2013年1月28日

今週の週刊経済誌の読みどころ_2013.1.29

今週の第1位は『日経ビジネス』

日経ビジネス ...  ネット化する70億人 シリーズ動き出す未来④
週刊東洋経済 ... 日立に学べ!
週刊ダイヤモンド ... 円安に乗る! 株・投信・外貨投資
週刊エコノミスト ... 安倍バブル

 『日経ビジネス』はここのところシリーズものを多く特集にしています。現在は「動き出す未来」と銘打ったシリーズを展開していて、今週がその4回目に当たります。この種の特集は取りあげるテーマによって当たり外れがあるのが常ですが、今週号は成功したといえるでしょう。特集のテーマはネットの未来で、現在のネット社会がどのように変化していくかを技術に基づいて描いています。ページ数は少ないのですが、「ああ、なるほど、こうなっていくんだ」というような感想を抱かせる具体的な内容と識者のコメントが結構なインパクトとなっています。今週の第1位はこれで決まりです。
 第2位に推したのは『週刊東洋経済』です。地味ですが日立に学べという特集を組みました。2009年3月期に7873億円という巨額の赤字を計上した日立がその危機を乗り越え、再生した様を取材に基づいて描きました。現在の家電各社の大赤字の状況からもタイミングのいい企画ではないでしょうか。
 さて、世間は円安・株高を歓迎しているように見えますが、経済誌はここで大きく論調が分かれてきているようです。円安を容認した上で、それがどのような構造で成り立っているかを論じた上で、それに乗って儲けるための商品を紹介するのは『週刊ダイヤモンド』です。
 一方、円安基調を招いた「アベノミクス」をバブルと断じてその危険性を説くのが『週刊エコノミスト』です。どちらもそれなりの論理展開であり、間違ったことを言っているわけではないのですが、論調が割れるところに雑誌の特長が出て面白いと思います。ちなみに付け加えると、『週刊東洋経済』はニューヨーク在住のリチャード・カッツ氏の「アベノミクスは麻酔かヘロインか」というタイトルの記事を載せています。麻酔にしたっていつかは切れるわけですから......。

第1位
■ 日経ビジネス■ <<<  スマホはそのうちなくなる

 シリーズで未来の社会を追いかけている『日経ビジネス』だが、その第4回目は「ネット」に焦点を当てた。インターネットに関する様々な技術で先端を走る米グーグルの技術開発とその考え方を軸に、未来のネット社会がどのように変化していくかを描いている。
 たとえばスマホはどうなるのか? その答えは「なくなる」。ではその代わりに何が生まれるのかといえば、あらゆるところにディスプレーがあり、見る必要がある時にその情報を映し出して利用するようになる。グーグルの開発者たちが口を揃えて語る未来は「スタートレック」の世界なのだそうだ。
 こうして変化していく未来はどうやら現実とネットの世界の明確な境界線が無くなっていくようだ。
 米アップルはテレビをいつ出すかが注目されているが、そのテレビは音声アシスタントで動き(現在のiPhoneで活用されているSiriの技術)、その人の日常的な嗜好や慣習から割りだされた番組が自動的に録画されるといったようなことになるのだろう。すごい時代になってきたものだ。


第2位
■週刊東洋経済■ <<<  ピンチをチャンスに変えた日立

 深刻な業績不振にあえぐ電機業界にあって、業績をV字回復させた日立製作所が注目を集めている。今週の『週刊東洋経済』は、この日立の特集だ。タイトルは「日立に学べ! 最大の危機こそ変革のチャンス」。
 2009年、巨艦・日立は7873億円という赤字に喘いでいた。日本の製造業として過去最悪の赤字。この「半端じゃない赤字」(中西社長)が日立社員の意識を変え、聖域なき改革を実行できたのだという。改革の立役者は、当時69歳の川村隆・元会長。改革のために経営陣を一気に若返らせたり、外国人社長を登用する企業が多い中、日立の人選は当時マスコミから「血迷ったか」と揶揄された。しかし、先輩後輩の文化が根強い日立では、改革への抵抗を押し切るためには年寄りである必要があったのだという。
 川村氏から社長を引き継いだ中西宏明社長は、インタビューで「日立が低迷した原因の1つは、事業全体の構想をグローバルで考えていなかったことにある」と答えた。「ニッチでもいいからポジションを取る」。そういう戦略をスピーディーに断行する経営を、あの巨艦・日立でどう展開しているのか。そのあたりは本誌を読んでほしい。
 中西社長、川村会長、それぞれへのインタビュー、タブーなき改革の中身、現在の事業展開を解説する「これが『日立』の生きる道」、ライバルである国内・東芝&三菱/海外・GE&シーメンスと比較した「総合電機 ライバル対決!」と、日立の戦略を掘り下げている。


