2013年12月 4日

【来た!見た!書いた!】各地で勃発する非正規雇用の争奪戦で読み解く正規雇用の増加

千葉県の湾岸地域で非正規社員の争奪戦が起こっている

 イオンモールが12月20日に千葉市に開業する旗艦店「イオンモール幕張新都心」。総賃貸面積は約12万8000平方メートルとイオンの国内ショッピングセンター(SC)としては3番目の広さで、約350のテナントのうち、利用者がなんらかの体験をできる「体験型」が3分の1以上を占めるのが特徴だ。吉本興業が劇場で人気芸人のライブを催したり、東映とナムコが特撮ヒーローの撮影用スーツや小道具などを展示したりする。
 同モールの開業でもうひとつ話題を読んでいるのが、開業を前に、千葉県の湾岸地域で、アルバイトやパートなどの非正規社員の争奪戦が起こっていることだ。
 テナントも含めたSC全体の従業員の数は6000人以上で、テナントが新規に採用する人数だけで3000人を上回る。景気の回復傾向が続き、雇用が引き締まりつつあるところに、日本でも最大級の大型店の開業が重なったため、アルバイトやパートの時給が高騰したり、採用がままならない企業が出たりしている。
 レストランを運営するアメリカンハウスが同モールに開業するカフェの時給は1200円。「開業から3カ月」の限定とはいえ、940円強という千葉県のパート・アルバイトの平均時給をかなり上回る。

自動車大手4社の期間従業員数も今期初頭より4割増

 モールでのアルバイト採用が急増した影響を受けたのが、千葉市に工場を持つ山崎製パンなどだ。クリスマスシーズンを前にケーキなどの生産を担う年末のアルバイトの時給を1000円と前年より100円引き上げたが、応募人数は募集人数を大幅に下回ったままだという。
 求人情報のリクルートジョブズによると、首都圏など三大都市圏のアルバイト・パート募集時の平均時給は前年同月より7円増えて953円だった。増加率は0.7%と過去5年では最高水準の伸び方だ。関東で店舗を展開するスーパーからも「レジ打ちを担当するパート社員が、夏ごろから確保しにくくなった」という声が漏れる。
 その中でも千葉県は前年同月比1.3%増の944円と、増え方が他地域より大きい。イオンモール幕張新都心開業による大量採用が影響しているとみられる。
 非正規社員の雇用を増やしているのは、小売り・流通関係だけではない。11月30日付の日本経済新聞によると、トヨタ、日産自動車など自動車大手4社の期間従業員の数は約9700人と今期の初めに比べて4割も増えた。


東北地域の建設業では人が集まらず、人が育たず 

自動車は需要の変動に備えるため、工場の中で一定の割合は正社員でなく、3~6カ月ごとのの契約で働く期間従業員(期間工)を雇っている。現在は円安による輸出の増加や、来春の消費増税前の駆け込み需要に備えるため、期間従業員を増強している。厚生労働省が11月30日に発表した10月の一般職業紹介状況によれば、輸送用機械器具製造業(自動車業界)のパートの新規求人数は前年同月に比べ43%も伸びた。
 自動車の期間従業員といえば、男性の20~40代が中心だ。働く層が重なる建設業界では、人手不足を懸念する声が強まっている。特に深刻なのが、東日本大震災からの復興工事に大量の人員を必要とする東北地域の建設業だ。
 岩手県内の建設業者は「県内では人が集まらないため、遠く北陸などにも応援を頼んでいて宿泊費などの負担もバカにならない」と話す。「コンクリートから人へ」を掲げた民主党政権時代、建設業は若者から見向きもされなかった。公共事業の減少、業績の悪化を背景に業界内でも人減らしが続いた。
 それが東日本大震災後の復興事業や、自民党政権による公共事業の急増で一転して大量の発注が集まるようになった。高賃金で急いで人を集めようとしても簡単には人が育たない状況だ。


