2013年7月10日

【来た!見た!書いた!】人気の登山スタイルが世界文化遺産・富士山を貶める!?

大混雑の夏の富士山に潜む危険

  6月末に世界文化遺産に登録された富士山が6~7日、山開きから初めての週末を迎え、多くの登山者で賑わった。山梨県側の富士山5合目に通じる有料道路、富士スバルラインは6日午前から観光バスや乗用車で渋滞が続き、5合目からの吉田口登山道ではカラフルなウエアに身を包んだ登山者が数珠つなぎになって山頂を目指していた。5合目の商業施設によると、世界遺産効果で富士山への客足は例年より3割程度も多いという。
 関係者は登山客や観光客が増えるのをおおむね歓迎しているが、一方で危惧するのが「弾丸登山」のような無理をする登山者が増え、事故の危険性が強まっている点だ。

 弾丸登山とは、山小屋などに泊まらず徹夜で登り下りする登山を指す。富士山の場合、たくさんの人が御来光目当てで登るため、弾丸登山が多い傾向にある。5合目の吉田口を夜9時ごろ出発、頂上でご来光を見て翌日昼までに下山するのが一般的だ。
 特に登山シーズン中の7~8月は山小屋が大混雑していることもあり、たくさんのツアー会社が弾丸登山前提のツアーを組んでいる。山梨県のアンケート結果による推計では、弾丸登山者は登山者の約3割にも達するという。
 しかし富士山は標高3776メートルの日本最高峰。約2300メートルの5合目から登り始めたとしても1500メートル近い標高差がある。下界との寒暖差は激しく、全国的な猛暑となった6日でも、山頂の気温は5度だ。急激な気圧の変化で高山病の症状も出やすい。
 前日に十分な休息をとらない弾丸登山の場合、睡眠不足やたまった疲れで、温度や気圧の急激な変化に対応する力が弱まる。富士山で体調不良により登頂を諦める人の割合は、通常の登山者が5%なのに対し、弾丸登山者は14%もおり、大きく上回るという。


遭難事故死世界一の山で見た風景

 富士山の弾丸登山の話題で思い出したのは、上越国境にある谷川岳のことだ。
 2010年の5月、ロッククライミングのメッカである谷川岳の一ノ倉沢を初めて訪れたときの印象を忘れることはないだろう。5月末でも沢には分厚い雪渓が残り、そこから肌を刺すような冷たい水が溶け出している。「衝立岩」と呼ばれる有名な岩場は分厚い雲に隠れて見ることはできなかったが、そのダイナミックな様は十分に想像できた。
 周囲を散策しようと、湯檜曽川沿いにより奥の沢へと向かう林道を歩き出した。すると、お線香の香りが漂っている。
「こんなところでなぜお線香が?」といぶかりながら歩いていると、林道の左側の岩壁の下にある線香と献花が目に入った。
 岩壁に目をやると、一ノ倉沢で遭難した登山者の名前が刻まれた「遭難碑」が埋め込まれている。ちょっと見渡せば、それこそ1メートルほどの間隔で、数多くの遭難碑があるのだ。一ノ倉沢のこの岩壁だけでも、その数は百を下らないかもしれない。
 雄大な風景に、すがすがしさを感じていた自分の中に突然、黒い鉛のボールをどすんと放り込まれたような重苦しさを感じた。
 1931年に統計を取り始めて以来、谷川岳の遭難死者数は805人(ほかに行方不明者9人)。残念ながら世界一の数だ。2012年にも雪崩に巻き込まれ2人が亡くなっているが、その大半は1950~70年代のロッククライミング黎明期に、一ノ倉沢やマチガ沢、幽の沢など谷川岳東面(群馬県側)の岩壁を登ろうとして遭難したものだ。
「一般の登山者や観光客には関係ない」と思われかねないが、当時の状況を検討すると、今の富士山の弾丸登山と似通った重要な論点が浮かび上がってくる。

