2011年12月 1日

第62回 知ってますか、全国に広がる「街コン」という名の街おこし

普段は閑散とした中心街が若者で溢れる!?
 
今年1月、仕事で栃木県宇都宮市を訪れたときのことだ。
 
夕方に会議が終わり、10数人のメンバーは栃木県庁近くの宇都宮市中心街で飲み会を開いた。1次会は事前に予約した店だったため問題はなかったが、苦労したのは2次会の店を探すこと。入ろうとする店がことごとく貸し切りだったり、20~30代と思われる男女で満杯だったりするのだ。

宇都宮市は人口51万人を超す北関東随一の都市だ。ただ車社会の進展や大手チェーン店の撤退などで、中心街がだんだんと寂れつつあるのは他の地方都市と同じだ。週末といえども、いつもはこんなに賑やかではなかった。
そこで街を歩く若者に聞いてみた。
「なんで、こんなに人がいるの?」
「今日は宮コンの日ですから」とその若者。
「宮コンってなんのこと?」と聞き返すと、
「宇都宮の街で開く合同コンパ=合コンなので『宮コン』と呼ぶんです」
そこまで聞いて、ようやくその日の街の賑やかさ、華やいだ雰囲気に納得がいった。


ツイッターやフェースブックで全国規模に広がった

いま、この宇都宮から始まった「街コン」が全国に広がっている。市街地の中の相当数の飲食店を合コンの会場に見立てて、若い男女に出会いの機会を提供するものだ。前橋市の場合は「前コン」、横浜は「濱コン」、広島市では「ひろコン!」、札幌市では「エゾコンMAX」――。10月中には、全国の10数カ所で同様の催しが行われたという。

「宮コン」は2004年8月、宇都宮市の4店で170人の男女が集まったのが始まりとされている。それから7年で宮コンの開催は30数回を重ね、最近は約50店、2500人が参加する大きなイベントに育った。私たちはたまたまその1回に遭遇したわけだ。
これまでも、ぽつりぽつりと宮コンをモデルに、街コンを開く街はあった。ただ全国的に広がるきっかけとなったのは、6月はじめ、前橋市の飲食店経営者らが前橋市中心商店街で開いた「前コン」かもしれない。

4月中旬に募集を始めた当初は申し込みが低調だった。だがツイッターやフェースブックを通じて広報をし始めると、全国から申し込みが殺到し、急きょ参加者枠を広げることになった。前コンの当日は、普段は人影がまばらな中心街に人があふれ、前コンの模様はインターネットの動画サービスやテレビで全国に流された。


男女比一定、メアド交換など運営側が演出
 
街コンの仕組みはこうだ。
 
参加者は1人何千円かの参加費を事務局に支払い、参加証代わりに「腕輪」などを身につける。一定数の居酒屋、バー、カフェなど飲食店が貸し切り・飲み放題になっており、参加者は定められた軒数以上の店をはしごしながら、腕輪をつけた異性に声をかけるという具合だ。
 
10月15日に高崎市で1300人が参加した「高コン」では、さらにシステムが進化していた。参加者は1店ごとに1時間、異性との語らいを楽しみ、午後10時までに指定された3店を回る。運営者は男女比が同じになるよう参加者が回る店を指定しており、「次の店に移ったが、なぜか周りは男ばかり」といったことが起こらない仕組みだ。
さらに細やかな演出もある。時間切れ間際には店員やスタッフが「アドレス交換のチャンスです」とさりげなくささやく。移動時間も30分設けてあり、店の外ではアドレスを交換したり、店では距離が遠かった異性に声をかけたりする若者たちでごった返していた。


寂れる街が賑わいを取り戻すきっかけになるか
 
街コンがはやる背景には、2つの問題がある。1つは少子化。以前は「合コン」といえば大学生や社会人の若者が自分たちの中で開くものだった。だが少子化を食い止めるために、行政や商工会議所などが「出会いの場」を提供することが珍しくなくなり、また「婚活」の流行もあり、こうした大規模な合コンを開くことに抵抗感がなくなった。

もう1つは、日本の地方都市が一様に抱える中心街の衰退という問題だ。街に活気を取り戻すために、「街コン」というイベントを活用する狙いがある。

街コンは飲酒を伴うため、駅を中心に徒歩で行き来できる中心街で開かざるを得ない。近隣に住んでいても、ふだんは中心街に縁遠い若者が街や店に親しんでもらえるきっかけになる。宇都宮の場合、宮コンをきっかけに参加者が飲食店の常連になり、店の売り上げが増える効果も出始めている。
 
ただ全国各地に急速に広がったために、今後は単に「街コンを開く」だけでは人は集まりにくくなるかもしれない。
幸い、街コンは行政や商工会議所などが主導するケースはまれで、街の飲食店経営者らが寂れる街に危機感を抱いたことをきっかけに始まったケースが多い。そこに住む人たちが「どうしたら街の魅力を高められるか」を本気で考えることこそ、最も有効な活性化策。街コンの開催をきっかけに、その街独自の魅力に磨きがかかることを望みたい。

(2011・11・2)