第3位
■週刊ダイヤモンド■ <<<  円安で儲かる金融商品

 海外の為替トレーダーの間では、「アーベトレード」なる言葉が流行っているそうな。これは「アービトラージ(裁定取引)」をもじったものだが、円安に沸く業界の雰囲気が伝わってくる。『週刊ダイヤモンド』はこの円安を積極的に捉えて、金融商品を徹底評価し、どうやって儲けるかという特集を組んだ。タイトルはズバリ「円安に乗る!
 株・投信・外貨投資」だ。今回の円安で重要なのは日本1国の問題ではなく、世界の流れの中でこの円安が起きているという点だ。米国は昨年夏以来住宅市場が回復の兆しを見せ始めている。非農業部門の雇用者数も月間で10万人を超える増加が続くなど雇用情勢も好転していると同誌は分析している。
 ま、何はともあれ、この円安状況でどうやって儲けるか。同誌は外貨投資商品、投信、ETF、MMFなど253本の商品を徹底評価し掲載した。
 また、この時期(円安)で注目される30銘柄をリストアップしている。


第4位
■ 週刊エコノミスト■ <<<  日本は既に死んでいる!?

『週刊ダイヤモンド』が円安に乗ってしまおう! と勢いづけているのに対し、対照的に動いたのは『週刊エコノミスト』である。
 特集のタイトルは「安倍バブル」。つまり円安・株高に沸く市場に対し「このまま日本経済が復活すると楽観視するわけにはいかない」と警鐘を鳴らしているのだ。海外のヘッジファンドは「アベノミクス」が成功しないと考えており、むしろその時を狙っているのだと同誌は説く。
 たとえばテキサスに本拠を置くヘッジファンド「ヘイマンキャピタルマネジメント」の創業者はテレビに出演し日本の政府債務は税収入の約24倍で、もともと2年で破綻すると思っていたが、2%のインフレ目標導入でその時期は早まった」とするコメントを述べたと紹介している。
 また同誌が独自に取材したダラスの投資アドバイザーは「日本は死刑囚(死を待つだけの国)」というコメントを引き出している。
 誰もが「アベノミクス」は劇薬だと言うことは知っているが、その使い方を過つと日本経済は本当に大変なことになる。

2013年1月21日

今週の週刊経済誌の読みどころ_2013.1.22

今週の第1位は『週刊ダイヤモンド』

週刊ダイヤモンド ... 倒産危険度ランキング
週刊東洋経済 ... 65歳定年の衝撃
日経ビジネス ... エネルギー国富論 シリーズ動き出す未来③
週刊エコノミスト ... 沸騰! 東南アジア

 今週の経済誌は読みでのある特集が多いという印象です。各誌経済誌らしく独自性をもった切り口を試みていました。そのなかで、頭一つ抜け出た感のあるのは『週刊ダイヤモンド』の「倒産危険度」でしょうか。アベノミクスに沸く市場に冷や水をかけるわけではありませんが、現状の経済の実態からいえば、タイムリーな特集でしょう。とくに家電などの大手企業の状況は気になるところですから。これが今週の第1位です。
 タイムリーさでいえば、次ぎにくるのは『週刊東洋経済』でしょう。今年4月に改正高齢者雇用安定法が施行され、 企業は希望者全員を「65歳まで」雇用しなければならないその目前で、65歳定年制を特集で扱いました。人事も給与も採用も変わると副題にありましたが、それより何より働き方が大きく変わってくるでしょうね。
 『週刊東洋経済』とどちらを2位にしようかと迷ったのが『日経ビジネス』です。地味ですが、エネルギーの特集です。それもよくあるエネルギー源の開発ではなく、エネルギー消費を日本特有の技術で抑え、その技術を輸出して国を富まそうというのです。日本は1970年代の石油ショック時に、エネルギー効率を飛躍的に高めて乗り切った実績があるという論理展開とケーススタディーの取材に、説得力がありました。
 決して面白くないわけではないけれど4位は『週刊エコノミスト』です。チャイナ・プラス・ワンで注目が高まる東南アジアの特集でした。実際いま世界がこのASEANという成長センターに注目しているわけですから。