睡眠不足が減るだけで山の遭難死は減少する

 1950~70年代、多くの登山者が谷川岳に詰めかけたのは、その絶妙な「位置」が関係している。
 ①標高は2000メートルにも満たないが、急峻な岩壁と複雑な地形で、初心者から高度な技術を必要とするクライマーまで楽しめる山である。②標高1500メートルより上は森林限界となり、その上では視界が開け数多くの高山植物が観察できる。③首都圏に近い上に、最寄りの上越線の土合駅から登山口までが行きやすいため週末の限られた時間でも登りやすい――などによって登山者の人気を集めた。
 特に当時の国鉄は上野から土合への夜行列車を運行しており、午前2時台や4時台に土合へ到着する夜行列車に乗り、仮眠も取らずに山行を開始、夕方に土合に戻り帰着するという「夜行日帰り」のコースが一般的だった。これこそ今の富士山の弾丸登山と全く同じ構図なのだ。
 その上、谷川岳は中央分水嶺に位置し、特有の濃霧とともに猫の目のように気象が変化するため、風雨や雪への対処が難しい。雨ははじいて水蒸気は外に出すゴアテックスの雨具や合成繊維の速乾性アンダーウエアなどがなかった当時、春や秋でも谷川岳で風雨に長時間打たれれば、それだけで疲労凍死の危険性にさらされる。
 これに夜行日帰りによる睡眠不足が加われば、遭難死の可能性がさらに高まってしまう。岩場で墜落死した場合でも、睡眠不足からくる疲労によって転落したケースが少なからずあるはずだ。
 群馬県警察本部が谷川岳での遭難を減らすためにまとめた谷川岳警備隊員の手記『この山にねがいをこめて』(二見書房、1963年)。この本で群馬県警の担当者は「もし登山者が前夜充分な休養をとっていたならば、この山の事故もこれほどにはならなかったであろう」と分析している。
 結局、どれだけ道具が進歩しようとも、登山者にとって最大のリスクは睡眠不足や疲労、経験とは不釣り合いの無謀な登山計画だ。
 富士山は谷川岳ほどの危険はないとはいえ、逆にそこを登ろうとする人の数はけた違いに多い。自治体の啓発活動などによって、弾丸登山をどれだけ少なくできるかが、まずは富士山で事故や遭難者を出さないためのカギを握る。

今週の第1位は『ダイヤモンド』・・・狙われる「老後のカネ」

今週の第1位は『週刊ダイヤモンド』

週刊ダイヤモンド ... 狙われる「老後のカネ」
週刊東洋経済 ... セブンの磁力
日経ビジネス ... 人材逃避(フライト)
週刊エコノミスト ... マネー大逆流

 またしても新手の金融商品が出てきて、アベノミクスの行く末が80年代後半のバブルを彷彿とさせてきました。新たな金融商品の名は「日本版ISA(Individual Savings Account)」で愛称「NISA」(ニーサ)だそうです。これを巡って証券会社などでは資金をたんまり持っている老人に売り込みの攻勢をかけているとか。
 そんな状況を鑑みてか『週刊ダイヤモンド』は今号の特集で狙われる老後のカネの実態と予防策を特集に設えました。詐欺と詐欺まがいの手口の紹介記事が満載のこの特集は、別の意味で勉強になりますね。ともあれ、切り口とテーマで今週の第1位は『週刊ダイヤモンド』です。
 次にご紹介するのは『週刊東洋経済』です。セブンイレブンの強さを多くの取材から導きだしたこの特集は単純に言って面白い。でも、私がつくづく感じたのは鈴木敏夫さんは全く変わってないなぁ、ということでした。このブレなさ加減は凄い。基本的に10数年前に私が鈴木さんにインタビューしたときと言っていることがほとんど変わっていません。これが今週の第2位。
 そして第3位は『日経ビジネス』です。特集のテーマは人材流出。日本人の若者だけでなく、一度日本企業に就職した有能な外国人の人材も日本を結局のところ見放すという実体を捉え特集にしています。
 前週は第1位だった『週刊エコノミスト』ですが、今週は第4位です。同誌の特集はマネーの逆流。つまり新興国(主に中国)に集まっていた投資マネーが米バーナンキFRB議長の発言を境に米国に還流するという内容で、これによって新興国が危機に陥る危険性があるというものです。

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第1位
■週刊ダイヤモンド■ <<<  こんなにも多い、老人のカネを狙う輩

 1500兆円におよぶ個人金融資産。そのうちの6割以上が60歳以上の高齢者が保有している。金は天下の回りものなんて言葉があるが、動いてくれないとどうしようもない。2013年4月から期間限定で孫への1500万円までの教育費贈与を非課税にする政策など、この6割をなんとか動かそうとするものの1つだ。政府だけではない。日本の「お金持ち」=老人の持つ金融資産を狙い、さまざまな商売や詐欺が横行している。今週の『週刊ダイヤモンド』の特集は「家族で守る!狙われる『老後のカネ』」を特集。資産運用や暮らしに潜む「老後のカネ」にまつわる落とし穴の、最新情報を伝える。
 まず出てくるのは、ローリスク・ハイリターンの儲け話。金融商品から海外やマンション投資。特に慎重になるべきなのは、2014年1月から導入される「NISA」。利用すると年間100万円までの投資について、譲渡益や配当が非課税になる。そんなうたい文句で口座獲得に躍起になっているが、なんと商品内容が確定していない。他にも詐欺や押し売りなど犯罪まがいの行為も横行する。傍目に見ていると、「なぜ引っ掛かる」と思うが、相手もプロ。健康や孤独などの隙間につけ込む。特集では守り方として、家族で共有しやすい環境をつくる、後見人を立てておくなどの指南をする。
 第2特集は「『国家の計』なきエネルギー政策 原発復活」。参院選が近づき各党、正念場といったところ。そして、自民党政権の再稼働が現実味を帯びてくる。しかし、解決していない問題はまだまだ山積している。


