2013年4月16日

今週の週刊経済誌の読みどころ_2013.4.16

今週の第1位は『日経ビジネス』

日経ビジネス ... それをやったら「ブラック企業」
週刊東洋経済 ... クルマは日本を救えるのか
週刊ダイヤモンド ... 今、買うならこれだ! 得マンション
週刊エコノミスト ... 円安株高

 今週目についたのは、『日経ビジネス』の特集でした。黒い表紙に「笑うセェルスマン」のイラストがドーンと描かれて、タイトルが「それをやったらブラック企業」です。インパクトあるなぁ。中身はともかくこれは表紙の勝ちでしょう。でも中身も悪くはなかったですね。単にブラック企業の要点をあげるだけでなく、今どきの新入社員はどう鍛えればいいかを説明しています。弊社に来ている大学生のアルバイト君の感想は「ゆとり世代は嫌われてるのかなぁ」でした。同誌にはブラックだとも言われるファーストリテイリングの柳井会長兼社長のインタビューが掲載されていて、それに共感を持っていたようです。これが今週の第1位です。
 つぎに紹介するのは『週刊東洋経済』です。特集はクルマです。クルマの世界は円安に1円振れるだけで、利益が大きく異なってきます。その自動車産業が今後どんな手を打ってくるのか、という内容です。これが第2位。
 そして第3位は『週刊ダイヤモンド』です。時々特集に取りあげるお買い得マンション特集ですね。これもアベノミクスによる効果でしょう。恒例のランキングが山ほどあり、一読しておく価値はありそうです。
 そして最後が『週刊エコノミスト』の特集「円安株高」です。黒田新日銀総裁の「異次元緩和」がどんな相場を引き起こすのかレポートしています。

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第1位
■日経ビジネス■ <<<  ブラック企業にならないために

 今週の『日経ビジネス』の特集は「それをやったら『ブラック企業』」。ついに経済誌でブラック企業が特集されるほど、学生の"ブラックアレルギー"が高まっているようだ。「ネットの悪評は企業の想像以上に人材確保に打撃を与えている」(内定塾講師)。まさに「情報パンデミック」。ネットでブラック認定されてから入社希望者が激減して、単独で会社説明会ができなくなった大手旅行代理店もあるというから深刻だ。「ブラック企業大賞」なんていうのも毎年発表され、就活生は注目している。「『ブラック企業』との評判を蔓延させない一番の方法は、そもそもブラック企業にならないこと、と言うしかない」との編集部結論から、「『悪い噂』の元を断つ」ノウハウを掲載している。副題「今どきの若手の鍛え方」とあるように、「ゆとり世代」をどう一人前の会社員に育てるか? つき合うか? が隠れメインテーマであるようだ。
 最近"ブラック企業"と呼ばれつつあるファーストリテイリング柳井正会長兼社長がインタビューに答えている。「『ブラック企業』という言葉は、旧来型の労働環境を守りたい人が作った言葉だと思っています」という柳井氏。しかし、社員と経営側の意識のギャップを埋める施策は着々と打って対策している。私の知人経営者は、「『ブラック企業』認定されるのは考えものだけど、『ブラック社員』も多過ぎますよ」とのこと。匿名でネットにいろいろ書き込む前に、対応策を練って行動できる人ばかりだといいんですけどね。


第2位
■週刊東洋経済■ <<< トヨタは 1円円安で350億円の増益

『週刊東洋経済』も日銀の「異次元緩和」を冒頭6ページでレポート。タイトルは「官製バブル襲来! 日銀超緩和の副作用」だ。経済界に広がる楽観論と悲観論。わが『CEO社長情報』最新号(4月末発行)では、伊藤元重・東大大学院教授が「マインド変化の実現が、アベノミクス成功の最大の鍵」と仰ってます。
 さて、『週刊ダイヤモンド』がマンション、そして『週刊東洋経済』がクルマを特集。なんだか景気のいい国にいるみたいだが、トヨタの場合、円安に触れるのは切実な意味をもち、対ドルで1円円安に振れると350億円の営業増益となるから、まあ仕方がない。
さて、このような状況で『週刊東洋経済』は「クルマは日本を救えるのか」と題して、日本自動車産業の底力を語った。
 トヨタ・ホンダ・富士重工業(スバル)と代表するメーカーを取り上げ、各社の戦略をひもとく。トヨタは、この4月から社内を4つのビジネスユニットに分ける組織改革を。ホンダは、国内での生産効率化と海外拠点での自立化。富士重工業は、「絞る経営」でオンリーワンを目指す。その3社ともに共通することは、海外市場を獲得すること。自動車調査会社IHSは2020年には世界での新車販売が1億750万台と予想している。そして、その内訳では日本を含めた先進国は縮小か横ばいが予想され、これからの主戦場は新興国であることを示す。円安だけに頼らない経営が必要とされるのだ。また、燃料電池車などの次世代技術での競争も要所となる。
 ただ、私の経験ではクルマの特集は売れない。『週刊東洋経済』はどうかは知らないが、『週刊ダイヤモンド』ではそうでした。
 第2特集は「使える!ビッグデータ」。Tポイントカードで集められたデータから個人単位でのマーケティングを行なう――ビッグデータが身近なところで使われている例だ。2ケタペースという成長産業だが、ビッグデータ自体に意味があるのではない。そこから何を抽出するかである。だから同誌もビッグデータの活用法に加えて落とし穴も紹介している。
 その他に、面白いインタビューがいくつかあった。1つ目はジャパネットたかた髙田明社長。2つ目は、坂本圭介CEサバデルオーナー。日本人で初めてスペインのサッカークラブオーナーになった人だ。