第1位
■週刊ダイヤモンド■ <<< 危ない会社は相変らず多い

「なぜ倒産特集なのか――」。
 特集の本文はこの自嘲気味の一文で始まっている。テレビや大手新聞の報道では、円安・株高でにわかに景気回復への期待が高まっているかに見える。が、本当にそうだろうか。多くの一般人が「そんなに単純なものではない」と感じ、明日に不安を抱いている。現に大手家電の大赤字、中小企業にとって平成の徳政令と言われた「中小企業金融円滑化法」の期限切れなど、年度末に向かって厳しい状況が目前に迫ってもいるのだ。
 今週の『週刊ダイヤモンド』による「倒産危険度ランキング」は、そういった経済の実態・実感を突いたタイムリーな特集だ。金融関係者のみならず、目にしておくべき内容ではないだろうか。
 プロローグは「日本の倒産 最新事情」と題し、ここ数年減少基調にある倒産件数の裏側を図解する。電機業界の迷走、中小企業金融円滑化法による倒産の延命、地方経済の疲弊が見て取れる内容だ。そしてPart1.「大企業から壊れる! ドミノ危機の正体」、Part2.「判明! 危険度ワースト40」、Part3.「地方が壊れる! 中堅・中小の窮地」、Part4.「最新版 倒産危険度ランキング」と続く。いまこのとき、会社存続のために奔走する経営者・会社員が大勢いる。この身も引き締まる思いだ。


第2位
■週刊東洋経済■ <<<  65歳定年にまつわる人事部長の本音

 4月から改正高年齢者雇用安定法が施行され、企業は希望者全員を「65歳まで雇用」しなければならない。年金支給が段階的に65歳からへと先延ばしされるためだ。いわば財政失策のツケ。その対応策として、経団連に加盟する企業のうち、3割台の企業が新卒採用を減らすといわれ、 若者の雇用機会をさらに狭めている。『週刊東洋経済』は一歩先んじて、この定年延長を特
集した。題して「人事・給与・採用が変わる! 65歳定年の衝撃」だ。
 特集は、何が変わるのかがわかる「65歳のリアル 人事・給与が激変」、企業の先進事例が紹介される「企業の格闘、個人の奮闘」、ハローワーク活用術など個人の対応策が書かれた「いくら必要? おカネと仕事」の三部構成になっている。
 必読は「人事部長 覆面座談会」と識者へのインタビューだろうか。覆面座談会は4業種の人事部長によるものだが、「日本企業では、言われたことを川の流れに沿ってやっていくうち、どこかに着いていた。が、今後はどこの山にどうやって登るか、自分で考えなかればならない」「グローバル化で社員のダイバーシティ(多様性)が進むと、日本人の職場はどんどんなくなる」「定年という概念自体、どこかへ飛んでいってしまうだろうね」などなど、現場で対応する彼らの予測が最もドラスティックでしかも現実的と思えた。意欲の小さい者には甘くない未来だ。


第3位
■ 日経ビジネス■ <<< エネルギー消費を半減にする技術

 今週号もシリーズである「動き出す未来」を軸に特集を組んだのが『日経ビジネス』。そのタイトルは「エネルギー国富論」だ。3.11以降、原発の停止によって、空前のエネルギー危機に見舞われているが、これを視点を変えて、エネルギーの効率化革命に繋げようというのが同誌の特集の趣旨である。
 よく他誌が取りあげるシェールガスなどのエネルギー革命と違い、何とも地味ではあるが、日本は1970年代に石油ショックがあり、原油価格が8倍になるという危機に直面した経験を持っている。その経験を生かして、当時のようなエネルギー消費の劇的な効率化を図れば、逆にその技術を輸出することで国も栄えるというわけだ。
 実際記事の冒頭ではオムロンの工場が電力消費を前年の半分にしたというケースやリチウムイオン電池をコストが格安になるナトリウムイオン電池に置き換えるトヨタなどの例が紹介されている。


第4位
■ 週刊エコノミスト■ <<< 東南アジアに見る未来

 昨秋中国で勃発した反日暴動以降、チャイナプラスワンの有力候補として東南アジアへの注目度は高まっている。その前からも期待と進出熱は高まりを見せていたわけだが、年末の『日経ビジネス』「沈まぬアジア」特集に続いて、今週の『週刊エコノミスト』でも「沸騰! 東南アジア」と題する特集を組み、経済週刊誌上でも東南アジアの存在感は増している。本文副題の通り、「いま世界が注目する成長センターASEAN」が熱いのだ。
 ASEANに対する日本からの投資は、タイを中心に累積8兆6000万円。実は中国(6兆4600万円)よりも多い。M&A情報の専門誌『マール』編集長・丹羽氏によれば、「これまでASEANは生産拠点という位置づけだったが、これが変わった。販売やサービス・物流を含めた独自ネットワークが必要な業種にまで日本企業が進出している。このため、現地にすでに物流や販売網を持つ企業のM&Aが増えていると考えられる。ASEANの成長を取り込んでいこうという企業の動きは加速するばかりで、円安が進んでもこの流れは変わらない」という。加えてアジア開発銀行による「大メコン圏(GMS)構想」がこの地域のインフラ整備をさらに推進するだろう。
 特集では、『週刊エコノミスト』得意の専門家によるASEAN各国分析を中心に、ASEANの歴史も亜細亜大学アジア研究所・石川幸一教授によって解説されている。

