2013年2月 4日

今週の週刊経済誌の読みどころ_2013.2.05

今週の第1位は『週刊エコノミスト』

週刊エコノミスト ... 儲かる電機 堕ちる電機
日経ビジネス ... 庶民(アナタ)が相続税を払う日
週刊東洋経済 ... 海外移住&投資
週刊ダイヤモンド ... 公共工事バブルで踊るゼネコン

「儲かる電機、堕ちる電機」というタイトルを見て、いつもの「家電が危ない」的企画を想像したのですが、違いました。今週の『週刊エコノミスト』は意外に面白い視点で特集を組んでいました。もちろん「堕ちる」方はソニー、パナソニック、シャープの御三家ですが、儲かる方で取りあげられたのが、アイリスオーヤマとダイキン工業だったのです。この2社の社長インタビューが面白い。なるほどな、と思わせられること多々でしたね。その上、弊社も『CEO社長情報』誌で取りあげたベンチャーのテラモーターズなども出ていて、なかなかの中身でした。これが今週の第1位です。
 では第2位は......『日経ビジネス』です。前週までのシリーズ物からはなれ、今週は相続を扱った特集でした。でも、よくあるハウツーものではなく、税制改正で従来よりも低い相続額でも課税されるようになる状況を細かく分析し、『日経ビジネス』流の相続放棄の提言まであるというちょっと面白い企画でした。今週は全誌それなりに読み応えがあったのですが、第3位の『週刊東洋経済』も海外移住と海外投資の特集で面白い内容でした。アジア各国への取材を敢行し、たとえばマレーシアに初めて進出した英国の名門校とそこに通わせている日本人家族であるとか、ジョホールバルに移住した家族とか、隣の芝生的な興味が描かれています。
 第4位は『週刊ダイヤモンド』です。特集は「ゼネコン」で、先週号が円安でしたが、今週もアベノミクス的企画を推してきました。でもこれも面白かったですよ。

第1位
■ 週刊エコノミスト■ <<<  今どき儲かる電機会社

 この特集、面白い。大手電機メーカーの今後とか、日立など重電の立ち直りとか、そういう"大手"がメインではないのである。何が面白いのかというと、「ダイキン工業の井上礼之会長とアイリスオーヤマの大山健太郎社長、この業績を伸ばしている経営者2人のインタビューが掲載されているところ。2人の共通点は「すべての責任はトップにあり」という姿勢と「スピード経営」。とにかく2人の切れの良い言説に触れてほしい感じです。
 2008年、ダイキン工業が中国の電機メーカー「格力」にインバーター技術を提供し、グローバル住宅用空調期市場での共同開発・共同購買を発表したとき、「そんなことして大丈夫? 技術を身ぐるみ剥がされて捨てられるんじゃないの?」などと思った日本人は少なくなかったはずだ。かく言う私も、ちょっと心配した。しかしどうだろう。技術をオープン化し提携現地企業を巻き込んでのロビー活動によってインバーターエアコンはいまや中国市場の主流となり、ダイキンは中国のエアコンにおけるコモディティー市場で成功した。
「世界の標準化に参画しないと、優秀な技術を持ちながら、世界のグローバルスタンダードになった途端、他に負ける」という井上会長。当時、技術をブラックボックス化しておきたい社内の技術者たちと大げんかしたエピソードなどが語られる。(大手電機メーカーは耳が痛いでだろうなぁ)
 年間1000点を超える新商品を開発するアイリスオーヤマ。こちらは「この会社こそ元祖"メイカーズ"だね」と思わされた。ペット用品や衣装ケースの会社と思いきや、いまや家庭用LED電球の国内出荷数ナンバーワンだ。今後ますます生活者ニーズに応える「白物家電」分野で商品開発に挑む。
 とはいえ電機業界の特集なので、「あなたの県の電機雇用度」とか「まだまだ伸びる世界の家電市場」とか、さまざまな角度からのレポートもある。


