2013年11月 5日

今週の第1位は『週刊ダイヤモンド』・・・完全対策 事業承継

週刊経済誌の読みどころ20131105

今週の第1位は『週刊ダイヤモンド』

週刊ダイヤモンド ... 完全対策 事業承継
週刊東洋経済 ... スマートカー巨大市場
日経ビジネス ... 最新版 会社の寿命
週刊エコノミスト ... 自動車サバイバル

 今週の経済誌はテーマが2つに分かれました。1つは「自動車の未来」について。もう1つは「会社の継続性」について。前者は『週刊ダイヤモンド』と『日経ビジネス』、後者は『週刊東洋経済』と『週刊エコノミスト』でした。
 そこでまず紹介するのは『週刊ダイヤモンド』です。事業承継というとテーマが地味ですが、高齢化がどんどん進む日本ではその一大集団を形成する団塊の世代が65歳を迎え、いよいよ本格引退に入るとあって喫緊の課題です。同誌らしくケーススタディやハウツーなど無難にまとめてあります。
 次はスマートカー(=自動車の最新技術)を取りあげた『週刊東洋経済』です。2年ぶりの東京モーターショー開幕間近とあってか、同誌が取りあげたテーマは、おそらくショーでも各社が盛んにアピールするだろうところの技術です。この市場は将来30兆円に膨らむと期待されているようで、日本のみならず世界的な取り組みがなされています。スマートカート言えば、電子や電池など日本の強い技術もあり、有望な市場で注目度も高い、これが今週の第2位です。
 第3位の『日経ビジネス』の特集テーマは「会社の寿命」。その昔、同誌が「会社の寿命は30年」と銘打って同じ特集を打ったのが、ちょうど30年前。と言うわけで、もう一度会社の寿命を見直してみようと言う特集です。もちろんその寿命は短くなっているというのが結論なのですが......。詳しくは本誌をお読みください。
 そして第4位は『週刊エコノミスト』です。こちらは『週刊東洋経済』と同様クルマの特集を組みましたが、ニュアンスはちょっと違って、そのサバイバル戦争です。新技術も大事だけれど、目の前にはもっと喫緊の課題が山積しているということなのでしょう。


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第1位
■週刊ダイヤモンド■ <<< 事業承継は喫緊の課題

 帝国データバンクのデータによると、後継者不在を理由とした中小企業の廃業は年間約7万社に上るという。その結果、毎年20万〜35万人の雇用が失われる。企業を取り巻く環境変化も相俟って、「10年後には日本の中小零細企業は壊滅している」との悲観論もある。事業承継は、中小零細企業の喫緊の課題。そこで働く従業員のことを考えると、日本の活力を支える重要なテーマだ。今週の『週刊ダイヤモンド』は「家族と従業員を幸せにする会社の継がせ方」を「完全対策 事業承継」として特集した。
 オーナーの年齢が50〜59歳の場合で80.4%、80歳以上でも34.6%の中小企業で「後継者がいない」というデータがある。目の前の事業展開を追ううちに事業承継の準備が疎かになっている現実がある。こういう特集から後継者育成やM&Aへの第1歩が踏み出されるかもしれない。町の不動産屋さん、病院経営者、製造業から老舗店舗まで、身近な事例も満載。「親族に承継する」「親族以外に会社を託す」「大企業・老舗の継がせ方」と、ケースごとに起こりうるトラブルや課題を見せてくれる特集だ。
 第2特集は「日本の魚が危ない」。水産資源としてみた日本漁業の危機を知らせる。


第2位
■ 週刊東洋経済■ <<<  スマホで無人の自動車を呼ぶ光景

 交通の進化となると、東京〜名古屋間で2027年開通を目指しているリニアモーターカーが目下の話題かもしれない。しかし、もっと身近な交通の進化が、いまも着々と進んでいる。それは、自動車だ。スマホで呼んだ無人の自動車が目の前にスーッと現れるなんていうSFみたいな光景も、リニア新幹線よりも早く実現するかもしれない。今週の『週刊東洋経済』は、「スマートカー巨大市場」。自動運転+エコカーで激変する自動車ビジネスを特集した。
 自動車にまつわるトレンドは大きく3つ挙げられる。1つ目は「自動運転」。今、世界的自動車メーカーが集結している場所は、ITベンチャーの聖地でもあるシリコンバレーだ。最新技術を自動車に取り込む動きが盛んで、その1つが自動運転。自動車メーカーだけでなく、Googleが自動運転車プロジェクトを立ち上げ、2017年の実現を目指している。
 2つ目は、「電機との融合」。近年の自動車の進化を語る上で欠かせない、電気自動車。コストの49%が電子部品なんてものもあるほど、もはや家電であり、電機メーカーはもちろん電子部品メーカーの活路ともなりうる。そのため、12年14兆円の市場が、22年には26兆円の市場に拡大するとも予測される。
 3つ目のトレンドは「燃料電池」。水素で走る燃料電池自動車(FCV)。10年前1台1億円もした価格が大きく下がっており、2015年には500万円までになる。また、FCVの普及には水素インフラが欠かせないため、これをめぐる争奪戦も必至だ。
 いろいろな業界を巻き込んで沸騰していく自動車の未来。次世代においても、重要なプロダクトであることには違いない。