2013年1月14日

今週の週刊経済誌の読みどころ_2013.1.15

今週の第1位は『週刊東洋経済』

週刊東洋経済 ... LINE大爆発!
日経ビジネス ... 2030年のモノ作り シリーズ動き出す未来②
週刊エコノミスト ... シェール革命の衝撃
週刊ダイヤモンド ... カネをかけずに納得の 寺・墓・葬儀

 日本発の世界的なサービスとして注目されてきている無料通話&メール&SNSサービスがあります。「LINE」と言えばそちら方面に疎い人でも、名前くらいは聞いたことがあるでしょう。国内では3700万人のユーザーがいるそうですが、若い層がその中心で、スマホ初心者を中心にその数を伸ばしてきました。この「LINE」を『週刊東洋経済』がいち早く取りあげました。経済誌の中心読者である中年層にはもってこいの企画かもしれません。その新しさで、同誌が今週の第1位です。
 先週その『週刊東洋経済』が「メイカーズ革命」という特集を組みましたが、今週は『日経ビジネス』がその進化系的特集を掲げました。題して「2030年のモノ作り」です。誰でもがメーカーになれる時代の実例を中心に将来のモノ作りのあるべき姿を描いています。これが第2位。
 そして『週刊エコノミスト』は何度か話題になったことのあるシェールガスの特集です。単なるエネルギーの一つというだけでなく、これによって世界の構造が大きく変わる可能性があることを示しています。第3位。
 第4位の『週刊ダイヤモンド』はこの時期定番の特集です。一番死亡率が高い時期の定番と言えば「寺・墓・葬儀」というわけです。中身はそれなりに工夫しているのですが、どうもマンネリ感も否めません。それでもある程度は売れるのでしょうがね。

第1位
■週刊東洋経済■ <<< 日本発の大ヒット世界的サービス「LINE」の全貌

 PCやスマートフォンが普及することで伸びたサービスといえば無料通話ができるSkypeやSNSのFacebookなどがすぐに思いつくが、どれもアメリカ発の独創的なサービスだ。
 ところが、こうした世界的なサービスに割って入った日本発のサービスがある。もう有名になりすぎた感はあるが、それが「LINE」である。何せ国内3700万人のユーザー、世界では8500万人ものユーザーが存在する、海外はアジア、中でも台湾が中心的だが、スペインでも人気は広がっている。そこで新しいものに目がない『週刊東洋経済』がこのスマホの無料通話&メールアプリ「LINE」を第1特集に持ってきた。
 それにしても「知らない間の急成長!」は、TwitterやFacebookを上回るスピードでユーザーを獲得しており、1億人突破も目前だ。
 かく言う私のスマホにもLINEをインストールしているが、正直にいえばハマってない。なぜかと考えたのだが、その答えが書かれていた。それはSNS疲れという現象で、それがこのLINEのヒットの要因であったと同誌は分析している。ならば、私も本格的に使ってみるか。
 ま、それはさておき、このおじさんには未知なるLINEを、その魅力から使い方、落とし穴、仕組み、そして開発した企業「NHNジャパン」まで、微に入り細を穿って解説している。この辺りは『週刊東洋経済』の真骨頂と言えよう。
 先行のSkypeやカカオトークなどの無料通話サービスについては「スマホSNS戦国時代」で。企業側の利用事例は「こう使う!LINE企業アカウント事例集」で。
 面白かったのは、LINEの代表的な人気サービス「スタンプ機能」で、ケンタッキーフライドチキンのはじけた表情をする「カーネルおじさんのスタンプ」が人気を博し、1週間で200万人の登録ユーザーを獲得したというエピソード。とにかくご一読をお勧めします。
 巻頭は久々に見る「株」の特集。「まだ買える好業績・割安株ランキング500」とか。アベノミクス・バブルでもなんでもいいから、みんなが待っていた上昇局面といったところだろうか。