第2位
■ 日経ビジネス■ <<< 相続はしないのが一番の相続

 先日1月18日、自民・公明・民主3党により所得税・相続税増税(案)が大枠で合意された。これで2015年からの相続税増税は決定的となり、土地の値段が高い東京23区では4人に1人が課税される可能性が出てきた。そういうタイミングで、『日経ビジネス』が「相続税」を特集した。珍しいことに、「庶民(アナタ)=個人」をはっきりと読者ターゲットにしてきた。タイトルは「庶民(アナタ)が相続税を払う日」。「うちは大丈夫! 兄弟仲がいいし!」「そもそも大した相続金額にはならないし」なんて安心しきっている「庶民」に「そうも言ってられないよ!」と警鐘を鳴らす内容である。
 実はすでに衆院選直前の昨年12月前半、『週刊エコノミスト』が「親子で学ぶ相続」というタイトルで「相続ガイド」的な特集をやっている。『日経ビジネス』は、ノウハウには触れず、他人事と思い込んでいるほとんどの「庶民」に「税制改正で起きる悪夢」の認識を迫っている。なぜなら、富裕層と違って中間層の資産の多くは不動産。となれば、親が亡くなったあと相続した不動産に相続税がかかった場合、たとえ税額が少なくても納税用の現金が十分手当できないケースも、実家への課税で「現金遺産が"蒸発"する」=「遺産蒸発」なんていうのも起こる。
 とまあ、この税制改正でこれまで思いも寄らない「相続」問題が庶民にも十分起こってくるらしい。そういう認識を新たにできる特集なのだ。
 面白かったのは特集の結論ページ! 「本誌流相続対策」と銘打って、「遺産は大地に還す」と提言していることだ。「本誌はあえて主張する。最も有効な相続対策は『相続しないこと』だ。つまり親は『自分で稼いだカネは使い切る』。子供は『親の遺産を当てにせず、自分の力で生きていく』。これこそが今回、(中略)同誌がたどり着いた、1億3000万人の相続問題を完全に解消し、富の再配分を加速させ、なおかつ日本経済の活性化につながる相続対策だ」としている。清々しいまでの提言ではある。


第3位
■週刊東洋経済■ <<<  マレーシアに住み、タイで京大卒の医師にかかる

 原発事故が背中を押すようなカタチで、あらゆる世代の海外移住が増加している。「海外在留邦人数調査統計」(外務省)によれば、2009年、2010年と1%ずつ増加していた海外居住日本人数だが、2011年は3%増えて118万人になった。その目的も、子供の教育、介護、ビジネス、豊かな年金生活、と多様化した。機を見るに敏な女子アナ種族も、結婚退社した数人がシンガポールやオーストラリアへと移住し話題になったりしている。目に見えない放射能への不安や閉塞感ばかりが目立つ日本より、高成長で活気のあるアジアで豊かに暮らす......特に若い世代でそんな項目が選択肢の1つに普通に入ってくる時代になったのだ。
 そんな人は今週の『週刊東洋経済』の特集「海外移住&投資『脱ニッポン』という選択」がお勧めだ。とにかくすでに移住した人々の現地リポートが盛りだくさん。1つの選択肢としては参考になる。
 さて、子供の教育で特に人気が高いのがマレーシアだ。マレーシアは国策として自国を「教育のハブ」化へと進めている。英国名門校マルボロカレッジ・マレーシア分校が開校し、約30ヵ国の子女が通う。学費は年間150万円。すでに複数の日本人が母子移住、家族移住して通学しているという。タイ・バンコクで京大出身の現地医師に介護を受けている人もいる。そんなケーススタディが次々掲載されている。
 投資については、「富裕層編」「中間層編」「不動産投資編」と、小振りにまとまっている。


第4位
週刊ダイヤモンド■ <<< 「土木!土木!土木!」

 安倍政権にかわって、各誌アベノミクスの波及を追う記事を毎号放ってきている。『週刊ダイヤモンド』は先週の「円安に乗る!」に続いて、今週は「公共工事バブルで踊るゼネコン」を第1特集に持ってきた。
 おさらいをすると、1998年度14兆9000億円だった公共事業関係費は、2011年6兆2000億円と半分以下まで落ちていた。この10年余り建設業界は身を縮めて職人を減らしてなんとか生きてきた。そこへ安倍政権の公共事業費大幅アップである。来年度は補正と当初予算合わせて11兆円! そりゃあゼネコンの社長が小躍りしたくなる気持ちもわかる。
 東日本大震災後の天災対策、老朽化した橋梁・高速道路などのインフラ整備も後押しするため、ともかく「土木!土木!土木!」ということになるらしい。「土高建低」「東高西低」で、減少した職人は大幅に不足している現実もある。どこがこのバブルにのり、どこがのれないのか、太田国土交通大臣らへのインタビューも交えてレポートしている。

【来た!見た!書いた!】 「古い自民党」は本当に変わったのか

群馬県川原湯温泉での祭の風景

 大寒を迎えた1月20日の早朝、群馬県長野原町の川原湯温泉で、400年以上続く「湯かけ祭り」が行なわれた。
 マイナス3度の寒さの中、共同浴場の「玉湯(おうゆ)」の前に、白と赤に分かれたふんどし姿の60人の男たちが集まり、「お祝いだ、お祝いだ」と叫びつつ、源泉からくんだ湯を掛け合う。
 1193年(建久4年)に源頼朝が浅間狩りの折りに見つけたといわれる川原湯温泉。湯かけ祭りは江戸時代に止まってしまった温泉が再び湧いて住民が喜び合ったという故事にちなみ、1年の無病息災と平穏無事を祈願するものだ。
 温泉は、群馬県の西部を流れる吾妻川の谷間上部の道沿いにある。少し下流に建設が決まっている八ツ場ダムのために、いずれ温泉街ごとダムの底に沈む場所だ。
 ダムの建設問題が持ち上がって60年あまり。祭りはこの場所での開催が今年で最後になる可能性があるため、いつにも増してマスコミの注目が集まった。今夏には、高台にある代替地で新しい玉湯の工事が始まり、2014年の今ごろには完成する予定だからだ。

