2013年5月29日

今週の第1位は『日経ビジネス』・・・現地徹底取材 アフリカ

日経ビジネス ... 現地徹底取材 アフリカ
週刊エコノミスト ... 使える統計学
週刊ダイヤモンド ... 子どもが伸びる!中高一貫校・高校ランキング
週刊東洋経済 ... まだ間に合う!日本株大作戦

 盛り上がりをみせているわけでありませんが、5年に一度日本で開催されるTICAD(アフリカ開発会議)に合わせて『日経ビジネス』が、アフリカ特集を組みました。もっぱら日本の産業が目を向けているのはアジアであり、同誌は先々週も「メコン川流域圏」の特集を組んだばかりですが、今度は「アフリカ」というわけです。でもこの特集は滅法面白かった。なぜなら、知らないことが山のようにレポートされているからです。これは世界にネットワークを持つNIKKEIの強みなのでしょう。これが今週の第1位です。
 続いて面白い特集を組んだのは『週刊エコノミスト』です。テーマは今流行の「統計学」。他誌でも既に特集していますが、同誌はツイッターのつぶやきから独自の景気動向指数を作ろうと筑波大学の山本幹雄研究室と共同で試みました。こういうチャレンジは面白いですね。
 第3位は「中高一貫校ランキング」を掲載した『週刊ダイヤモンド』です。読んでみると、時代はもうそちらの方に大きく流れているのがよくわかります。でも、該当する子どもを持つ親には当たり前のことなんでしょうけれどね。
 第4位は「日本株購入はまだ間に合う!」と、この数日の大幅下げをもろともせず特集した『週刊東洋経済』です。別に連日下げたからと言ってタイミングが悪いというわけではないんですが、でもちょっと損をした感じはありますね。
nikkei_2013.5.27.jpgeco_2013.6.4.jpgdia_2013.6.1.jpgtoyo_2013.6.1.jpg


第1位
■日経ビジネス■ <<<  アフリカでつけ毛市場を席巻するカネカ

 2週間前の『日経ビジネス』では「メコン」を特集した。そしていつか、「ナイル」なんて特集が組まれるだろうとメルマガで述べたが、そこから2週間で「現地徹底取材 アフリカ」の特集です。人類最後の「10億人フロンティア市場」として胎動するアフリカと、市場を狙う各国各企業を現地取材してレポートしている。ちょうど6月1日から5年に1度のTICAD(アフリカ開発会議)が横浜で開かれることに合わせての特集だろう。
 アフリカというと、直近では日揮社員が犠牲となったアルジェリアの事件があり、アフリカ進出のリスクを際立たせた。しかしながら、10億人という確かな市場がそこには存在する。論より証拠ではないが、アフリカの総人口の6分の1に相当するナイジェリアは2014年にもGDPでアフリカ最大になる。そして数年で、2012年のインド経済の規模を追い抜くという。B to Cで考えれば、メコンではなくアフリカこそが一番の市場なのだ。だからこそ、企業がこぞって参入する。化学品メーカーのカネカは、高品質のつけ毛を売り込む。アフリカ女性にとって一般的なつけ毛に目を付け参入したのだ。驚くべきことに、アフリカ進出は1983年だという。他にもホンダやパイロットなどグローバル企業はすでに動き、成功している。ただし、日本ばかりではない。「新植民地主義」と批判される中国や旧宗主国のフランスなどの投資額には、日本はまだまだ及ばない。そこで特集では「単独では限界がある」とし、連携して攻略することを説く。


第2位
■ 週刊エコノミスト■ <<< ツイッターのつぶやきから景気動向指数を作る!?

「今後10年間で最もセクシーな仕事は統計家である」―― 米グーグル・チーフエコノミストであるハル・ヴァリアンの言葉だ。2009年の発言であるため、あと6年なのかもしれないが、トレンドはまだ続く。そんな統計家という仕事が、ある言葉とともに日本でもやっと馴染みがでてきた。
「ビッグデータ」である。春以降、3/30号『週刊ダイヤモンド』で「最強の武器 統計学」、4/20号『週刊東洋経済』第2特集で「使える!ビッグデータ」と、各誌で「統計学」が矢継ぎ早に取り扱われている。
 特集は基礎的な統計学を説明しつつ、データからアベノミクスなどの問題を予測する。大切なことはどのようにデータを抽出するか。「筑波大、NNTデータと『つぶやき』解析」という記事で、実際に編集部がビッグデータであるTwitterを解析して景気指数づくりに挑戦し、その辺りの検証を試みている。またCPI(消費者物価指数)の癖を見抜くことも1つの統計学である。このように、統計学は日常的なところにもリンクしている学問なのだ。しかし、日本では専門学部や教育機関がない。各々の場面で適宜、教えるといった形をとっている。これは、他国と比べても遅れているおり、例えばシンガポール国立大学ではすでに単独の学部ができている。世界が刻一刻と変化を遂げる中で、学部内カリキュラムを変化させるだけでは対応しきれない。こういったところにも日本の遅れが浮き彫りとなっていた。