それでもまだある非正規と正規社員の雇用の差 

 長年デフレで苦しんだ日本経済を振り返れば、非正規といえども雇用の増加や賃金の上昇は喜ぶべきことなのかもしれない。ただ現段階では、非正規ほどには正規社員の雇用は増えていない状況だ。現在の円安による輸出の好調や、株高による高額消費などがどこまで続くか強い自信を持てないでいるからだ。
 10月の有効求人倍率(季節調整値)は前年同月を0.03ポイント上回り、0.98倍となった。だが正社員の有効求人倍率は前年同月比0.1ポイント上昇の0.61倍にとどまる。一方、常用的パートタイムは0.13ポイント上昇の1.12倍。非正規社員と正規社員の間には、まだ大きな雇用環境の差がある。
 今年8月の本稿でも指摘したように、昨年末に誕生した安倍政権の経済面でも最大の成果は「安倍政権の登場自体が『政策の不確実性』を大きく削減することにつながった」(経済学者の池尾和人氏)ことにある。不確実性が減り先行きの見通しが立てやすくなったことで、家計は消費に対して積極的になり、企業は設備投資や賃金にも手をつけるようになった。
 正社員の採用を増やすには、企業にさらに先行きへの自信を深めさせることが必要だ。


今週の第1位は『週刊ダイヤモンド』・・・激烈!流通最終決戦

週刊ダイヤモンド ... 激烈!流通最終決戦
週刊東洋経済 ... 浮かぶゼネコン 沈むゼネコン
日経ビジネス ... 東電解体
週刊エコノミスト ... 緩和相場の毒

 経済に動きがでてきたゆえなのでしょうか。今週の経済誌には業界をえぐるような特集が多く、それなりに問題点を引っ張りだしていて面白く読みました。そのなかで、いちばんビビッドだったのは『週刊ダイヤモンド』でした。いまリアルとネットの間で客の奪い合いを繰り広げている小売業の現場を取材した特集を組んでいます。いま身近な小売の現場でどんなことが起きているかを知るには格好の特集です。これが今週の第1位。
 次に面白かったのは、ゼネコンを正面から取りあげた『週刊東洋経済』です。オリンピックが始動し始め、国土強靭化、復興、リニアと活況を呈してきた建設業界ですが、そう喜んでばかりも居られず,至る所で問題が噴出しているようです。特に人不足は大きく、その辺りの問題すべてひっくるめてバブルに沸く業界の現状をレポートしています。
 第3位は東電問題を取りあげた『日経ビジネス』です。小泉元首相の原発即ゼロ発言で揺れる自民党ですが、実際の問題点はどこにあるかをレポートしています。そして第4位は『週刊エコノミスト』で、金融緩和の負の部分に絞ってレポートしています。

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第1位
■週刊ダイヤモンド■ <<< ネットの圧力に耐えられるかリアル店舗

 量販店がショールーミングされていると噂される通りの結果が発表された。ヤマダ電機が42億円の赤字を発表したのである。一部上場後初。量販店で下見をしてネットで注文するという流れに打ち勝てなかったのが大きい。従来の成功モデルは簡単に崩壊する一つの例であり、ネット通販の力を示す結果となった。この流れは家電だけではなく、流通全体にも起きている。
 今週の『週刊ダイヤモンド』の特集は「激烈!流通最終決戦」。総合小売りにコンビニエンスストア、ネット通販とどこをとっても盤石な企業はない。生き残りをかけた試みをピックアップした。
 アパレルでのネット革命としてスマートフォンアプリ「WEAR」を取りあげた。「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイが10月末にリリースしたもの。店舗にある商品のバーコードから情報を読み取り、コーディネートやネットで買うことができる。喫緊の課題でもあるオムニチャネル(ネットと現実を横断した販売戦略)として注目されている。商業施設各社の反発など、まだ波には乗れていないが1つの試みだ。
 特集では、「ヤフーショッピング」の賃料とロイヤリティの無料化、セブン&アイのPBなどその他の試みが記される。なぜどこもかしこも動いているのか? その答えは鈴木敏文・セブン&アイ・ホールディングス会長のインタビューにあった。「肝心なのは過去の成功体験を捨てて、どれだけ挑戦できるか」と述べ、サイクルの速さとそこに対応する大切さを語った。この業界において、決戦は日々行なわれているのだ。
 第2特集は「もう黙っていられない!地域住民の異議申し立て」。