第2位
■ 日経ビジネス■ <<<  一人からでもできるモノ作り

 2030年、モノ作りはどうなっているか......これをズバッと予測する特集が今週の『日経ビジネス』だ。先週『週刊東洋経済』が特集した「メイカーズ革命」がさらに進展し、一般的になった姿がその予測の全容と言っていいだろう。2030年まで待つことなく、「誰でもメーカーに」なれる環境は、2013年現在かなり整ってきている。大手電機メーカーから独立して「1人メーカー」を立ち上げた技術者がすでにちらほら出始めていて、特集にも何人か登場する。まだまだ少ないが、「アイディアさえあれば」、ハードウェアで起業する環境が成立したのだ。
 「1人メーカー」の小ロット商品、あるいは大量に生産する必要のある量産品を製造する製造ラインはどうなるのだろう。 EMSがさらに発達するだろうが、その現場は? これらの問いには「ラインの自動化はこうなる」「日本の工場はこうなる」でまとめられている。従来の固定型産業用ロボットでは自動化に限界があったが、少しずつ「人型ロボット」の導入が進んでいる現場もある。人手が足りないラインに配置したり、「目」を持たせれば人間と共存できるという柔軟性を持ったものだ。従来型の完全自動化と、人型ロボット導入と、生産ラインはますます無人化が進むだろう。「進化できない工場は日本から消えていく」。それは人材も同じだ。


第3位
■ 週刊エコノミスト■ <<< 中東から輸入するLPGの半値で買える新エネルギー

 日本はLPG(液化石油ガス)の世界最大の輸入国だ。 ところがその90%を中東に依存しているため、価格の決定権も彼の国に握られている。ところが現在の価格の半値で日本に輸入されているLPGがある。それがシェールガスだ。経済誌では何度も特集を組んでいるが、今回『週刊エコノミスト』がこの新たなエネルギーを特集した。この革命ともいえるシェールガスを世界で最も多く生産するのは米国だ。つまり米国をエネルギーの純輸出国に変容させるポテンシャルを持つのがこの「シェールガス」というわけだ。それだけではない。世界のエネルギー需給はもちろん、産業構造や為替、安全保障まで大きな影響が及ぶ。
 同誌は多角的にこのエネルギーの影響を分析する。「塗り変わる世界の軍事バランス」「シェール革命でドル高時代に転換」「製造業回帰で復権する米国」「『アジアシフト』加速するロシアの焦り」(ロシアのLNGの行き先は?)「『シェールガス大国』中国の野望」「LNGを大人買いできる韓国」など。「Q&Aゼロから学ぶ シェールガスとLNG」もおすすめだ。
 日本は原発に頼りすぎてきた。そのため石油メジャーや産ガス国に「代替でLNGを買うしか選択肢がないだろう」と足下を見られ、高値で取引きしてきた。シェールガス、ロシアのLNG、自然エネルギーなど、エネルギーのベストミックスを国家戦略で今度こそ進めていかねば、生き残っていけない現実がここにもある。


第4位
■週刊ダイヤモンド■ <<<  17.8万円で火葬がOK! の現状

 『週刊ダイヤモンド』は、この時期定番の特集を持ってきた。「寺・墓・葬儀」特集だ。今年は「カネをかけずに納得の」という修飾語がついている。「形式としての葬儀や墓なら"カネをかけずに"済ませたいと考える人が増えている」からだそうだ。だいたい葬儀や墓や寺へのお布施など、弔いビジネスまわりは以前から料金体系があってなきがごとし。昨今ようやく明瞭会計のプランが出始めた業界でもある。「終活」といった言葉も使われ始め、人生の仕舞い支度を自分で算段しておく人も増えている。「終活セミナー」があるくらいだ。
 まずは「デフレ化する葬儀編」。「葬儀業界のヤマダ電機、ユニクロを目指す」ネット系ベンチャーの「小さなお葬式」ブランドが成功を収めつつあるという。「低価格、追加料金一切不要」で、読経のない「火葬プランは」17.8万円。「葬儀を軽視し過ぎだ」との批判もあるが、高齢化で友人も先に亡くなり、付き合いも希薄化して小規模化する実態と合致し、支持されているとのこと。「縮小する墓編」では、都会で足りない墓や火葬場事情、家族に負担をかけない多様な墓などが紹介されている。遺骨を骨やオブジェに加工して手元に置く「手元供養」の利用者も増えているという。最後は「存続危機の寺編」。葬儀や法事の簡素化や檀家数の減少が急速に進む現状がレポ
ートされている。
 第2特集は「クラウドファンディングの夜明け」。ベンチャーの新たな資金調達法としても注目を集めている。

2013年1月 7日

今週の週刊経済誌の読みどころ_2013.1.8

今週の第1位は『週刊東洋経済』

週刊東洋経済 ... メイカーズ革命
日経ビジネス ... シリーズ動き出す未来① 幸せな資本主義
週刊ダイヤモンド ... ここまで治る! 超先端医療
週刊エコノミスト ... インフレを学ぶ