第3位
■週刊ダイヤモンド■ <<<  お買い得マンションの質的変化

 まず、今週の『週刊ダイヤモンド』、冒頭に日銀・黒田新総裁による「超弩級」緩和が緊急特集として組まれた。この大胆な緩和の詳細と現時点での市場への衝撃がまとめられている。
 特集のレビューはちょっと筆が進まなかった。アベノミクスバブルに踊る不動産特集だからだろうか。「今、買うならこれだ!」というお得な買いどきマンションの特集。不動産価格が上がってきているタイミングを狙ってなのだろうが、本誌は1ヵ月前に「不動産マネー」を扱っている。その際は、日本不動産を狙う海外投資家を紹介していたが、今回は一般家庭という視点。富裕層→投資家→外国人→ファミリーと、低迷していた不動産取引きが活発化してきた証拠と言えばそれまでだが、あざとい気がするのは私だけだろうか。でも売れるのかもしれませんね。
 その特集だが、「マンション購入のドミノ倒し」という表現をしている。一般人までブームが降りてきたら、たいていプロの仕込みは終わっている。えー!?もうバブルはじける準備!?という気分に襲われた。が、そんな一筋縄のストーリーではいかないのが昨今の経済状況だ。気を取り直そう。
 記事内の優良物件ランキング23区1位は「プラウド南麻布」、2位「Brillia Tower 池袋」。短期間で全戸完売する"瞬間蒸発"物件である。前者はフランス大使館旧館跡地に建つ優雅な物件で24時間スポーツジムも併設、後者は豊島区役所と一体化した建物ゆえの別格の免震性能が期待されている。昔は立地と価格に魅力があればそれだけで売れたという。しかし昨今の"瞬間蒸発"物件には、そこに生活の「質」が加わる。「そのマンションで想定される生活の質も同時に高くなければ購入には至らない」そうだ。収入別や地域別、中古の値上がり物件ベスト200などなど、ランキングが盛りだくさんだ。


第4位
■週刊エコノミスト■ <<< 
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円安株高

『週刊エコノミスト』の特集タイトルは、いつも素っ気ないなぁ。それがいいときもあるんだけれど、今週は「円安株高」だった。「また? このテーマ?」という印象だが、今週は「黒田異次元緩和」(『週刊東洋経済』)「日銀"超弩級"緩和」(『週刊ダイヤモンド』)があったから、タイムリーな特集だ。それより、もう少し興味をひくタイトルはなかったのかなあ。サブタイトル「異次元緩和が牽引する熱狂相場」のほうがキャッチーです。
 内容は、黒田異次元緩和がもたらす円安株高の専門家陣による予測特集。有力ストラテジスト」の予想値は日経平均年内最高値「1ドル=95円定着で1万6000円」。「株ビギナーの投資法」、「外国人投資家の手口」と、最近取引きに参戦した新しい個人投資家に向けた記事も多い。その中でも、中心となるのは「マクロ経済視点で注目銘柄を探せ」。5つの視点から投資対象銘柄をピックアップする。特集の最後は、仮釈放された堀江貴文・元社長が投資を語った。ライブドア株を暴落させたことを反省しつつも、「投資は余裕資金で行なうのが鉄則」と説く。言い訳でも何でもなく、本心だろう。
 他の記事で面白かったのは、「魅力的な統合型リゾートカジノとは」と「鉄の女が果たせなかった夢」。一読しても良いだろう。