第3位
■週刊ダイヤモンド■ <<<  時代は中高一貫校へ

 先週、自社を含めたメディアへ警鐘を鳴らした『週刊ダイヤモンド』。今週は「子どもが伸びる!中高一貫校・高校ランキング」と、前号とは大幅に異なった特集を組んだ。この時期の恒例となった企画である。
「卒業生1人当たりの国公立大学合格力」を軸に高校を評価する。国公立は1人1校1学部しか合格できないため、大学合格者数の単純な比較ではわからない高校の真の実力を分析したランキングだという。今年も中高一貫校が上位を独占。これらの上位校は独自の教育方針や校風も強みとなり、さらに人気を博す。そして、公立高校でもそういったものをつくる風潮が起こり始め、それが結果に繋がってきている。また、特集では塾についても扱う。良い大学に入るには良い中高一貫校へ、良い中高一貫校に入るには良い塾へという流れだ。
 子どもがその時期にある読者層にとっては非常に参考になる特集だろう。人気企画なのも頷ける。しかしながら「教育とは?」なんて大層ではあるが、そんな疑問も浮かんでしまったのも事実。子供へより良い教育を望むのは、親心。数値は真実かもしれないが、多様な視点の1つとして受け止めるのが、ちょうど良いのかもしれない。


第4位
■週刊東洋経済■ <<< まだ間に合う日本株購入!?

 先週末、株価が急激に落ち込んだ。1万6000円目前から急落しつづけ、週明けの27日も下がり1万4142円にまでなった。「5月売りのジンクス」を取りあげつつ、報道は「アベノミクス批判」か「一時的な調整」のどちらかに振れ、奇しくも日頃のスタンスが見え隠れした。
 そんな中、『週刊東洋経済』の特集は「まだ間に合う!日本株大作戦」。つまり、「一時的な調整」派の特集だ。特集では、今までの株価の流れが異常であり、良い調整として捉える。まだまだバブルにはなっておらず、これからも上昇するとする。だから"まだ間に合う"なのだ。記事は今後のスケジュールと株の予測や、注目指標からみた銘柄ランキングなど。『週刊東洋経済』色として『四季報』記者による「気になるあの企業の13年度業績」といった記事もある。
 同誌でちょっと気になったのは、第2特集の「動き出した富裕層」。最近このての特集は各誌が載せているが、今、富裕層は何に投資をし、何を消費するかについては興味があるのだろう。日本では、お金持ちが目立つと叩かれやすいため、積極的に情報が入ってこないので、勢い新鮮な情報となる。不動産や宇宙旅行など"ザ・富裕層"なテーマもあるが、彼らが重点をおくのが「教育」。次世代の育成というある種の投資でもあり、年間学費1000万円でも惜しいなんて思わない。それは、単なる勉強の場ではなく、将来の人脈を作る機会としての考えが強いからだ。富裕層のお知恵拝借...といった切り口にせず、あくまでも「のぞき見」なのがいい。

(2013年5月29日)

2013年5月22日

今週の第1位は『ダイヤモンド』・・・経済ニュースを疑え!報道現場の裏側を明かす

週刊ダイヤモンド ... 経済ニュースを疑え!報道現場の裏側を明かす
日経ビジネス ... パナソニック シャープを辞めた人たち
週刊エコノミスト ... 外国人投資家の正体
週刊東洋経済 ... 沸騰!エアライン&ホテル

 今週は面白い企画の号が集結しました。中でも秀逸だったのは、ネット上でも大いに話題になった『週刊ダイヤモンド』です。何せ、自分たちの特集を自己批判までしたのですから。ま、何はともあれ、これが今週の第1位です。天に唾するような企画ではありますが、その痛烈な自己批判も含めて話題の1冊となりました。それにしても新聞・テレビといった大マスコミへの不信は近年強まることはあっても弱まることはありませんね。失墜した信用は回復可能でしょうか。
第2位は『日経ビジネス』の「パナソニック シャープを辞めた人たち」です。実際に辞めて転職した人、起業した人などを取材しました。本当のテーマは雇用の流動化なのですが、その最新の動向も含めてなかなか読ませる企画ではありました。
 そして第3位は『週刊エコノミスト』の外国人投資家にスポットを当てた特集です。東日本大震災直後、「東京勤務はいやだ」という社員に「東京か解雇か」を迫った米国の投資会社もあったと聞きます。そのころからすでに次なる儲けどころは日本と道筋ができていたのかもしれません。
ホテルとエアラインの企業間競争を描いている『週刊東洋経済』も面白かったのですが、『週刊エコノミスト』に及ばず、第4位です。

dia_2013.5.22.jpgnikkei_2013.5.22.jpgeco_2013.5.22.jpgtoyo_2013.5.22.jpg


第1位
■週刊ダイヤモンド■ <<<  SNSで話題の今週号は"自己批判"