 「コンクリートから人へ」を掲げて政権を奪取した民主党が、「コンクリートの象徴」として八ツ場ダムの建設中止を表明したのは2009年夏のこと。ダム湖に沈む地区の住民のために、代替地の造成やダム湖をまたぐ3本の橋の建設が進み、もう少しでダム本体の工事が始まる――という段階での出来事だった。

結局民主党も工事を認めた八ツ場ダム

 当時の民主党政権は「住民が反対するダム事業は反対すべき」と勘違いをしていたようだが、八ツ場ダムは住民が反対する中で行政が建設を強行したという、典型的なダム事業とは異なる。
 長野原町の住民も、初期には建設賛成派と反対派に分かれ町を二分する闘いを繰り広げた。しかし月日がたつ中で、闘争への疲弊から町外に移転したり、反対派から賛成派に転じたりして、住民のほとんどは賛成派になった。地元の群馬県だけでなく、埼玉県や東京都など治水・利水の両面で恩恵を受ける流域1都5県も早期の建設を望んでいる。
 民主党政権もそうした実態を踏まえ、2012年12月には、当時の前田武志国交相がダム本体の工事再開を表明した。ただ党内の反対派に配慮した藤村修官房長官が「ダム本体の工事着工には『利根川・江戸川河川整備計画』の策定が必要」というどっちつかずの裁定を下した。そのため、道路や橋など住民の生活再建のための工事は進めることができても、本体の工事には着手できない――という中ぶらりんな状況が続いていた。
 民主党政権時代の3年余りは、こうした足踏みが続いたために、川原湯温泉など長野原町の住民は、12年末の民主党から自民党への政権交代を心待ちにしていたはずだ。「自民党政権に戻れば、ただちにダム本体の工事に着工してくれるはず」という期待が高まっていた。

公共事業を増やし「人からコンクリート」への転換を進める

 だが政府は1月29日に閣議決定した2013年度政府予算案で、八ツ場ダムについては本体関連事業費として12年度と同額の18億円(事業費ベース)を計上するにとどめ、本体工事の費用は全く盛り込まなかった。
 予算の付き方から見る限り、新政権の八ツ場ダムに対する姿勢は、民主党政権とほとんど変化がないのだ。
 予算全体でみれば、高度成長期に建設したインフラの老朽化対策など「防災・減災」を理由に、公共事業関係費が4年ぶりに増加に転じ、12年度当初予算より15.6%も多い5兆2853億円に膨らんだ。それなのに自民党政権は八ツ場ダムについては距離を置いているように見えるのはなぜだろうか。
 読み解くヒントは「古い自民党」と「人からコンクリート」という言葉にある。
 安倍晋三政権の経済政策(アベノミクス)の「3本の矢(3つの柱)」は「大胆な金融緩和」「財政出動」「成長戦略」。このうち財政出動は「防災・減災」という新しい装いを身につけているとはいえ、「コンクリート」を重視する「古い自民党」が得意としてきた手法だ。
 29日決定の政府予算案について、30日付の朝日新聞は1面で早速、「社会保障で生活保護の水準を切り下げる一方、12年度補正予算に続いて公共事業を増やし、『人からコンクリート』への転換を進める」と皮肉った。

八ツ場ダムや普天間基地移転は目立たせずに進める自民党

 八ツ場ダムは民主党政権下で最も注目を集めた公共事業だ。自民党政権に戻ったとたんに、本体工事に予算をつければ、今以上に「古い自民党に戻った」とか「人からコンクリート」との批判を受けることになる。
 そのため自民党政権は少なくとも夏の参院選までは、「八ツ場ダム事業を目立たせない」戦略をとる見通しだ。これこそが、本体工事費を予算計上しなかった真意だろう。
 少なくと見た目においては「人からコンクリート」の政策を目立たせないようにする。こうした戦略は、八ツ場ダムや普天間基地問題などで、大上段に政策変更を打ち出しては後に挫折する「民主党政権の失敗」から学んだ結果だといえる。
 だがだからといって安倍首相がいうように本当に「古い自民党に戻るとの批判があるがそうではない」と言えるのかどうか。
 アベノミクスの3本の矢のうち「大胆な金融緩和」と「財政出動」は、日銀の物価目標の導入や、緊急経済対策や12年度補正予算・13年度予算でほぼ出そろった。3本目の「成長戦略」で、既得権者などの反対が強い規制改革や環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を本当に進められるのか。「古い自民党」が変わったかの判断は、これからが本番になる。