 新年早々の経済誌は実は年末には刷りあがっています。予約購読をしている人の手元には年末に届いている。いや、だからつまらないと言っているわけではありません。何といっても新春号です。いい企画が揃っていました。
 そのなかで群を抜いていたのは『週刊東洋経済』でしょうか。特集のテーマはモノ作り。それも、誰でもがメーカー(同誌はメイカーと記述)になれるというものです。それを可能にしたのがデジタル技術です。アメリカでは大きな潮流になろうとしていて、それはいずれ日本にも訪れるでしょう。一読の価値ありです。ということで、これが今週の第1位です。
 次に注目したのは、『日経ビジネス』の特集です。テーマは「幸せな資本主義」。冒頭の記事では、神奈川県の高校生がウガンダのビジネスマンに融資をした、いわゆるマイクロクレジットの話が紹介されています。これが第2位。
 『週刊ダイヤモンド』は山中教授のノーベル賞に沸く「最先端医療」の実情を特集しました。話題の尽きないテーマなだけに、読んでいて結構面白いのですが、『週刊東洋経済』や『日経ビジネス』のような独自の視点とインパクトに欠ける点が残念でした。
 そして、4位の『週刊エコノミスト』はインフレの特集です。 安倍政権も発足し、経済界(とくに地方の)インフレ期待が高まる中で、「ちょっと待て」というスローガンを掲げた特集です。

第1位
■週刊東洋経済■ <<<  誰でも製造業になれる時代

 「メイカーズってなんだ?」と、初めて目にした人も多いだろう。知らなかった人は絶対に読んでおくべき特集だ。
 発明やアイデアと「ものづくり」の間には深い溝がある。実際に関わった人ならわかることだが、そこを越えることができた人しか製造業者にはなれなかった。ところが、3Dプリンターやレーザーカッターによるデジタルなものづくりの進展、インターネットの活用がその溝を埋め、「素晴らしいアイデアさえあれば誰でもメーカーになれる」時代が始まっている。これはもはや「革命」と言うにふさわしいムーブメントだ。というわけで、『週刊東洋経済』の特集「メイカーズ革命」は、工作少年だった私にはわくわくする特集だった。
 そう!「素晴らしいアイディアさえあれば」、誰でも製造業として起業できてしまう! と目から鱗の特集だったのだ。デジタル化で、個人がメディアを立ち上げ、音楽を配信し、映像も世界中の人々に見てもられる環境になったが、ついにものづくりまで行き着いたということか。
 詳しくは本誌を読んでほしいが、原点は「メイカームーブメント」といって、マサチューセッツ工科大学ビット・アンド・アトムズセンターのニール・ガーシェンフェルド所長を始祖とする運動である。彼は「ものづくりによる自己の確立を説き、世界中に市民工房『FabLab(ファブラボ)』のネットワークを広げている」そうだ。US版「WIRED」編集長を辞め、メイカーとして起業してしまったクリス・アンダーセン氏の著書「MAKERS」(NHK出版)は、この分野の必読書だそうで、インタビューにも登場している。


第2位
■ 日経ビジネス■ <<< 「会社員」がなくなる時代

 『日経ビジネス』は年明けから再びシリーズ企画で船出した。「シリーズ動き出す未来」。前回が「100シリーズ」でわかりやすかっただけに、シリーズタイトルだけではいま一つ何をやってくれるのか不明。「編集長の視点」で確認したところ、「この先、起きようとしている劇的な変化をお伝えしていきます」とのこと。意欲的な企画を期待したい。
 1回目は「幸せな資本主義」だ。これも抽象的なタイトルだが、編集長によれば「カネに支配されない価値観を資本主義にどう取り込むか」にフォーカスしている特集だそうだ。リードを紹介しよう。
 「資本主義が岐路に立っている。リーマンショックから既に4年余り。世界経済は今もその傷が癒えない。(中略)資本主義が本来有するはずの『幸福の希求』という意義は失われたかのように見える。18世紀後半からの産業革命以降、急速に発展したこの仕組みに未来はあるのか。世界が模索する『幸せな資本主義』の最前線に迫る」。
 内容的にはもっと掘り下げてほしいところもあるが、「徹底して社会に優しい銀行」とか、「(グローバル企業は)公益性こそ成長の糧」とか、「経営目標は『社員の幸せ』」とか、真っ当なところに立ち返る経済活動を指し示す言葉が記事のあちこちで目につく。結論的な終章には、「『会社員』の終焉」というタイトルが付けられている。その章のリードには「人・モノ・カネが大企業に集中する時代は終わりを迎えつつある。これまで以上に多くの起業家が台頭し、仕事のスキルはネットを介して共有される。資本主義は、組織や国境を越えて『企業と個人』『個人と個人』が結びつく分散型に向かう」とある。「メイカーズムーブメント」と共通する「分散化」は、個人にクリエイティビティとと幸福をもたらすキーワードかもしれない。ある意味では『週刊東洋経済』の特集ともイメージがダブった。
 第2特集、「異色企業家だけに聞いた 2013年大胆予測」も面白かった。