第2位
■週刊東洋経済■ <<<  PBを変えたセブンの強さ

 今週の『週刊東洋経済』の特集は「セブンの磁力」。コンビニ業、ひいては小売業において圧倒的な規模と収益性を兼ね備えた企業、セブンイレブン。この企業、なんと言っても他企業を巻き込む力がピカイチだ。特集では、大手メーカーから銀行までを取り込む"磁力"に迫る。
 他企業を巻き込んだ事例として、馴染み深いものの1つにPB「セブンプレミアム」があげられる。2007年から販売を開始し、いまやすっかり定着したPB。そして、今年6月末からはサントリーと組んだプレミアムビール「ザ・ゴールドクラス」を発売。従来のPBがもつ価格訴求型ではなく、価値訴求型のPBをうたう。これは、"安さ"をPBに求める顧客と同数、"美味しさ"を求める顧客もいるという気付きから生まれた。
 このように、セブンイレブンの成長の秘訣は「価値ある商品の創出」にある。鈴木敏文 セブイイレブン・ジャパン会長兼CEOはインタビューで「人間の心理に挑戦」という表現をする。個人的には、セブンは確実にそのエリアの1番店になれる場所と広さを確保して出店してるな...と感じる。オフィスの近所でも自宅の近所でも、一番広くて品揃えもいいので、つい行ってしまう。なぜかその近くには必ず同じような規模のローソンも...。
 第2特集は「悩める韓国」。円安の影響により、成長率が鈍化した韓国。日本を含めた隣国問題を抱える韓国を描く。こういう記事が結構面白い。第3特集は「大衆薬に明日はない!?」。ネット販売解禁で注目されることは多いが、実は大衆薬の危機が訪れていた。


第3位
■日経ビジネス■ <<<  ガラパゴス化する日本の人材

 先週、「エリート教育」のグローバル化への変容を『東洋経済』が伝えた。そうなれば、必然的に起こるのが優秀な人材の国外流出。今週の『日経ビジネス』は「人材逃避(人材フライト)」というタイトルで、優秀な日本人の海外流出と有能な外国人の日本素通りという現実をレポートする。
 考えてみれば、優秀な人材の確保はなにも日本だけの問題ではない。いまや各国が経済発展の切り札となる有能な人的資源を奪い合う時代なのだ。レベルの高い人材確保のための各国の施策を読むと、具体的に何も対応していないかに見える日本の現状がはがゆい。まずは「チリコンバレー」。南米チリの首都サンティアゴのことであり、起業家育成プログラム「スタートアップチリ」が功を奏し、世界中から起業家を引き寄せている。審査に通ると4万ドルの無償資金と1年間の就労ビザが支給される。そして義務は半年間チリで活動し、自らの経験をチリの起業家に伝えることだけだ。カナダ、オーストラリアも柔軟な移民政策で戦略的に海外からの人材を呼び込む。人材不足に悩む本家シリコンバレーでも、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグが政治団体「FWD.us」を立ち上げ、移民制度を改善し人材を流出させないよう訴え始めている。
 日本は社会も人材も、「ガラパゴス化」している。この安全でのほほんとしたガラパゴス、大好きだけれど、気がついたら禿げ山......なんてことにだけはしてはならないと思うのだが。
 米NSAによる個人情報収集活動を暴露したスノーデン氏が最後に勤めていたブース・アレン。影の米情報機関と言われるこの企業について書かれた「世界鳥瞰」も興味深く読んだ。


第4位
■週刊エコノミスト■ <<<  新興国から米国に逆流するカネ

 混迷する経済に対して、一定の距離からアプローチする『週刊エコノミスト』。今週の特集は「マネー大逆流」だ。QE(量的金融緩和政策)の減少および停止にバーナンキ議長が言及し、これにより米市場の株安と債券安を招き、日本株もその影響を受けた事はご承知の通り。
 今回の特集は、そこから先のお話。緩和依存の世界が「出口」へ向かう動きとなり、日本株同様、各国も影響を受けている。米国にマネーが"流入"、元の出所を考えれば"逆流"が起きている。新興国やASEAN、特に中国からの逆流が大きい。また、中国の「シャドー・バンキング」の影響も大きく出ている。同誌6月18日号の「中国・韓国の悲鳴」でも扱ったが、融資規制のある銀行を介さない金融取引を指す言葉だ。これにより、通常では融資が難しい企業に貸し付けをし、不良債権化。まさに中国版サブプライム問題が起こりはじめ、中国経済がどこまで持ちこたえるのか、不安視されている。
 この「出口」。明るい「入り口」へと繋がっているとは限らない。プロの口からも「新しい正常(ニューノーマル)が見えないなかで出口に向かうことに対し、世界の考えは深まっていない。よくわからない」と言わしめている。この流れの時期に量的緩和を積極化した日本はババを引かされた? という見方もあり、それも紹介されている。

(2013年7月9日)