 今週の『週刊ダイヤモンド』を取り巻く状況は違っていた。というのも、読む前にネット上で話題になっていたからだ。ちょっとしたトレンドと言っても差し支えないだろう。
 なぜか? その理由は第1特集の「経済ニュースを疑え!報道現場の裏側を明かす」に尽きる。自虐的ともとれ、現に自分自身(『週刊ダイヤモンド』)をも批判するこの特集は、SNS上で拡散されていった。アーリーアダプターから始まり、大学生やフリーランスで働く人たちがこぞって発信したのだ。「Naverまとめ」でも記事が作られview数を稼ぎ、twitterでは『週刊ダイヤモンド』公式アカウントがRTまでしている。
 ここまで盛り上がっている理由は言わずもがな内容にある。スクープにおけるリークは予定調和、誤報が発生する環境、ニュース特集1本◯◯◯万円など事細かに業界を書き連ねる。また、小沢一郎や堀江貴文のインタビューも載っている。
 しかし、メインはここではない。ネット上で盛り上がりを見せた理由は、『週刊ダイヤモンド』の自己批判記事である。「週刊ダイヤが株特集を組むとなぜ株価はピークを打つのか」では、株を雑誌特集で扱う問題を抱えながら、見て見ぬ振りをしてきたことを反省している。また、他の記事では特集の使い回しも認めた。
 過去にこのような特集はあっただろうか。間違いなく、これからメディアを語る場において、議論にのぼる1冊となるだろう。第2特集は「子どもの数を超えた!ペット大国ニッポン」。


第2位
■日経ビジネス■ <<<  転職したい会社と就職したい会社の差

  5月14日、シャープは社長交代を発表し、6月に就任する高橋興三次期社長から中期経営計画が語られた。しかし、その道のりはいまだ険しい。外の人間がそう思っているくらいだから、内部では当然それ以上の不安が募っているだろう。
 今週の『日経ビジネス』の特集は「パナソニック シャープを辞めた人たち」。副題に<雇用流動化の理想と現実>とあり、特集の冒頭でパナソニック・シャープを早期退職した人たちの今を追っている。早期退職者と一括りにしているが、その道は様々。転職する人もいれば起業する人も、59歳から30代の若手まで。年収もさまざま。しかし共通してあるのは、やりがいのある仕事をしたいこと。そして、その1歩を踏み出しやすいのは、社外でも通用するスキルを持っていることだ。特集は辞めた人たちを取りあげるのではなく副題の雇用流動化の現実にスポットを当てており、続く記事では「解雇先行の危険性」と題し、「労」を代表し古賀伸明日本労働組合総連合会会長が、「使」を代表し新浪史ローソン社長兼CEOが解雇について語る。そして、流動化するために目指すべき企業の在り方を提起している。
 いずれにしてもここ数年特に進む雇用の流動化という現実にビジネスマン全員が目を向けなくてはならないということなのだろう。「次のキャリアを考える時代」になったのだ。最後に紹介されている「働く1000人が選んだ転職したい企業ランキング」には、隣り合わせで学生の就職希望企業ランキングを並べている。そのギャップが面白い。


第3位
■ 週刊エコノミスト■ <<< いつも外国人が相場を動かす

「外国人投資家の正体」、これが今週号の『週刊エコノミスト』の特集だ。久々にいいタイトルの特集は、その名の通り外国人投資家に迫るものだ。
 円や日本株を彼らはどの様に見ているのか? インタビューから読み解く。そして、ただのインタビュー記事の羅列ではなく過去からも正体を探り出す。「栄枯盛衰のヘッジファンド 歴史と運用手法を知る」では、ヘッジファンドの起源から今日までの変化をまとめた。公開企業の株式などの伝統的投資から、ベンチャーキャピタルや美術品などのオルタナティブ(代替)投資へ主流が移り、もはや代替ではなくなったという流れだ。またバフェットやソロスの手法、チャイナマネーについても言及している。
 面白い特集ではあるが、「外国人投資家の正体」と言っても、いつも相場を動かすのは外国人投資家であることを考えれば、至極まっとうな特集という気がしないでもない。
 第2特集は「アップルの凋落」。苦戦するアップルについて書かれており、「『ブルーオーシャン』には強いが、『レッドオーシャン』になるといつも弱い」など消費者としても頷ける分析があった。また、松井博元・米アップルシニアマネージャーのインタビュー「アップルは内紛と人材硬直化で滅びうる」では、変わりゆくアップルが俯瞰して語られる。