第2位
■ 週刊東洋経済■ <<<  市場の拡大が急過ぎて追いつけないゼネコン

 今週の『週刊東洋経済』の特集は「浮かぶゼネコン 沈むゼネコン」。五輪にリニアとバブル到来とも言わんばかりの賑わいを見せるゼネコン。五輪特集の1つとして取りあげられる場合が多かったが、単体の特集としては初。今年では『週刊ダイヤモンド』2月9日号「公共工事バブルで踊るゼネコン」以来というご無沙汰ぶりだ。
 良い話としては、公共民間合わせた需要の拡大で受注件数、単価ともに上がっている。しかし、悪い話もある。その拡大が急激すぎて追いつけていないことだ。特に、人員不足が大きなボトルネックとなっており、一朝一夕ではどうにもならない。これが「浮かぶゼネコン 沈むゼネコン」の所以。
 また、需要拡大によりデベロッパーにも深刻な影響を与えている。ゼネコンの案件には、公共工事(土木)と民間工事(建築)の2つがある。土木は比較的採算性が高く、今春の労働単価の引き上げでさらなる収支改善に向かっている。しかし、問題は建築だ。もともと内装工事などに手間のかかるマンション。そこに資材高による建築費高騰と作業員不足の労務費アップが加わり、粗利率はほとんど5%以下。本社経費を考えると赤字も出てくる。こういった状況がデベロッパー、さらには販売価格上昇で買い手にも関わってきている。特集では「地方ゼネコンの実態」や「全国未上場ゼネコン経営健全度ランキング」なども扱う。
 第2特集は「生き残りを懸ける卸売市場」。伝統か、遺物か。イチバの生き残りを伝えた。


第3位
■日経ビジネス■ <<<  どうすればいい? 東電

 11月12日の日本記者クラブで、小泉元首相が「原発即ゼロ」にすべしとの考えを明確に示したことで、自民党は揺れている。一度はなんとなく収まっていた原発問題が、再び遡上に乗ってきた。
 今週の『日経ビジネス』の特集は「東電解体」。福島第1原発の処理を核として、東京電力をどのようにしていくのかは喫緊の課題である。現在、社内分社や分割売却などの案が出ており、東電が発表予定の総合特別事業計画には社内分社が盛り込まれそうだ。しかし、本特集ではそれでは不十分だと唱える。なぜなら、社内分社が国民のための仕組みではないからだ。
 現在の案の場合、廃炉事業は分社の1つという位置づけになる。これでは、今までと根本では変わらない。そして、賠償や除染費用は事業利益から捻出する。過去の業績から見ても現状の利益で補えるはずもなく、大幅な値上げか国費をつぎ込むことになる。これでは国民の負担は増すばかり。そこで、法的整理という方法を提示する。今までも幾度となく浮上した案ではあるが、大きく3つの理由で取り下げられてきた。1、社債の償還が優先され費用が払えない。2、電力の安定供給が難しい。3、社内のモラールが下がり事業の担い手がいなくなる。
 誌面では、3つの理由に対して真っ向から考えをぶつける。償還の相対的優先、海外の電力会社M&A事情、作業員の身分保障などを例に出して。


第4位
■週刊エコノミスト■ <<<  金融緩和がもたらす毒
20131202_週刊エコノミスト
緩和相場の毒

 ここのところ、日米の株価が良好だ。9月に開催された連邦公開市場委員会の前、株価は下がっていた。しかし、量的緩和の縮小は発表されず株価は復調、そして上昇へと向かった。この流れどう読むべきか? 今週の『週刊エコノミスト』は、「緩和相場の毒」という切り口で読み解く。
 金融緩和の目的は、投資を含めた市場の活性化である。それを考えれば非常に効果が出ているというのが現在の状況である。いずれは行なわれるだろう金融緩和縮小までの猶予がさらに伸びたわけだから、当然と言えば当然。しかし、これは健全な姿なのだろうか? 世界的投資家のカール・アイリーンは特集のなかでこう説明する。
「多くの企業の業績は幻影といえる。好経営や好景気に支えられているのではなく低金利に支えられているからだ」
 この発言の後、米国株は一時沈んだのだからあながち嘘とは言えないか?
 このように専門家のなかには実績以上の株価という見方は強く、そしてマネーゲームのタネにされてしまう。金融緩和の功罪ともとれる現象である。そしてこの先には、債券などの安全資産の利回りの低下、さらに将来的な利上げによる価格下落リスク。そしてハイイードル債に向かう動き。これが低金利の成れの果てだと、同誌は語っている。緩和相場の薬も、使い過ぎれば毒となる。言い得て妙な話だ。
 第2特集は「著作権延長は日本の衰退招く」。TPPにより、著作権が死後50年から70年になる!?日本経済から文化まで、延長が与える影響を論じる