【来た!見た!書いた!】「西武鉄道とサーベラスの対立で見えた「人口減少時代の鉄道経営」

西武が秩父に路線を敷いた「思い」

 長年、西武鉄道の沿線に住んできた者として「あれ?」と思ったのは、西武鉄道が3月から女優の吉高由里子さんを起用した「特急レッドアロー号で行く秩父さんぽ旅」と題したテレビCMを流したり、ポスターを貼り始めたりしたことだ。
 CMでは、吉高さんが三峰神社を歩いたり、西武秩父仲見世通りでみそポテトを食べたりしながら「自分で見つけたものは、きっと宝物になる。そう思うんです」とつぶやく。はやりの山ガールや旅好きの女子に訴えそうな内容に「西武も久しぶりに秩父へ力を入れているな」という印象を持った。
 西武鉄道が秩父の武甲山の石灰石を原料とするセメントの輸送と、秩父周辺の観光開発を目的に「西武秩父線」を開業したのは1969年10月のこと。西武池袋線の終点である吾野駅から西武秩父駅までの19キロの路線は、当時としては私鉄最長の正丸トンネル(4811メートル)などトンネル16カ所、橋梁35カ所を含む本格的な山岳路線だ。
 西武はこの路線をわずか2年あまりで完成させた。開通に合わせて、特急専用車両の5000系「レッドアロー」を投入し、池袋と西武秩父の間で全席指定の有料特急の運行を始めた。
 開業日を鉄道記念日(現鉄道の日)の10月14日としたことも含め、当時の西武鉄道がいかに秩父線の開業にかけていたかがわかる。西武は秩父地域一帯を箱根に匹敵する観光地に育てようとしていた。さらに一時は、西武秩父から小鹿野町を通り、西武系のリゾート施設が集中する長野県軽井沢町まで秩父線を延伸する計画もあったという。

ようやく繋がった秩父への路線

 一方、秩父市などにとっても、東京都心に1本の電車で行けるようになる西武秩父線の開通は、大きな出来事だった。
 当時、三峯神社の宮司であった宮沢岩雄は「秩父にとってこれ(西武秩父線開業)は一つの維新ですね。明治維新は黒い船で始まったわけですが、秩父は西武の赤い矢(レッドアロー)で維新が始まったことになります」と1970年発行の西武鉄道の機関誌の中で述べている。
 だがそれからの40数年の西武鉄道の歩みをたどると、西武秩父線を巡る戦略が、当初の思惑通りには進まなかったという印象を受ける。
 長年、秩父観光のネックといわれた西武鉄道と秩父鉄道の接続問題。開業当時は西武秩父駅と秩父鉄道の最寄り駅が離れていて、三峰神社や長瀞などに行くには、乗客が相当な距離を歩かなければならなかった。
 1989年には秩父鉄道との間に連絡線を開設し、池袋から秩父鉄道へ直通する快速急行が運行できるようになった。ただ特急レッドアローの直通運転はいまだに実現していない。

西武秩父線廃止の提案という青天の霹靂

 2004年春の総会屋利益供与事件、秋の有価証券報告書虚偽記載事件を経て、2005~2006年のグループ再編で、西武鉄道はメインバンクであるみずほコーポレート銀行がリードする体制に様変わりした。
 それ以後、秩父の観光について目立った施策はなく、現状維持を続けているように見えた。それだけに3月に始まったテレビCMに、沿線住民として新鮮な驚きを感じたのだ。
 改めて指摘するまでもなく、テレビCMは3月16日に始まった東京急行電鉄東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転がきっかけになっている。直通運転により、両線に加え西武池袋線、東武東上線、みなとみらい線の5線がつながり、横浜方面と埼玉県西部が乗り換えなしで結ばれるようになった。
 横浜方面からは秩父に乗り換えなしで行くことはできないものの、従来よりは格段に便利になった。これを機に、横浜方面からの集客を増やす狙いというわけだ。
 秩父地域にとっても、相互直通運転の開始は、観光を盛り上げるのに久しぶりの好機と映ったはずだ。
 ところが秩父市など西武秩父線の沿線自治体は、相互直通運転開始からわずか1週間後に、今度は「青天の霹靂」に見舞われることになる。西武鉄道を傘下に持つ西武ホールディングス(HD)の筆頭株主である米投資会社のサーベラスが、西武地秩父線などが不採算路線であるとして「廃止」を提案していることが明らかになったからだ。

昔犬猿の仲もいまは手を組む時代

 2011年度の西武秩父線の平均乗降客数は1万229人で10年前の2001年度と比べ18%減っている。赤字なのかどうかはわからないが、秩父線が当初の青写真通りには進まず、むしろ秩父地域の人口減や観光の低迷などから利用者の減少傾向が続いていることが読み取れる。
 西武HD側はこの提案に強く反発。またその後、埼玉県や秩父市など西武鉄道の沿線自治体から路線存続を求める声が強まったこともあり、サーベラス側は、鉄道路線の廃止などは「アイデアのひとつとして示したが提案はしていない。今後もするつもりはない」と主張するようになった。現在、この議論は小康状態になっている。
 ただ明らかなのは、西武鉄道とサーベラスの対立の背景には、人口減少という逃れることのできないトレンドの変化があり、これまでは人口が増え続けてきた首都圏ですら「鉄道の廃線」という問題が現実のものになりつつあることだ。
 思い起こせば、今回の相互直通運転でつながった西武鉄道と東急は、1950年代には伊豆半島での鉄道敷設を巡る「伊豆戦争」を起こすなど、犬猿の仲として知られていた。それが半世紀あまりを経て手を結ぶことになったのは、人口減時代を迎え私鉄同士が争うよりも連携することが得策になったからだ。
 サーベラスも、日本では採算だけで判断すると利用者から手痛い反発を食らうことを、今回の騒動から学んだはずだ。人口減時代の鉄道経営は、鉄道会社間の連携だけでなく、鉄道会社と沿線自治体や利用者との信頼関係の構築が、今まで以上に重要になる。