第4位
■週刊東洋経済■ <<<  エアラインの戦いが熱い!らしい

『週刊東洋経済』の特集は「沸騰!エアライン&ホテル」。この業界がそんなに沸騰しているのだろうか? という気がしないでもないが、JALが再生してANAとの競争が激化してきているのは間違いないし、LCCが就航して1年が経つしで、ちょうどいい頃合いなのだろう。特集のメインはエアラインとホテルの業界分析で消費者(読者)が好むランキングは無し。エアライン編では「JALの猛威、ANAの焦燥」、「LCC 1年後の通信簿」、「ボーイングvs.エアバス 主力機はどちらがすごい?」などの面白そうな記事が並ぶ。どれも興味深いが、なかでも稲盛和夫日本航空名誉会長のインタビューはちょっと心にしみる。JAL再建話を通して、経営哲学が語られているのだ。
 ホテル編では、1つは東京ディズニーリゾートや東京駅などの観光地から見たホテル事情。もう1つは、星野リゾートやアパホテルなど、今勢いのある新興企業の事業展開に迫る。
 第2特集は「TPP 日本のシナリオ」。TPP交渉の1例として関税があげられるが、TPPの先にある新秩序を特集では問うている。また、農業や医療などのテーマごとの今後も予測するのだが、「知的財産」がしっかり入っていたことには感心した。

(2013年5月23日)

2013年5月15日

【来た!見た!書いた!】「よそ者が、地元の人よりも「地域の魅力」に気づく理由」

映画になった高知県の県庁

 高知県庁に実在する「おもてなし課」を題材にした映画「県庁おもてなし課」が5月11日、公開された。原作は現在公開中の映画「図書館戦争」と同じく有川浩の小説だ。高知県庁は、観光促進を目的に「おもてなし課」という新しい部署をつくる。そこに配属された、やる気はあるが、いまひとつ要領が悪い掛水史貴(錦戸亮)が、アルバイト女性の明神多紀(堀北真希)や高知県出身の人気作家の吉門喬介(高良健吾)、上司や先輩職員らとともに、高知県の地域おこしや魅力の発信に奮闘する姿を描いている。
 映画はまだみていないが、2年前に出版された原作はとても面白かった。

 この小説の中に、県庁の観光アドバイザーとなった「伝説の元県庁職員」の清遠和政(映画では船越英一郎が演ずる)が、おもてなし課の掛水と多紀を呼び出し、高知市の日曜市を連れて回る場面がある。映画でも日曜市は、掛水と多紀が距離を縮めていく重要なシーンになっているようだ。
「人に揉まれて疲れるだけやないですか」と面倒がる掛水に、吉門は「揉まれるばぁ人が毎週集まる、ということよ。ちょっと視点をリセットしてみい」と話し、南アジアに来た気分で日曜市を眺めることを勧める。市に並ぶ店を冷やかしたり、ツガニ汁を食べたりするうちに、2人は高知の日曜市が「郷土色の強い立派な観光資源」だということに気づく。

300年以上の歴史を持つ日曜市の魅力
 このシーンに代表されるように、原作では清遠や吉門に連れられ、掛水や明神が地元の出身であるが故に気づいていなかった「高知ならではの魅力」に段々と気づいていくことが、物語を推し進める力になっている。地元の人たちが、どっぷりとその地域に浸かっているからこそ気づかない魅力というのは、常にあるものだ。
 掛水や多紀が訪れた高知の日曜市は300年以上の歴史を持つ。毎週日曜日、高知城の追手門から伸びる追手筋という通り1.3キロの道の片側を使い、対面で500から600もの店が並ぶ。店先に並ぶ野菜や果物も、外の人から見ると「見慣れないもの」が多い。私がブンタンのさわやかな味を初めて知ったのは初めて市を訪れたときだったし、やはり市で食べさせてもらった徳谷トマトは関東のトマトとは別のもののように思えたものだ。
 高知を扱った観光ガイドが必ず大きなスペースを使って紹介する代表的な観光地だが、地元の人たちは意外と「日曜市のどこが面白いのか」などと思っている。高知市民に日曜市のことを話すと「昔は行ったけれど、今はわざわざ行かんなあ」とか「意外と、スーパーより値段が高かったりするがですよ」といった答が返ってくるのだ。