第3位
■週刊ダイヤモンド■ <<< 最先端医療ではげは治るか

『週刊ダイヤモンド』の新年一発目は「超先端医療」を取り上げた。山中伸弥・京都大学教授がiPS細胞(人工多能性幹細胞)でノーベル賞を受賞し、にわかに最先端医療への注目が高まっている気がする昨今、特集では「5年以内に実現する可能性を持つ『超先端医療』を結集した」という。
 ついに実用化ラッシュが始まる再生医療を取り上げるのはPart1.「再生医療の開花」。毛髪、軟骨、角膜などの実用化が期待される製品がずらりと並ぶ。エリートに薄毛がいなくなる日も近い!? Part2.は、がん、認知症、花粉症などへの治療で新展開をみせる「免疫療法の復活」。認知症は発症前の発見がカギだそうだ。がん治療の最先端はPart3.「がん3大療法の変身」。放射線治療、手術、薬物療法、そして延命も狙える緩和ケアがレポートされている。Part4.「日の丸ヘルスケアの正念場」は、国内企業が欧米メーカーの牙城であるヘルスケア部門に切り込めるかを分析する。
 第2特集は、「誰が音楽を殺したか?」。CDの売上げはピークの3分の1、さりとて配信も伸びない苦境の音楽業界。インターネットやスマートフォンの普及によって、サービスが乱立し、収益構造は激変した。国内のヒットチャートが発表された年末に音楽評論家ピーター・バラカン氏が言った「今年の邦楽チャートは悲惨です。これでも音楽と呼べるのでしょうか」という言葉を思い出した。ヒットチャートは握手券のために複数買いするAKBとSKEなどの楽曲で埋め尽くされていた。


第4位
■週刊エコノミスト■ <<< インフレは歴史から学べるのか

 自民党政権が昨年末に復活し、安倍首相率いるアベノミクスが始動しだした。そんな状況下で『週刊エコノミスト』は、新年早々「インフレを学ぶ」という特集を組んだ。全体を眺めた印象は、総じて「アベノミクスに否定的な立場」を取っているというもの。参議院選挙を見越した劇薬的な政策だけに、負の側面が見え始めたときにどうなるか、9人の専門家が見解をまとめている。
 もちろんこの先経済がどうなるかということは誰にも予測はつかない。バブルを心の底で待望している人は多いはずだ。だが、である。アベノミクスでもたらされている円安株高現象の次に起こる「負の側面」の予測は同誌の指摘を待つまでもなくイヤなものだ。
 その手の情報も溢れている。国債の金利が上昇を始めたらどうなるか? 輸入品目の価格上昇で国内製造業や消費者は物価上昇に耐えられるのか? ハイパーインフレは? IMFの介入は? アベノミクスは日本終了のお知らせか? などなど。
 ま、否定的にばかり見ることが良いわけではないので、あとは様子を見るのが妥当かもしれない。
 「海外脱出日記」という囲み記事で、ある不動産会社社長が一家でアメリカに移住した顛末を紹介していたのが面白かった。

【来た!見た!書いた!】 大阪の百貨店の新装開店に見た日本経済の「光と陰」

6年の歳月をかけた改装に沸く梅田の劇場型百貨店

 新年を迎えた1月2日、阪急百貨店のうめだ本店(大阪市)を訪れた。改装に6年の歳月をかけて2012年11月に全面開業した阪急うめだ本店は、この日が今年の初営業日。地下の食品売り場では、うめだ本店と江崎グリコなどによる共同企画の高級ポッキーブランド「バトンドール」に長い行列ができ、各階の婦人物のブランドショップや9階の特設のセール会場も多くの客でごった返していた。
 新しいうめだ本店が掲げるのは、高級ブランドなどで他店を圧倒する品をそろえ、所得水準の高い消費者を西日本全域から呼び込む戦略だ。この日、関東から大阪への里帰り中に初売りに訪れた40代の主婦は「アウトレットを利用することが多くなったけれど、やはり阪急が一番よいものがそろっていて、サービスも良い。改装が終わり、売り場が広がったのでこれからも利用したい」と話す。
 うめだ本店は地下2階~地上13階の15層で、売り場面積は旧本店より3割多い8万平方メートル。開業初年度の来店客数は約5000万人を見込み、初年度の売上高は阪急メンズ大阪を含めて2130億円を目指している。

 もうひとつの特徴は「劇場型百貨店」。例えば9~12階には4層の吹き抜け空間「祝祭広場」を設けた。新年には、ここにその場で商品券が当たる「1万人の大福引」や人気婦人服ブランドの福袋コーナーを設けるなどして、来店客の滞留時間をできるだけ長くするような工夫を凝らしていた。

新装開店の大賑わいも実態は今ひとつ?

