の正社員化に力を入れるのは、日本郵政やユニクロがその代表だ。外食大手すかいらーくは勤務する店舗を限定する「コミュニティ社員」として契約社員約90人を改めて採用した。事例と「採用氷河期」を迎える今後を展望する。
 SPECIAL REPORT「『老化』進む東京市場」。期待のNISAでも個人投資家の若返りは進まない。少ない個人投資家がさらに減少するという危機が迫っている。


第3位
■ 週刊東洋経済■ <<< アリババvs. ソフトバンク?

 中国経済を牽引する、とある会社。年間の商品取扱高が25兆円に及ぶ巨大なネット通販会社、アリババ。「怪人」と称される馬雲(ジャック・マー)氏の辣腕によって創業15年目にして中国経済の中核を担っている。この企業の米株式市場への上場計画が今、話題を呼んでいる。
 アリババは世界最大のBtoBサイトのアリババ・ドットコムをもとに中国最大の商品取扱高を誇るネット通販「タオバオ」等を手がけ、ビジネスモデルが近いebayや楽天を圧倒し、利益水準ではアマゾンすらも上回るといわれている。
 場所を問わないネット通販により内需拡大が見込まれ、新たに参入した金融サービスに於いても現政権の改革路線に沿っており、政治的にも極めて大きい存在と言える。アリババは今ソフトバンクと米ヤフーと馬雲氏のあいだで熾烈な経営権争いを繰り広げている。今回の株式上場もいわゆる"親離れ"の一環と思われ、動向が注目されている。
 今週の『週刊東洋経済』は"怒濤の3大特集"と表紙にある。「アリババの正体」「雇用がゆがむ」「攻防 法人税」の3つだ。第1特集は「雇用がゆがむ」。官製ベアが派手に報じられたのも束の間、「残業代ゼロ」「解雇解禁」を画策する経産省。安倍政権が進める雇用ルールの大転換をレポートする。


第4位
■ 週刊エコノミスト■ <<<  好調な業績 VS.鈍い市場の動き

 今週の『週刊エコノミスト』は「2014年度企業業績の明暗と、この先の景気」が特集テーマだ。タイトルはずばり「景気・業績・株」。経済界のシナリオ通り、「夏以降は米国経済回復を牽引役に日本経済は成長軌道に乗る」のか? これを景気・業績・株を切り口に徹底検証する特集だ。
 2014年三月期、トヨタ自動車が6期ぶりに過去最高の純利益をたたき出した。豊田章男社長は「稼ぐ力は強くなった」とリーマン・ショック後の改革に手応えを感じている。トヨタ以外にもスズキをはじめとした自動車大手7社中5社が前期に過去最高の純利益を計上、予想では今期も4社が前期を上回る利益を出すといわれている。電機大手の日立製作所等も似たように過去最高の利益を出している。
 今期は消費増税という不確定要素により、慎重な期初予想がより保守的になっている。が、強気の予想を打ち出す企業も少なくない。「消費増税という不確定要素がある中で期初の段階から強気の予想を出せるのは企業の自信の表れ」と岡三証券の石黒英之シニアストラテジストは述べている。
 だが、好調な予想に反して市場の反応は鈍い。理由は三つ。一つはウクライナ危機、二つ目が6月の政府による「成長戦略」待ち、三つ目は消費増税の反動の様子見だ。
 第2特集は「武器輸出の経済学」。武器輸出三原則見直しで解禁となった武器輸出。しかし関連企業はそう喜んでばかりもいないようだ。