誰も行かないような辺鄙な場所が観光地になった
「地元の人が気づかなかった観光資源」という意味では、2011年7月に高知県四万十町にオープンしたフィギュア展示館「海洋堂ホビー館四万十」はもっとすごいかもしれない。
 当初は年間3万人程度の来館を目標にしていたが、4月には累計来館者が15万人を超えた。しかしこの施設ができるまでは、だれ1人としてこの場所が観光地になり得るとは考えもしなかった場所だからだ。
 四万十町は清流・四万十川の中流域として、その知名度は全国的にもそれなりにあるところだ。ただ四万十川はそれこそ「清流」が売り物で、観光客がとりあえずの目的地とするような施設には乏しい。町内には宿泊施設すらほとんどないのだ。
 3月、この海洋堂ホビー館四万十を初めて訪れて、驚いた。比較的高知をよく知っている私ですら、施設ができる前には行こうとも考えなかった場所だからだ。
 最寄り駅は高知県の窪川と愛媛県の宇和島とを結ぶJR予土線の打井川駅。列車は1日片道数本しか通らない無人駅だ。施設は、ここからさらに細い山道を5キロほど車で走った所にある。道は高知特有の車1台分の幅しかないくねくね道で、ときどきすれ違うために道幅が広くなっている。「前から車が来たらどうするか」と心細くなるような道だ。そんな道を20~30分ほど走って、ようやくホビー館にたどり着いた。

過疎地の廃校をいきなりミュージアムに
 ホビー館は、精巧なフィギュアの製造で知られる大阪府門真市の海洋堂が、四万十町打井川の廃校になった小学校を利用して開業した。体育館などを改造した建物には、アニメや特撮のキャラクター、菓子のおまけ「食玩」など1万5000点のフィギュアが並ぶ。
 秋葉原にフィギュアのミュージアムがあっても、驚きはない。だが、ここは四万十川流域の山の中。それこそ豊かな自然以外には何もないところだ。高知の山奥の廃校跡にフィギュアのミュージアムがあるという驚きで、県内外から老若男女が集まる名所に育った。
 海洋堂の創業者でホビー館の館長を務める宮脇修氏は高知県黒潮町の出身。修氏は亡くなった父親の出身地である打井川を、四万十町の関係者に案内してもらったときに廃校になった小学校に出会い、「ここをホビー館にするんだ」と突然ひらめいたのだという。当初は周囲の誰もが反対したが、実際に開館して人が集まり始めると、そうした声は消えていった。
 日曜市の再発見にしろ、四万十町の山奥にフィギュアのミュージアムをつくろうという発想にしろ、地域の魅力に気づくのは地元にどっぷり浸かった人ではなく、よそ者だったり、長くよそで暮らして「外の視点」を持ったりしている人なのだ。

(2013年5月15日)

今週の第1位は『ダイヤモンド』・・・パナソニック 最後の賭け

週刊ダイヤモンド ... パナソニック 最後の賭け
週刊東洋経済 ... 会社の数字
日経ビジネス ... メコン 2020年、新「世界の工場」へ
週刊エコノミスト ... 金利 株 為替

 『週刊ダイヤモンド』が創刊100年を迎えました。創刊が大正2年(1913)です。もっとも、ライバルの『週刊東洋経済』は、明治28年創刊で、既に118年を迎えており、経済誌の歴史の古さを改めて感じます。その『週刊ダイヤモンド』ですが、今週は充実した内容になっています。まずは第1特集で「パナソニック 最後の賭け」と過去最大の危機に瀕する、この大企業を徹底した取材で論じます。これが今週の第1位です。
 第2位は最近の数字ブームにあやかってか「会社の数字」を特集に持ってきた『週刊東洋経済』です。地味な特集ですが、今や年功序列社会は遠の昔、経営者はもちろんビジネスマンも数字に強いかどうかで断然変わってくるのが仕事の中身です。そういう意味ではいいかな、と思いました。
 第3位の『日経ビジネス』は特集でメコン流域圏の経済の可能性に注目しました。メコン川流域には5つの国があり、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマー、タイとなっています。これらの国が「世界の工場」として発展していく、という特集です。そして、第4位は特集に株や金利、為替を持ってきて今後の動向を予測する『週刊エコノミスト』です。

dia_2013.5.15.jpgtoyo_2013.5.15.jpgnikkei_2013.5.15.jpgeco_2013.5.15.jpg

第1位
■週刊ダイヤモンド■ <<< カドマノミクスから脱却できるか?

