2013年3月12日

今週の週刊経済誌の読みどころ_2013.3.12

今週の第1位は『週刊東洋経済』

週刊東洋経済 ... 1億人の税
週刊ダイヤモンド ... 目にかかるカネとリスク
日経ビジネス ... どうする「核のゴミ」
週刊エコノミスト ... 賃金を上げろ

 今週は、発売日が3月11日のこともあって、テレビや新聞のように、震災がらみの特集を組む雑誌があるかと思いましたが、小さな記事を別にすればほとんどありませんでした。そんななかで面白かったのは、税のことを広範に扱って特集にした『週刊東洋経済』です。ふつう、税の話は個人の節税に終始することが多いのですが、企業編を設け、グローバル企業のまるで経済小説ばりのグローバルな節税ぶりなども紹介しています。これが今週の第1位。
 次に、視点が面白かったのは「目」をテーマに特集を組んだ『週刊ダイヤモンド』です。目の病気と治療の数々から、メガネ、コンタクトレンズまでさまざまな視点で「目」を取りあげました。安いメガネ屋さんの儲けのからくりも暴いています。これが第2位です。
 第3位は『日経ビジネス』。唯一、震災がらみの記事を特集に持ってきました。といってもチェルノブイリをケーススタディとして、原発で発した「核のゴミ」をどうすればいいのか、というのがテーマでした。
 ここのところアベノミクスを特集のテーマに据えている『週刊エコノミスト』は今週もそれがらみであることは変わらず、賃金を上げようと訴える、キャンペーン的な特集です。主要300社の賃上げ余力のランキングを特集の主軸に据えたところが面白かったですね。

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第1位
■週刊東洋経済■ <<<  妥当な納税が行なわれる時代はくるのか

 "終活"という言葉はご存じだろう。「人生の終わりのための活動」の略で4年ほど前から使われはじめ、新語・流行語大賞もとった。2009年というと、団塊の世代引退とも重なるが、親の財産分与の際に兄弟姉妹で揉めた経験があり「自分のときは」と親から"最後で最期の学び"にした人が多かっただろう。「遺言状キット」などで書いた人も多いらしいが、このたび書き直す必要がでてくるかもしれない。
 今週の『週刊東洋経済』の特集は「1億人の税」で、2015年に大きく変わる税制とその対策を扱った。この時期恒例の「税特集」だが、今回はちょっと趣を変えた。たいてい個人にスポットを当てがちだが、今号では個人編と企業編の2部構成となっている。内容が基本的に節税なのはいつも通りだが、「不動産購入、賃貸にして評価額を下げる」という個人規模での節税に加えて、グローバル企業の大掛かりなスキームまで踏み込んでいるのが特長だ。スターバックスやグーグルの節税手法はなるほど良くできており、経済小説を読んだときのような高揚を感じてしまう人も多いだろう。
 また、富裕層におけるタックスヘイブンへの移住や国籍取得も取りあげた。どんな国でもお金持ちが嫌いな国民におされ、高額所得者は恰好の批判対象となってしまう。同誌ではフランスの所得税率大幅引き上げを取りあげ、それに反発したモエヘネシーのCEOがベルギー国籍を取得したことを取りあげている。
 節税と脱税は紙一重であり、日本でも先日脱税の容疑で丸源ビルの川本源司郎オーナーが逮捕された。そこにある差は何か? 特集では"倫理"を1つの基準としてあげている。「妥当な納税」が行なわれる時代は? 永遠に来ないのかもしれない。


第2位
■週刊ダイヤモンド■ <<<  安いメガネのからくり

「買ったばっかりの眼鏡を手でどけて本を読む」なんて話があるが、これを笑い話ととるか、切実な話ととるか、で大体の年齢が知れてしまう。
 今週の『週刊ダイヤモンド』は「目にかかるカネとリスク」という特集である。読者の平均的年齢層は中年世代であり、近視のみならず、老眼を抱えて目には敏感にならざるをえない世代であるが故に、この種の特集が成立してしまうのだ。
 目にまつわる分野の技術の進展は日進月歩である。メガネからコンタクトレンズ、レーシック、眼内レンズとちょっと見ないうちに新しい技術が登場している。しかし、だからといって先端の治療がよい訳ではない、と同誌は説いている。自分に合った矯正・治療を見つけるべきであると。たとえば、一括りにレーシックといっても様々な方法があるのだ。本特集では、眼科医療の基本的な知識と方法別の比較、中高年が発症しやすい「目」の病気を分かりやすく説明し、加えて、矯正・治療の際に頼れる病院も紹介してある。目が健康だからこそ読むべき特集とも言えるだろう。その他、低価格メガネチェーンが儲かる秘密やコモディティ化するコンタクトレンズなど日常の何気ない疑問にも焦点を当てたところが同誌らしさだろう。
 第2特集は「大震災2年の試練 復旧か復興か」。震災に対して"まちづくり"という視点からの特集となった。使いふるされたタイトルだが、それでもこういうタイトルになるのはまだ復興ができていないことの証左である。