第3位
■日経ビジネス■ <<<  会社の寿命は18年という現実

 今週の『日経ビジネス』の特集は「最新版 会社の寿命」。"最新版"ということは昨年もやった企画か、と思うかもしれないが、実はいまから30年前の話。当時「会社の寿命は30年」と打ち出して経済界に話題を振りまいた。そこで30年経った今年、この企画が再びやってきたという訳だ。
 では、「最新版 会社の寿命」はどれくらいになったのか。答えは、18年。ここまで短くなってしまったのには3つの視点を失ったからだと本誌は投げかける。1つ目は「創業者視点」。苦楽を共に成長させた企業の創業者としての目線を忘れてしまっているということで、一例として大王製紙の暴走が取りあげられている。しかし、もっと根幹での問題は長期投資する姿勢をなくしていること。株主の権利が向上したこともあり、短期収益主義に陥ってしまったと同誌は解説する。
 2つ目は「顧客主義」。これは「顧客より利益」と「顧客よりリスク回避」の二種類あって、後者ではアパレルのつきまとい接客や極端に複雑なパスワードなどが挙げられる。ただしこちらも、「コンプライアンスの行き過ぎ」という時代の変化も考慮すべき点ではある。
 3つ目は、「共創視点」。面白いのが、佐々木正・元シャープ副社長がシャープの敗因として語る。「独創はできた」と前置きをした上で、自信過剰が招いた国内自前主義をあげる点。果たして日本企業は3つの視点を取り戻すことができるのか。成功例として日本電産の例があげられているのが興味深い。


第4位
■週刊エコノミスト■ <<<  自動車、新たなビッグ4の時代へ

 自動車の未来をどう捉えるか? 転換期となる次世代を、『週刊東洋経済』は技術進歩と市場拡大という2つのポイントから伝えた。
 一方の『週刊エコノミスト』はどうか。特集のタイトルは「自動車サバイバル」。つまり業界再編の始まりというのである。 
 東京モーターショーを前に、2誌が自動車ビジネス関連のテーマを持ってきたわけだが、自動車業界に登場したキラーコンテンツ「自動運転」の存在も大きい。
 しかし、現実はそんなに甘くないと言うのが、同誌のポイントだ。「自動運転」はおろか、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)も最終的にステーションなどのインフラを含めてどの技術に集約されていくのかまだ先は見えないし、伸びる新興国市場で求められるクルマはまた別の方向性を持つ。自動車産業は、それぞれの市場に合わせた自動車づくりが求められている。
「高付加価値の追求に失敗した電機メーカーの二の舞にはなりたくない」というある自動車メーカー幹部の言葉は業界の本音だろう。
 では、今後自動車業界はどのようになるか。ビッグ4の時代になると誌面では予測する。2025年時点に1000万台以上の規模を確保するにはトヨタ、VW、GM、日産・ルノーの4グループ。地域・事業補完や技術開発などの提携が生き残りのカギになってくるとする。
 特集は第2部として「魅せるクルマ」を紹介する。F1話や「プロが評価するクルマ」など。

【来た!見た!書いた!】 いつもと違う景気回復に地方は安心するな

北海道の景気が絶好調

 日銀が3カ月に1度、支店長会議のあとで各地の景気の現状をまとめて報告する「地域経済報告(さくらレポート)」がある。地域ごとの景況感を測るには最も信頼できる調査・数字だ。最新の報告を発表した10月21日の支店長会議のあとの記者会見では、ある支店長からこんな言葉が飛び出した。
「観光業界は、絶好調という言葉を使ってもよいと思う。ホテル、タクシー、レンタカー、どこに聞いても景気が良い」(札幌支店の曽我野秀彦支店長)。景気について慎重な言い方をすることが多い日銀マンが「絶好調」という言葉を使うこと自体、珍しいことだ。
 日銀は北海道の景気判断を前回7月は「持ち直している」としていたが、10月は「緩やかに回復しつつある」に上方修正した。さくらレポートは2005年に始まったが、北海道の景気判断の文言に「回復」の2文字が入ったのが今回が初めてだという。東南アジアを中心に、外国人の北海道観光人気が高まっていたところに、政府がビザの発給要件の緩和を実施した。北海道は円安に伴う観光需要の増加をうまくつかんだ。安倍政権が「三本の矢」として打ち出した「機動的な財政政策」による公共投資の増加も、北海道の景気をひっぱる役目を果たしている。
「今回の景気回復は、いつもの『飛行機の後輪型経済』とは違うかもしれない」。北海道の経済人からはこんな声も聞かれるようになったという。