 先日、大阪の方に用事があった。今や見る影もなくなってしまったが、大阪の門真市といえばパナソニックの本社がある城下町で、いかにも質実剛健なメーカーの本社というイメージだった。
 一方、先月26日にパナソニックセンター大阪が大阪駅にオープンした。「ナレッジキャピタル(知的創造拠点)」をコンセプトにした複合施設で、立地の良さもあり大変にぎわっていた。そんな変わろうとするパナソニックを『週刊ダイヤモンド』は「総力検証!パナソニック 最後の賭け」と特集にもってきた。
 特集は津賀一宏社長へのインタビューから始まる。「テレビを捨てた男」とセンセーショナルなタイトルをつけ、B to CからB to Bシフトについて語る。その後は、内部資料から"赤字関連工場"マップ、航空機ビジネスなど多角的に"最後の賭け"の行く末を想像しながら読んでいく。ここで注目すべきは、冒頭に書いた門真ムラの論理で、同誌はそれを"カドマノミクス"と揶揄しているが、読むだにその根は深いと感じる。
 同誌の本領を発揮したページは「本誌100年間の記事で検証 パナソニックの経営史」だろう。5月10日をもって100周年を迎えた『週刊ダイヤモンド』。その時々のパナソニックの記事を紹介しながら、日本の家電史を検証している。  
 この他、第2特集に「歪む株式市場」。分析や知識などおかまいなしに上がり続ける株の特集で、第3特集「経営者115人が選んだ『ベスト・ビジネス書』」と併せて、100周年記念特別企画の号らしく、今週号、非常に充実している。


第2位
■週刊東洋経済■ <<<  数字で威力を発揮するのは割り算

「数字に強くなりたい」と考える「会社の数字コンプレックス」を持つ方は多いのだろう。年に1回は『週刊東洋経済』か『週刊ダイヤモンド』で特集が組まれるテーマだ。新社会人需要もあるし。今回の「会計から投資まで知ればカンタン! 会社の数字」は、講義形式の構成だ。基礎編は1時間目から4時間目まで、小宮一慶氏、木村俊治氏ら、会計・経営のプロによる講義とケーススタディ。応用編は「特別講義」。100億円の事業を預かる事業部長になるまで「正直、会計や数字の知識はゼロ」と率直に語るバンダイ上野和典社長は、いまや「数字に強い経営者」として名を馳せる。公認会計士の望月氏、コンサルタントの久保氏は「『業界地図』(東洋経済新報社)から入れ」とか、「威力を発揮するのは『割り算』」とか、非常に取っ付きやすいポイントを挙げてやる気を引き出してくれている。
「歪んだ数字編」では、オリンパスや大王製紙などの不正監査問題を扱う。ラストは「株式投資編」。「銘柄選別に数字力を生かせ!」ということで、業界別に指標となる数字を紹介。実践的だ。
 第2特集は「金利消失 金融大波乱」。今週、黒田異次元緩和後の経済状況を『週刊ダイヤモンド』は株式市場の歪みで切り、『週刊東洋経済』は金利の歪みで切る。金融緩和なのになぜか上昇する国債利回りや住宅ローン金利。異次元緩和でもたらされつつある波乱を読み解く特集だ。


第3位
■日経ビジネス■ <<<  メコン川流域5ヵ国の可能性

『日経ビジネス』も冒頭の「時事深層」でアベノミクスの現状を製造業・国内機関投資家の動きで検証する。円安でも大手の国内生産拠点への投資は増えず、設備投資の大半は海外だ。活況の株式市場だが、国内機関投資家は「絶好の売り場」と捉え、債券市場へとシフトしている。経済界側からの政府への苦言?とも捉えられるレポートだった。
 さて、今週の『日経ビジネス』第1特集は、「メコン 2020年、新『世界の工場』へ」だ。ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムのメコン川流域に位置する5ヵ国は、その潜在能力を開花させつつある。2015年末に域内関税の撤廃、2020年までに地域を縦横断する9本の越境道路網の整備も進む。人件費の上昇や反日感情、成長の鈍化で見えてきたチャイナリスクの表面化も、企業のメコン進出をあと押ししているのはご承知のとおり。域内人口もすでに6億人を突破し、今後の経済発展によって市場としての魅力は計り知れない。
 しかし、なんでいま「メコン」特集なんだろう、と思ってしまうタイミングではある。中韓のASEAN投資が急ピッチで進むなかでの日本経済界の焦りなのだろうかとうがった見方をしてしまう。しかし、メコン川流域が日本の企業における進出ホットスポットとなることは間違いないだろう。何年後かには「ナイル 新『世界の工場』へ」というタイトルが見られるのかな。
 今週から「カルロス・ゴーンの経済教室」の連載が始まった。「リーダーシップは4度変わる」と題して、リーダー論が語られる。