 新聞各紙の報道によると、2日の開店前には前年より1000人多い7000人が並んだという。阪急に限らず、百貨店や家電量販店の初売りは総じて堅調だったようだ。衆院選前から進んだ円高の修正や株価の上昇を背景に、消費には上向きの兆しが見えてきたようだ。   
 ただうめだ本店を歩き回って、少し気になることもあった。改装工事に入る前の2000年代半ばにも新年2日の初売りに訪れたことがあるが、その頃と比べると人の出が今ひとつのように感じられたからだ。
 当時は福袋などを目当てに客が殺到し、入口では入場制限をしていたし、婦人服やアクセサリーの売り場は人が多すぎて身動きがとれないほどだった。
 各ショップの福袋にも、2日午後の段階では売れ残りがあった。 特に高額の福袋ほど売れ残っている印象が強かった。
 うめだ本店は改装前と比べ面積が3割も増えており、混み方だけで消費の動向を決めつけるのは適当ではない。だがそれでも、2000年代半ばと比べると、阪急百貨店の初売りに来る客たちから、殺気だつような購買意欲が薄らいでいるような気がするのだ。

百貨店「オーバーストア」状態の背後にあった家電の元気

 考えられる1つの理由は、大阪の百貨店の供給力が過剰になっている点だ。
大阪駅・梅田駅周辺には阪急のうめだ本店以外に、同じエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)の阪神百貨店の梅田本店、J・フロントリテイリングの大丸梅田店、三越伊勢丹ホールディングスの大阪三越伊勢丹の4つの百貨店がある。
 2011年4月の大丸の改装、同5月の大阪三越伊勢丹の開業、そして阪急の大幅な改装開業で4つの百貨店の売り場面積は計26万平方メートルとなり、同じく百貨店が集中する東京の新宿駅周辺の約21万平方メートルを大きく上回る規模になった。
 範囲を大阪市内に少し広げると、競争はさらに激しい。ミナミでは高島屋大阪店、大丸心斎橋店が改装・増床し、日本一高い「あべのハルカス」に入る近鉄百貨店阿倍野本店は2014年に全面開業する計画。大阪市内の百貨店の売り場面積は2005年と比べると5割以上増え、完全な「オーバーストア」状態になっている。
 一方で百貨店の市場は縮小している。大阪地区全体で、この5年間で百貨店の売上高は2割弱減った。百貨店の売上高が下がる傾向は大阪に限ったことではない。ただ、より気がかりなのは、電機など大阪にある主要企業が勢いを失いつつあることだ。大勢の社員を抱える製造業の衰退は、従業員のリストラや所得減を通じて、地域の消費の力を徐々に衰えさせる。
 大阪の百貨店の増床・新築計画が相次いで発表された2000年代半ば。大阪に本社を置くパナソニックやシャープは「国内でのものづくり」を掲げ、関西周辺に大型投資で工場をつくり、日本の製造業を牽引していた。こうした大阪の元気のよさが、百貨店の強気な計画を導いたともいえる。

デパートの顧客「中産階級」にがたがきている

 だがパナソニックやシャープはテレビやスマートフォンの市場で米韓の企業に遅れ、リーマン・ショック後の円高も重なり、急速に競争力を失っていった。大阪府の調査では、府内で働く人の約43%は非正規労働者で、全国平均の35%を大きく上回る(2011年)。新年の大阪の百貨店にところどころのぞく「元気のなさ」は、こうした関西企業の失速による所得の減少が影響しているのではないか。
 阪急電鉄の創業者、小林一三が大阪の梅田駅に「世界初のターミナルデパート」阪急百貨店を開いたのが1929年のこと。ターミナルデパートを可能にしたのは、阪急電鉄沿線をはじめとした京阪神圏に、デパート=百貨店での買い物を楽しめる「中産階級」の層ができつつあったからだ。
 それから80年あまり。小林が構想したターミナルデパートは日本中に広がり、大阪はターミナルデパートの最も激しい競争地になった。だが百貨店の表面的な興隆とは逆に、その前提となった「中産階級」に、がたがき始めている。
 表面的な華々しさと、それを足下から揺るがす経済構造の変化。大阪の百貨店の姿には、日本が直面する経済成長の限界や所得の減少、企業の競争力衰退の問題が凝縮されているのかも知れない。