「飛行機の後輪」だった地域が躍進

 地域の経済を飛行機やジェット機の後輪にたとえるのを初めて聞いたのは2000年代半ば、日銀の高知支店での記者会見のときだったと思う。景気上昇局面では最後に浮上し、下降局面では最初に降下する。これを離陸時には最後に地面を離れ、着陸時には最初に接地する飛行機の後輪にたとえたものだ。
 当時の高知県は自民党の小泉政権下での地方交付税の削減などにより、他県よりウエイトの重い公共事業が不振を極めていた。円安効果を受けて製造業が好調な中部・関東などが力強い回復を遂げていたのに対し、回復する兆しが見えない状況だった。支店長は「高知は飛行機の後輪型経済といわれていたが、今回は遅れての離陸すらできないかもしれない」。そんな弱気な発言だった。
 当時の高知はともかくとしても、「後輪型経済」というたとえが使われるのは、ほとんどが「全国の景気は回復しても、○○地方の景気回復は遅れている」という文脈においてだ。記事データベースで検索してみると、既に1991年6月に、当時の日銀の札幌支店長が北海道内の景気を説明するのに「飛行機の後輪」という言葉を使っている。おそらく日銀の中で代々使われてきた言葉なのだろう。
 しかし今回の場合、その後輪型回復のパターンがあてはまっていない。
 日銀の企業短期経済観測調査(短観)によると、9月の全国の業況判断DI(全産業)は+2ポイント。これを9つの地域別にみると、北海道が+10、九州・沖縄が+7、東北が+6なのに対し、関東甲信越が2,東海が0と地方が都市部を上回る形になっている。北海道のような地方が「飛行機の後輪」ではなく「前輪」の役割を果たしているといっていい。


製造業よりも非製造業がプラスの現実

 これを、前回の景気回復局面の短観業況判断DI上でのピークである2006年12月と比べてみると面白い。全国の全産業DIは+10。東海は+15、関東甲信越は+13なのに対し、東北は-8、四国は-9、北海道は-13。
 日銀の高知支店長から「今回は遅れての離陸すらできないかもしれない」と弱気の発言が出たことも、このDIを見ると肯ける。2000年代半ばの景気回復は、都市部や東海地方に恩恵が集中した。当時の円安で為替面での利益を得た製造業の立地が多かったからだ。
 昨秋を起点とした景気回復局面も、為替相場が円安方向に修正されたことが大きな改善要因にはなっている。しかし10年前と比べると、地域の製造業の多くは中国や東南アジアなどに製造拠点を移し、それに伴い大企業の仕事を主力とする中堅・中小企業もかなり海外に拠点を設けた。
「発注元の大企業が海外に生産拠点をシフトしており、中小企業の受注が増えない」(日銀福岡支店の市川能英支店長)構造になっているのだ。
 2006年12月の製造業の業況判断DIは+17で、非製造業は+3にとどまった。一方13年9月は製造業が-2にとどまるのに対し、非製造業は+5。


景況感の良いうちに育てなければならないこと

「景気回復のけん引役は地方と非製造業」。ややおおざっぱにまとめると、こんな姿が見えてくる。確かにこれまでの「後輪型経済」とは違った風景が広がりつつある。
 地方企業の経営者で、安堵の思いを抱いている人は多いだろう。だがここで安心することは禁物だ。なぜなら今回の地方景気の回復は円安による外国人観光客増や株高による資産効果に加え、財政支出など一時的な刺激策に頼っている部分も強いからだ。
 最新のさくらレポートでは公共投資について、北海道、東北、九州・沖縄の3地域は「大幅に増加している」、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国は「増加している」「増加傾向を維持している」と報告している。
 地方の景気回復について公共投資がどの程度の役割を果たしているかはより詳細な分析が必要だが、公共事業が引っ張る形での景気回復で思い出すのは、1990年代半ばの地方経済だ。
 しかしこの90年代の公共事業中心の経済は、結果的に日本と地方の財政の大幅な悪化と、自ら成長産業を生みだそうとする地方の自活力をむしろ弱めることにつながった。
 景況感のよいうちに、何よりも地域や地域企業は自立的に成長できる「何か」を育てなければならない。安心しているひまはないのだ。

(2013年11月5日)