第4位
■週刊エコノミスト■ <<< キャッシュ イズ ナット キング

 今週の『週刊エコノミスト』の特集は「金利 株 為替」。専門家の見方を並べた、この雑誌にとっての王道的テーマ・作りの特集といったところだ。今週は各誌「異次元緩和」以降の金融市場がらみのレポートが多い。ゴールデンウィーク後、円相場も100円をあっさり超え、誰が見ても「Cash is King(現金が最強)」の時代が終わり、リスクテイクの時代に入った日本、いや世界の金融市場。『週刊エコノミスト』も資産運用の手段をインフレ対応に変換することを促す。ここ数年、株式市場は「5月に売りにげろ」と言われてきたが、今年は「5月に売り逃げろ」ではないってことだ。みんなが気にしているのは「このバブルはいつ弾けるのか?」だろう。このお祭りからいつ逃げ切って「今度は損をしないぞ!」と、雑誌も個人もピリピリしている感じだ。

(2013年5月15日)

2013年5月 7日

今週の第1位は『日経ビジネス』・・・社長の発信力ランキング2013

日経ビジネス ... 社長の発信力ランキング2013
週刊東洋経済 ... 不動産2極化時代
週刊ダイヤモンド ..."仕事消失時代"に生き残るビジネスマン
週刊エコノミスト ... 不動産と相続

 ヘーェ、と思ったのは『日経ビジネス』が今号を合併号にしていることでした。もう連休は終わったというのに。ま、それはともかく、合併号であるからかどうかは分かりませんが、その『日経ビジネス』がいちばん面白かったですね。その特集とは社長の発信力を点数で評価したもの。総合ランキングは実は昨年の調査と変わらず、同じ顔ぶれです。それより面白かったのは、ツイッターにおける発信力ランキングを掲載していること。1位の孫さんは当然と言えば当然ですが、2位の任天堂岩田さん、3位の日本マクドナルドHD原田さんあたりはちょっと意外な感じもしましたが、読んでみればなるほどと思った次第です。これが今週の第1位。
 そして第2位は不動産特集を組んだ『週刊東洋経済』です。勝ち組物件の見分け方と表紙にも書いていますが、上がる物件と下がる物件をきちんと説明し、しかも場所ごとにどれくらい上がる(下がる)かを一覧表にしているところに価値を見ました。
 第3位の『週刊ダイヤモンド』はビジネスマンの生き残り策を特集しました。いろいろな仕事がなくなり、あるいは主婦や機械が代替することで、仕事がなくなっているのです。そのときあなたはどうする? というわけです。
『週刊エコノミスト』は『週刊東洋経済』と同じ不動産特集で、しかも論調は重なる点が多く見られましたが、ボリューム的にやや足りない感じがしたのが難点でした。

nikkei_2013.5.06.jpgtoyo_2013.5.11.jpgdiamond_2013.5.11.jpgeco_2013.5.14.jpg


第1位
■日経ビジネス■ <<<  情報を発信する社長の凄さ

『日経ビジネス』の特集は、1年ぶりとなる「社長の発信力ランキング2013」。独自の手法で企業トップの発信力を数値化した特集だ。登場する社長をコミックタッチのイラストレーションで紹介するなど、工夫も凝らしている。4月1日号の「あなたを救う病院ランキング」に続き、日経ビジネス独自の情報がいい。その気になるランキングだが、結論から言えばトップ5は順位の変動はあるものの、昨年と顔ぶれは変わらなかった。上から孫正義、白川方明、柳井正、豊田章男、三木谷浩史と並ぶ。企業名をつけなくてもイメージできる人は多いだろう。
 それより面白いのは、社長という枠にとどまらない「社会性」が発信力に繋がるとして、独自の方法で発信力を高める社長も紹介していることだ。
 その嚆矢が「ニンテンドーダイレクト」で"直接"のコミュニケーションを大切にする任天堂の岩田聡社長。ご本人が「心はゲーマー」と語るように、ゲーマー視点での交流を図るその様を紹介している。また2012年に東証マザーズ上場を果たしたライフネット生命の出口治明社長も、お笑い芸人スギちゃんの恰好をするなどして、仕事を選ばないスタイルで認知度を拡大したとして取りあげている。
 このようにメディアを上手く活用する一方で、逆効果となった企業、メディアに出ない企業も存在する。それぞれを「事故が事件になる瞬間」、「『発信ゼロ』社長の哲学」と題して記事にした。「事故が事件になる瞬間」では、三井化学と日本触媒の爆発事故における対応を比べ、求められる対応を分析。また、日揮のアルジェリア人質拘束事件の際の同社の真摯な対応も写真を使った解説をしながら取りあげた。
「『発信ゼロ』社長の哲学」では、メディアに出ない企業とその理由を紹介しているが、なるほどいろいろな哲学があるものだ。