第3位
■ 日経ビジネス■ <<<  チェルノブイリから学べることは多い

 東日本大震災から丸2年の3月11日が発売日となった経済週刊誌だが、そのなかで『日経ビジネス』が「どうする『核のゴミ』」を特集した。先週あたりから、様々なメディアで東日本大震災に関連した内容のものが増えてきた。それに比べると経済4誌は、週刊『ダイヤモンド』の第2特集で「復興」を、『週刊エコノミスト』で「原発安全基準」の記事が1つとあまり誌面は割かれていない。理由として2年という歳月もなくはないが、それ以上に読者が知識も持ったことが大きいだろう。そして進展が順調とは言えない現状で、正面から捉えるのは難しい。
 本特集も冒頭の記事こそ福島における除染済みゴミの仮置き場が難航している現状を伝えたが、その後は核物質を軸にチェルノブイリとイギリスの2つの国に焦点を当て、現代の世界の動きから未来を考える形をとっている。また、核との向き合い方を示し、最終処分場などの決断は国民に委ねるべきであるといった論調で展開した。しかし、仮置き場ですら難航している日本がはたして、いつ最終処分場を建てられるだろうか。喚起することの大切さを感じる特集ではあるが、もう少し提起する踏み込んだものが欲しかった。それよりも、特集前のある時事深層のページにある「製造業、福島回帰のワケ」という記事の方が建設的な内容だった。立地補助金の効果もあるが、物流に好条件な立地である点や「だからこそ福島で」という思いが日本気質を感じさせる。
 また、海外展開の研究では良品計画を取りあげた「無印流『負けない』備え」で、11年間赤字からの大躍進の4つの理由に迫った。


第4位
■ 週刊エコノミスト■ <<<  賃金は本当に上がるか!?

『週刊エコノミスト』の特集は「賃金を上げろ」。これまでリフレ、株高とアベノミクス効果を予測してきたが、今週は企業の賃上げを扱った。と言っても、2週間前の『日経ビジネス』のように新浪ローソン社長へのインタビューをするなど経営者に迫ることはせず、主要300社の賃上げ余力のランキングを特集の主軸に据えた。ランキングでは1位が任天堂、2位は国際石油開発帝石、3位は三菱地所となった。7位に石油資源開発、13位に東燃ゼネラル石油、16位昭和シェル石油、17位住友金属鉱山など資源大手が上位に並んでいるのが目立った。これは資源価値の変動や事業リスクの高さなどにより、強固な財務基盤を必要とされるからである。いずれにせよこのランキング通りに賃上げがされるなどは考えられないだろう。インタビューに答える甘利明経済再生担当相も、企業の協力が不可欠であることを述べるに留まっていて全体として小粒な感じが否めない印象だった。
 むしろ第2特集の「列島老朽化」とインフラの危機の方が面白かった。東京オリンピックの前の昭和30年代後半に作られた主要なインフラは、その老朽化により整備を迫られている。昨年の笹子トンネル事故が記憶に新しいが、あれは始まりにすぎない。社会インフラは経過年数が30年で何らかの補修・補強が、50年で抜本的な更新が必要になる。そして、集中的にインフラ投資が行なわれた60年代、70年代後半〜80年代前半に建てられたものが50年を経とうとしている。
 そこに、技術者の高齢化と地方人口減少による負担増が相まっている状態だ。よって、幅広い更新を同時に行なうことは難しい。そこで優先順位をつけることが必要になってくるのだ。
 実際にオーストラリアの一部の市やEUでは行なわれているが、ある程度は成功している。しかしながら、優先順位をつくること自体がネックになりやすい点もあるようだ。また、日本ではインフラの管理者が細かく分かれてしまっている点があり、問題も多い。縦割り行政の弊害と言えばそれまでなのだが。