第2位
■週刊東洋経済■ <<< バブルでも下がる不動産もある

 昨今のアベノミクスがらみで不動産特集が増えている。不動産バブル、お買い得マンションなどがそれだが、今週の『週刊東洋経済』の不動産特集はちょっと、アプローチを変え、特集のタイトルが示すように「不動産2極化時代」にスポットを当てている。高騰する陰には下落するマンションもある。不動産トレンドを探ろうじゃないか、というわけである。
 特集はマンション編とオフィスビル編に分けられているが、2極化はどちらにも起きている。例えば、マンションで顕著なのは、都心への逆流。1980年のバブル景気では、一戸建てマイホームが理想で都心から郊外への勢いが強かったが、しかし、今回のバブルは真逆となった。ベッドタウンの価値が下がり、品川や麻布十番は上がっている。郊外は若年人口が減っているから、さもありなんなのですがね。詳しくは「マンション価格 総まくり500駅」というデータで確認してください。資産価値の比重も、エリアそのものが60%、駅までの距離30%、物件全体の概要5%、各住戸のスペック5%といった内訳で評価される時代だ。しかし、それにしても勝ち組物件を探すのは大変だというのが正直な感想です。
 第2特集は「爆走ヤフーの突破力」。2012年3月に新体制を発表したヤフー。「爆速」をスローガン、役員平均年齢44歳へと数々の刷新を図った。優秀な人材とリソースは集まっていることは言うまでもないだろう。ただ、トレンドとして2番手に甘んじている感も否めない。はたして、ヤフーは「爆速」できるのか。


第3位
■週刊ダイヤモンド■ <<<  仕事が消えてしまった後のミドル

「キャリアプランを考えた上での仕事選び」。終身雇用や年功序列といった従来の労働スタイルが崩壊したせいだろう、就活中の学生と話をすると、この種の言葉が飛び交っている。しかし、仕事を始めるスタート時点で覚悟ができているなら、まだマシだ。
『週刊ダイヤモンド』の特集「"仕事消失時代"に生き残るビジネスマン」は、ミドル世代の受難の状況にスポットを当てている。頑張って働いてきたけれども、変化の波から逃げ切れない。それがミドル世代である。そんな彼らの仕事が消える理由は5つ。
「日本的雇用慣行のひずみ」、「スキルの陳腐化」、「産業構造の変化」、「IT・ロボットの進化」、「グローバル化の加速」。どれもこれもかなり前から指摘されてはきたが、企業の一員としては考えても、自分のこととしては考えてこなかったのがミドル世代というわけである。でも、定年よりも前に、大きな変化が来てしまったのだ。
 特集では「40歳から始めよう キャリアチェンジの心得」を指南する。自分にとっての絶対に譲れない条件とは何か。市場でマネタイズする能力はあるか。培った能力を見誤らないことがキャリアチェンジでは大切となる。自分自身のキャリアシートを作れるように、某社の例を紹介もしている。
 第2特集は「全国で料金値上げ必至! 上下水道が抱える時限爆弾」。料金収益の低下、施設の老朽化など先送りにしてきた問題が、ここでも破裂寸前のところまできている。値上げ危険度ランキングと共に、自治体の動きを伝える。


第4位
■週刊エコノミスト■ <<<  不動産は未体験ゾーンへ

 今週の『週刊エコノミスト』は『週刊東洋経済』と特集が被ってしまった。その特集タイトルは「不動産と相続」。つまり不動産市場の先行きをきちんと読んで、相続にも活かそうという特集である。不動産編に関しては内容、見解ともに『週刊東洋経済』と同じ視点が多々ある。「REITには慎重になるべき」や、「マンションの評価は二分される」など。
 しかし、違うのは『週刊東洋経済』が「ライフスタイル別マンション戦略」など具体例と得意の視覚的データでアプローチしているのに対して『週刊エコノミスト』は、ビッグデータを使った分析や世界不動産マネーの動きなどマクロな視点でひも解いている点。相続編も併せて特集しているのも同誌らしい。8つの「知って得する相続ノウハウ」を中心に据えた、使える節税は一読の価値ありか。手法はタワーマンションから資産移転まで様々。また、一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」による、空き家の活用の記事は面白かった。『週刊東洋経済』の特集と併せて読むのも一興だろう。


(2013年5月7日)